S多面体

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」のショート版

葛谷舞子が撮った親子の笑顔「life」

2021年09月29日 | 展覧会・コンサート

自閉症やダウン症など障がいのある子を持つ親29組の写真展「life――笑顔のカケラ」が9月17-23日に富士フォトギャラリー銀座で開催され、見にいった。

フラダンスの親子、空手の道着を着た娘と母、キーボードを前にした息子と母、どの写真もサブタイトルのとおり「笑顔」があふれている。
29組の親子の笑顔の写真がメインなのは当然だが、子どもの障がいの種類と年齢、1)これからの夢、2)障害がわかった時の気持ち、3)今の気持ちの3項目のアンケートが、作品1点ごとに掲示されていた。障がいの種類では、やはりダウン症、自閉症が多いが、知的発達障害、最重度知的障害の自閉症、重度知的障害、脳性麻痺、未熟児網膜症の子やヌーナン症候群などわたしがはじめて聞く病名もあった。年齢は5―32歳(一人だけ43歳の方がいた)。

1)「夢」は、親の回答、子どもの回答で大いに違う。数は親の回答が圧倒的に多く「世界のいろいろなものを見せたい」「家族で世界中のいろいろなところへ旅行したい」「映画・舞台を一緒に見に行きたい」など、子どもの体験、子どもの世界を広げたいという希望、「自分らしい人生を謳歌するように」「自信や誇りを持ち暮らしていけるよう」と幸福を願うもの、「親亡き後も安心して生きていけるコミュニティを作りたい」「障がい者の仕事の場を作りたい」「障害者と高齢者が共存できるシェアハウスを作りたい」といった、今後子どもが安心して暮らせることを祈る現実的・具体的なプランもあった。
2)は深刻だ「わたしの人生は終わった」「ショックな気持ち」「頭が真っ白」などなど障がいがあることを知ったときの衝撃の大きさがよくわかる。
3)は人それぞれで、「生まれてきてくれてありがとう」「チャームポイントの笑顔を忘れずに」「一緒にいると楽しい。いまがとても幸せ」「いつまでも一緒にいたい」など、感動的なコメントがいくつも並んでいた。どう解釈するかは、なかなか難しい。
(いわゆる)健常児と異なることからさまざまに苦心し、親子ともに太く強い人生を紡いできたことを推測させるコメントが並んでいた。写真の大半は母と子どものカップルで、父と子は5組だけだった。撮影はおそらく日中なので平日に父が同行することは難しいという事情もあろう。しかし日ごろ母親にかかる負担と喜びの大きさもしのばれる。1枚1枚の写真の奥に、それぞれのドラマがあることを感じさせた。

何年か前に、障がい者調査の手伝いで、訪問調査員をしたことがあった。相手は30代から70代の知的障害の方6人、本人同席だったのは3人のみ、うち二人は「あんたはしゃべらなくていいから」と親に厳しくいわれ、ほとんど本人とは話ができなかった。話ができた人は、職場の雰囲気や人間関係などでガマンしながら働いていることを切々と訴えられ、涙を流していた。こちらはまったくの門外漢なので、素人考えで無責任に励ましてよいものかどうなのか、悩んでしまった。
ということでほとんど親や親族の方にお聞きしたが、自分の死後、この子はどうなるのか、財産や住居をどう手当てすれば子どもが安全に暮らしていけるか、が最大の関心事だった。また企業や作業所で働いている人もいたので、受入れ環境の整備もいろいろ問題があるようだった。そのときは、精神障害の方の面談もしたが、障がい者にとって「仕事」の問題は深刻であることを実感した。

たまたま作者の葛谷舞子さんご自身が会場にいらっしゃって、少しお話を伺うことができた。ここからは、朝日新聞2021年9月10日横浜版21面や東京新聞の6回連載記事2021年8月29日1・22面)、31-9月4日22面)も参考にした。
葛谷さんは学生のころ「出生前診断で中絶する親が多い」という新聞記事に疑問をもち、障がい児問題に関心をもった。就職、独立を経て、職業としては料理や建物の撮影をメインにしているそうだ。そのかたわら自宅兼用の写真スタジオを運営しポートレートを撮る。
ただ「ライフワーク」は障がい児問題のほうで、今回の展示作品は足かけ4年撮りためたものとのこと。5歳未満の子どもの写真がないのは、たまたまこの2年コロナで、スタジオに来るのが難しいという事情もあったからだそうだ。

☆会場の富士フォトギャラリー銀座は、プロ写真家や写真愛好家の写真の現像、プリント、額装・パネル加工などを行う富士フイルムの関連事業部門クリエイトが運営するギャラリーだ。六本木の富士フイルムフォトサロンには行ったことがあるが、ここは初めてだ
たまたま隣の部屋(会場)でハッセルブラッドフォトクラブジャパン第28回フォトコンテスト作品展を開催していた。ハッセルブラッドは6×6サイズの高級カメラということは知っていたが、スウェーデンの会社(ただウィキペディアによれば2017年に中国の企業に買収された、とある)ということは知らなかった。さすがハッセルで、色濃く鮮やかな作品が並んでいた。
画廊同様、見るのは無料なので今後、興味あるテーマの作品展のときには立ち寄ってみたい。
富士フォトギャラリー銀座
住所 東京都中央区銀座1丁目2-4 サクセス銀座ファーストビル4F
電話:03-3538-9822
営業時間 平日10時30分~19時 土・日・祝日11時~17時
開館日: 展示スケジュールを参照

●アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。



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