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『NINE』(2009)

2010-03-29 23:57:04 | 映画・DVDレビュー

本日観て来ました。ロブ・マーシャル監督、ダニエル・デイ=ルイス主演で豪華女優陣の共演によるミュージカル映画『NINE』を。
ネットでの評価があまり芳しくないようなので、やや不安を覚えつつの鑑賞となりましたが、私には面白かったし、しみじみ感じ入るところも多い作品でした。

周知のように原作と言うか原点はフェデリコ・フェリーニ監督作品『8 1/2』(1963)。これを1982年にブロードウェイ・ミュージカルとして翻案した作品を更に映画化したものが本作です。
舞台版は未見ですが、この映画版が思いのほか「フェリーニ」していたことは嬉しい驚きでした。
ゴージャスな顔ぶれによる単なるミュージックビデオ、などと酷評されてもいますが、オープニングやフィナーレ、そして中盤の「シネマ・イタリアーノ」などの華やかさはやはり見ものです。「Be Italian」もいつまでも頭と耳に焼き付いています。
全般にどこかニーノ・ロータを思わせるメロディが嬉しく、本人が不安を感じていたというダニエルの歌唱も「アクター」の歌としては良かったと思います。

ストーリー:才能ある映画監督として有名なグイド(ダニエル・デイ=ルイス)は、9作目の映画『ITALIA』クランクインを前に悩んでいた。主演女優(ニコール・キッドマン)も決まり、セットも組まれているのに、脚本が一行も出来ていないのだ。
才能の枯渇を恐れ、妻(マリオン・コティヤール)や愛人(ペネロペ・クルス)との関係にも頭を悩ませる彼は、嘘に嘘を重ね、逃避を続けるが──

その他、亡き母(ソフィア・ローレン)、衣装デザイナー(ジュディ・デンチ)、雑誌記者(ケイト・ハドソン)、そして子供の時に出会った娼婦(ファーギー)等、様々な女性たちの間で右往左往するグイドの心の遍歴が描かれます。

仕事、私生活、自らの才能、周囲の期待。どんなに成功しても、どれほど年齢を重ねても、そういうものをきちんと取り扱えるようになるわけではない。惑い、逃げ、そのたびに引き戻され、しかし答えは簡単には見つからない。
そう、9歳の少年だった時と同じように。

しかしこのグイド役、様々な候補の中から選ばれたダニエル・デイ=ルイス(本人も意外だったとか)にとっては、なかなか自虐的な役でありシチュエーションであると思いました。
1989年、舞台でハムレットを演じていた彼は、役に入れ込むあまり神経症のような状態に陥り、ついには舞台上に自身の父セシル・デイ=ルイスの亡霊を見るに到って中途降板。その後2年間演技が出来ず、また以後一度も舞台に立てなくなるほどのトラウマを負うこととなります。
その時の母ガートルード役はジュディ・デンチでした。今回の彼女のキャスティングも、背景を知れば意図的なものだったのではないかという気がします。何で読んだか忘れましたが、ダニエルはジュディに「今度は逃げないよ」と言ったそうです。
またニコールの役どころも、一人の監督のミューズ的な存在である女優。しかも予定されている映画のタイトルが『イタリア』と来ては、どうしても彼女とバズ・ラーマンの関係を連想させます。

その他まだまだありそうな仕掛けを読み解いていくのも「メタ映画」の楽しみ。
舞台ではバッドエンド版もあるそうですが、映画はグイドの成長と希望が感じられる終わり方でホッとしました。
でも、やはり『8 1/2』ラストの名セリフ「人生は祭だ」は入れてほしかった気もするのです。

映画『NINE』オフィシャルサイト

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