古い本棚を整理していたら、
昔の彼に借りた写真集が
出てきた。
表紙を開くと、二人で
見つけた葡萄の葉っぱ
がひらりと落ちた。
消えかけた思い出をか
ろうじて記憶していた
薄茶色の葉っぱ・・・・。
そうっと拾い上げようと
したら、掌の上で静かに
崩れた。
思い出に、さよならをした気がした。
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たまには、落語家のなりそこ
ないが小咄を・・・・、
桃太郎さんの話を知って
いますか?
ある日、おじいさんが山に
柴刈りに、おばあさんが川
に洗濯に行きました。
と、川上から大きな桃がドン
ブラコ、ドンブラコ。
家に持ち帰っておじいさんと
二人で大きな刀でタテに切ろ
うとすると、なかなか切れな
い。
「どうしたんだろう」
力をふりしぼっても、刀はくい
込んだままびくともしない。
よく見てみると、なんと桃太郎
中で両手をあわせ、真剣白刃取
りをしていたのだった・・・・。
こんなオチのつく話が好きなん
ですが、もう一つ。
一人の罪人が、刑務所で
「お前に三つの部屋を用意して
ある。一つを選んでそこで罪の
償いをしろ」といわれ、部屋を
みた。
一番目は火あぶりの刑の部屋。
熱くてとてもたまらない。
二番目は水ぜめ。これでは息
もできないというので、ここ
もパス。
三番目の部屋を見ると、もの
すごいにおい。なんと、コエ
ダメになっていたが、ここに
は人が多数いた。
首から上がコエダメから出て
いるだけだが、みんなのんき
そうにタバコまで喫っている。
タバコ好きなその罪人は、慣れ
ればにおいなんてがまんできる
と思い、迷わず三番目の部屋を
選んだ。
さて、自分も首までコエダメに
つかってタバコに火をつけよう
とすると、見張り番が来て、
「さあ、休憩は終わり。
みんな沈んで、沈んで」―--。
最後はきれいに謎かけを、、、
“
祝言の杯とかけて
狐の年始ととく
心は、こんれいだ “
お後がよろしいようで。
クローゼットの前に立って、迷う。
何を着ていこう、今宵の逢瀬
にふさわしい洋服は、どれ?
あれこれ取り出して、身に着けて
は、むしり取る。「これでよし」
と思った直後に「ああ、違う!」
とつぶやいて、また、一からや
り直し。
我ながら「馬鹿みたいだ」と思う。
この「ひとりファッションショー」
をやっていると、いつも、古い映画
『恋におちて』の中で、メリル・スト
リーブがデ・ニーロに会いに行くた
めに、ベットルームの鏡の前で洋服を
取っ替え引っ替えしているシーンを
思い出す。
想いを寄せている人の手で、あとで
脱がされるために着るドレスを選ぶ
・・・なんて骨の折れる、なんて心
心躍る時間。
さんざん迷った挙句、わたしが選ん
だのは、ラベンダー色のシルクの
ワンピース。胸もとと背中が大きく
開いている。アクセサリーは、何も
つけない。
このドレスにはなぜか、香水だけが
映る。ストッキングと靴は黒。バック
は濃い紫の薔薇の花を飾ったものに
する。
これで決まり。
彼が代官山駅に着くのは七時半
になるだろう。
電話がかかってきたのは、午後
四時二十分だった。
わたしはちょうど、今日の仕事に
一区切りつけて、そろそろ夕食の
支度にとりかかろうと思いながら、
受話器を取ると、彼の声が飛び込
んできた。
「夕方のアポがひとつ、急にキャン
セルになって今夜どこかで一緒に
食事をしよう。翔子の好きな店で
いいよ」
彼ったら、なんて、嘘が下手なの。
そんな見え透いた嘘をついて、ほ
んとに、可愛い人。
「了解。じゃあ、お店はわたしの
ほうで予約しておく」
彼はわたしが、もうすっかり忘れて
いると、思っているのだろうか。
忘れるわけがない。きょうが何の日か。
*
わたしはその日、ニューヨークに
向かう飛行機に乗っていた。今から
三年前のきょうだ。
あとはもう離陸をするだけ、という
状態になってから、大慌てで駆け込
んできたのが彼だった。
いかにも「ニッポンの企業戦士です」
といった風情の人、苦手なタイプだ、
隣の席に来なければいいけれどと、
思いながら眺めていると、案の定、
客室乗務員が彼の搭乗券を見ながら
指し示したのは、わたしの隣だった。
彼とは笑顔と目配せでわたしに挨拶
をしてから、窓際の席に腰掛けた。
笑顔はなかなか素敵だ。と思った。
でも、それだけ。
食事が終わり、映画の上映が始ま
った。
いかにも飛行機の中で上映される
映画としてふさわしい、他愛のない、
犬猫の冒険物だった。
かずかずの危険と困難をかいくぐ
って、最後には無事に自分の家ま
で戻ってくる、そんなストーリーだ。
やがて、クライマックスがやって
きた。今でも、わたしはあの「場面」
を思い出すと、頬がゆるんでしまう。
背景は、機内の暗闇。登場人物は、
頭の切れる辣腕ビジネスマン。そ
してわたしが目にしたのは、彼の
頬を伝う、ひとすじの涙だった。
彼は泣いていたのだった。動物たち
が飼い主と再会する感動の場面で。
なんて可愛い人なの!
忘れもしない、彼を好きになった
のは、その瞬間だった、恋の神さま
がわたしのために、彼の最も愛され
るべきチャームに、ぱっと光を当てて
くれたんだと思う。
今から三年前に、この、広い広い、果
てしない宇宙の中で、混沌とした世界
の中で、わたしたちは巡りあった。
きょう六月1日は、ふたりの
恋の誕生日
電車はあと五分もすれば、到着
するだろう。思い切りお洒落し
た彼は、きっと、深い紫色の
薔薇の花束を手に電車から降り
てくるだろう。
駅から出て、わたしを探す彼の姿が
見えたなら、わたしはまっすぐに
駆けて行く。
世界で一番愛している。
世界で一番素敵な人の、
両腕に抱かれるために。
星と星のあいだにあるのは
まっすぐなくらやみではな
くて
ただ見えないだけでたくさ
んの星
まっくらやみのように見える
夜空は
無数の星で満ちている
からかわれているようなたよ
りない私たちの
人生は
風に吹かれる木の葉のようで
それは あの夜空からとても
遠い
けれどそれは確かにあの夜空
の中にあって
どこかからきっと
あの夜空などと呼ばれている
新しいハイヒールを履いて
買い物に出かけたら、
突然、雨が降り出した。
ひとりで、雨宿り。
最悪の土曜日。
しょんぼりしていると、
目の前で車が止まり、
私を呼ぶ声がした。
それは、前からちょっと
気になっていた会社の先
輩だった。
「どこかまで、乗っけて
ってあげようか」
※僥倖:思いがけない幸福。
これさいわい。