『ろばや』のブログ

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SAYAMA みえない手錠をはずすまで

2013年11月19日 | 映画


 初めに、この映画について語ることは「野暮」であることをお詫びしなければいけない、かもしれません。作品について、石川さん夫妻について語られる言葉を読むよりも、映画を通して「ふたり」に出会ってもらわないと始まらないのです。

 ドキュメンタリ映画『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』のフライヤーを初めて見たのはいつ頃だったのか、金監督の前作『空想劇場』のファンだった私はこの映画ができるのを心待ちにしていたのですが、当然ながらはっきりとしたイメージはありませんでした。友人の間で狭山事件が少し話題になっていた頃、ある日ろばやに行ってみると何十枚かのチラシが置いてあって、そこにはご夫婦の写真が。「あ、これだ」と思いました。

 写っているのはあるご夫婦のほのぼのとした、平和な一瞬なのですが、一枚のポートレイトとしてこれ以上雄弁な写真があるでしょうか。何をやろうとしている映画なのか、石川さんは本当に無実なのか?すべての答えが「言外に」伝わってくるような写真だと思います。語らずして人の心を掴んでしまう、「表現」ってすごいなぁと思います。

 完成上映会のあった10月31日、日比谷野外音楽堂での狭山事件の集会には少しだけ顔を出しました。場外では青いヘルメットの人達、次々に渡される狭山事件と関係のないビラ、入口を取り囲む異様な喧噪。「金監督は、この空間に、『表現者』としてよく入っていったなぁ」と私は心底驚きました。三里塚など長期化している運動にはそういう側面がありますが、何が、どうしてこうなっているのか、ということが簡単には説明できない複雑な歴史が、狭山事件を取り巻いているのだと思います。当然、様々な政治力学に囲まれるだろうし、映画として「表現」であることを通そうとすれば、他の題材よりもはるかにリスクの高いテーマだろうと思いました。

 映画を観終わって、しみじみと感じたのは「この世にはなぜ『他者』(自分以外の存在)があるのか」ということでした。そして「すべてを語らない」手法を採った金監督の胆力に敬服しました。そのストイックさこそが、映画を観た一人一人に、石川一雄さんと早智子さんがどんなに「素敵なふたり」なのか(そして、石川さんが「無実」だということ)を、大切な家族・友人に「伝えたい」という気持ちにさせるのだと思います。そのようにしているうちに、「差別って何なんだ」「裁判官は何をやっていたのか?」など、諸々の強い疑問が湧いてきます。

 10月31日以来、私はあることを強く願い、祈るようになりました。狭山事件の再審開始と、石川さんの無実が「司法の場で」証明されることです。「願う」「祈る」という心の働きは、起きている物事の過酷さ・残酷さを受け止めながらも、世界に対する基本的な「肯定」がなければ生まれてこないものです。それを「愛」と呼ぶか「信仰」と呼ぶかは人それぞれでしょう。私に「願う」ことを与えてくれたこの映画に、石川一雄さんに、一人でも多くの人が出会ってほしいと思います。

( 早川 )


追記:上映会情報は公式サイトでご確認ください。

映画『SAYAMA みえない手錠を外すまで』
公式サイト(上映会情報)
FACEBOOK


東京での直近の上映会はこちら(音楽担当・谷川賢作さん公式サイトより)。
 
11/28(木)「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」荒川上映会(@ムーブ町屋)
【 時間 】開演18:30(上映時間105分)
【 会場 】ムーブ町屋 3F ムーブホール
http://www.sunny-move.com/move/
・地下鉄千代田線・町屋駅 0番出口より 徒歩1分
・京成線・町屋駅より 徒歩1分
・都電町屋駅より 徒歩1分
【 出演 】上映挨拶:石川一雄, 石川早智子
【 チケット 】一般 1,000円 中高生 500円 全席自由
【 主催・お問い合わせ先 】
「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」荒川上映実行委員会
電話:03-3803-4074(解放同盟荒川支部) 






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