WoodSound~日綴記

山のこと、川のこと、森のこと、その他自然に関することをはじめ、森の音が日々の思いを綴ってみたいと思います

桜夜行

2007-04-04 | Diary


今夜は新人の歓迎会で少し遅くなった。
その帰り、そこかしこで満開の桜が夜にたたずんでいた。

この季節が来るたびに繰り返し考えるのだが、
いったいこの夜の桜の持つ妖しさは何であろう。
もちろん昼間の桜も相当な妖気をはらんでいる。

しかし夜、それも月や灯火の薄明かりの下で見る、
白い花はゆらりとなまめかしい。

どこか完璧に美し過ぎて怖いのだ。危うさを感じる。
きっと美しいものの裏には、醜いものが隠されている。
何物にも陰と陽があるはずだが、桜には陰がない。
いやあるのかもしれない。
しれないが、その圧倒的な満開の容姿を前にすると、
そんなものは微塵も感じない。

恐らく梶井基次郎もそんな不均衡な感覚から、
“桜の樹の下には屍体が埋まっている”
と書いたのだろう。

そんな妖気を追い払うかのように
桜とそれを見やる私の間を、
一陣の冷たい夜風が吹き抜けていった。

家路を急ごう。

4 コメント

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全くの同感! (まさかず@コノ葉は風にのって)
2007-04-05 20:25:20
こんばんは。ご無沙汰してます。ほんと、桜を見るとすごくエロチックに思いますね。全くの同感。真っ暗な中、雪のように純潔な白さが、静かに散っていくさまは「死」を暗示させるようでもあり、季節を心のうちで切り替えてしまう日本人の感覚というものなんでしょうか。
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さくらから思うわびさび (トムノグ)
2007-04-05 21:41:00
森の音さん、詩人ですね。
ブログではもったいない程の文章表現に感服しました。
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まさかずさんへ (森の音)
2007-04-06 22:18:28
お久しぶりです。確かにエロチックですね。
この記事を書いてからずっと考えていたのですが、
私は陰がないと書きましたが、昼間の桜が陽で、
夜の桜が陰かも知れないですね。
ちょうど「もののけ姫」に出てくる、
シシ神とディダラボッチのような関係。
昼は生で、夜は死を表す。
といったイメージでしょうか。
いずれにしても綺麗の裏側を、
連想してしまうのは何故でしょうか?
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トムノグさんへ (森の音)
2007-04-06 22:25:24
過分なお褒めの言葉、ありがとうございます。
詩というほど大したものではないです。
ブログを書いて投稿してから、
うーんあの表現はちょっと違うな、
あっこっちの言葉のほうが適切だ!
などと思い返して書き直すことがよくあります。
大抵は次の日、自転車を漕いでいる時などに、
思い起こすので直したりしませんが・・・
感情にぴったりの言葉を探すって、
難しいけど楽しいなと思う今日この頃です。
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