白妙のシルクのワンピースの胸に、
かずみ草のコザージュを飾った
彼女は、心なしかふっくらと
した頬を桜色に染めて、ふわふわ
と幸せそうに見えた。
桜の季節に、悲しい目的で、わたし
の部屋に泊まりにきた彼女。
あの夜、ふたりとも寝たふりをして
いたけれど、わたしには、わかって
いた。
明け方近くまで、彼女が肩を震わせ
て、泣いていたこと。
あの夜から三ヶ月が過ぎて、
「燃えるような恋じゃないんだけど、
静かに受け入れて、育てていく恋も
あるのね。彼は追い求めなくても、
いつもそばにいてくれる人、
恋焦がれなくても、そばにいてと
願わなくても、手を伸ばせばすぐ
届くところに、いつもいてくれる
人なの。裕子ならきっと、
こんな気持ち、誰よりもよくわか
ってくれるでしょ」
「うん、わかる。佳代ちゃん、よ
かったね。ほんとにほんとによか
ったね」
新しい恋に巡り会ったことを、佳
代子は電話で伝えてきた。
愛は穏やかで、身近にあ
って、日常的なもの。
それでいて。超然としてて、途
方もなく強いものなのよ」
目の前のシャンパングラスを手
に取り、わたしは一気に飲み干
した。
わたしの愛は――――
愛は、どこにあるのだろうと
思った。
YouTube
海を見ていた午後
https://www.youtube.com/watch?v=TSItLSHG0bQ
かずみ草のコザージュを飾った
彼女は、心なしかふっくらと
した頬を桜色に染めて、ふわふわ
と幸せそうに見えた。
桜の季節に、悲しい目的で、わたし
の部屋に泊まりにきた彼女。
あの夜、ふたりとも寝たふりをして
いたけれど、わたしには、わかって
いた。
明け方近くまで、彼女が肩を震わせ
て、泣いていたこと。
あの夜から三ヶ月が過ぎて、
「燃えるような恋じゃないんだけど、
静かに受け入れて、育てていく恋も
あるのね。彼は追い求めなくても、
いつもそばにいてくれる人、
恋焦がれなくても、そばにいてと
願わなくても、手を伸ばせばすぐ
届くところに、いつもいてくれる
人なの。裕子ならきっと、
こんな気持ち、誰よりもよくわか
ってくれるでしょ」
「うん、わかる。佳代ちゃん、よ
かったね。ほんとにほんとによか
ったね」
新しい恋に巡り会ったことを、佳
代子は電話で伝えてきた。
愛は穏やかで、身近にあ
って、日常的なもの。
それでいて。超然としてて、途
方もなく強いものなのよ」
目の前のシャンパングラスを手
に取り、わたしは一気に飲み干
した。
わたしの愛は――――
愛は、どこにあるのだろうと
思った。
YouTube
海を見ていた午後
https://www.youtube.com/watch?v=TSItLSHG0bQ