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太鼓の音よ、未来へと響け

2014-06-09 23:53:39 | 学びの場
 ようやく、念願の響スタジオへ。埼玉県本庄市児玉に、太鼓集団響の新スタジオがオープンしてはや、1年以上がたった。うんと地域色豊かな土地ではじまった地域とのつきあい。広い敷地にスタジオばかりでなく居住空間・畑をもってすごす新たな暮らし&働き方の模索。スタジオを構えるというのは、単に練習場所ができたという以上の、大きな転換点だったと思う。
 なのでそのスタジオ、なんとか木の香かぐわしいうちにたずねたかった。けれどなにせ本庄は群馬との県境、九州からはそう簡単にたずねられる場所ではない。なかなか機会がなかったのだけれど、今回、フィンランド視察旅行で友人になった京都ユースワークのyokoeさんと一緒に、ようやくおたずねするチャンスを得た。「月あかりの下で」の太田直子監督もご一緒というスペシャルさだ。

 19時すぎに迎えにきてくれたプレイヤー・学さんの運転でスタジオに到着すると、まずは食でおもてなしいただいた。いま手製でさばかれた輝かんばかりの刺盛り、寿司、からあげ…と出される一皿一皿に、学くんやメンバーみんなの歓迎の気持ちが伝わってくる。
 そして練習風景がみられたらうれしいなとは思っていたが、彼らが用意してくれていたのは「ミニコンサート」だった。なんと夜10時近くから、90分近くのライブを聞かせていただいた。(フツウ、あり得ない。完璧な防音システム、しかしそれでも音はもれる。近所がかなり離れていること、また日々ご近所さんといい関係を築いているから可能になっているのだと思う)
 
 ステージディレクターの平野先生は、来年、英国エディンバラ・フリンジへのチャレンジを考えている、という夢を語ってくださった。今年東北・北海道をめぐり、鎮魂と祈りへの太鼓へ挑戦する。その一年をくぐりぬけて、海外へ、という構想だ。太鼓でプロに、という夢、そこをぶらさずに、可能性を多方面から模索しチャレンジをかけるのがディレクター平野先生のすごいところ。この太鼓がエディンバラの路上へ…と思って聞いていたら、以前より一層、目の前の私たちに語りかけてくる応答的な太鼓に変化していることに気づいた。

 一年一年、響メンバーはどんどんたくましくなっていく。練習時間の増加がてきめんなのか、学さんの体つきが鋼のようにたくましくなっていた。新入なっちゃんの太鼓は私にさえわかるほどにうまくなっていた。甘えん坊なのに、ステージにたつと真剣。そのギャップが彼女の魅力。呼応してめぐちゃんはお姉さんポジションへ。仲間たちの人生を受け止めながら、めぐちゃんの包容力が太鼓にうつっていた気がした。
 少し会わないうちに、彼らの人生もどんどん新しい展開をみせていく。おととし、彼らを福岡・九大に迎えるとき、響の太鼓を、彼らの今そのものとして紹介するのか、不登校・困難な青年期をこえてきた太鼓として紹介するのか、こちらの学生や学さんも交え、あれこれ議論したことを思い出す。けれどいま、そんな議論が懐かしく思えるほどに、彼らの太鼓をもはや太鼓そのものとしてしかうけとめていない自分に気づく。彼らが太鼓そのものに真摯にむきあっている、その時間の経過がきっと私の聴き方をもすっかり変えてしまったのだろう。
 太鼓の音よ、響け、未来へ!