放浪うどん人 ☆これから うどんに 会いに 行きます。☆

うどん食べ歩きブログ
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堂尾うどん(閉店) ー おばあちゃん ー

2015年02月06日 | 香川県・中讃

香川県でうどん店巡りをするには、車で移動するのが非常に便利です。

ただ、普通免許を取得していない私にとって、車での移動は他人に頼るしかありません。

なので時折、誰かに甘えて車で渡讃します・・・。

ただ、それに甘えてばかりいると、車無しでは渡讃出来ない人間になりそうで・・・。

ひとりでも強く生きて行かねば!

そう思い、今回はひとりで旅する事にしました。

1月のとある日、夜明け前の暗い路地を、私は歩いていました。

香川県へ向かう為です。

約1年振りのひとり旅で心が躍ります。

この日も高速バスを利用しました。

私の隣席が空席だったので、広々と快適なバスの旅を過ごせました。

 

定刻より早い時間で高松駅高速バスターミナルに到着。

これは嬉しい誤算です。

当初予定していたより1本早い電車に乗る事が可能になったからです。

 

天気もまずまず、雲は多いけど、雨に降られる事はなさそうだ。

 

切符を買い、10時10分発の快速マリンライナーに乗車する。

これから坂出に向かいます。

坂出に向かう訳は・・・、

これまで何度か訪ねようとして、訪ねる事が出来なかった心残りのお店があるからです。

その心残りをスッキリとさせない限り、何となく一歩を踏み出せないような気がしていたのです。

 

電車が動き出しました。

この瞬間がたまらなく良い!

「さあ!始まるんだ!」そんな気持ちになるからです。

そして、幾度となく眺めて来た車窓に流れる風景が、まるで紙芝居のように私に語りかけて来ます。

これまでの出来事、これから起こりうる出来事を・・・。

心臓がドキドキして止まらない・・・。

 

坂出に到着。

今日はとにかく歩こう、自分の足を少しいじめてやろう。

そんな想いを抱いて、私は歩き始めました。

 

まだ時間が早かったのか?それとも定休日なのか?

閑散としたアーケードの商店街を通り抜けます。

以前、この商店街の近くにあった製麺会社が、影も形も無くなっていて、少し淋しくなりました。

その製麺所へマイ丼を持って訪ねようとした事があったのですが、

もう会社を閉められていたのです・・・。

ただ、その時はまだ建物が残っていたのですが、現在は更地になっていました・・・。

 

商店街から離れ、路地を歩きます。

昔ながらの家が点在していて、その古民家を眺めながら歩くのは気持ち良いです。

そしていよいよ、目的のお店の近くまで来ました・・・。

 

香川県のうどん店巡りでは、お店の近くまで来ると、いつも緊張します。

「臨時休業ではないだろうか?」そんな事を考えてしまうからです。

ようやくお店だろうと思われる場所に到着・・・。

なぜ明確に「お店に到着。」と言わないのか?

↓↓こういう理由です。

 

どこにもお店の看板が無く、ただ「営業中」と書かれた小さな札が吊るされているだけ・・・。

うどんの「う」の字もない・・・。

事前の情報収集で、なんとなくお店の外観は覚えていたが、いざ到着すると自信がない。

でも、建物の横に煙突があるところから、ここで間違いないと判断。

 

勇気を出して扉を開けます・・・。

グループでの訪問だったら躊躇なく扉を開ける事が出来るのですが、

ひとりの訪問ですと、このお店の扉を開ける時の緊張感はハンパない・・・(^_^;)

意を決し、思いきって扉を開ける。

私の目線の先におばあちゃんがひとり・・・目が合いました。

するとおばあちゃん、すくっと立ち上がり、「ここに座り」と言わんばかりの動作で、

今まで自分が座っていた椅子を、私の為に空けて下さいました。

ストーブが側にあり、とても暖かい場所です・・・。

おばあちゃんは釜の方へ向かい、麺を釜に入れ、温めだしました。

 

こちらのお店は89歳のおばあちゃんがひとりでされています。

メニューは一品のみ。

温かい出汁が用意されています。

おばあちゃんの話では、夏になると冷たい出汁もあるとの事です。

 

お店は小さな製麺所みたいな感じ・・。

食べる場所は5人ほどが座れるカウンター席のみです。

昔ながらの感じがして、私の好きな雰囲気です。

 

麺は基本的に、茹で置きの麺になります。

朝、麺を作り、それを茹でて水で締め、玉にしてセイロの上に並べるそうです。

麺作りは、朝の一度だけだそうです。

ですから、こちらのお店の麺は、時間の経過と共に味わいが変わって来ます。

 

おばあちゃんから麺の入った丼ぶりを受取ると、出汁を自分で入れます。

ネギが用意されていましたが、私は何もいれずにこのままで・・・。

まずは出汁からいただきます。

いりこの、豊かで深味のある味が五臓六腑に沁み渡ります。

とても美味しい!

麺の状態も私好みだった。

モチモチでコシもしっかりしている。

小麦の風味も良く、とても美味しい麺。

毎日食べても飽きないうどんです。

それに・・・、久しぶりに讃岐うどんらしい讃岐うどんを食べた気がしました。

いや、これこそが本当の讃岐うどんなのだと思います。

そして、もうひとつ理解出来た事があります・・・。

ようやく理解出来たと言った方が良いのかもしれません。

讃岐うどんには、茹で置きという文化がある事。

一般的に、出来たて茹で上がりの麺が美味しいのは事実だし、私もそれが好みです。

でも、茹で置いた時間の経過と共に、それぞれ人の好みに合った麺の状態になるのが、

讃岐うどんの本質ではないかと思ったのです。

コシがある=讃岐うどんでは無く、

時間の経過と共に、やわらかくなった麺もまた、讃岐うどんだという事です。

だから多くの人に愛される食べ物だと思うのです。

これまで私は大きな勘違いをしていたのかもしれません・・・。

茹で置きという文化を受け入れることで、

「讃岐うどん」というものを、一歩踏み込んで、理解出来たような気がします。

うどんは、私が想像する以上に奥の深い食べ物です・・・。

茹で置き麺に関しては、当ブログでも厳しい感想を述べて来ましたが、これからは改めます。

そんな事に気づかせてくれた堂尾さんのうどん・・・素晴らしいうどんです。

うどんを美味しく食べていますと、地元の常連客のおじいちゃんに話しかけられました。

「どっから来たん?」

「大阪からです。」

するとおじいちゃんが、今度はおばあちゃんに「大阪から来たんやと」と大きな声で。

おばあちゃんが私の隣に座り「大阪から・・・」少し驚いたような顔をされていました。

そして「耳がよう聞こえんから」と言って、カウンターに置かれていたメモを取り出し、

ペンを走らせ、書き終わったメモを私に見せてくれました。

 

このメモを読んで、私はどう返事すればよいのか戸惑いました・・・。

このメモ一枚に、おばあちゃんの人生が詰まっているような気がしたからです・・・。

61年という時間は、あまりに大き過ぎます・・・。

結局私は大した返事が出来ず、そんな自分に歯痒さを感じました。

それから暫くおばあちゃんと、メモでのやり取りが続きました。

楽しくて、優しい時間でした。

私の人生が、大きく深呼吸した時間でした。

 

別れ際、おばあちゃんと握手をしました。

おばあちゃんの、小さな手のひらから温もりが伝わって来ました。

おばあちゃん、きっとまた訪ねます。

だから、長生きして下さい。

 

おばあちゃんと、常連のおじいちゃんに見送られてお店を後にしました。

小さなお店に詰め込まれた歴史の一片に、ほんの少しだけ、触れたような気がした。

 

私の手の中は、優しさでいっぱいだ。

おばあちゃん・・・持ちきれないよ・・・。

だから、誰かにお裾分けするね。

 

堂尾うどん(閉店)



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (tati)
2015-02-06 07:12:46
aibopapaさん
コメントありがとうございます。

おばあちゃんにはずっと長生きしてほしいですね。
本当に良い出会いになりました。
また訪ねようと思っています(^○^)
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行かなくちゃ (aibopapa)
2015-02-06 00:49:52
久しく 行ってません
ばあちゃん ほんまに もっと 長生きしてほしいです!

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