(マメ科に感染するPolymyxa属菌と媒介するウイルスに関する文献リスト(5))
Title: Genome properties and relationships of Indian peanut clump virus
(Indian Peanut Clump Virusのゲノムの特性と類縁関係)
Author: Reddy D V R et al.
Journal: J. fen. Virol. 66: 2011-2016 (1985)
★コメント★
この論文が書かれた時期には、まだIPCVとPCVの類縁関係や、Polymyxaで媒介される他のウイルスとの類縁関係がはっきりしていなかった。この論文では、IPCVはPCVと血清学的な関係は無いが、他の特性で似ているところがあることから、1系統と結論している。現在では、別種とされています。また、IPCVとPCVは、SBWMV、ジャガイモモップトップウイルスと科は同じで属が異なり、ビートえそ性葉脈黄化ウイルスとは科が異なります。
Summary
Indian peanut clump virus(IPCV)のL株の棒状粒子から抽出したRNAは主に2つのsingle-strand種からなり、グリオキサールで変性させたサンプルのゲル電気泳動で推定した分子量はRNA-1が1.83×106、RNA-2が1.35×106であった。RNA-1とRNA-2は両者がPhaseolus vulgaris(インゲンマメ、品種Topcrop)の葉に病斑を生じるために必要だった。核酸のハイブリダイゼーションテストによって、IPCVの3株の間に強い塩基配列の相動性が検出された。これらのインド株と西アフリカのpeanut clump virus(PCV)の間の相動性は強くはなかった。これらの結果と、症状、粒子サイズ、自然の拡散状況からインド株は、PCVの系統と考えるのが良いと思われた。しかし、免疫捕捉電顕法ではインドの3株の間、インドの3株と西アフリカ株の間に関連が検出できなかった。PCVは典型的なfurovirusグループの特性を持つが、4株とbeet necrotic yellow vein、potato mop-top、soil borne wheat mosaic virusとの間に血清学的な関連は検出されなかった。
Introduction
インドのPunjab州で見つけられたPeanut clump症状のウイルスは、西アフリカのウイルスとは血清学的な類縁性が無いため、Indian peanut clump virusと命名した。さらにPunjab州のウイルスは、BapatlaとHyderabadのウイルスとは血清学的な類縁性が少ないか無かった。この論文ではインドの2種のRNAが感染に必要であるか、抗原性(antigenic)の関係の欠如にもかかわらずインド株と西アフリカ株に類縁性があるかを記述した。また、これらのウイルスと棒状の粒子で土壌生息性のネコブカビ類がベクターの他のウイルスとの特性の比較を行った。
Methods
Sources and propagation of virus isolates
Purification of IPCV particles
Preparation of virus RNA
Electrophoresis of glyoxalated IPCV RNA for mol. wt. determination
Electrophoresis of IPCV RNA for infectivity assay
Treatment of virus RNA with proteinase K
Infectivity assay
immunosorbent electron microscopy (ISEM)
Preparation of complementary DNA and hybridization with RNA
Results
Size and infectivity of IPCV RNA species
Dundeeで栽培した場合、N. benthamianaにはIPCV-B、H、Lともに全身モザイク症状を示した。N. clevelandiiは、IPCV-Lのみ強いモザイク症状を示したが他の2株はほぼ無病徴の全身感染であった。両種ともに計数できる局部病斑はできなかったが、全身感染した葉はウイルスの純化の材料にできた。インゲンマメでは局部えそ病斑、アカザには局部退緑斑が形成された。インゲンマメにおけるIPCV-Lはより個別の病斑となり感染性の量的な測定に向いていた。IPCV-LのRNA 5µg/mlはインゲンマメの葉の半分に約25個の病斑を形成した。抽出したRNAは、等量のRNAを含むウイルス粒子の0.5%の感染性を示した。
glyoxalate(グリオキサル酸)で処理したIPCV-LのRNAはアガロースゲルによる電気泳動で2本の主バンドを形成し、それぞれ1.83×106と1.35×106mol.wt.と推定された。これらの値は未変性の場合の値より低いが2粒子の長さの比とはほぼ一致していた。250nmの粒子は大きい方のRNA(RNA-1)を含み、184nmは小さいほうのRNA-2を含むと推察された。
電気泳動で分離したIPCV-LのRNA-1と2をインゲンマメに接種したところ、少数の病斑が形成されたが、両者を混合して接種すると非常に増加した。このことは両RNAはIPCVの異なるゲノムでありインゲンマメに病斑を形成するためには、両者が必要であることが推察された。
Sequence homology between RNA preparations from IPCV strains and PCV
IPCV-LのRNAおよびcDNAを用いたハイブリダイゼーションの試験を実施し、結果はTable 2に示された。IPCVの3株は明らかに本質的な共通の配列を持っており、IPCV-HとBはLに比べてより近縁であると思われた。IPCVの3株はPCV-WAとも配列を共有しているが、IPCVの3株同士よりも広範ではない。さらに、IPCV-Lとpepper ringspot tobravirusとは相動性は無かった。
Serological relationships of isolates
Table3に、ISEM(immunosorbent electron microscopy 免疫捕捉電子顕微鏡法)で調査した、インド株、西アフリカ株、形態が似る他のウイルスの間の血清学的な類縁関係を示した。その結果、ジャガイモモップトップウイルスとSBWMV(コムギ萎縮ウイルス)の間にのみ関連が見られた。
Discussion
核酸のハイブリダイゼーションテストの結果は、血清学的に関係が見られなかったIPCVの3株で塩基配列相動性が高く、PCV西アフリカ株との間も高かった。IPCVとPCVはラッカセイに同じような病気を起こし、同様な粒子の形態をもち、同様な実験上の宿主範囲(アカザ属、タバコ属)を持ち、土壌伝染、種子伝染性であった。血清学的な関係は無いが、著者らはIPCVの3株をPCVの系統であると判断した。
棒状ウイルスの中でPCVはSBWMVと類縁性が高い。SBWMVはPolymyxaを媒介者とするが、恐らくPCVもそう考えられる。SBWMVは、コムギの全身感染に必要でポリアデニル化していないssRNAを2種の粒子に含んでいる。さらにSBWMVのRNA1の翻訳物は大きなポリペプチド、RNA2はウイルス粒子タンパク質を生じる。インドのPCVはコムギに感染する。両ウイルスは粒子の長さは異なる。Shirako&Brakke(1984)は、SBWMVは新しい糸状菌が媒介する棒状のウイルスグループの基準となるメンバーで、暫定的にfurovirusと命名された。PCVはそのグループの候補メンバーである。他の可能性のあるメンバーとして、ジャガイモモップトップウイルス、ビートえそ性葉脈黄化ウイルスがあり、ツボカビ類が媒介者でdsRNAを有するtobacco stunt virusは異なる。