琳派墨絵保存倶楽部・部誌 「なてし子」

江戸琳派の祖、酒井抱一家に伝来する本格的な琳派の画法を継承している「琳派墨絵保存倶楽部」の活動日誌ブログです。

②屏風絵のたのしみ「夏秋渓流図屏風」その2

2021年12月08日 | 琳派、日本画、酒井抱一

画面の中央、渓流とヒノキの木立の前に生えているのが、

桜です。

(前回の続きから)

++

 

山百合とは随分、対照的な配置ですね。

山桜でしょうが、苔が生えるほど年を老った古木なのですが、

生まれた条件が良くないのでしょうか、枝を張るものの伸長していません。

しかしながら、紅葉した葉が美しくて、

精いっぱいの生きざまが伝わってきます。

 

下をうつむく山百合に対して、

山桜は枝を天に向けて広げています。

 

どちらも、檜に比べれば

ほそい幹の植物です。

 

 

(檜に沿って垂直に生える百合。うつむいて咲いている。)

 

(渓流を渡り、百合に呼びかけるように枝をひろげる山桜。本来は大木になる。)

 


琳派の絵をお稽古していますと、

この様に、対照的に絵が描かれている作品に

よく出会います。

 


絵の面白味のため、とか

構図にアクセントをいれるため、などの理由であれば、

他にもいくらでも やり方はあると思います。

 

それよりも、対照的に描かれたモチーフの中に、

一番伝えたいメッセージが込められているというように

私などには感じられます。

 

しかも、こちらの百合と紅葉は、

どちらも檜の陰であったり、伸長を妨げられてこそいますが、

こんなに堂々と、画面中央に配置されています。

 

 

なにか、理由がありそうですね!

 

そういえば、こちらの百合の花、

実物の檜に対して、大き過ぎるとも言われているんですよ。

 

BIGな、大物な百合。

この異様な絵の中ではなの香りのように

純真で無垢な存在感を、放っています。

そのため、見ているこちら側がハラハラするほどで、

他の絵にはない、「緊張感」漂う屏風作品にしています。


では、次のブログに続きます。



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