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諸々の嗜好に対する思考と試行

本の紹介 「老ヴォールの惑星」

2008年12月31日 | 読書
著者の小川一水さんについては、私より若い世代の作家というくらいの知識しかなかった。
小松左京、星新一、眉村卓、筒井康隆という日本SFの開拓者たち(註)の作品を渡り歩いた年代の私の世代としては、90年代の新SF界というのはどうも「軽い」のではないかという不安感があった。
しかし「老ヴォールの惑星」を読んで少し認識が変わった気がする。
もちろん、もう少し短く書いても良いのではないかとか、会話がありきたり(自動的)だとか、手放しに全面的に良いというわけではないのだが、それでも面白い。
恐らくこの人は筒井さん系の、ビジュアルを文章化することに優れている作家なのではなかろうか。
ハードSFとまではいかないが、十分に「センス オブ ワンダー」の世界を楽しめた一冊であった。

(註)
筒井さんは「開拓者」ではないという説がある。
開拓された日本SF界の道をスポーツカーで突っ走って行っただけどいう説である。

老ヴォールの惑星 (次世代型作家のリアル・フィクション ハヤカワ文庫 JA (809))
小川 一水
早川書房

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本の紹介 「さわりで覚える 古典落語80選」

2008年12月31日 | 読書
寄席に行く時間がなかなか取れないので、しかたなく興津要の古典落語の本で誤魔化しているが、興津作品は情景や落ち(さげ)がわかりにくい古典落語を現代人にも理解しやすく解説してあって、とても面白い。
絶版品も含めてだいたい読んでしまったので困っていたのだが、梅田の紀伊国屋で今回紹介する本を見つけたので、つい買ってしまった。
これは、落語家柳家小満んの監修で野口卓(のぐち たかし)が書いたもの。
古典落語の基本的な作品のあらすじと、豆知識的な「一口メモ」が楽しめる。
興津作品と比べるとちょっと軽めで、短くまとめることに重点が置かれているようだ。
それ故にちょっと分かり辛いところもあるが、まあ80もの作品が一挙に読めるので、これで善しとせねばなるまい。

さわりで覚える古典落語80選 (中経の文庫)
野口 卓,小家 小満ん
中経出版

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蝸牛少女

2008年12月30日 | 日記
顔面カタツムリだらけの少女

顔面蝸牛で覆い尽され、虚ろな目で己の短かった人生を振り返っている少女。
嘘です。これまでのギネス記録を10匹も上回る高記録を出した少女です。
彼女の自己記録は9匹(彼女の年齢も9歳)だったのに、本番でいきなり25匹。
すごいよティアナ、すごいよ!
顔中を這いまわるカタツムリの粘液によってお肌ツヤツヤ、とてもキュートな女の子ではあるが、とりあえず親は止めたほうが良かったんじゃないか。

カタツムリの生活
大垣内 宏
築地書館

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オンラインで超簡単にアスキーアートが作れるサービス

2008年12月30日 | サービス
オンラインで簡単に色付きAAをジェネレートするサイト『ASCII-O-Matic』より

写真やイラスト素材を超簡単にアスキーアートに変換してくれるサービス。
JPEG形式の60×50ピクセルしか変換できないのが残念だけど、とても微細なAA。
陰影なども忠実に再現されている。
私も試しに王子動物園のパンダの置物写真をAA化してみた。
どう? なかなかいいんでないかい?

ASCII-O-Matic

本の紹介 「暗号解読(下)」

2008年12月29日 | 読書
うーむ、下巻は読みごたえがあるというか、内容が上巻からの流れでエニグマ以降の現代暗号理論のほうにシフトしてきて、新たな暗号の仕組みについては十分な説明や図解があるのだが、超文系の私にはちょっと付いていけない。
それでも私が最も興味を持っていた「ナヴァホ・コードトーカー」の解説については我ながら単純だとは思うが、ちょっと涙が出た。

それ以降の暗号化方式自体は馴染みのあるものが多くなる(正直説明については半分も理解できてない)。
RSA」や「PGP」は縁の下の力持ちであって、それと知らずに使ってる人もいるだろう。
最終章の「量子暗号」は圧倒される。
まだ開発もされていない「量子コンピュータ」で利用されるべき暗号方式の概念を、現代科学理論の粋をもって組み立ててしまう暗号科学者の凄味が感じられる。

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)
サイモン シン
新潮社

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女児整形

2008年12月28日 | 創作・架空
韓国では顔面整形手術への抵抗感が非常に少なくて、小学生くらいから親が付き添って、瞼や小鼻の形成などが普通におこなわれているそうだ。
日本でも「プチ整形」なんて言葉が普通に使われるようになり、韓国ほどではないが、整形は人に隠すほどのことでもなくなってきたようだ。
芸能人に至っては、ある日突然シワが無くなって能面みたいな顔になってたり、目が限界まで大きくなって別人のようなったりしている。
私としてはこういった昨今の状況を踏まえ、いろいろと不具合のある我が娘の顔を整えてやるのが親の努めと思い立ち、さっそく近所の形成外科に行ってきた。
さすがに医者は3歳児の無垢な顔面を手術をすることに躊躇したが、最後には私の親としての熱意が通じたようだ。
手術したのは、瞼、頬、鼻、口元である。
手術時間は約3時間。
先生の腕が良かったので、私も娘も大満足の完璧な仕上がりである。

整形前


整形後

PAAMAYIM NEKUDOTAYIM

2008年12月28日 | 日記
また訳の判らん題名をつけて奇を衒っておるのだろう、と思われたかもしれないが、そのとおりです。
訳が判らないからといって、しかし意味のない言葉とは限らない。
これにはこれでちゃんと意味があって、簡単な説明はここに書いてある。
恐らくZendチームは、この単純な(だがPHPスクリプトにとって重要な)「::」という記号に何かミステリアスで重みのある呼び名を付けたかったのだろう。
ちなみにこの記号の読みは通常は「ダブルコロン」だが、ヘブライ語のこれは「パーマイーム ネクドタイーム」で、PHPでスクリプトでは「スコープ定義演算子」と呼ばれている。

本の紹介 「孤独のグルメ」

2008年12月23日 | 読書
私のメシの食べ方に多大なる影響を与えた泉昌之の「かっこいいスキヤキ」から十数年を経て刊行されたこの「孤独のグルメ」もまた、泉昌之の片割れである久住昌之の食とそれを取り巻く人々(つまり人間全体)に対する偏愛ぶりがうかがえる作品である(作画は谷口ジロー
メシを選んだり食ったりするたびに「うん、これ、これ」とか「ここはナメコ汁で決めよう」とか、私だけでなく多くの人が自問自答しながら体に栄養を取り入れるために行為する。
モノを「食う」という行為は時として性行為と同次元で語られるし、ある地域では性行為よりも恥ずかしいこととして位置付けられていることがある。
そもそもそれは、生きることに直結し過ぎている動物的な行為だ。
だから我々は食うモノを選び、口に運びながら様々なことを考え話すことによって、少しでも「食う」という野蛮な行為を高等で人間的な営みに近づけたいと思うのだ。
そういう意味で主人公の井之頭五郎は、人間である。どうしようもなく人間である。

孤独のグルメ (扶桑社文庫)
久住 昌之,谷口 ジロー
扶桑社

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本の紹介 「豪快さんだっ!」

2008年12月23日 | 読書
名作集「かっこいいスキヤキ」から大好きな泉昌之の作品集。
ハタから見れば下らなくてしょーもないことを突き詰めて考える人間の性を「あー、それあるある、えっ?さすがにそれはないだろう?」ってところまで描きつのる泉昌之の性に共感しつつも「さすがに俺はここまで酷くない」と気づかぬふりをする己の性。
作品のタイプとしては「新さん」に似てるかな。
どわははははっ!と爆笑を誘うものではないが、フーンフフーンクスクスと頬が思わずほころぶ青春十八乙女のような作品集だ。
とくにお勧めは「本格危機もの 今度こそ本当に 日本が危ない」のシュルシュルと音がするようなスケールの急速な縮小感覚。

豪快さんだっ! 完全版 (河出文庫)
泉 昌之
河出書房新社

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本の紹介 「暗号解読(上)」

2008年12月23日 | 読書
先日、少し書いたサイモン・シンの「暗号解読」上巻を読んだ。
以前読んだ「フェルマーの最終定理」の感触で面白いはずと思って読んだら、案の定これも面白かった。
第一章は「スコットランド女王メアリーの暗号」を中心として、有史以前からの暗号の歴史を紐解いていく。
単純な文字の置き換え、意味の置き換え、暗号文書自体の隠ぺいなど、徐々に複雑化する暗号手法を、章を進むごとにページを割いて解説してあるので理解しやすい。
上巻での読みどころは、第二次世界大戦中に生まれた最強の機械式暗号機「エニグマ(謎)」における攻防と現代のコンピュータ理論の礎を気づいた天才数学者「アラン・チューリング」の悲劇である。
チューリングマシン」などで彼の名前と性癖は知っていたが、軍の秘密主義が彼を救わなかったとは・・・やはり生まれた時代が早すぎたのか。

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)
サイモン シン
新潮社

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年末番組

2008年12月22日 | 日記
いやぁ年末だなあってのは「忠臣蔵」だね。観た事ないけど。
でも今年は田村正和主演でもうやっちゃったみたいで「あれっこんなに早かったっけ?」って感じ。いや、観た事ないんだけど。
しかし今年の冬は暖かくて季節感がないんだけど、忠臣蔵と言えば雪の降りつもる討ち入りのシーン。
陣太鼓を打ち鳴らし「皆のモノ心して吉良の首取ってまいれ」とかいうシーン。
うーん、観た事ないから適当なんだけどね。

あ、「紅白」は観ないけど「ゆく年くる年」は観って人は多いのではないか。
「紅白」が面白くなくなったのは、昔はその年々にあった大ヒット・中ヒット曲がなくなったからではないか。
どれもこれも小粒ですぐ消える歌ばっかり。
一部のファンは覚えてるけど、それ以外の人は誰も知らない。
そんな歌ばっかり。
もう現在のような歌謡産業の形体は終わりに近づいてるのかもしれない。

天然由来はもうやめて

2008年12月19日 | 日記
だいぶ前にも書いたけど、ええかげん「天然由来は体にいい」っていう脊髄反射的馬鹿コピーはやめてほしい。
私は「天然・自然。だから体にいい」とか「地球にやさしい。エコロジー」を叫ぶエコエコ系の企業の製品は逆に全く信用できない。
お前は黒井ミサか。

「天然由来」とは少し違うが、ちょっと前のニュースにこういうのがあった。

英国王立化学会が「100%天然」の物質に1億4千万円の懸賞金

これはGIGAZINEの題名の付け方がおかしいが、もちろん王立化学会が「天然物質=健康、化学物質=不健康」と見做される現状傾向に怒って出したネタで、「そんなもんあるわけねえだろ。出せるもんならだしてみな」ってことだ。
然るに、消費者は「天然」とか「自然」とかいう言葉に弱いから、そういった「天然であれば体にいい」という盲目的信仰を企業は詐欺的に利用するのだ。

たとえば、こういった商品
>100%天然性分(ママ)・自然界から産まれた完全無害な
>生きているバイオ液。

誤字はともかく、しょっぱなから無茶苦茶である。
これでは王立化学会が怒るのも当たり前。
ところがこの「100%天然性分(ママ)・自然界から産まれた」という部分は、仮にこの製品が人工的に造られた化学製品をバリバリに使っていてもウソにならないから面白い。
ただし、それ以降の「完全無害」ってのはありえないし、「生きているバイオ液」に至っては意味不明。

つぎはこれ
>シェルウォーターは、ホタテ貝殻焼成セラミックス水溶液の天然
>成分100%天然成分からできています。

なぜかこういう「天然系」サイトは文章が無茶苦茶なのが共通している。

>シェルオォーター(ママ)は生物除菌力を利用していますので、
>白癬菌や大腸菌、サルモネラ菌などは分解しますが、カラダに
>よい酵母菌や乳酸菌には影響しません。

「生物除菌力」ってなんじゃい?
一体ナニが人間の「カラダによい」菌なのか悪い菌なのかを判断しているのだろうか?
白癬菌だって大腸菌だって生き物じゃないか。馬鹿にすんな、と言いたい。

まだまだあるよ。つぎはこれ
>「ピュアーシリーズ」はすべて天然成分から作られていて
>化学物質は無添加なので、アレルギーや皮膚の敏感な方
>でも安心してお使いいただけます。

なぜ天然物質だとアレルギーでも安心なのか。
お前らはウルシにかぶれたことはないのか。蜂に刺されたことはないのか。
アナフィラキシーショックで年間何人の人が亡くなってると思ってるんだ。
そもそも、天然物質だろうと何だろうと、基本的にすべて化学(的な組成を持つ)物質である。
まず天然物質と化学物質の定義からお願いします。

お次は超ダメダメなサイト
>天然ミネラル羽毛布団
もうこれからして意味がわからないのだが、肝心の「天然ミネラル」の説明が素晴らしく意味不明。

>天然ミネラルとは自然界の土中にある約1億年前からの
>堆積物が、地殻変動などの熱や圧力により結晶化したもので、
>美容の泥パックも、泥に含まれる天然ミネラルの効果です。
>(自然成分100%)

どういう意味で「ミネラル」を使ってるのかな。
通常は栄養学的な使い方だと思うのだが、どうもただの泥とか鉱物のことらしい。
ついでに、何度も言うように、この世にある物質はすべて「自然(に存在する)成分100%」である。

>天然ミネラルを精製した繊維を採用しました(無化学薬品)
>安心の抗菌加工も施しています。

「抗菌加工」には化学薬品を使っていないというのだろうか?
「天然ミネラル」が起こす奇跡の超常現象で菌が寄り付かないとか?

>天然の中から抽出した自然成分100%で構成されていますので、

日本語は無茶苦茶だけど、まあ、これはいいや。
でもその直後に、これはねーだろ。

>化学物質や合成物質は一切使用していません。
>低刺激を心がけています。

うん、もう、わからないヒトなんだから・・・
で、結局ナニを使って作ってるんだか。

お口直しに、用語をちゃんと考えて使ってるサイトをご覧ください。
おそらくこれは、コピー屋じゃなくて技術系のちゃんとした人が書いてるっぽい。

(注1:リンク先とは一切の利害関係はありません
(注2:引用については見やすさのために適宜改行を入れました)

市路上喫煙防止指導員

2008年12月17日 | 創作・架空
昨日の事である。
御堂筋にある会社へ打ち合わせに出かけた帰り、3時間半の会議中一本も煙草が吸えなくてうーうー唸りながら歩いていると、エントランスの端に喫煙コーナーがあるビルを発見。
御堂筋のこの周辺が禁煙エリアになってから、こういうビルは珍しくなった。
嗚呼、素晴らしきビルよ、このビルのオーナーはおそらく喫煙者に違いないと思いながら、地獄で仏とはこのことよ、とフラフラ吸い寄せられるように灰皿に近づき煙草に火を点けた。
しばらくすると、あっちのほうから市路上喫煙防止指導員とかいう輩がひとりヌラヌラと近づいてくる。
市路上喫煙防止指導員というものを初めて見る者でも、見た瞬間に市路上喫煙防止指導員であると判るいかにも市路上喫煙防止指導員らしい雰囲気を漂わせている男だった。
こっちはビルの私有地内にある喫煙エリアにいるわけだし何も困ることはないのだが、どうもその馬鹿は私に向かってきているような気がしてならない。
と、案の定元警察OBと思われるその間抜けは私に近づいてきて、言葉は丁寧だが威圧的な雰囲気を漂わせつつ「ここは禁煙エリアですので、煙草を消していただけますか」と言うではないか。
さらには「条例に基づいて1000円の過料をいただきます」と言いながら、ショルダーバッグから何か禍々しい感じのする機械を取り出している。
えーと、この人誰に言ってるのかな、と周りを見回してもそこには私しかいない。
阿呆の相手は疲れるのだが、仕様がないので「あのーここビルの中でしかも喫煙エリアなんですけど」と言うと、その基地外は私の足元を指差しながら「歩道に足が出てます」と言う。
歩道とビルの間に10センチほどの段差があって、少しビルの敷地が高くなっているのだが、確かに私の足は数センチ歩道側に出ている。
「で、これが何か?」とあえて言ってみると、この泥亀は「だから禁煙エリアに出ているので罰金を払ってください」。
なにが「だから」だ、この糞転がし。過料なのか罰金なのかはっきりしやがれ。
私としてはこの絶望的なトカゲ頭に言ってやるしかなかった。
「おっしゃるとおり足は出てますが、路上からは浮いています。さらに体の大部分は喫煙エリアに入っていて、どうもあなたの言うことは通りそうにありません」。
通常公道と接していない、つまり公道の上空に浮いている物体については、公道上にはないと判断される。
例えば飛行機が公道の遥か上空を飛んでいても、それを道路交通法違反だといって検挙する馬鹿はいない。
ようやく片輪脳の市路上喫煙防止指導員も分が悪いと思ったらしく、ブツブツと意味不明なことを呟いた後「気をつけてください」と言って去っていった。

という作り話。