琳派墨絵保存倶楽部・部誌 「なてし子」

江戸琳派の祖、酒井抱一家に伝来する本格的な琳派の画法を継承している「琳派墨絵保存倶楽部」の活動日誌ブログです。

⑤屏風絵のたのしみ「夏秋渓流図屏風」 点苔のおはなし

2021年12月10日 | 琳派、日本画、酒井抱一

人間らしさがあるので、

いろいろな視点から愛情と尊敬をもって味わっております。

(前回から)


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年ふる古木などに、点々とこの点苔が描かれることが多いですね。

松の古い大木、などの絵は、幹の所に、ばんばんと描かれています。

まさに年輪を重ねた証拠なのですね。

 


「この木は、年経た神聖な木ですよ!

霊妙な所があるからこそ、木でも長生きするものです。

それは神も宿るからでしょうか、これはそんな素晴らしい木です。」

このようなメッセージが、点苔にはあります。

ですから、点苔がついている樹木の絵というのは、

本来はすごくめでたい、ありがたいものなのです。

日本の神道の思想が濃く影響して、

この苔を、とても貴重で高貴なものにしていると思います。

 


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実際の世界でも、こんなに苔が生えてくるものなのでしょうか?

 


今の現代の私たちの感覚では、

こんなに苔が生えた、びっしりと生えまくった樹木なんて、

身近ではありえない事です。

しかしながら、体感として、樹木の幹に苔が感じられる、

点苔の存在に納得できると思う経験は、あると思うのです。

 


私は、点苔とは、そういった「霊感」の表現の一部のようなものだと

思っています。精神世界の表現とでもいうのでしょうか。

 


私が子供の頃、近所に園芸の上手な農家のおじさんがいました。

その方のお宅の庭に、見事な梅の木が何本もあって、

木ごとに肥料の配合を微妙に変えて、手入れしているということでした。

幹の根元は、こんもりと丘の様にもりあがっていて、

みっしりと緑色の苔で覆われていました。そして、梅の幹も、

幹の北側には苔が生えていました。

まるで苔のなかから花が咲くようでしたので、

私は梅の花は緑色の中から咲くのだと思って育ったくらいです。

 


ちなみに、そのおじさんのお宅の土間も、緑色の苔が生えていました

(今思うと、何故なのでしょうか?)。

 

 

 


今ほど酸性雨も降らなくて、土に力があり、適切に肥料をやって栄養があれば、

苔はよろこんで生えてくるものなのかもしれません。

また、空気も清浄であれば、神妙な感じもする事でしょうし、

その様な場所は霊的な、次元の高い感じがして、

生える樹木にも感応するところがあるものなのでしょう。

 


だいたい、このようなところが、

点苔にたいする見方の

スタンダードなところではないかな、と思います。

 

 

なぜ其一はあの点苔の表現に行きつくのでしょうか?

其一のメッセージとは何なのでしょうか。


では、次のブログに続きます。



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