the Saber Panther (サーベル・パンサー)

トラディショナル&オリジナルの絵画芸術、化石哺乳類復元画、英語等について気ままに書いている、手書き絵師&リサーチブログ

プレヒストリック・サファリ 23 (完新世 ニュージーランド南部) 鵬王飛翔す

2016年12月30日 | プレヒストリック・サファリ

Prehistoric Safari : The mightiest raptor soaring across the sky



Prehistoric Safari : the Mightiest Eagle soaring by Jagroar
新年ご挨拶に代えて

キャンヴァスに油彩 デジカメ撮影
(印象派的なタッチで描いています。キャンヴァスに描いた油彩作品なので、画布の目の粗さが目立つかもしれません…撮影を工夫してみます。油彩作品を美しく撮影するためのコツなどあれば、知りたいものです。)


南海の孤島に広がる手つかずの密林の上を、威風堂々たる巨鳥の影が横切っていく。


史上最大級の猛禽類としてつとに有名な、HarpagornisHieraaetusmoorei、通称ハーストイーグル。西暦15世紀の頃まで存続し(したがって、今回は厳密に言うとプレヒストリックではなく、有史以来の世界を描いていることになります)、オセアニアの孤島ニュージーランドにマオリ族の人々が移住してくるまでは、生態系で文字通り「唯一無比」の捕食者として君臨し続けた存在である。

遺伝子分析の結果、ハーストイーグルはヒメクマタカなどケアシクマタカ属(Hieraaetus)の現生種と近縁であることが判明し、これらと共通の小型の祖先から180万~70万年前に分岐、進化したとされている(Bunce et al., 2005)。生物学的に非常に短い間に著しい大型化を達成したことになるが、ニュージーランドには獲物となる大型の陸鳥が存在し、かつ、哺乳類の肉食獣など生態系における競合相手
が不在であったことが、短期間の巨大化を促した要因であったと考えられる(いわゆるisland dwarfismとは真逆の現象、island gigantism)。

そのサイズは、思うだに恐ろしい。森林棲であったため翼長は特質すべきものではないが、体長や体高、嘴やタロンなどの寸法、推定の体重において、現生猛禽類の二大種、オウギワシとサルクイワシを、圧倒的に凌駕していた。
雌の大型個体ともなれば、体重16kgを超えたとする見積もりもあるほど。この巨体にして、翼面荷重の大きな力強い翼で飛翔し、時に時速80kmもの高速(Rogers, 2009)で陸鳥などに襲いかかったというのだ。

ハーストイーグルは、自重を遥かに上回る巨大陸鳥、体重200kgにも達したモアを専門的に捕食していたとされる。マオリ族がモアを狩りつくしたのが西暦15世紀頃だと考えられているが、それからほどなくして、主要な獲物を失ったハーストイーグルもまた、絶滅に追いやられる結果となった。

有史以前のニュージーランドは、ハーストイーグルのような大猛禽の進化を促す、理想的な条件が揃った場所であったということが指摘されている。このような大猛禽は、その意味で、二度と出現することは望めないのかもしれない。


『プレヒストリック・サファリ23 完新世 ニュージーランド南部 鵬王飛翔す

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