S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲3-1

2006-07-08 17:01:26 | 真冬の狂想曲
3-1
 20分後、184cmの身長で100kgのスーツ姿の大男が現れた。松だ。俺より16cm、30kgもでかい。遠くからでも松を確認出来た。小学校5年までは俺の方がでかかったのに。
顔を見るなり俺は口を開いた。たまにしかコイツと会わないが俺達にはちゃんとした挨拶なんて必要ない。
「新幹線で行くん?飛行機や無いん?」
「岡山で一人拾って行かないけんけのー。」
そう答えながら松は携帯電話を取り出した。
「社長、今どの辺ですか?自分達、もう小倉駅に着いてますよ!車?その辺に止めとったらいいですよ!」
松が携帯電話を耳から離した瞬間、俺は口を開いた。
「あと誰が来るん?」
松はイラつきを隠そうともせずに、
「田川の松木さんって社長も一緒に行くわ。こっちが引っ掛かっちょんよ…。しかし遅せーのー、てれっとすんなっち言うんよ!」
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真冬の狂想曲2-4

2006-07-07 09:33:19 | 真冬の狂想曲
2-4
 行橋駅の構内の時計を見ると13:32になっていた。視線をずらし、電光掲示板を見る。
13:46の博多行き特急ソニックが次の上り列車だ。これに乗れば小倉に2時前に着く事が出来る。俺はみどりの窓口で切符を買い、そのソニックに乗った。

 10分程で小倉駅に着いた。一旦改札を抜け新幹線乗り場のほうに歩いて行く。
みどりの窓口の前のベンチにノブが座っていた。紺のスーツに黒のハーフコートといったいでたちだ。
「松は?」
「今用意してるんで、もう来ると思います。」
俺に2時までに来いと言っておきながらこれだ!まーいつもの事だが。
「明彦は?」
ノブはあきれた顔で溜息をついた。
「明彦君は用事で来れんそうです…。」
「なんで松の舎弟の明彦が来んで、幼馴染と社員がヤバイ橋渡らないけんの?なーノブ。」
「そうですよ、俺達、もーヤクザじゃないんですよ!」
そうだ、俺達はいまや只の一般市民でちゃんとした仕事も家庭もある。しかし俺もノブも、なかなかアッチの世界を綺麗に抜け出せないようだ。
「まーパクられるときは、ノブ頼むぞ。」
俺は笑いながら言った。
「嫌ですよ!そん時は俺逃げますよ!」
ノブも笑いながらそう言った。
「お前、松ん所の社員やんか!お前は逃げられんよ。しっかりパクられちょけ!」
「首藤さんこそ幼馴染やないですか!」
俺達はなんやかんや言いながらもこの状況を楽しんでいた。人間はなかなか変われないって事に気付き、諦めた。
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真冬の狂想曲2-3

2006-07-05 18:16:37 | 真冬の狂想曲
2-3
 法定速度を軽く無視する小さなオープンカーの窮屈な助手席で、携帯電話を取り出し、女房の睦に電話を入れた。
「なんか、ちょっとさー、松がなんかトラブってて、今から東京までついてきてくれっち言いよんけ、ちょっと東京に行ってくるわ」
「いつ帰ってくるん?」
睦は少し機嫌の悪そうな声を出した。
「何日かかるか解らんけど、15日までに帰って来んかったら、おまえが従業員に給料やっちょって」
「解ったけど、気をつけてね…。」
結婚して4年、最近は睦も俺って男を少し理解してきたらしい。文句の一つも言われずにすんだ。なんとか4,5日で帰ってきてやりたい。
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真冬の狂想曲2-2

2006-07-04 17:40:29 | 真冬の狂想曲
2-2
 俺は携帯電話の充電器と仕事用の携帯電話をコートのポケットに押し込みながら、
近所に住んでいる、うちの会社の従業員に電話を掛けた。
「アキ、お前家におる?」
アキは少し警戒しながら家にいる事をおれに告げた。
「家にはおるけど、用事があるけ…」
アキの言葉を止めさせて俺は話しを続けた。
「松のヤツから電話あってから、今から東京行こうとかふざけた事言いよるけ、お前悪いけど今からすぐ行橋駅まで乗せて行ってくれん?特急に乗らんと間に合わんけさー。」
アキはどうやらまた俺に連れ回されると思ってたらしく、ホッとしたように、
「それならいいよ。夕方からやけ、用事があるの。」

玄関の鍵を閉めて、県道までの70mを歩き出した。県道まで後10mぐらいの所で、
アキの運転する軽のオープンカーが右折して来た。俺を通り越し、俺の家の横の空き地でUターンをして、俺の横で車を止めた。
「悪いの、アキ。」
一応の断りを入れて、窮屈なオープンカーに体を押し込んだ。
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真冬の狂想曲2-1

2006-07-01 16:27:20 | 真冬の狂想曲
2.-1

 10分もしないうちにノブからの電話がなった。
「首藤さん、社長から話聞きました?」
「おう、だいたい聞いたよ。」
ノブは溜息をついてこう続けた。
「なんで俺達なんですかね~?俺達もう堅気ですよ。ヤバイ橋なら回りのヤクザ連中を連れて行けばいいのに!」
俺も溜息を吐きながら言葉を返した。
「まー、何かヤクザに頼めん事情があるんやろ。」
またノブは深い溜息を漏らした。
「じゃー、首藤さん、2時に小倉駅の新幹線乗り場のほうに来てください。俺は今小倉の事務所のほうにいますんで。」
なんだ、こいつに俺を迎えにこらせるんじゃないのかよ!軽くイラついて時計に目をやる。
1時13分だ。小倉まで40分程かかるんで、時間はあまり無い。
「おう、解った。急いで行くわ。小倉に着いたら電話するわ。」
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