「夜明けの街で」(東野圭吾著)
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不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。妻と子供を愛しているなら、それで十分じゃないか。ちょっとした出来心でつまみ食いをして、それが元で、せっかく築き上げた家庭を壊してしまうなんて愚の骨頂だ。
もちろん世の中には素敵な女性ははたくさんいる。僕だって、目移りしないわけじゃない。男なんだから、それは当然のことだ。でも目移りするのと、心まで奪われるのはまるで違う。
不倫が原因で離婚して、慰謝料代わりにマンションを奥さんに取られ、おまけに子供の養育費まで払わされている人が、ついこの間まで社内にいた。その人は慣れない独り暮らしのせいで体調を崩し、ついにノイローゼ気味になって、ついには仕事でとんでもない大失敗をやらかした。その責任を取る形で彼は会社を辞めたわけだけど、離婚の原因となった相手の女性とも、結局結ばれなかったらしい。つまり彼はすべてを失っただけで、何ひとつ手に入れられなかった。彼は夜毎、安いアパートの天井を見つめて、一体どんなことを考えているんだろう。
もう一度いう。不倫する奴なんて馬鹿だ。
ところが僕は、その台詞を自分に対して発しなければならなくなった。ただし、その言葉の最後に、こう続ける。
でも、どうしようもない時もあるーー。
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この小説の冒頭の文章です。 東野圭吾さんの本は、息子が好きなようで何冊も部屋にあります。私は適当に借りて読んでいるのですが、この「夜明けの街で」とうい本は、なかなか意味深です。
不倫と言うのは、一種蜜の味がするのでしょうが、私は一つの犯罪だと思っています。当人同士は最初は良いでしょうが、どれだけ家族を苦しめるか、そして自分も相手も傷つける。。。嘘の世界に入って行かなければなりません。
「でも、どうしようもない時もあるーー。」 それも分かる気もしますが、その時は覚悟を決めていなければなりませんよね。