~Words~

心に宿る言葉たち

~ONCE~

2006-12-03 | Favorite 詩


あなたにはお気に入りがひとつあるはずである
いや、ふたつかもしれない。みっつあるかもしれない。
けれどNO1は必ずあるはずだ。
それをあなたは言いふらすだろうか。

それを口にするのはかなり気分よく酔っ払った時か、
好きな人の前ではこっそりと打ち明けるかもしれない。
でも、普段のあなたはそんなことはあまり口にしない。

それはどうして?

そんな事は決まっている。大切だからだ。特別だからだ。
そして、あなたは思う。何故こんなに『特別』なのかな?と・・・

久しぶりに谷川さんの詩でも。。。

                   

               LOVE  IN  THE  AFTERNOON

                                  谷川  俊太郎

 

あなたは黙って生き残る人だった

そして生き残ることの厳しさに

じっと耐えてゆく人だった

あなたは不器用に突っ立っている人だった

そしてその大きな背で

青空のありかを教えてくれる人だった

あなたはうつむいて口ごもる人だった

そしてそのあなたの沈黙から

私たちは信ずることの強さを学んだ

あなたははにかんで笑う人だった

そしてあなたは笑うと

大きな子供のように無邪気だった

あなたはとぼけてウインクする人だった

そしてそういう自分に

ひどくびっくりしたりした

あなたは拳の中に苦しみを握りしめた

そしてその孤独によって

男の美しさを示す人だった

あなたは大きなカウボーイだった

あなたはこの世からちょっぴりはみ出し

そういう自分をもてあましていた

あなたはやさしい人だった

だがそのやさしさを

決してあらわに見せない人だった