ー 少し季節はずれですが -
早春の季節になると、昔、学生時代の数人で
卒業旅行に行った長野県の
あんずの里のことを思い出します。
あんずの里
アルバイトでためたお金で、5人で行った
旅でした。
山を下る道をまちがえ
川の流れにそって降りていったら
偶然にもめざしたあんずの里に出ました。
花はまだ咲いていなくて、出会ったおばあちゃんが
「 おねーちゃんたち、かわいそうに。
花はもう少し先なのよ。 」
そう言って近所のおばあちゃんたちを呼び
筵をしき、それぞれがお茶や湯のみをもち
あんずの小さい実の砂糖煮や
間引いたほうれん草のおひたしや、漬物で
御馳走してくださったっけ。
「 熊に会わなくてよかったね。この間も
うちの鳥小屋が襲われて食べられたのよ。
気をつけて帰りなさいよ。
花の咲くころまたおいで。 」
やさしいおばあちゃんたちのもてなしに
花よりも感激して、貧乏学生であり
それぞれ鬱屈し悩んでいた私たちは
心がなごみ、ほっとして旅の電車に揺られました。
その電車の中でも、向かいの席の方々の
旅行者に対する優しさが小さな会話を弾ませました。
時が流れすぎ、あのおばあちゃんたちのお顔は
もうはっきりとは思い出せませんが
その季節になると
桃源郷のように胸に浮かんで来ます。
花は美しいですが、それよりもまた、旅人
行く人・来る人・いのちたち
それを迎え、送る、優しい言葉や、笑顔
そして、もてなしの心こそ
花よりもなお、心に残る美しい花なのかと思います。
「 観音経 」
世尊 妙相具
すべての、善意の良い生命に祝福がありますように。
今ある、その場所の
明るい小さな灯りになれますように。
下記 「 一夜賢者経 」 より
「 されば、ただ現在するところのものを、そのところにおいて
よく観察すべし。
揺らぐことなく、動ずることなく そを見きわめ
そを実践すべし。
ただ今日 まさに作すべきことを熱心になせ。 」