I’s Blog

伊藤久志@アイズサポートのブログです。

自閉症・知的障害の人のための仕事をするには?

2024-01-22 20:32:40 | Weblog
今日は、担当している子のきょうだいから、「伊藤先生みたいな仕事をするにはどうしたらいいの?」と聞かれた。
興味を持ってもらえるのは、嬉しいです。

返答:
色々なルートがあるよ。
学校の先生、福祉施設の指導員、言語聴覚士なんてのもあるよ。
医者だってあるよ。
伊藤先生は心理から入ったよ。


後から考えると、他にも色々あるな~。
保育士・作業療法士・研究者・・・。
直接支援者ではなくても、法律、行政、政治からアプローチするのもアリだろう。
むしろその方が影響力は大きいかもしれない。

カタトニア尺度

2023-12-08 18:34:13 | Weblog
ヒトとして生を受けて、心理学を学んだからには、一つは尺度を作ってみたい。
心理学に落ちた人なら一度は思うことではないでしょうか。
かくいう私も、今、そんな気分です。昔は心理屋は尺度屋になったら終わりだなと思っていたのですが、歳取ると変わるもんです。

私が狙っているのは、カタトニア症状に関する尺度です。
カタトニア症状のアセスメントに関しては、Bush-Francisカタトニア評定尺度が最も使用されていて、日本語訳もあります。
しかし、これはほぼ診断基準に準拠した内容や用語で構成されていて、専門的な知識と訓練を前提としたものになっています。
もうひとつ世界的に使用されている尺度に、小児カタトニア評定尺度があります。
小児カタトニア評定尺度は、Bush-Francisカタトニア評定尺度と比較すると項目数を減らし簡素な形式にしたものになっています。
また、最近作成された Catatonia Spectrumは、Bush-Francisカタトニア評定尺度や小児カタトニア評定尺度と比較すると質問文の理解が容易で実施しやすいですが、自己記述式のアセスメントなので主観的な視点による質問が多く見られます。

今後は、現場の支援者や保護者が簡易に実施できる尺度を作成することによって、カタトニアを早急に判別し、支援に繋げることが可能になることが大事です。
そこで、簡便さに秀でている小児カタトニア評定尺度を基盤として、 Catatonia Spectrumのような具体的、かつ平易な質問で構成されたものにし、形式としては他者による評価に基づく尺度を開発することが無難かなと思う。

博士論文挑戦記

2023-09-18 20:29:55 | Weblog
少しずつではありますが、博士論文の作成過程を書き出してみます。
特に、私は『論文博士』という珍しい形式だったので、論文博士に挑戦しようと思う方に参考にしていただければと思います。

まず、博士論文には課程博士と論文博士の2種類あり、一般的には前者がメジャーです。
後者は、大学院博士課程には通わず、論文を提出するだけで博士号を取得する形式です。
よって、論文博士は課程博士と比較すると、博士号を取得するのは困難だと見られています。
しかし、私のように今更大学院博士課程に行く金銭的余裕が無い者にとっては、論文博士が博士号を取得する唯一の手段と言えます。

次に、論文博士を申請するには、特定の要件を満たしている必要があります。
①日本学術団体に登録されている学会の雑誌に複数の論文が掲載されている
②国際学会で発表する
③最終的に教授会で文句が出ない量(5本程度)と質(再現可能な手続きの記述やデータ)の論文を含めて博士論文を構成する
④メタ分析のような比較的質の高いレビュー論文を含める

また、私が申請した大学の研究科では、まだ論文博士を申請した人がいなかったです。
この点は、手続きが探り探りになるので懸念点でもあり、一番乗りになれるという意味で自分のモチベーションにもなりました。
ここで懸念点を払拭するために参考にしたHPがあります。
学位取得(論文博士)への遠くて近き道のり
全く同じというわけではないけど、自分にとってはとにかくやるしかないんだなと覚悟が決まるような内容でした。

臨床の仕事を継続していて、こつこつ実践研究を発表している者にとって、論文博士挑戦への誘いがかかることは光栄なことだと思う。
ただ、自分は何か一貫したテーマを持って実践研究をしていたわけではないので、博士論文のテーマを決めるのが困難だった。
博士論文執筆のためにはオリジナリティのあるテーマの提示が必要であり、最初から肝心な所で詰まってしまった。

自分には昔からなんとなくトイレットトレーニングに対する憧れがあり、それに関して考えることも多かった。
ただ、自分なんかがトイレットトレーニングで博士論文を書いていいのか?と弱腰になるとともに、トイレットトレーニングはフィールドにすぎず、
何をオリジナルの視点にするのか?という所で詰まるので、根本的にはテーマの問題は解決しなかった。

本来であれば、テーマを決めてから取り掛かるべきだと思うのですが、トイレットトレーニングに関する論文を投稿しつつ、新たな実践を進めることを優先しました。
やってるうちに何かテーマが見えてくるのでは?という微かな野望を持ちつつ、テーマが見えなければ、五月雨的にトイレットトレーニングの論文を出してる物好きで終わってもそれはそれで後悔はないなと思いました。

そのような状況の中で、まず取り組んだのがトイレットトレーニングに関する実践研究の論文の投稿でした。
ある学会でポスター発表して倫理委員会から警告された実践でした。
この実践に問題があることを了解した上で、問題点も提示した上で論文にして他の学会の雑誌に投稿すると、どう評価されるんだろうと思いやってみました。
2人の査読者の評価が割れましたが、最終的に受理されました。
その過程で、問題点を克服するような実践ができたので、その論文を投稿し、同時に掲載されることになりました。
その後、その雑誌の編集委員に任命されたのですが、初の編集委員会で先の論文の話になり皆様にご迷惑をかけてしまったことが判明しました。

・国際学会発表
お世話になっている先生に誘っていただき、初めて海外の学会に参加して発表することにしました。
一通り登録も済ませたところで、一人で参加することが明らかになりました。
とにかく行くしかないので、まさに清水の舞台から飛び降りるつもりで、米国に向けてセントレアから飛び立ちました。
結局、現地に着いてみると、日本からの参加者は私あわせて4人でした。
鳥取大学の井上夫妻がそれぞれ発表されて、あとBECの上村先生も参加されていました。
ポスター発表後に、井上雅彦先生に声を掛けていただき、食事や観光を一緒にさせていただき、得難い経験をしました。
実際にお話したことはなかったのですが、お互い学生時代に北海道を放浪したという共通点があり(井上先生はオフロードバイク、私は自転車)、自分が泊ってるドミトリーの名前がいかにも安宿な感じに笑っていただき、それ以降は何話しても何してても楽しかったな~。
奥様とも初めてお目にかかったのですが、下の名前をお聞きしたら「プロンプト」の代表?という連想ゲームが成功し、それ以降はむしろ奥様の方に仕事の相談をするような感じでした。
おそらく井上夫妻の邪魔をしてただけだと思うのですが、自分にとっては一人で海外に来て発表したご褒美でした。
マイアミの国定公園をトレッキングしたのは楽しかったな~。
日本に帰ってきて翌週に、ロックダウンとなりました。
既に米国に行く前に、何か新しいのが流行ってるねという情報はあったのですが、まさかこんなことになるなんて。


・英語論文投稿
井上雅彦先生に英語の論文を投稿することの重要性を教えていただきました。
ちょうどその頃、あるトイレットトレーニングの実践が一段落し、論文にすることの許可をとろうと保護者と遣り取りしました。
その時、保護者の方から、「英語ならいいよ」という条件が提示されました。
というわけで、英語論文にチャレンジすることにしました。
そんなに英語力があるわけではないので、英訳ソフトを駆使したり業者に依頼したりしながら、なんとか投稿した。
一つ目の雑誌は、一発リジェクトでした。
二つ目の雑誌は、なんとかリジェクトされずに、査読に入ることができました。
英語論文は博士論文の必須要件ではありませんが、英語論文があることは非常に有利になります。

・レビュー論文作成と投稿
まず日本の文献をまとめました。
次に、英語の文献も含めました。
正直、とんでもない量の文献なので、何か文献を絞る方法はないかと考えました。
「What Works Clearinghouse が作成したエビデンスの基準を満たすデザイン規準」を採用して、文献を絞ることにしました。
共同研究者と休日に集まり、規準に照らし合わせて文献を分別していく作業はあまりにも大変でしたが、共同研究者がいたから乗り切れました。
さらに、ただ文献をまとめるだけではなく、メタ分析することになりました。
シングルケースデザインのメタ分析のやり方がわからない!こんな時は、参考になる論文の著者にSNSでコンタクトして、指導を乞うという荒業でなんとか乗り切る。
教えてもらうと、統計ソフトは案外私でも使える物だったので、ひとまず統計的な問題はクリアした。
ひとまず論文を作成して、投稿してみた。一発リジェクトでした。
昔の自分なら落ち込んで諦めるのだけど、その時の自分はリジェクト理由の誤りを指摘して再審査を主張した。
再審査になり、かなりサポーティブで教育指導的な査読をしていただき、なんとか受理された。
この経験を通して、研究において、自分の苦手なことに関して他者から教えを乞うことや、アサーションの有効性を学びました。
同じ巻にシングルケースデザインの総論的なレビュー論文(竹林,2022)が出ており、自分の論文の問題点とその解決策が丁寧に記述されている論文だった。。

 竹林由武. (2022). 認知行動療法研究シングルケース実験デザインにおける介入の有効性評価. 認知行動療法研究, 48(2), 145-154.

自分としては、教育機関や研究機関に属さない者がメタ分析論文を書いて受理されたということに誇りを感じている。

ちなみに英語論文とレビュー論文の受理メールが同じ日に、ソロキャンプで焚き火をしている時に届きました。
あまりにも舞い上がってしまい、もう自分は明日死ぬんじゃないだろうかと不安になった記憶があります。
この2つの論文は、私の博士論文のアピールポイントであり、教授会で文句を言われる可能性を下げてくれたと思います。

・テーマのひらめき
ある程度論文もたまってきた状態で、共通する要素を探しました。
ある日、仕事でミスってしまって保護者の方に怒られてた時に、「先生は手続きの個別化は工夫してくれてありがたいけど、・・・は全然ダメ!」と言われました。
その時、「個別化」が自分のテーマだったのかと!と全ての点と線が繋がった感覚がありました。
個別化は基本的には機能的アセスメントでやってるよな、それって武藤先生(2000)が言ってた事だよなとなりました。

 武藤崇, 唐岩正典, 岡田崇宏, & 小林重雄. (2000). トイレット・マネイジメント手続きによる広汎性発達障害児の排尿行動の形成: 短期集中ホーム・デリバリー型の支援形態における機能アセスメントとその援助. 特殊教育学研究, 38(2), 31-42.

そして、私の博士論文の題名が決まりました。
『自閉スペクトラム症と知的障害児者に対する機能的アセスメントに基づくトイレットトレーニング』
そしてこのテーマに沿って、博士論文全体を構成して、全体考察をまとめていきました。
たしかコロナに罹って1週間隔離されてた時に、第一弾を書き上げたと記憶しています。
喉や関節の痛み以上に、論文の産みの苦しみに悶えた隔離期間でした。


・申請手続き
先述した通り研究科にとって初の論文博士申請だったので、大学職員の方との遣り取りが非常に大事でした。
職員の方も探り探りで、申請要項はありますが細かい所まで決まってなかったり、おそらく大学教員の先生が定年退職に向けて博士号を取得するというような昔の古き良き論文博士を想定していると思うので、なんで?と思う手続きでした。
具体的には、予備審査の段階で初めから完成された論文が提出されることが前提でした。おそらく大学教授の先生が既に出版されてる自著を提出する感じなのかな。
職員の方とお互い初の試みなこと、そして私のような者を想定して設定されてないことを早い段階で共有しました。
それからは何があっても決められた通りにやるしかないと割り切って進めたと思います。
後から思うと、私のような者を根気強く相手して下さった職員の方には頭が下がる思いです。
履歴書を提出した時に一番驚かれたのが印象的でした。まあ伏工を卒業して論文博士取るなんて馬鹿というか怪しまれる。


・審査会
予備審査会では、「英語のテスト」と「口頭試問」が行われます。
口頭試問がメインなのですが、この歳で英語のテストは正直辛かった。
「博士論文の要約を英語で書く」と「PBSとABAの相違がテーマの論文を要約しつつ和訳する」の2課題でした。
これで軽く心を打ち砕かれた後に、口頭試問でした。
この審査をクリアして、適切に修正できればOKなのですが、予備審査が終わってから修正稿の提出までの期間が短いこと!
でも、口頭試問で主査と副査の先生方から提示していただいた修正点は非常にありがたかった。
正直、短期間で修正できるか!?と思うくらい、根本的で示唆に富んだ内容だった。
その1週間は何もかも忘れて執筆に奔走したと思う。ただ、辛かった記憶はない。むしろ、楽しかった。
自分の頭が整理される過程は何物にも代えがたい。

本審査用の論文を提出して数日後に親が亡くなりました。
もう末期の状態が長かったので覚悟はしてましたが、このタイミングで亡くなるとはさすが我が親。
今で言う毒親で決して良い親子関係ではなかったけど、最後の方は和解できたのかな。
予備審査会後に病床に行って「次うまく直せたら、博士号取れるかも」と報告すると、「ホントは医者になってほしかった」なんて初めて聞くことを言い出す始末。
うち、医者の家系でもなんでもないのに・・・さすが我が親と改めて感心した。
まさに貧困から這い上がった人生で、つきあってる友人も不釣り合いの人達ばかりで、見栄を張りたかったんだろう。

あれよあれよと本審査会という最終テストがやってきました。
ここまで来ればもうやるしかない。こんな時は「シンプルに」ということを心掛ける。
パワポをとにかくシンプルにして、発表をわかりやすくするように準備しました。
本番では発表してた時の記憶はありますが、口頭試問になって即効で頭が真っ白になりました。
初めの主査の先生からの指摘が厳しすぎて最後まで立ち直れなかった状態でした。
当然のことですが、どの先生からもフェアに評価され(ほめられたり、問題点を指摘されたり)、本当はちゃんとディフェンスしないといけないのだろうけど、ごもっともでございますと妙に聞き入ってしまってる自分がいたと思う。

二人の副査の先生から予備審査の時にかなり難しめの修正を出されたのですが、それを修正してきたことに対して「よく短期間で修正してきたな」と言っていただけたのが何より嬉しかった。

そして、なぜだか後輩が審査会に出席していた。その大学の准教授になっていたから、出席してもおかしくはないのですが、正直嫌だった。
仲が良いわけでもないし、どちらかというと嫉妬してる。屈辱的だなというのが最初だった。
そんな感情かき乱された状態で発表を開始したわけだけど、なんと!その後輩が絶妙な傾聴の態度をしてくれたおかげで、リラックスして発表できました。
そんな奇跡のフュージョンにも助けられました。
後日談ですが、後輩も本審査会に行くかかなり迷ったらしい。彼も私のことが嫌いだろうから、それは当然だ。おそらく、上司に誘われて断るわけにもいかなかったのが実際のところだろう。
結局は来てくれて私にとってはそれが助けになった。
大学院の頃から15年越しに和解したかもしれない。あの絶妙な傾聴は、臨床実践の賜物だろう。

本審査が終わり、自然発生的にその場でトイレットトレーニングに関する議論が参加者で始まった。
その空間と時間が最高に心地よかったのを覚えている。「あ~これがアカデミアなんや~」なんて部屋に後光がさして夢の中にいる気分でした。
その後、急に示し合わせたように揃って退散され、主査と自分だけが会場に残り、ありがたいお言葉を掛けていただきました。

その後はメールにて正式に博士号授与を通知されました。
授与式には仕事の都合で出席できませんでした。
さすがに通ってもいない大学院の授与式に出るのは申し訳ないという思いもありました。

ちなみに私が取得したのは論文博士による博士号(人間科学)なのですが、
論文を作成するうえで「論文博士」と「人間科学」がキーポイントになります。
論文博士というのは、既に自立した研究者であることが前提です。今から思うと絶妙なバックアップのもと取り組ませていただいたという思いが強いが、取り組んでいる最中はなんでもっと教えてもらえないんだろう!?とつい甘えが出てしまうことが多かったです。そんな自分に対して、過不足のないバックアップを一貫して貫いていただいたことが最終的に自分の成長に繋がったと思います。
人間科学というのは、広範な分野です。心理やABAの人に通じれば良いというわけではなく他分野の方にも理解していただく必要があります。特に、「障害モデル」を検討し、「トイレットトレーニングの意義」を再定義することが重要でした。これがないと、すべてが薄っぺらくなってしまいます。

本邦の学術界の動向としては論文博士は無くしていく方に向かっています。
現役であろうが社会人であろうが、博士課程に入って所定の年数で課程博士を取得する方向に行くでしょう。
私自身、ギリギリ滑り込めたという感触です。
なので参考にして下さいと言いつつ、参考になる機会は限りなくゼロに近いのかなと思っています。



カサンドラ症候群

2023-08-24 19:14:01 | Weblog
カサンドラ症候群に関して聞くようになって5年以上経つだろうか。
その後の変遷としては、様々な本が出て、女性特有のものでなく性別が逆のパターンもあることが認識されてきた。
性別に関係なくASDを持つパートナーと暮らしていくことの難しさに関して扱われていると言えるだろう。
このような動向は、読み物本だけの話ではなく、すこしずつ研究としても扱われているようです。

坂田侑奈, 菅原ますみ, 松本聡子, 齊藤彩, & 吉武尚美. (2022). 夫婦の自閉スペクトラム症的行動特性と抑うつとの関連. 心理学研究, 93(4), 292-299.
廣瀬雄一. (2021). 「カサンドラ症候群」 を訴えた女性クライエントとの面接: ナラティヴ・セラピーで探求する新たな物語. ブリーフサイコセラピー研究, 29(2), 53-64.

たしかに、現場で仕事をしていると、これがカサンドラ症候群ってやつかと思わされる状況に出くわすことはあります。
この悪循環にはまると、きついなとも思います。

カサンドラ症候群の臨床に限った話ではなく、どんな臨床でも共通する要素ですが、ACTで言う所の「創造的絶望」(これまで試してきたことが問題解決に向かってるかどうか?を吟味する)・「価値ワーク」(結局のところ自分自身の人生がどの方向に向かいたいのか?どうありたいのか?を吟味する)を丹念に実施していくことが大事なのかなと。


トイトレ博士の面目躍如

2023-05-31 17:50:07 | Weblog
トイレットトレーニングをテーマに博士論文を書いたので、自分のことを「トイトレ博士」と呼んでいます。

と言っても、これまで解決できなかった排泄問題はかなりあります。
特に、下着(パンツ/おむつ)を脱いで排便できないパターンは難航することが多いですよね。
このパターンの子に介入した論文をだいぶ前に投稿し、出版されています。
これに関しては、ある学会の倫理委員会から指導を受けたり、投稿論文が受理される際もかなり揉めたと記憶しています。
後にその雑誌の編集委員になったのですが、編集会議でその論文に関して悪い例として議題にあがるという洗礼を浴びました。

これではいけないと思い、博論では異なる手続きをした介入を含めることにしました。

この手続きも遂行できない子がいて、さあどうしよう!となりました。
結論としては、下手に色々やってややこしくするよりも、ほっておきましょうと伝えました。
あえてほっておくという介入は、結果的にそうなってる時はあっても、狙ってそうするのは難しいです。
何よりそれを伝えるのが怖い。でも、今回は子どもの特性やこれまでの経過を考えると、それが良いと判断した。
そして、今回はそれが正解で、最近便器に座って排便することが出てきたという報告を受けた。

涙が出るくらい嬉しいのだが、平静を装う。


療育の日々

2023-05-20 16:21:12 | Weblog
仕事で療育をしていると面白いことがあります。

①Chat GPTの研究を担当している子どもとしています。今日はアイズサポートの紹介を作成してみようということで、完成したのが以下のものです。
「アイズサポートは、発達障害のある方にマインドコントロールなどのサービスを提供する場所です。マインドコントロールとは、自分の感情や思考を上手にコントロールする方法のことで、発達障害のある方にとっては、日常生活や人間関係において大きな課題となります。アイズサポートでは、伊藤久志さんという経験豊富な指導者が、個別セッションやグループセッションを通じて、マインドコントロールの技術を教えてくれます。伊藤さんは、自身も発達障害の経験があり、その悩みや苦労をよく理解しています。アイズサポートは、名古屋市昭和区にある施設ですが、オンラインでも参加できます。詳しくは、Is Support | アイズサポート (i-s-support.com)でご覧ください。アイズサポートで、自分の感情や思考をコントロールする力を身につけて、自分らしく生きることができるようになりましょう。」
Chat GPTによると、マインドコントロールをしていて、私は発達障害の経験があるとのことです。なかなか鋭いかも。


②子どもと卓球をしていた時に、その子が「張本智和って言ったらチョレイって言って」と言ってきたので、それをゲームにしました。
山手線卓球ゲームの亜流ですが、このチョレイゲームはなかなか面白かったです。ぜひおすすめです。


偏食に関する情報

2023-04-04 09:58:01 | Weblog
自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害児者の偏食に関して、インターネット上の情報をまとめてみた。

まず、出版されている本を調べてみる。
発達障害児の偏食改善マニュアル
具体的な対応がわかる気になる子の偏食―発達障害児の食事指導の工夫と配慮

前者のグループはかなり精力的に活動しており、HPや資料が参考になる。
広島市西部こども療育センター食育研究会
自閉症の偏食対応レシピ

ついでに、英語の本もないかなと検索してみると、よさげなものがあった。
Treating Feeding Challenges in Autism: Turning the Tables on Mealtime

ABAと言えば、奥田先生のミニタッパーを用いたか手続きに関する記事が多かった。
『世界に1つだけの子育ての教科書―子育ての失敗を100%取り戻す方法』

思春期からの切り替え

2023-03-31 19:55:53 | Weblog
切り替えと言っても、保護者としての切り替えってのになります。
幼少期や学童期は、言い聞かせという名の長い説明や力技で乗り切ってたのが、
少しのきっかけで喧嘩や言い合いに発展しやすくなったり、関係自体がこじれてきたりしますよね。
だれしもが陥る時期があるかと思います。

これまでの戦略をもっと徹底しないといけないと思ったりもしますが、
実際は今までの戦略を切り替える必要があるというケースが多いかと思います。

例えば
・ちくいち注意してたのを見守りを多くする
・褒めてから修正フィードバックしていたのを褒めるのみにしておく
などなど

こういうのってケースバイケースだけど、実行するのが勇気いります。
これまでの習慣と異なる行動を実行するのは誰しも大変です。

参考になる本は、
・ペアレントトレーニング思春期編
・CRAFT分野は異なりますが参考になります


偏食への介入手続き

2023-03-29 16:03:47 | Weblog
偏食シリーズ第2弾

とりあえず、論文検索してレビュー論文を探してみる。
よさげな論文が見つかった。
Silbaugh et al.(2016)
筑波大学の趙先生が精力的に研究されたようなので、その博士論文が公開されると助かるのですが、まだ全公開はされていません。

とりあえずSilbaugh et al.(2016)で抽出された文献の中で使われている介入手続きを列挙していこう。

・AC (antecedent choice):あらかじめ選択させる
・CP (contingent praise):随伴して賞賛する
・DBF (demand or bite fading):要請、もしくは?
・DNRA (differential negative reinforcement of alternative behavior):代替行動の負の分化強化
・DRA/F (differential reinforcement of feeding responses with high preferred food):好みの強い食べ物を使った食べる反応の分化強化
・DRA/NF (differential reinforcement of feeding responses with non-food items):食べ物ではないアイテムを使った食べる反応の分化強化
・EE (escape extinction):逃避消去
・EO (presession establishing operation):事前の確立操作
・HPS (high-probability sequence):高確率・指示順序手続き
・MP (mandibular prompt):下顎プロンプト
・MD (modeling):モデリング
・NRS (non-removal of the spoon):スプーンの非除去?
・PP (paced prompting):ゆっくりとしたテンポで進むプロンプト?
・RP (re-presentation):再提示
・RC (response cost):レスポンスコスト
・RL (rules):ルール
・SP (simultaneous presentation):同時提示
・SF (stimulus fading):刺激フェーディング
・TC (time-contingent presentation of preferred stimuli):好きな刺激の時間に随伴した提示
・TS (token system):トークンエコノミー

色々あるな~。具体的な手続きが名前だけだとわかりにくいものもあるので、実際に文献をあたって調べることが必要だな。
逃避消去が一番出てくるが、研究の動向としては逃避消去は最終手段と考えて侵襲性の低い手続きを考案することが流れのようだ。
趙先生の博士論文も同様の流れにあると言っていいと思う。

教育機関にコンサルテーションに行くと、偏食に関する相談があると、「かけひき」という手続き名がよく出てくる。
なんとなく話を合わせて相談にのってるけど、この「かけひき」って定義するとどんな手続きなんだ?
これだけ食べれたら好きな食べ物が食べれるという手続きを指して使ってる場合が多いと思いますが、実際どうなんだろ。


偏食

2023-03-26 10:52:49 | Weblog
自閉スペクトラムをはじめとした発達障害の子どもには、偏食が伴うことが多いと言われている。
仕事上、偏食に関して相談にのることもある。
このテーマ限定で研修の講師の打診が何度かあったが、「自分はこの分野に明るくない」ことを伝えて、連絡が途絶えることが続いた。
絶対に克服しなければならない問題ではないと思うので、介入の意義やバランス感覚が難しいと以前から考えあぐねていた。

ただ、自分が研究テーマとしたトイレットトレーニングも、偏食と同様の範疇にある。
つまり、必ずしも解決しなければならない問題ではないが、その取り組みによって保護者・支援者が療育スキルを身に着けて、そのスキルがその後の子育てや支援に広範な影響を及ぼす可能性があるという「ポジティブな相互作用の構築」が意義としてある。
偏食に取り組むことで、適切な目標設定のコツを学んだり、事前の工夫の引き出しを拡げたり、強化のコツを学んだり、やりすぎない引き際を知ったり、そんなことが他の分野の支援にも波及すれば大成功と言える。
もちろん、食べられるものの幅が拡がれば、それはそれで良し。ただ、それだけを目標にすることは、バランス感覚が悪い。

このような支援の意義問題は、トイレットトレーニングや偏食に限らず、多くの分野で見られると思う。
小難しいことを捏ねているように聞こえるかもしれないが、これを明確にしておかないと、後々ややこしいことになる。