現生と化石大型哺乳類、美術、英語 etcについて気ままに書/描き連ねているサイト(アナログの絵&リサーチブログ)
the Saber Panther



            

★The GreatAmericanInterchange


新生代の歴史の大半を通じて南米大陸は他大陸から孤立した状態にあった
め、異節類、オポッサム類、南蹄類や滑距類など、この島大陸に固有の多様な種が
生れ、繁栄していた。げっ歯類(後期・始新世)や霊長類(漸新世)の一部がアフリカ
から流木に乗るなどして大西洋上を漂流、南米にたどり着き、それぞれテンジクネズ
ミ小類と広鼻猿類(新世界サル)に進化したといった例もあるが、本格的に南米の生
態系が他へと開かれることになるのは、鮮新世も後半に及ぶまで待たねばならなか
った。

およそ270万年前にパナマ地峡が形成されて南北アメリカ大陸間をつなぐと、堰を切
ったように、動物たちの怒涛の大陸間移動が始まる。これが〝The great
american interchange
(※アメリカ大陸間大交差(これは管理人の独自の翻訳であり、
正式和名は依然不明)"で、長く隔絶状態にあった二つの大陸の動物相が、突如交流した
際、いかにして適応、競争、そして絶滅のドラマが繰り広げられたかをまざまざと示し
てくれる点において、動物地理学(Zoogeography)的に極めて重要な出来事である。

はたして、アメリカ大陸間大交差(GAI)が両大陸の生態系に及ぼした影響というの
は、極めてアンバランスなものだった。

南米からパナマを越えて北上し得たのは、地上性ナマケモノ、グリプトドン、アルマジ
ロ、ヤマアラシ、カピバラなどわずかに8属の固有種のみであったが、Webbによる
と、北米からは実に15科、29属の哺乳類が南米に進出し、生態的にも支配的な地位
を獲得していった。鮮新世の終盤(ウクイアン期)に南米固有種の大規模な絶滅-
実に81%の科と83%の属が滅んだ-が引き起こされたのは、北米種との厳しい競
争にさらされた結果であると考えられている。

North American invasions of South America
(今日南米に生息する全哺乳類の40%の科と50%の属が、GAIの頃に北から移住
してきたものたちの子孫である。)

スミロドン Smilodon populator                                    ジャガー Panthera onca


アルクトテリウム
(南米ショートフェイスベア) Arctotherium brasilense

メガネグマ 
Tremarctos ornatus

           

フォークランドオオカミ 
Dusicyon australis  

カニクイイヌ Cerdocyon thous 
(現在、イヌ科14属のうち6属が南米に生息しており、これは他の大陸と比べて最も
多い数になる。)


Image: Wikimedia commons
ハナグマ 
Nasua nasua


Image: Wikimedia commons
ベアードバク Tapirus bairdii         ヒッピディオン Hippidion saldiasi 


ラマ
 
Lama glama


ステゴマストドン 
Stegomastodon platensis
(GAIで南米に移住した長鼻類は、ステゴマストドン属の他にキュヴィエロニウス属の
みで、ともにゴンフォテリウム科のゾウである。かつてチリで産出しマストドンのもの
だと考えられた骨格も、現在ではキュヴィエロニウスであったことが分かっている。)

 

南蹄類、滑距類といった南米に固有の有蹄動物はトクソドン科、メソテリウム科、ヘ
ゲトテリウム科、マクラウケニア科の一部を除きその大半が絶滅してしまった。

南蹄目  滑距目 Notoungulates, Litopterns
(南蹄類ではトクソドン、滑距類ではマクラウケニアの知名度が比較的高いが、これ
らのグループは他にも、例えばウマ属の様に一本指のソアテリウム、有角で体型ま
でサイによく似たトリゴドン、カリコテリウムに瓜二つのホマロドテリウムなどなど、
斂進化の好例というべき多くの興味深い種
を輩出している。南蹄類、滑距類共
に、その起源は後期・暁新世に顆節目から分化したのが始まりだとされている。)

異節類(貧歯類)の多様性も地上性、樹上性ナマケモノの数属、アリクイ、アルマジ
ロ、グリプトドンの一部を残して、著しく縮小してしまった。それでもこれらが意外にし
ぶとく繁栄し続けることができたのは、甲羅のような装甲板や鋭い爪、圧倒的な巨体
などを有し、対肉食獣の防衛力に優れた種類が多かったためだと考えられる。加え
て異節類の多くは基礎代謝率が低く少量の食物摂取でも生きていけることが、有利
に働いたのかもしれない。

Image: Hunadam(Wikimedia commons)
グリプトドン Glyptodon asper


ジェファソン・スロース
 Megalonyx jeffersonii
(地上性ナマケモノの一種、ジェファソン・スロースはユーコンやアラスカにまで分布
域を拡大しており、もし更新世絶滅に阻まれることがなければ、そのままユーラシア
まで到達していたかもしれない。その適応力の高さは、北米に渡った南米組の中に
あって突出していたといえる。)

アフリカ起源のげっ歯類と新世界サルの大部分はGAIを生き延びた。また、オポッサ
ムなど小型の有袋類も驚くほどの高い競争力を見せた。

しかし最も壊滅的なダメージを被ったのは、ティラコスミルスやボルヒエナといった肉
食性の有袋類であろう。彼らはサーベルネコを含む有胎盤類の肉食獣に早々に
その地位を奪われてしまった。

※ティラコスミルス科やボルヒエナ科などSparassodon類は、真正の「有袋類」には含まれないとする説が主流になってきている。


ティラコスミルス Thylacosmilus atrox
(Aleksandraさんがロンドン自然史博物館で撮ってきてくれた、貴重なティラコスミルス
atrox
の頭骨写真。頭骨長との相対的な比では、ティラコスミルスの犬歯の長さはバ
ルボウロフェリスをも上回るという説があるようだ(これを見ればその説にも頷けるというもの)。


Image: Wikimedia commons
ボルヒエナ科 
Borhyenidae
(後獣下綱、Sparassodon目に属する肉食獣のグループ。カワウソやクズリに似た体
型のものが多く、また頭骨は肉歯類のヒアエノドン科やイヌ科を思わせる形態をして
おり、骨を噛み砕くことに長けた種類もあった。現生種では、タスマニアデヴィルの生
態がボルヒエナの仲間に最も近いと考えられている。)

最後に、南米最大の捕食者として数千万年も君臨し続けた地上性肉食鳥、フォルス
ラコス科の仲間も、大型種のティタニスwalleri がフロリダやテキサスあたりにまで進
出していた形跡が知られているものの、やはり更新世を待たずしてその歴史に幕を
下ろすことになった。

ティタニス Titanis walleri

数的に、また競合力においても北米種の方が圧倒的優勢を示した理由としては、地
理的なことに原因が求められよう。北米は平均海水面の変化に伴い定期的にユー
ラシアと(ユーラシアはアフリカ大陸と)繋がっていたことから、大陸間移動による動
物相の変化、多様化は目まぐるしく、隔絶状態にあった南米種に比べると、動物た
ちもそれだけ厳しい競争を生き延び、「鍛えられていた」ということが言えるのではな
いだろうか。
また、いったんパナマの湿潤な熱帯性の気候に順応してしまえば、あとは気候
の似ている南米大陸への移動はたやすかった北米組に対し、南米種が当時の乾燥
草原の広がる冷涼な北の地に進出していくのは、容易なことではなかったはずだ。

いずれにもせよ、GAIを境に南米固有種の大部分が、同じようなニッチを占める
北米起源の種にとって代わられたことは事実である。更新世の初頭までには南米
の哺乳類相は様変わりし、当時の北米のそれとかなり似通ったものになっていた。

皮肉なことに、かつて北米を特徴づけていたラマなどのラクダ科、バク科、ペッカリー
科などの多くの動物は更新世末を蹂躙した大量絶滅で失われ、現在、新大陸では
南米でしか見ることができなくなっている。その意味では、南米では鮮新世・更新世
時代の生態系が比較的よく保たれており、更新世絶滅のもたらした変化も、北米の
場合ほど著しいものではなかったということが言えるだろう。

~サーベル・パンサー

 

参考: Donald R. Prothero『After the Dinosaurs: The Age of Mammals』 他



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