日本労働組合総連合会(連合)は26日、今年の春闘の第2回集計を発表し、定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は全体で2.36%となった。今月中旬まで続いた春闘は主に大手企業の労使交渉だが、中小企業も夏頃までに順次決着していく。
例年の傾向から、最終的にはこれよりもやや低い数字に落ち着く見通しだ。政府・日銀は、景気回復の鍵となるとして、今年に入ってから企業に積極的に賃上げを呼びかけてきた。今回の数字は、企業がその期待に応えたことを示したと言えよう。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)などの海外経済メディアは、「10数年間で最大の賃上げ率」と報じている。
一方、2月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)は、7ヶ月連続で伸び率が下がり、ついに2年間で初めて0%となった(ブルームバーグ)。デフレ脱却に向け、これが賃上げの影響で再びプラスに転じるか注目される。
◆大手自動車メーカーは軒並み10数年で最大のアップ率
今回集計された賃上げ率2.36%を前提とすると、今年のベースアップは0.56%となる見込みだ(ロイター)。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)はこれを「近年で最大の賃上げ」、FTは「10数年で最大の基本給アップ」と報じている。
トヨタは、ボーナスを除く平均3.2%の賃上げで妥結した。基本給は平均1.1%(4000円)アップする。日産は1.4%(5000円)のアップだ。トヨタは2002年以来、日産は2004年以来最大のアップ率だという。大規模リコールなどで業績悪化に苦しむホンダも2.9%賃上げした(WSJ・FT)。日産の西川廣人CCOはFTに「これは一時的なものではない」と、賃金アップの傾向は今後もしばらく続くという見方を示した。
しかし、識者の一人は、円安の恩恵を受けやすい製造業と、その反対の非製造業では温度差があると指摘する。例えば、コンビニ大手のファミリーマートは、今年の賃上げを見送るとしている。また、春闘のデータに含まれる企業は全体の5分の1以下とされており、日本の労働者の約70%は中小企業に雇用されている。そのため、今回の数字を見て「日本経済は着実にデフレの終焉に向かって階段を上がっている」(第一生命経済研究所チーフエコノミスト・永濱利廣氏)といった楽観論もある一方、慎重な見方を続ける識者も多い(WSJ)。
◆「我々には社会的責任がある」
日立は、円安による固定費上昇の影響は「危機的」だとしながらも、「我々には社会的責任がある」(中畑英信常務)と賃上げを断行した。…