1月30日(日)オミクロン禍で、連日感染者数全国7万人を超えるさなか、埼玉会館に高田馬場管弦楽団第99回定期演奏会を聴きにいった。昨年夏、同じ会場で98回定期が行われたときは、大宮の手前だから京浜東北に乗ればよいと思ったら意外に遠く、1曲目を聞き逃したので、今回は開場時間より10分ほど早めにいった。わたしより早い方もいたが、10-20席あるロビーのイスに座って待っておられ、並んだのはわたくしが1番だった。前回はコロナで指定席だったが、今回は自由席ということもあり、通常なら早い人は1時間くらい前に並び始めるからだ。さすがに時期が時期なので、いつもは満席の会場が1階の前のほうはガラガラ、全体を見渡すと5割くらいの入りかと思われる。ということはコロナ禍ではちょうどよいくらいの混み具合だ。
曲目は、ドヴォルザークの序曲「謝肉祭」、プーランクの「シンフォニエッタ」、メインがチャイコフスキーの交響曲第5番の3つだった。
指揮は石橋真弥奈さん。プログラムによれば1986年生まれで今年36歳、東京音大出身、2017年ニーノ・ロータ国際指揮者コンクールでニーノ・ロータ賞受賞(優勝)、これまでに読響、新日本フィル、東響、日本フィル、ぱんだウインドオーケストラなどと共演という、プロフィールの方だ。わたくしが聴くのはもちろん初めてだった。
序曲「謝肉祭」は10分くらいのボヘミア風の彩を帯びた軽快な小曲で、きびきびした明快な指揮だった。コール・アングレとヴァイオリン・ソロが美しかった。最終部ではピッコロがよく鳴っていた。久しぶりにクラシック生演奏を聴いたので、曲のタイトルどおりお祭り気分で、心が浮き浮きしていい気分だった。
2曲目シンフォニエッタは、4楽章形式で25分ほどの曲、小編成で金管はトランペット2本のみだった。わたしは初めて聴く曲、ただ4楽章のフィナーレはFMで聴いたような気もした。ウィットに富むいわゆるフランス調の曲だった
2楽章ではオーボエとフルートが活躍した。この曲は1947年の作品だが、4楽章フィナーレは、いかにも20世紀の現代都市で生き、活動する人間を表現するような曲だった。
プーランクはミヨー、オネゲルらフランス6人組の1人で、高校生のころ好きな作曲家だった。ただ管楽器を含む室内楽曲ばかり聞いておりオケの曲は初めてだった。2015年のラ・フォルジュルネで1人だけのちょっと不思議なオペラ「人間の声」(演奏会形式 ソプラノ中村まゆ美、ピアノ大島義影)を聴いたことを思い出した。
最後は、有名なチャイコフスキーの5番だった。
1楽章アンダンテは軽快に進みいい感じだった。2楽章アンダンテカンタービレは明快だが詠嘆調ではない指揮だった。3楽章ワルツ アレグロモデラートは、あまりメリハリや効果を付けない演奏だった。さて期待した4楽章フィナーレだ。トロンボーンなど金管楽器はよく鳴っていたが、盛り上がりがない。したがって演奏後の感動がなかった。
指揮者にもいろんなタイプがある。聴衆も、端正な指揮が好きな人もいると思う。人それぞれであることは、よくわかっている。
ただ馬場管のひとつの魅力は、フィナーレに向かう盛り上げ方の緻密な計算と、終演後の感動だとわたしは思っていた。そういう観衆の一人としては、今回は肩透かしだった。
浦和のことは何も知らないので、帰りに少し歩いてみた。浦和は、江戸時代に中山道の日本橋から3つめの宿場町となり、明治以降、さいたま市誕生まで長く県庁所在地だった。
埼玉会館は浦和駅西口から県庁通りを歩いて500mくらい、会館の先250mくらいに県庁がある。だからここが浦和のメインストリートかと思った ところが近辺は5-6階建ての低層ビルが多い。金融機関やスターバックス、ワシントンホテルなど全国ブランドの店があるのはどの町も同じだが、ときどき染物屋や邦楽器店がありちょっと不思議な感覚がする。駅前に伊勢丹、イトーヨーカドー、コルソといった商業施設があるが、あまり賑やかな感じはなかった。もしかすると東口がメインかと駅の裏側にも回ってみたが、パルコがあるもののその気配はなかった。よく言えば落ち着きのある街だ。西口には県庁の向かいにさいたま地裁があるので弁護士事務所の袖看板が多いのと、街灯に「サッカーのまち浦和」の赤いフラッグがなびいているのが、特徴といえば特徴だ。
東京都はじめ全国でコロナ感染者数が爆発的に増えていくなか、いつ中止のお知らせがアップされるかと、毎日のように馬場管のHPを冷や冷やしながら見にいっていたので、なにはともあれコンサートが無事に開催され、聴くことができたのが幸運だった。
次回は7月18日練馬文化センターで、記念すべき100回定期演奏会だ。森山さんの指揮でドヴォルザーク・交響曲8番、エルガー・エニグマ変奏曲などの予定なので、心が騒ぐ。そのころには新型コロナの流行が収束(または下火)になっていることを祈る。
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