琳派墨絵保存倶楽部・部誌 「なてし子」

江戸琳派の祖、酒井抱一家に伝来する本格的な琳派の画法を継承している「琳派墨絵保存倶楽部」の活動日誌ブログです。

③屏風絵のたのしみ「夏秋渓流図屏風」その3

2021年12月08日 | 琳派、日本画、酒井抱一

ところで屏風作品ですが、

そもそも どの屏風も3つの視点から絵を楽しめるのを

ご存じでしたか?

 

こちらが今回の屏風絵です。正面から撮影された写真で、

絵もまっすぐ横にのばして、平らにしてあります。

 

**-**

 

現代の私たちは、

絵は真っ平らなもの、四角い形のものだと思いがちなのですが、

それは絵の歴史からみると、

結構、最近のブームかもしれません。

 

特に、屏風の作品は、

立てて飾って使用します。

使う時は、「くの字」に折り曲げて立てます。

 

そうしますと、3方向からの絵画作品ができるわけですね。

 

例ですと、こちらは教室で使用しているお手本ですが、

正面からみた図です。

三つの個所で折れ曲がっています。4つの面に分かれています。

どの4つの面も、見えていますね。

(正面)6種類の雑木図。濃淡のコントラストがはっきりしている。

 

次に、左側からみた同じお手本作品です。よく見える面と、まったく見えなくなる面がでてきます。

一番左がわ、手前にきた面は見えていると思います。

この様に、左側からみるときは、

【一番手前、その次、…ひとつの面を飛ばして、…その次の面】

と途中の面を抜かした絵を観覧します。

 

 

(左側から)6種類の異なる木の葉の形状がみえる。右に行くほど小さく、上に上がって奥行きがある。雲間に消えそう。

 

 

(右側から)6種類の異なる木の幹だけが見える。下から上へ、雲を突いている。

すこし、画像が鮮明ではないため、分かりにくい所もあるかもしれません。

 

このようにして、屏風絵は

正面から、左側から、右側からの3種類の絵が楽しめるようになっています。

そして、正面からはもちろんですが、

左側からは別の絵が、別の構図で現れてきて、

右からも同じように別の絵になります。

構図についても、正面から見ても、

左右のどちらからみても良いように、考えられて作られます。

 

絵のテーマは3つとも同じではなく、

正面から見て伝わってくるテーマに基づいて、

左右ではまた違った視点から、

その同一のテーマをなぞります。

 

この時に、作者の日頃の思想が垣間見えるので、

左右から見た方が、面白いんです。

とてもマニアックな屏風の楽しみ方のご紹介でした。

 

しかし、絵の評価は、正面から見える作品になります。

その正面に謳ってあるものが、その屏風絵の評価になります。

 

でも、それって、どうなんでしょうか。

日本は平面の四角い絵画作品ばかりではありませんので、

屏風作品についても、立ててみて、

正面と左右からみた写真をこそ紹介するというのが

本来のあり方ではないのかなと思います。

 

さて、この方法で「夏秋渓流図屏風」がどのような作品に見えるのか、

検証してみましょう。

では、次のブログに続きます。



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