[医療解説] ポリオワクチン… 「不活化」 独自輸入で接種も
ポリオの「不活化ワクチン」を独自に輸入して接種する医療機関が増えている。「生ワクチン」と、どう違うのだろうか?(館林牧子)
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千葉県立佐原病院(千葉県香取市)は、病院の倫理委員会の承認を得て不活化ワクチンの輸入を決め、2010年12月に初めての説明会を開催した。2月中旬には77人が接種の予定だ。
ポリオはウイルスの感染で手足のまひなどが出る病気。かつて日本でも流行したが、1961年に旧ソ連とカナダからワクチンが緊急輸入され、発症者が激減した。
一般的にワクチンには、毒性の弱い病原体を原料にした「生ワクチン」と、死滅した病原体やその一部などを使う「不活化ワクチン」がある。
この時、輸入されたのは「生ワクチン」で、以後、国内のポリオの予防接種では生ワクチンが使われている。予防接種の徹底で1981年以降、国内のポリオの自然感染によるまひは1例もない。
生ワクチンは、ワクチンに含まれるウイルスに感染して、まれに接種後にまひが起きたり、周囲の人に感染したりすることがある。日本では2000年度以降10年間で、14人のまひが国から認定されている。
このため、流行のなくなった国ではウイルスを死滅させた不活化ワクチンが普及している。日本でも10年以上前から不活化ワクチンの必要性が指摘されてきたが、開発が遅れ、現在も治験中だ。
こうした中、親の不安に応えて、ポリオの不活化ワクチンを独自輸入して接種する医療機関が増え、現在約50施設が接種あるいは計画中だ。
だが、海外で広く使われているとは言え、日本では未承認。受ける前に親が違いをよく理解することが重要だ。
生ワクチンは、公費負担でほとんどの自治体で無料で受けられる。まれにポリオを発症するが、国から副作用被害として認定されれば、補償が受けられる。飲むワクチンで、接種の痛みはない。
一方、不活化ワクチンは自費で1回4500円~1万3000円程度かかり、4回接種が標準だ。医師が国から証明書を得て輸入するが、万一、副作用が出ても国の補償はない。重い障害が残った場合、一時金を支払う輸入会社もあるが、国の補償より安い。
一般的な注射によるワクチンと同様、接種部分の腫れや痛み、急性のアレルギー反応などが起こり得る。
インドなど流行がなくなっていない国も一部あるため、予防接種を受けないのは危険だ。千葉県立佐原病院の松山剛・小児科部長によると、欧米でも宗教上の理由で予防接種を受けない人の間で、ポリオの自然感染が起きた例もある。「生ワクチンか不活化ワクチンかは親御さんの選択ですが、必ずどちらかは受けて」と呼びかけている。
【ポリオ不活化ワクチンを扱う主な医療機関】
北海道七飯町・ひよこクリニック
千葉県香取市・千葉県立佐原病院
東京都渋谷区・たからぎ医院
東京都世田谷区・ふたばクリニック
東京都小平市・中山小児科医院
静岡県御前崎市・宮内診療所
愛知県蒲郡市・マイファミリークリニック蒲郡
京都市・矢野小児科循環器内科医院
大阪市・くぼたこどもクリニック
大阪府河内長野市・池田内科医院
和歌山市・生馬医院
沖縄県浦添市・向井わらびークリニック
那覇市・ファミリークリニック小禄
このほかの施設については患者団体「ポリオの会」のホームページ(http://www5b.biglobe.ne.jp/polio/)からメールで同会に問い合わせる。
(2011年2月3日 読売新聞) ヨミドクター 最新の医療ルネサンスより http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=36408
先月13日・14日の読売新聞より
ポリオワクチン(上)予防接種で両脚にまひ http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=35404
ポリオワクチン(下)「不活化」 緊急輸入 願い切実 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=35517
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