琳派墨絵保存倶楽部・部誌 「なてし子」

江戸琳派の祖、酒井抱一家に伝来する本格的な琳派の画法を継承している「琳派墨絵保存倶楽部」の活動日誌ブログです。

④屏風絵のたのしみ「夏秋渓流図屏風」 点苔のおはなし

2021年12月08日 | 琳派、日本画、酒井抱一

 

こちらの鈴木其一による、「夏秋渓流図屏風」です。

屏風全体を見る前に、もうひとつ!追加で!点苔(てんたい)のおはなし(しろみどりのコケのこと)です。

 

この白色と緑色のお花っぽいもの、ご存じですか?

実はこれ、苔(コケ)なんです。

「点苔」(てんたい)という名称がついています👏

 

点々で囲むから?それとも点々と付いているから?

おそらく点で囲むからでしょう。

作品によりますが、手のひらや草鞋くらいの大きさで描かれた、大きな点苔もあります。

点々とささやかについているなんて言えるものではありません。

「点による、苔の描写」、という昔の中国の画法に由来していたかと思います。

 

しかし、この点苔ですが、中国ではそんなに流行していないのではないでしょうか。

点苔はラストに仕上げで描きこむものなのですが、

あるのとないのとでは、全然違い、

点苔を描くことによって、作品全体が引き締まります。

 

私も人生で最初に点苔を描いてみた時、

出来上がった作品のあまりの違いに、

「いや~…。コケ、すごい。…。」

と言ったきり、しばらく言葉が出てきませんでした。

この形状が、この色が、デザインが、

「世界を包んでしまう」とでもいうのでしょうか。

かなりショックを受けました。点苔衝撃です。

 

点苔、

といっても、様々なデザインがありますね。

美術館などで、その作者なりの苔デザインなどを感じたりするのも

愉しみのひとつといえます。

昔の、工房で描かれたような作品ですと、

「これは、下の方のお弟子が担当するのでしょうか?」というような点苔もよくあります。

あまりうまい下手がなくて、どう描いてもそれらしくなり、

絵のバランスを学ぶのにとてもよい題材です。

 

 

時には、「苔に頼りすぎではないかい。」

という作品も、ままあり、

人間らしさがあるので、

いろいろな視点から愛情と尊敬をもって味わっております。

 

 

 

 


では、次のブログに続きます。

 

 



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