
たとえばそれは海の底のよう
な感じ。たとえばそれはトンネル
の中のような感じ。または井戸の
底にいるような。もしかしたら広
いスクランブル交差点の真ん中で
信号が赤に変わってしまったとき
のような感じかもしれない。
孤独はときどき、金縛りのよう
に私を動けなくする。ただじっと、
どこへも行けずに、ただそこにい
る。頭の中ではそんな状況を抜け
出す答えを探すのだけれど、こん
がらがった思考は重なりのように
私をその場に縛りつけようとする。
けれど心のどこかでわかっている
のだ。海の上は光に満ちていること、
終わりのないトンネルはないこと、
森の出口はどこかにあることを。
それは暗幕に開いた針の穴くらい
小さなほころびからひとすじの
光が射し込むように、私の心にさ
さやかな希望を与えてくれている。
だから思いきり孤独を味わえる
のかもしれない。そして味わえる
からこそ、いつか重なりのような
孤独の呪縛を振りはらえるのかも
しれない。