受験生のための『世界史B』

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受験生のための『世界史B』―本の紹介[高澤紀惠『世界史リブレット(29) 主権国家の成立』]

2013-03-02 11:43:54 | 受験生のための『世界史B』(未分類)
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 僕はそもそも文章を読むということがニガテで、さらに液晶画面(パソコンとかね)に書かれた長い文を読むことはもっとニガテなのですが、どうやら最近の若い人たちはそういったことにあまり抵抗がないらしく、こんなふうにブログを書いていても「全部の記事読みました!」なんて言ってきてくれる人がいるということにいつも驚かされます。

 というわけで、そんな「おれのつたない文章をしっかり読んでくれる人」に対する感謝のしるしとして、「もし歴史学に興味があるならこういうのも読んでみるといいかもよ」という本を紹介してみようと思います。

 今日取り上げるのは、

 高澤紀惠『世界史リブレット(29) 主権国家の成立』(山川出版社, 1997年)です。
 

 このシリーズは大学の先生(あ、僕は大学でヨーロッパ史を専攻しています)が「入門書としていいから読んでみるといいよね」と紹介してくれたのですが、

 全部で56冊あります。

 ふざけるんじゃないよ、と。

 そんなにたくさん読めるわけないでしょうが。

 ただ、一冊一冊はかなり薄い本ですし、要点がまとめられているので読みやすいですね。

 56あるシリーズの中からどうしてこの1冊を選んだかというと、

 アマゾンで安かったからです。

 そんなもんです。

 
 本の内容としては、非常に示唆に富んだ良書だといえます。

 「領土・主権・国民」といういわゆる「国家の三要素」を備えた国家は、近代以降に生まれたものである。それまでは国家は「家」(ハプスブルク家など)の財産だと考えられていた。しかし16世紀の宗教改革は各地の諸侯に「宗教」という形の領域支配を許し、それに次いで17世紀に起きた三十年戦争は、単なる宗派間の対立からやがては宗派に関係のない、ヨーロッパの覇権を巡る戦いへと移行していくことで国家が「独自の利害を追求する自律的なパワー」として存在し始めていることを示した。また、三十年戦争は軍事行政の成立という点からも重要であった。戦争にかかる莫大な費用を工面できるのは国家だけであり、その事実が国家に暴力を独占させ、支配下の民衆を服従させる強力な主権の存在を認めた。国家の三要素のうち、残る「国民」を如何にして創り上げるかは、19世紀以降のナショナリズムの課題へ受け継がれることになる。

 400字以内でまとめてみればこんな感じでしょうか。

 僕の読み方が悪いのか、宗教改革と三十年戦争の間にどのような関係があるのかはいまひとつ理解できませんでした。
 しかし、主権国家体制という現代において支配的なシステムを生み出したヨーロッパが、今になって「EU(ヨーロッパ連合)」という形でそのシステムに対して挑戦している、という指摘はおもしろいな、と思います。
 また、近年の「反乱」研究を持ち出して、「秩序」とは何なのか、というテーマにも軽く触れているのですが、それも目からウロコな指摘があって考えさせられました。

 グスタフ=アドルフとヴァレンシュタインがカッコよかったな。

 

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