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Minor Swing @Room

ジョニー・デップ他日常あれこれ

ブロークバック・マウンテン原作(アニー・プルー)

2008年01月30日 20時00分00秒 | 


I miss you…。

I need you より奥ゆかしくて、
I love you より切ない言葉。

これを男が男に向かって言う場合“ちょっと待て”となりそうなところ。
でも『ブロークバック・マウンテン』ではそのシーンが清らかで切なくて、
涙が滲むシーンだったと言わなければなりません。


2月に届くと言っておきながら、
『スウィーニー・トッド』のサントラと同日に届いた『ブロークバック~』のDVDと原作文庫本。

本を取り出してみると…あまりの薄さに驚き。
開いてみると…字がデカい。
その上なんだか国語の教科書みたいな行間…。

これって短編だったんですね。知らなかった。
そして作者が、ラッセ・ハルストレム監督の『シッピング・ニュース』の原作者でもありました。
あれも心に沁みる良い映画でしたよね。
私はハルストレム監督だと『サイダーハウス・ルール』も好きですが。
もちろん我らがルーの『ショコラ』も。

映画に魅せられると原作も読みたくなることが多々あります。
それはストーリーが好みだったり、映像に惹かれたり、
映画となったその世界にもっと浸りたい、などと理由は様々ですが。

映像を一度観ていることによって、原作を読みながら風景が蘇るという楽しみの他、
監督が作り上げた行程を味わうような楽しみもあるのです。
どの部分をカットして、どの部分をアレンジして、どの部分を重要視したのか。
映画では描かれなかった物語の細部を知る楽しみも。

ただ、原作を先に読んだ場合自分の中にイメージが出来上がってしまうので、
映画との違和感に戸惑うことが無きにしもあらず…。
なので映画を先に観るのが私にはベストかな。


映画については以前こちらで語りました。

10代の終わりに出会った二人のカウボーイが16年に及ぶ逢瀬を続けた愛の物語。
『ブロークバック・マウンテン』は同性愛を扱った作品ですが、
この映画の中で私なりの謎があったのです。

それは、彼らの恋がいつ始まったのか?ということ。

つい勢いでしてしまった(ように見える)アレの後に気持ちが傾いたのか、
それともお互いに一目惚れだったのか。

その答えが本文の中にありました。

羊番のために雇われた二人が山に登って間もなくのこと。
一緒に焚き火を囲んで夜の宴を開いた時。
タバコを吸い、ウイスキーを分け合い、時々火に枝を投げ入れて話し続けた夜。

イニスは向かい風をついて羊の元に戻る途中、思っていた。
人生でこんなに楽しい時間を過ごしたことはない。
この馬で飛び跳ねて月の白い部分をもぎ取って来られるぐらいだ。(本文より)


この夜の語らいの中で恋は始まったのですね(○○の前だったということで了解・笑)
映画ではあのシーンかぁ…と納得しました。
確かに恋の始まりってこんな気持ちだよね、と思いながら。

でももしかすると、それ以前の出会いの瞬間に、
深い無意識の底で“恋の発芽”が起こっているのかもしれません。

ただ《とても楽しい時間》をいくら過ごしたとしても、同性と恋に落ちるケースは稀ですが…(汗)
結局“そうなる素質”みたいなものがあるのかもね。
発芽する土壌がそもそも違うということでしょうか?

あともう一つ印象的だった文章がこちら。

ある夜、イニスが背後から近づいて来て、彼を抱き寄せた。
その静かな抱擁は、二人が共に抱えている渇き、性とは別の渇きを癒してくれた。
(中略)
二人の離ればなれの辛い人生に訪れた、嘘いつわりのない、魔法のような幸福な瞬間だった。
(中略)
あれ以上に二人が深く結ばれた時はなかったのだから。(本文より)


結局、心と心の問題なんですよね。
もちろん性も含まれていますが、それとは別の部分の意味が大きい。
そして、下界ではめったに会えないことについて、
『おまえのことが時々無性に恋しくなる』
というジャックの言葉が、切なくも奇麗な響きを持って伝わってくる訳です。

(注)文法的に正しくても、男に向かって言う『おまえ』→『恋しい』に違和感を感じる場合、
それは常識的文法による引っ掛かりかと思いますので気にしないで進みましょう。
概念を破壊したその向こうに、ブロークバック・マウンテンは美しくそびえ立つのです…(?)

ラスト間際の一文、イニスがジャックの夢を見た翌朝に、
枕を濡らす朝もあれば、シーツを濡らす朝もあった。(本文より)
…上手過ぎて座布団3枚なんですが…ここ笑っていいところですか?(笑)←(笑ってる)

それから原作では、ジャックが“出っ歯”(本文表記)でイニスの唇が切れて血が出た、なんていう描写も。
『出っ歯』ひとつで映画の美しさを粉砕してしまう破壊力を秘めております。
映画を観ておいて良かったなというのが正直なところ。
映画は映画、原作は原作と、ビジュアルについてはいつも以上の割り切りが必須でございます。

それでも、映画で表現された同じ種類の愛はここでも顕在で、
二人のブロークバック・マウンテンへの想いは以下の(長い)文章から伝わってきます。

何年も何年も、二人は苦労して高原の牧草地や山の源流域に登り続けた。
馬の背に荷を積み、ビッグホーン山脈へ、メディスンボウ山脈へ、ギャラティン山脈南端へ、
アブサロカ山脈へ、グラニット山脈へ、アウルクリーク山脈へ、ブリッジャー=ティートン山系へ、
フリーズアウト山脈とシャーリー山脈へ、フェリス山脈とラトルスネーク山脈へ、ソルト川水系へ。
ウィンド川水系へは何度も入り、シエラマドレ山脈へ、グロヴァント山脈へ、ウォシャキー山脈へ、ララミー山脈へ。
だが、ブロークバック・マウンテンを再訪することはなかった。(本文より)


何年過ぎてもうかつに近寄れない神聖な場所。
不用意に訪れて、完璧な愛の気配を壊したくない場所。
そこには触れてしまうと消えそうな、儚く美しい夢が眠っているのでしょう。

でも、もしかすると、
そこに確かに存在した愛を確認するのが辛かったのかもしれません。
山を降りた二人には、愛を渇望する苦しみしかなかったのですから。

ヒース・レジャー(イニス)は一人ブロークバック・マウンテンに登り、
そこでジャックを待っていると、私の中ではそういうことになっています。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
深い! (まみぃ~)
2008-01-31 15:01:28
DVD見ました。
そしてReiさんの文を、頷きながら読みました。
なるほど~「神聖な場所、壊したくない場所」、あーなんかわかる気がするな~。
場所じゃないけど、ジョニー(家族も)がそんな存在です。

「シーツを濡らす・・・」きゃあ~~~
私は叫んでみました(爆)







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まみぃ~さん (Rei)
2008-02-01 01:46:32
まみぃ~さんさん、こんばんは♪
ご覧になられたんですか

私はジャックにヒゲが生えてきた辺りから『ムムム…』となりましたが(笑)、
それでもとっても忘れ難い映画です。

>場所じゃないけど、ジョニー(家族も)がそんな存在です。
そうですよね。まみぃ~さんのお気持ちも分かりますよ

>「シーツを濡らす・・・」きゃあ~~~
>私は叫んでみました(爆)
私は『上手い!』と唸った後に笑ってしまいました(笑)
返信する
Unknown (パピヨン)
2008-02-10 17:31:49
以前、この映画の記事を、かなり真剣に
語っていらっしゃったので、今回も
Reiさんの深い洞察力で分析されるのだヮと
期待しながら読ませて頂きました
フムフム…なるほど…
『(注)』あたりから、Rei節に犯され始め、
直後の『シーツ』、トドメの『出っ歯』に
もう、笑いが止まらなくなり、2人が登山した山脈
の連なる名前を見る頃(あまりの多さに
ひとつひとつは読んでません)には、
呼吸困難で引きつり笑いに…

お前等、こんなに沢山登ってたんか~~!
返信する
パピヨンさん (Rei)
2008-02-16 16:07:00
パピヨンさん、こんにちは。
お返事遅くなってごめんなさいね。

『ブロークバック~』は映画を見て感動しました。
その時に一度熱く(?)語らせて頂いたのですが、
原作を読んで再燃焼したようですね(笑)

山脈の名前を書き写す時に、もしかして誤字脱字があるかもしれないな~と思いながらも、
間違ってても誰も読まないだろうと思って(現に私もそうでした・笑)。
やはり正解だったようですね。
でもパピヨンさん、ここ笑うところじゃありませんよ~!(爆)
『シーツ』の方は笑うところでOKですよね??
ご丁寧な感想をありがとうございました♪

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