桜の腹黒日記

ヲタ日記。毒吐きまくり。嫌な方は回れ右!責任は持てません!
…更新不定期中。遡ってふいにアップしてたりします。

丕緒の鳥

2013-08-03 | TV・映画・本・音楽

「丕緒の鳥」 小野不由美

なかなか時間とれず、短編集ということもあってちょっと放置してましたが……
読み始めたら一気でした。
半身浴しながら読んはじめ、結局読み終わるまでお風呂からでれなくて2時間半くらいはいりました。


一言「圧倒的」

面白いのはもちろんです。
今回の短編集にほぼ王や麒麟は出てきません。
派手な話もない。
なのに、面白い……いえ、面白いというのは正しくないかもしれないです。
読むのを止められない。
久しぶりの新作に、改めて”十二国記”世界のすごさを実感しました。
その世界感に鳥肌なくらい圧倒されました。
作者はいったいどこまでこの世界を創造してるのか。
趣味とはいえ、小説もどきを日々書いている身としては読めばよむほどそのすごさにただただ気が狂いそう。
まず単語、そして地理に、理、階級、行事……
この膨大な量をどうやって整理して管理しているのか
彼女の頭の中は、ほんとどうなってるんでしょうか?

4編とも空気感としては淡々と進んいくのですが、漂う空気とは反対に内容は熱かったり、苦しんでいたり…
本当に名はなくても、たくさんの人々がそれぞれの想いを抱えて、時には苦しみ、時にはささやかな幸せを感じながら”生きている”と思いました。
本の向こうに人が生活を営んでるリアルな世界があるのだと。
またでてくる人たちの思うことが、いまを生きてる私たちとなにもかわらなくて、だから共感もできるし、よりリアルに感じる。
小野不由美、本当、すごい。

「落照の獄」はいまの日本と共通するものがあって、ぞっとしました。狩頼のあのどこまでも利己的な、あきらめきってる考え方。いまの日本でも狩頼が起こしたような犯罪が増えてる気が…。すぐ隣にある恐怖のようで怖い。…ただ私はもし身内をこの男に殺されたのなら金を払ってでも生かし続け生き地獄を味あわせたいわ。死んで終わりなんて許せない。

「青条の蘭」…泣きました。人の絆に感動したというよりは、途中から標仲の必死さに引きずられてハコを他人に任せることになってしまって自分の責任を果たせなかったと打ちひしがれる様やその無念さ、パンパンに腫れ上がった手足や情けなさ…胸に来て一緒に泣いてました。しかもこの物語、結局役人の手にまで届いたか書いてないんですよ!そこがまたうまい。くそ~

「風信」これはまさに上の都合をわからず、それに振りまわされる民の姿。自分たちのできることで、民を守ろうとする官使たちの姿。この不条理で理不尽な世界。なんと理不尽で不条理な世界。なぜ、小野不由美はこんな世界を創りだしたのか?巻き込まれる民たちを読むたびに考えてしまう。…でも実際の世界もまさに理不尽で、不条理。だからこそ共感してしまう。

「丕諸の鳥」すべての想像が追いつかない!羅氏という職種も、大射という儀式も。なんでこんなこと思いつくの!?とひたすらにやられる。赤い玻璃で埋め尽くされた庭を想像して、その美しさと恐ろしさに震えた。なんと美しく、そしてなんて残酷な光景。そして射抜かれた鳥からさらに小鳥が生まれ、消えてゆく…なんて美しい。


「……胸が痛むほど美しかった」


陽子の言葉がまさに、この物語、そして小野不由美が生み出す十二国記という世界を現してると思います。



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