働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

電通過労死(過労自殺)と時間外労働時間過少申告

2016年12月29日 | メンタルヘルス
報道(朝日新聞)によると、厚生労働省・東京労働局は「広告大手の電通と幹部社員1人を、社員に違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで書類送検した」とのことで、この幹部は昨年クリスマスに過労死(過労自殺)した高橋まつりさんの直属の上司になります。

朝日新聞の取材によると、「(労使が結んだ時間外労働時間の)上限の範囲内に収まるように労働時間を過少申告させた」ということですが、時間外労働時間の過少申告の問題は電通だけに限られたことではないと思います。

この電通事件をうけて、厚生労働省が公表したばかりの「過労死等ゼロ」緊急対策の中に「違法な長時間労働を許さない取組の強化」という項目があり、その項目のには「使用者向けに労働時間の適正把握のためのガイドラインを新たに定め」、新ガイドラインの内容としては、「労働者の『実労働時間』と『自己申告した労働時間』に乖離がある場合、 使用者は実態調査を行うこと」と記載されています。

ここが、労使ともに注目せざるを得ないポイントの一つになります。その評価については新ガイドラインの策定を待ちたいと思います。

なお、今回の「過労死等ゼロ」緊急対策では、時間外労働時間管理の問題とともにパワハラ防止を含むメンタルヘルス対策が重要なポイントになります。

セクハラやマタハラが法令で規定されているのに、いまだ法令で明確に規定されていないパワハラですが、このまま法令で規定されないまま、二度と悲劇を繰り返することのないパワハラ防止ができるかどうか、長時間対策とともにパワハラ防止策についても注視していきたいと思います。

*「過労死等ゼロ」緊急対策の概要
1 違法な長時間労働を許さない取組の強化

(1) 新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底
企業向けに新たなガイドラインを定め、労働時間の適正把握を徹底する。
(2) 長時間労働等に係る企業本社に対する指導
違法な長時間労働等を複数の事業場で行うなどの企業に対して、全社的な是正指導を行う。
(3) 是正指導段階での企業名公表制度の強化
過労死等事案も要件に含めるとともに、一定要件を満たす事業場が2事業場生じた場合も公表の対象とするなど対象を拡大する。
(4) 36協定未締結事業場に対する監督指導の徹底

2 メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組の強化
(1) メンタルヘルス対策に係る企業本社に対する特別指導
複数の精神障害の労災認定があった場合には、企業本社に対して、パワハラ対策も含め個別指導を行う。
(2) パワハラ防止に向けた周知啓発の徹底
メンタルヘルス対策に係る企業や事業場への個別指導等の際に、「パワハラ対策導入マニュアル」等を活用し、パワハラ対策の必要性、予防・解決のために必要な取組等も含め指導を行う。
(3) ハイリスクな方を見逃さない取組の徹底
長時間労働者に関する情報等の産業医への提供を義務付ける。

3 社会全体で過労死等ゼロを目指す取組の強化
(1) 事業主団体に対する労働時間の適正把握等について緊急要請
(2) 労働者に対する相談窓口の充実
労働者から、夜間・休日に相談を受け付ける「労働条件相談ほっとライン」の開設日を増加し、毎日開設するなど相談窓口を充実させる。
(3) 労働基準法等の法令違反で公表した事案のホームページへの掲載

→「過労死等ゼロ」緊急対策(PDFファイル)


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