今回はちょっとおとなっぽいのを書いてみました(笑)
絵は、影絵っぽいのを意識して描いてみました
南の島に行きたくなって、この次のも南の島を舞台に書いてます(無事書き終れたら載せますね)
南の島には、よく来る。
日頃、都会の無機質なビルに囲まれていると、週末にもなれば酸欠になった。
荷物と言う荷物も持たずに身軽に飛び出す南国は、いつもとても爽快だった。
島に着いたらまず海に出て、ただ寝転ぶ。
頭の中を真っ白にして。
ずっとずっと繰り返される波の音だけ、脳内を通過させた。
本島から目と鼻の先のこの小さな島は、しょっちゅう来ていたし、話しかけてはこないものの、ホテルのスタッフもお馴染みをもてなす笑顔を見せた。
わたしも、いつも快適に過ごせた。
島にはカップルも多く見られたけど、私はいつも一人だった。
同じ職場で働く男性達は、丸の内らしくという事なのか、仕事も女性の扱いも、それなりにスマートな人が多かった。
交流していて、特別嫌になることもない代わりに、その逆もなかった。
敬遠しているわけではなかったけど、特別な恋人を持たずに何年も経っていた。
それが今回、この島に来て、恋でも始まりそうな気持ちになっている自分に、正直ドキマギしていた。
私は南の島で始まる恋なんか、信用していない。
大したことない男性だとしても、美しい景観と解放的な空気が、最低5割増にする。
スキー場での出会いもそうだけど、東京に戻って、会った時の冴えない感じは否めない。
ところが、今回ばかりはそんな自分の考えさえ否定しようとする自分がいた。
それはこうだ―
昨日、1日浜辺で過ごし、さすがに日も暮れだした頃、急に空腹を感じてホテルにあるチャイニーズに向かった。
この店はニューヨークに本店があるよく知られた店で、私はこの店自慢の新鮮な魚介が好きだった。
店の入口に向かって歩いていると、不意に男性に声をかけられた。
「あの、落ちましたよ…」
「あっ…」
私が落としたのは、昼間、海で一部が欠けてしまった髪留め用のバレッタだった。
壊れていたから、髪から落ちてしまったのだ。
私は気恥ずかしさも手伝って、少し粗雑に受け取ってしまった。
すると、その男性は私のそんな態度を咎める風でもなく、柔らかく会釈をすると、一人で店内へと入って行った。
ただそれだけ。
その男性に関する情報はただそれだけなのだが―
もう一度話をしてみたい、自分がいた。
一目惚れ?
そんな言葉には、自分は一番縁遠いはずだ。
その男性のゆとりある物腰が、私のような多少跳ねっ返りの女も受け入れてくれるような期待が生まれていた。
私はちょっとおかしく感じて、笑った。
それこそ、5割増で良く見えてしまったのではないか…。
今日もレストランで見かけられるかな。
今日は、昨日よりドレスアップして出かけたい気持ちになっていた。
ゆっくり暮れる赤い太陽が、昨日よりもどかしく感じた。
おわり
絵は、影絵っぽいのを意識して描いてみました
南の島に行きたくなって、この次のも南の島を舞台に書いてます(無事書き終れたら載せますね)
南の島には、よく来る。
日頃、都会の無機質なビルに囲まれていると、週末にもなれば酸欠になった。
荷物と言う荷物も持たずに身軽に飛び出す南国は、いつもとても爽快だった。
島に着いたらまず海に出て、ただ寝転ぶ。
頭の中を真っ白にして。
ずっとずっと繰り返される波の音だけ、脳内を通過させた。
本島から目と鼻の先のこの小さな島は、しょっちゅう来ていたし、話しかけてはこないものの、ホテルのスタッフもお馴染みをもてなす笑顔を見せた。
わたしも、いつも快適に過ごせた。
島にはカップルも多く見られたけど、私はいつも一人だった。
同じ職場で働く男性達は、丸の内らしくという事なのか、仕事も女性の扱いも、それなりにスマートな人が多かった。
交流していて、特別嫌になることもない代わりに、その逆もなかった。
敬遠しているわけではなかったけど、特別な恋人を持たずに何年も経っていた。
それが今回、この島に来て、恋でも始まりそうな気持ちになっている自分に、正直ドキマギしていた。
私は南の島で始まる恋なんか、信用していない。
大したことない男性だとしても、美しい景観と解放的な空気が、最低5割増にする。
スキー場での出会いもそうだけど、東京に戻って、会った時の冴えない感じは否めない。
ところが、今回ばかりはそんな自分の考えさえ否定しようとする自分がいた。
それはこうだ―
昨日、1日浜辺で過ごし、さすがに日も暮れだした頃、急に空腹を感じてホテルにあるチャイニーズに向かった。
この店はニューヨークに本店があるよく知られた店で、私はこの店自慢の新鮮な魚介が好きだった。
店の入口に向かって歩いていると、不意に男性に声をかけられた。
「あの、落ちましたよ…」
「あっ…」
私が落としたのは、昼間、海で一部が欠けてしまった髪留め用のバレッタだった。
壊れていたから、髪から落ちてしまったのだ。
私は気恥ずかしさも手伝って、少し粗雑に受け取ってしまった。
すると、その男性は私のそんな態度を咎める風でもなく、柔らかく会釈をすると、一人で店内へと入って行った。
ただそれだけ。
その男性に関する情報はただそれだけなのだが―
もう一度話をしてみたい、自分がいた。
一目惚れ?
そんな言葉には、自分は一番縁遠いはずだ。
その男性のゆとりある物腰が、私のような多少跳ねっ返りの女も受け入れてくれるような期待が生まれていた。
私はちょっとおかしく感じて、笑った。
それこそ、5割増で良く見えてしまったのではないか…。
今日もレストランで見かけられるかな。
今日は、昨日よりドレスアップして出かけたい気持ちになっていた。
ゆっくり暮れる赤い太陽が、昨日よりもどかしく感じた。
おわり