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月の裏側〜reprise〜

捻くれ者が音楽を語ったらどうにも収拾がつかなくなった件。マニアックな作品紹介と自分自身の音楽関係の思い出話を中心に。

NO.298 PANTA&HAL「1980X」

2025-02-26 01:12:25 | 頭脳警察、PANTA関連

 PANTA&HALの演奏面を支えていた今剛さんは、1979年5月の日比谷野音のライブをもって、脱退します。

そして『日本のTOTO』とも言われたフュージョン系のスーパーグループ『パラシュート』を結成します。

実力があっただけに、自分のグループを持ちたいと思ったのは仕方ないでしょう。当時はまだ20歳ぐらいの若さでした。

喧嘩別れではなく、円満に脱退したようで、後のレコーディングにも顔を出したといいます。

 

 

これは、今剛さんと松原正樹さんのツインギターが素晴らしい曲です。

因みにプロレスラーの小橋建太さんのテーマ曲としても使われました。

 

 メンバーもベースの村上元二さんも脱退、ギターに長尾行泰さんが加入。(後にイルカさんのサポートメンバーとして活躍)、

ARBのサンジも一時期加入しています。そして以後もPANTAのバックで活躍する中谷宏道さんがベースを任せられます。

(HAL解散後は、甲斐バンドのサポートに参加もしています)そんなメンバーチェンジもあって製作されたのが『1980X』です。

プロデューサーは前作から引き続き鈴木慶一さんです。

『1980X』は、『マラッカ』と並んで日本ロック史上の傑作のひとつと言われますが、印象は全然違います。

『マラッカ』が南の海を連想するような、情熱的で人間臭さを感じるようなイメージなのに対し、

『1980X』は、最初はX-DAYをテーマに考えていたような不穏な感じで、最終的には東京をテーマにした機械的でシャープなイメージです。

どちらのアルバムも、それぞれの良さは感じられます。

言ってみれば、『マラッカ』は柔道家時代の小川直也さん。少々ぽっちゃりした感じです。

対して『1980X』は肉体改造した総合格闘技時代の小川直也さんですね。体を絞って引き締まった感じです。わかりにくい例えですみません。

 兎に角、『1980X』は、ソリッドでタイトな感じのアルバム。『モータードライブ』、『Audi80』、

『オートバイ』といった機械的なものを歌ったものが多いから、そう感じるかもしれません。

そして硬派な感じのものも。世界初の試験管ベビーをテーマにした『ルイーズ』の冒頭のギターのインパクトは凄いです。

 

 

『Audi80』は、雨の高速道路を走る車をイメージしていますが、ラストの方での『強風波浪注意報』のコーラスはPANTAらしいものです。

これをカッコよく歌うとは流石のセンスだと思いました。

 

 

 

『1980X』は東京をテーマとしていますが、この頃は何故か他のアーチストも東京を扱うものを演奏していたりします。

例えば遠藤賢司さんの『東京ワッショイ』、近田春夫&ハルヲフォンの『電撃的東京』、

フリクションやリザードが中心となっていたムーブメントである『東京ロッカーズ』等。

そして一番有名なのは、沢田研二さんの『TOKIO』ですね。

PANTA&HALも自分達を紹介する時には、『東京ローカルロックンロールバンド』と言っていました。

 

 

 

 余談ですが、この時期のPANTAのアルバムのジャケット写真を撮影しているのは、世界的なカメラマンの鋤田正義さん。

日本のロックだけでなく、Tレックスのマーク・ボランの写真や

デヴィッド・ボウイのアルバム『ヒーローズ』のジャケット写真を撮影している人です。

鋤田さんのドキュメント映画が作られた時は、PANTAはトークセッションにも参加しています。

この当時は、こんな映画が作られているのを知りませんでした。スクリーンで見たかったなぁ。

 


NO.297 映画「ブルースの魂」 

2025-02-23 00:19:14 | 映画

2025年は、偉大なるブルーズシンガーである、B.B.キングの生誕100年に当たる年になるそうで。

それを記念して、この映画が日本でも上映される事になったようです。2022年の2Kレストア版となります。

実はアメリカでもずっと公開されていなくて、2024年に初めて劇場公開された様です。実際にこの映画が製作されたのは、

もう50年以上前の事になります。

 

 

予告編を見る限り、70年代のB.B.キングやバディ・ガイの演奏を楽しめるドキュメントかなと思っていたのですが、

実際に見てみたら、ちょっと思っていたものと違っていましたね。

最初は刑務農場で働く受刑者が歌う労働歌としてのブルーズが収められていて、ブルーズの歴史を統括するものかと思っていたのですが、

何故か、だらしない男とそれに翻弄される女のドラマみたいなものが始まって、何だこれはと思ってみたり。

それでいてブルーズのアーチストのインタビューや演奏が所々に挿入されてくる感じですね。

B.Bキングやバディ・ガイ以外では、ジュニア・ウェルズの名前ぐらいしか知りませんでしたが、

有名だろうブルーズのアーチストの演奏が聴けるのは嬉しいですし、自分にとっては、新たな発見もあったりしましたね。

そういった点は良かったのですが、ドラマパートが必要以上に時間を割いていて、しかもイマイチつまらないと感じたのは、

自分にとっては大きな減点でしたね。かなり印象が悪くなった感じです。作られたのは古い時代でしたので、

このような作りとなったかもしれませんが、ブルーズのドキュメントに特化してくれたらなぁと、勝手に思うのでした。

B.Bキングもいい演奏だったのに、少ししか見れなかったのは、やっぱり不満ですね。70年代の映像がレストアされて画像としては問題ないだけに、

う~ん、やっぱり勿体ないなと。

 

 

そしてバディ・ガイも同様に演奏は少なめでした。60年代半ばとかは、ロックのアーチストが大きくブルースの影響を受けていましたが、

70年代だと、その影響は以前ほどではなかったかもしれませんね。

 

 

出演しているブルーズのアーチストたちの演奏が良かっただけに、イマイチ必要性を感じなかったドラマパートのせいで

後味が悪くなったのは、勿体ない気がします。ブルースをもっと堪能したかったなぁというのが、正直な感想です。

 

 

口直しというか、昔、バディ・ガイが日本のテレビ番組で演奏したものを観たくなりました。

浪曲師でありながら、三味線でロックな演奏をする国本武春さんとの共演は、見応えがありました。

50代という若さで亡くなった国本さんは、やはりもっと長生きしてもらいたかったなぁと。

B.Bキングと同じく、亡くなってもう10年になろうとしているんですね。話が横道に逸れました。すみません。

 

 


NO.296 最近のAI事情について

2025-02-17 00:30:51 | 音楽雑学

これまで何度かAIについての記事を書きましたが、最近のAIを使った音楽ソフトの性能が凄かったりします。

SUNOというソフトですが、機能制限があるものの、無料版なら1日5回まで曲を作ることが出来ます。詞は自分で用意しなければなりませんが、

一応、AIにて作ってもらえることも可能です。詞とどのような感じで作ってほしいかを入力すると、曲がすぐに出来上がります。

無料版なら5分弱のものしか作れませんが。まだ課題もありますが、凄い勢いで進化していますね。

 

最近は、こういったソフトを使って色々なものが作られています。以前紹介したのは、アーチストのデータを勉強させて、新曲を作るというのがありましたが、

今回紹介するのは、あり得ないアレンジで作ってもらうというものです。例えば、レッド・ツェッペリンが50年代に作品を出していたらというものです。

 

 

メロディが別物で作られているので、違和感はあるかもしれませんが、成程、雰囲気は出ていますね。これはこれでアリかも知れません。

こちらは、ビックバンド風のツェッペリン。まぁ意表はついていますね。後は好みの問題ですね。モータウン風とかジャズ風もありました。

 

 

絶対あり得ないと思えるのが、レゲェ風のドアーズ。他にもカントリー風のメタリカもありましたが、ここまで来ると一発芸に近いものが……。

 

 

 

ただここにきて、生成AIに関する規制をどうするのか、日本でも動きは出て来ています。ただ、まだ日本は海外と比べると

大きな問題化とはなっていない感じです。AI法案とかの議論はありますが、罰則とかないような感じですので。

自民 AIによる権利や利益侵害発生で国指導など法案 会議で了承

 

最近、話題になっているのは、中国の「ディープシーク」というAIに関する問題とか。

ディープシークの何が危険なのか 使う前に知っておきたい注意点

 

生成AIに関する問題点としては、著作権で保護されたものを使って学習しているのでは?といったものもあります。

どのようなものを使って学習しているかなんて事はわからないですので、むやみに生成AIを使うべきではないという考えの人も

いるというのも事実です。こういった点の議論も進んでいくとは思いますが、なかなか難しい問題です。

 

また、イーロン・マスク氏の動きにも注目が集まりました。

イーロン・マスク氏 オープンAIに買収提案 米紙が報道

 

この辺りの問題も、一筋縄ではいかない気がします。オープンAI側も営利目的へと方向転換との事もありますので。

自分としても、オープンAIがどのような組織なのか、まだしっかり理解していないので、この辺りはもう少し調べていきたいです。

 

AIに関しては、精度も高くなっていることも事実ですね。実際、この前のアメリカ大統領選挙でも、AIによるフェイク映像や音声での

妨害活動も報道されています。

生成AIによる偽動画、選挙前に日米で拡散…「欲まみれの落選必須議員」「トランプ票破棄」

 

日本でも、災害発生時等に偽情報も出回った事もありますし、こういった事が続く事で、大きな規制が出来る事になるのでしょうね。

そして、今のAIがどのくらい精度が高いのか、ちょっとした例を挙げておきます。今後は見れなくなるかもしれませんが……。

AIに、実際には絶対あり得ない事をさせるというのが、一番面白い使い方かもしれません。

最近見た中で一番インパクトがあったのが、クィーンのフレディ・マーキュリーの声を使ったものですね。

フレディの特徴のある声は、AIとの相性がいいからだと思います。

例えば、井上陽水さんの「少年時代」を歌ったもの。違和感がないのに驚きました。

 

 

そしてこれは凄いと思ったのが、某日本のアニメの主題歌を歌ったもの。組み合わされた映像とのシンクロ率も高く、

AIの表示がなければ本物と信じてしまいそうです。絶対、演奏することがあり得ないものですけどね。

 

 

ちなみに昔は、そっくりさんが歌って合成したりしてましたね。こんなCMもありました。

 

 

とはいえ、AIの精度がここまで上がって来ると、声優さんやイラストレーターさんの仕事が奪われるんじゃないかっていう危惧が出てくるというのも

納得出来る話ですね。今後の動向にも注視していきたいと思います。

 

最後に、AIとは関係ないですが、AIを使用しなくても工夫次第ではインパクトのあるものが作れるという話も。

雅楽の東儀秀樹さんによる、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」のカバー。

流石に雅楽の楽器のみでの演奏は無理でギター等も使用していますが、全て一人で演奏の多重録音。

AIに頼らなくても、こういった素晴らしいものがありますので、探すのが面白いんですよね。

 

 


NO.295 裸のラリーズ「屋根裏 Sept.’80」

2025-02-11 00:43:34 | サイケデリック

自分は、裸のラリーズの発売予定とかは書くのですが、作品のレヴューについては、なかなか書きづらく思っています。

ノイズが主体の為、自分にとってはいいと思っていても、人によっては抵抗があると思いますので。

いや、寧ろ抵抗があると感じる人の方が大多数とは思いますが。それでも日本のロックの裏の部分では、

欠かせない重要なグループとなりますので、全くの無視は出来ないでしょう。

 

今回、紹介するのは、1980年9月11日、渋谷屋根裏におけるライブ音源です。1980年と言えば、

ダイナマイツ、村八分、ティアドロップス等で有名な、山口冨士夫さんが在籍していた時期となります。

水谷孝さんと山口冨士夫さんによるツインギターが聴けたのは、ほんの限られた時期となりますので、非常に貴重なものとあります。

とはいえ、昔からファンの間にて、比較的音質の良い隠し撮りの音源は流通したりしていましたし、海外では海賊版が出回っていたりもしていますが。

 

山口さんが所属していた時の音源に関しては、1980年10月29日の渋谷屋根裏の音源が先に2枚組で発売されていますが、

今回はこれに続くものとなります。山口さんが所属した時のライブは、僅か7回のみだったといいます。

ライブの回数は多くはなかったのですが、国立に出来たばかりのマーズスタジオでは、練習は続けられたようです。

当然、録音されているものもあったようです。今回のアルバムは、データが不明だというものが発見され、

マーズスタジオでの録音に間違いないという事で発売の予定でしたが、マニアの人が試聴用テープを聴いたところ、

1980年9月11日の渋谷屋根裏でのライブではないかと指摘されたそうです。ライブ会場でミキシングボードから

ラインケーブルでレコーダーに送られたものではないかと推測されます。素人からの目からにしても、スタジオで録音されたものは、

しっかりデータを記録していると思うわけで、何だか不可解な話だと思ってみたりはしていますが。

 

とはいえ、山口さんが在籍した時代の貴重なライブ音源、それも録音状態がいいものは販売に値すると思いますね。

40分強と、完全収録でないのは残念ですし、「THE LAST ONE」も、フェードアウトするのも残念だったりします。

じゃあ聴く価値はないのかというとそうではなく、山口さんが一緒に演奏していた時でないと出せなかった音もあるわけで、

テンポがアップした演奏は、幽玄な感じの演奏とは、また違った魅力があると思います。

裸のラリーズの音源を載せる事は少ないのですが、この時の「夜、暗殺者の夜」は、他の時期と比べて、かなりテンポが速くなっています。

ノイズも少なめとはいえ、一般的とはいえないので少々抵抗がありますが……。

 

 

今後の裸のラリーズ関連の発売に関しては未定のようですが、録音されながらも未発表のスタジオ録音関連を発売してほしいものですね。

発売には、まだ時間がかかりそうですが、納得のいくものが発売されれば、文句はないですけれど。

 


NO.294 「時代はサーカスの象にのって」

2025-02-05 00:32:28 | 頭脳警察、PANTA関連

2月5日は、敬愛するPANTAの誕生日だった日です。この日は、PANTA、頭脳警察に関する事を何度か書いていますが、

今年もまた書かせていただきます。今回は、PANTAの音楽人生の後半における重要な曲である

「時代はサーカスの象にのって」についてです。

 

「時代はサーカスの象にのって」は元々は、寺山修司さん主催の天井桟敷のこけら落とし公演のタイトルです。

当初は「時には母のない子のように」がヒットしていたカルメン・マキさんも出演していたそうです。

観客参加型の演劇で、1年間のロングランとなっています。

 

寺山修司さんが亡くなった後、1984年に一周忌公演として「時代はサーカスの象にのって’84」が上演されています。

なお、この時の音楽担当は、ムーンライダースの鈴木慶一さんでした。PANTAと縁の深い人が、ここでもシンクロしています。

(後年、この時のサントラがCD化されたようですが、これは未聴です)

 

その後2002年に、高取英さんが主催の月蝕歌劇団により、「時代はサーカスの象にのって2002」が上演されます。

この時の公演は、高取瑛さんが元々の天井桟敷の演劇を編集し直したものとなります。

そしてこの時の音楽を担当したのがPANTAだったわけです。「時代はサーカスの象にのって」の曲は、最初は、

この時の演劇用の曲として作られたのでした。元々は色々な所に散らばっていた詩を、高取英さんが編纂し、一部修正した感じになりますね。

作詞に寺山修司、高取英となっていたのは何故かというのは、長年の疑問でした。しかしながら昔買っていたPANTAの自伝である

「歴史からとびだせ」のDVD付きの復刻版の追加のインタビューに経緯が語られていました。読んでいたと思うのですが、記憶に残っていませんでしたね。

この演劇では、月蝕歌劇団だけでなく、制服向上委員会のメンバーも参加しています。PANTAが月蝕歌劇団と、

どういった経緯で関わるようになったかはわかりません。制服向上委員会との関りも、この辺りから始まったのかもしれないですね。

制服向上委員会も、当時この曲を歌っていましたが、寺山さんの詩を若い子が歌うのは、何となく違和感を感じたりはしました。

 

 

この曲の出来が良くて、演劇だけで終わらせるのは勿体ないという事で、PANTAもライブで演奏してきたのですが、

2008年に頭脳警察としてのシングルとして発売されています。PANTAは自伝の中でヒットさせたいとは言っていましたが……。

 

 

実は、その前に映画「キャプテン・トキオ」の挿入歌として発表されていたりします。元々この映画は、頭脳警察の音楽をサントラに使用していて、

「さようなら世界夫人よ」を使う予定があったのですが、著作権の関係で難しいという事で、ならいい曲があると、PANTAが提供したものです。

ただ当時は、制服向上委員会が歌った音源しかなかったので、急遽、アコースティックギターのみで演奏したものを録音をして使用されています。

これが録音したものでは初のものとなりますね。

 

 

その後は、ライブ等でも演奏され続けていて、アルバムにも何回も収録されています。このライブアルバムでは、寺山さんの詩である「アメリカよ」を

PANTAが朗読してからの演奏となります。

 

 

頭脳警察以外でも、澤竜次さん(50周年頭脳警察のメンバーですが)とのユニットである隼での演奏もあります。

澤さんはPANTAのお気に入りだったようで、「ライブ葬」の元ネタでもある「会心の背信」でのライブにも

PANTA、トシのバックに参加してもいます。

 

 

頭脳警察最終作である「東京オオカミ」にも収録されてもいるのは、これからの世代にも歌い続ける事を願ったからでしょうか?

それはどうかはわかりませんが、これからも歌い継がれていってほしい曲であることは間違いないですね。