「赤い指」(東野圭吾著)
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「長年連れ添った夫婦というのは、傍では理解できないような絆で結ばれているものです。だからこそ、過酷な介護生活にも耐えられるわけです。逃げだしたいと思うこともあるでしょうし、早く逝ってくれないかと考えることだってあると思います。でもね、実際にその時になってみると、必ずしもほっとするだけではないようです。介護生活から開放されると、今度は強烈な自己嫌悪に襲われることもあるそうです」
「・・・・・といいますと」
「もっと何んとかできたんじゃないか、あんな最期を迎えさせてかわいそうだったとか、自分を責めるんだそうです。ついにそれが原因で病気になったりもする」
「うちの母も、それが原因であんなふうになったとおっしゃりたいわけですか」
「それはわからない。ただいえることは、老人の内面は極めて複雑だということです。自分の死を意識しているからこそ余計にね。そんな老人に対して我々が出来ることといえば、彼等の意思を尊重するぐらいしかない。どんな馬鹿げて見えることでも、本人にとって大事なことだったりするんです」
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中学生の息子が、自宅で小学生の少女を殺害してしまい、その罪をボケたと思っていた母親の仕業にしようとしている時の、刑事との会話です。
私も涙が出ました。加賀刑事の「介護生活から開放されると、今度は強烈な自己嫌悪に襲われることもあるそうです」。。。この言葉が胸に突き刺さりました。。。