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『ジキル&ハイド』千穐楽

2018-03-18 22:21:50 | 演劇・ミュージカル

東京国際フォーラムにて上演のミュージカル『ジキル&ハイド』、本日その東京公演千穐楽を観て来ました。自分(と娘)にとっては今期二度目の鑑賞となります。

石丸幹二さんのハイド氏は今日も絶好調でした。今期のハイドはなんだかとても楽しそうですが、石丸さんは作曲者フランク・ワイルドホーンからハイドは「お祭り」だと言われたとおっしゃっていました。ご自身は何もかもが面白くて仕方なくて、悪いことをするのも楽しい「幼い子供」として演じている、と。
2016年公演のときは、ハイドはジキルの影、ジキルの闇から生まれた存在と思いましたが、今回はまるでハイドこそ本体であるとさえ思えるほど元気に大暴れしていました。一方、それを抑えこもうとするジキルの演技はより繊細になっていると感じました。何度でも言いますが、両者の演じ分け、歌い分けは本当に素晴らしかったです。

思えば、自分が本当に石丸幹二さんのファンとなったのが、実は2016年の『ジキル&ハイド』からなのでした。それ以前にもステージは何度も拝見していましたが、それがたまたまTVドラマやコンサート活動中心で、ミュージカル舞台へのご出演は年に一度くらいという時期だったのです。
2016年の『ジキル&ハイド』に於いて、自分はやっと全開の「ミュージカル俳優」石丸幹二を見た思いがしました。その時も感動しましたが、それから舞台でもどんどん新しい役に挑戦されて、それらを経ての今年の舞台は更にパワーアップし、進化・深化を遂げていました。この人はどこまで行くのだろう……と怖くなるほどです。経験したことを何ひとつ無駄にせず、すべて自分のものとして成長していくお姿を拝見するのはワクワクするし喜ばしいです。
2016年も今年も「時が来た」では(その他のナンバーも)観ているこちらの皮膚に振動が伝わり、物理的に体が震えるほどの歌唱力に圧倒されました。やはり石丸幹二さんは生のミュージカル舞台を観てこそ!と何度でも声を大にして申し上げたいです。

作品全体のことを言うと、ツイッターの皆さんもおっしゃるように、今年はダンヴァース父娘が本当に善良で素直にヘンリー(ジキル)を愛し、アターソンが気の置けない親友である分、ラストシーンの「地獄」度が増していると思いますが、意外にも2016年ほど重いものは残らず、ただもう「ああ、いいものを観た!」「なんかスゴイもの観た」という思いに満たされました。自分でも不思議です。最後に号泣するアターソンも、エマの「これで自由よ、二人とも」も悲しく、つらいのは確かなのですが──
それにしても、ルーシー、エマ、アターソン、そしてダンヴァース・カルー卿と主だったキャストが変わると、ジキル/ハイドのリアクションも、観る側が受ける印象もこんなに変わるものかと思いました。
ダンヴァース・カルー卿父娘については何度か言及していますが、その他ではたとえばルーシーがハイドに殺されるシーン。2016年の濱田めぐみさんはジキル=ハイドと気づいて「それならこの人に殺されてもいい」というように身を委ねていましたが、笹本玲奈さんのルーシーはあくまでもハイドの向こうの「ヘンリー(ジキル)」の声だけを聴いているんですね。そこがまたハイドの怒りと殺意を掻き立てるのが悲しく切ないです。 めぐルーシーは、もしハイドから逃げのびたなら、故郷にでも帰ってひっそり慎ましく暮らしていくだろうと思えましたが、「新たな生活」を歌う玲奈ルーシーはもっと「上」を目指していそうな──普通に結婚もしたいし子供も持ちたいという希望を抱いていそうなところが、また悲しかったです。
「ジキルとハイド」はそうして彼(ら)を愛する人たちの心身に深い傷を残して去って行ったのに、観る側のわたくしに残ったのは、上述のような充足感と一抹の爽快感だというのが不思議なところです。2016年のジキル/ハイドは、周囲に追い詰められたあげく破滅した感が強かったけれど、今年は本当に「自由」になれたのだと思えました。これも玲奈エマが最後までヘンリーを庇護し抱え込んでいたのに対し、エマエマはその手を離してあげたように見えたからでしょうか。

キャスト変更と言えばサベージ伯爵の川口竜也さん。林アキラさんの伯爵も相次ぐ殺人に、次は自分の番かとビクビクしてはいましたが、川口伯爵はハイド氏を目撃してからというもの、キャアキャア(?)言いながら逃げまわる姿が可愛かったです

そしてやはりアンサンブルが厚いカンパニーは良いですね。「嘘の仮面」「事件、事件」というビッグナンバーのコーラスや動きの見事さ。「嘘の仮面」リプライズのコーラスや「対決」影コーラス(石丸さん以外のキャスト全員が参加しているそうです)の美しさ等々、この舞台がこれだけの傑作になったのは、粒ぞろいの皆さんあってのことだと思います。

まだまだ書き足りない気がしますが、何か思い出したらまた追記します。
2018年『ジキル&ハイド』のキャスト・スタッフの皆様、素晴らしい公演をありがとうございました!
千穐楽なので、カーテンコールで座長・石丸幹二さんからのご挨拶がありましたが「良い感じに熟してきたと思います」だそうです。
名古屋、また大阪の公演も怪我なく充実した、更に実り多い舞台でありますように。

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