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スグルの歴史発見

社会科教員をやっているスグルの歴史エッセイ。おもに中学生から高校生向きの内容ですが、大人でも楽しめると思います。

なぜ日本人はヴィトンが好きなのか。

2005年07月10日 10時00分23秒 | 世界史
 ルイ・ヴィトンは、日本でもっとも人気のあるブランドのひとつですね。
 ところでなぜ日本人はあんなにヴィトンが好きなんでしょうか。
 実は、ヴィトン製品のあの独特の模様は、もともと日本のものなんです。
 ルイ・ヴィトンが鞄屋をはじめたのは19世紀ですが、19世紀末のヨーロッパでは、ジャポニズムというものが全盛でした。ジャポニズム=日本的なものを愛好する風潮です。印象派の絵画が、日本の浮世絵の影響を受けている話は有名ですよね。印象派に限らず、当時は日本的なものがヨーロッパでもてはやされました。19世紀の日本といえば、前半は鎖国に閉ざされた神秘的なイメージが、後半は明治維新後の富国強兵政策にともなう高度成長のイメージが、ヨーロッパの人々のこころをとらえたんでしょうね。
 さて、ルイ・ヴィトンのイニシャルであるLとV、それに星と花をモチーフにしたあの幾何学模様がはじめてお目見えしたのは、19世紀末のことだそうですが、この模様は、日本の家紋などからインスピレーションを受けて生まれたと言われています。そういえば、あれ、ヴィトンの鞄の模様は、手裏剣とかに見えるような、見えないような・・・。
 日本人がヴィトンを好きなのは、あの模様が日本をルーツにしたもので、日本の伝統になじみやすいからなのかもしれませんね。
 こんどヴィトン製品を持っている人にあったらよく見てみましょう。

古代文明の時代、子どもはビールを飲んでいた!?(再掲載)

2005年07月02日 22時30分58秒 | 世界史
 現在では、20歳未満の飲酒は法律で禁じられているけど、古代文明の時代には、子どもたちはビールを飲むことができたという。それどころか、水よりもビールを飲むようにすすめられていたというのだ。いったいなぜだろう。
 古代には、浄水技術が不完全だったから、水を消毒することができなかった。水には人間の体に害を及ぼす菌が含まれていることも少なくなかったんだ。ところが、ビールのアルコールには殺菌作用があるので、ビールは水にくらべるとはるかに安全な飲み物だったんだ。
 話はビールだけではない。エジプトやメソポタミアは大河にうるおされた肥沃な土壌で麦がたくさんとれたけれど、イタリアなど地中海沿岸の文明ではそうはいかなかった。地中海性気候のもとでさかえたローマやギリシャの文明ではそこで、麦のかわりに葡萄をつかってアルコール飲料をつくりだすことを考えた。これがワインだ。
 いまでは人間の体とくに子どもの体に害を及ぼすと考えられているビールやワインだけど、古代にはまったく反対に、安全な飲料として幅広い世代に飲まれていたってことだ。
 この考えをもうすこし深く掘り下げてみると、アルコールが人口増加率にかかわってくると考えることができる。危険な真水しかのめなかった地域にくらべて、安全なアルコールを飲んでいた地域では、子どもの死亡率が低かったはずだから、とうぜん人口増加率も高かったと思われる。人口増加は、高度な文明の発達に不可欠な要素だから、「アルコールのない地域では文明の発達はおくれていた」「アルコールの存在が文明の発達をあとおしした」といえそうだ。

ピラミッド完成までに何年かかる?

2005年03月01日 18時27分58秒 | 世界史
 エジプト文明を代表する建造物ピラミッドは、一般には王の墓として建造されたと考えられている。近年では、ピラミッドは王の墓ではないという説も支持されているし、僕自身もこちらの考えに賛成なのだが、今回はピラミッドが墓であるか否かはさておき、ピラミッドの建設にかかる年数を推定してみたい。
 というのも、考えれば考えるほど、これが人間の作った建造物だとは信じられなくなるのだ。
 多くのピラミッドの中でもっとも大きく、もっとも有名なクフ王のピラミッドは、底辺233m、高さ146m、平均2.5tの石が約230万個積み上げられている。さっと聞き流してはいけない。底辺が233mって、かなりの大きさだよ。それに2.5tは2500kgもあるんだよ、いったい何人でどうやって運んだのだろう。
 さらに驚くべきは230万個という数字だ。仮に、1日に1000個の石を積めたとして、休みなしで365日働いて1年で36万5千個積む計算になるから、230万個になるには7年弱かかる。でも、2500kgもある石を、一日に1000個も積めるだろうか?無理だよね。じゃあ500個だとすると、13年程度かかる。500個だって十分無茶な数字だ。現在の建築業者だって、2500kgもある石を一日で500個も積めない。さらに半分の250個で計算すると、完成までに25年かかってしまう。
 ところが、この計算には問題がある。この計算は、365日、ずっと作業が行われたことを前提としている。ところが、エジプトでは一年が3つの時期に分かれていて、それぞれ種まきの季節が4ヶ月、ナイル川の氾濫の季節が4ヶ月、収穫の季節が4ヶ月だった。そして、ピラミッド建設が行われたのは、このうちナイル川の氾濫していた4ヶ月間だけだったことが、最近の研究でほぼ断定されている。種まきや収穫の季節は、労働力を農業にとられてしまうから、とてもピラミッド建設などやっていられないんだ。
 そうなると、さっきの計算はおかしくなる。1年に120日ほどしか作業ができないとすると、一日1000個だと約20年、一日500個だと約40年、一日250個だと約80年もかかる。一日に250個だって信じられない数字なわけだから、もしも作業効率がもっと悪いとしたら、完成に要する年数はもっと長くなる。
 ピラミッドが墓ではないとする根拠のひとつが、この、墓にしてはかかりすぎる製作期間だ。それにしても、いったい何年かけて、クフ王のピラミッドは完成したのだろう?(結論出てなくてごめんなさい)

18歳以上に選挙権

2005年01月31日 22時11分14秒 | 世界史
 日本の選挙権は、20歳以上の男女に認められている。
 ところが、このたび行われたイラクの選挙では、18歳以上の男女に選挙権が認められている。
 さて、イラクの選挙のほうが日本の選挙よりも先進的であるというこの事実を、わたしたちは、どうやって中学生や高校生に説明していけばいいのか、非常に困る。
 なぜ日本の選挙権は20歳からなんでしょう。
 子どもの権利条約の趣旨からみても、18歳になれば大人と同じ扱いを受けていいと思う。
 僕はあと10年以内には、選挙資格は18歳に下がるのではないかと考えているんだけど、これを18歳に下げた総理大臣は教科書に太字で載ることになるだろう。さて、誰がやるかな。
 民主国家日本が、イラクに追いつく日はいつ???

ムワッヒド朝と両シチリア王国

2004年12月17日 14時15分50秒 | 世界史
 高等学校の世界史の教科書には、あまりにもお粗末な扱いの語句が少なくない。両シチリア王国とムワッヒド朝はその好例だ。名前が出てくるだけ、である。日本の教科書は、とにかく語句の詰め込みをめざしているから、こうゆうことになる。その王朝が歴史に果たした役割や意義を説明しないのなら、名前など出さない方がいい。
 両シチリア王国は、1130年にノルマン人によって建国され、形式としては1860年まで続いた王国である。この両シチリア王国は、12世紀のいわゆる「商業の復活」と深くかかわっている。当時の地中海の制海権は、イスラム教徒に握られ、「キリスト教徒は板きれ一枚浮かべることができない」という状態だった。制海権の喪失は、経済圏の喪失である。ヨーロッパ人は、地中海経済圏をイスラム教徒に支配され、自給自足とわずかな域内交易にたよって生活していた。
 これに変化をもたらしたのがノルマン人、いわゆるバイキングの活動だった。彼らは海や川を自在に移動でき、戦闘にも強かった。その一派が、地中海にまで進出し、イスラム教徒に支配されていたシチリア島を奪い返して建国したのが、両シチリア王国だ。ローマ対カルタゴの戦争がそうであったように、シチリア島の確保は制海権の確保を意味した。地図をみれば、西地中海と東地中海の往来におけるシチリア島の重要性は一目瞭然だ。
 両シチリア王国は、地中海の制海権をイスラム教徒から回復することで、12世紀の商業の復活の大きな足がかりをつくったのだ。
 ムワッヒド朝は、1130年から1269年まで存続し、北アフリカからスペインにいたる広大な地域を支配したベルベル人のイスラム王朝である。こちらは13世紀以降の、フィレンツェ、ジェノヴァといったイタリア諸都市の繁栄、フランドル地方の海港都市の繁栄とハンザ同盟の繁栄、シャンパーニュ市場の衰退と関わりがある。
 ムワッヒド朝の重要な点は、ジブラルタル海峡の領有にある。地中海と大西洋を結ぶ唯一の海路であるこの海峡は、ウマイヤ朝のイベリア半島進出以来、ずっとイスラム王朝の手に握られてきた。地中海沿岸と北ヨーロッパとの交易は陸路にたよらざるをえなかった。(陸路は海路よりもはるかに割高で少量の荷物しか運べない)。しかし、13世紀に入るとムワッヒド朝の勢力が衰え、北ヨーロッパと南ヨーロッパの間の水路が利用できるようになった。こうして、北欧経済圏と地中海経済圏が海路で結ばれ、北と南で海港都市が繁栄、内陸ルートとそれに沿った都市の市場は衰退することになった。
 ムワッヒド朝の盛衰は、ヨーロッパ南北の経済圏を結びつける鍵だったのである。
「重要な語句はどれですか」と生徒は問う。重要でない語句などない。重要なのは語句ではなく、その語句の持つ意味や意義、その事象が他の歴史事象の何によって影響を受け、何に影響を与えているかといった学習である。