『swallowtail butterfly ~あいのうた~と共に行くグルジアからトルコの旅』

今回はこの曲を聴きながら

どうぞ

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私はグルジアの駅から94番のマルシェに乗り出発した。
10日泊まっていたトビリシの街が後ろへとゆっくり流れていく。
新市街や旧市街、教会……。
9時から出発したのに、
バスターミナルへは10時の出発間近に到着した。
久々の一人旅の感傷に浸る時間もなく、すぐにバスに乗せられた。
これからトルコだ――。

  

トルコまでは22時間ある。
文庫本を取り出し一度開いたが、ふと思いついたように
私は鞄からウォークマンを取り出して、耳につけた。
それから私は
ゆっくり目を閉じて、ウォークマンから流れる音楽に耳を傾けた。

しばらくして私は目を開けた。
そして、ゆっくりと窓の外に顔を向けた。
そこには
青い空が広がっていた。

私は「この空の 青の青さに心細く」なって
胸が、ギュッと締め付けらた感じがした。
そう。これは私が一生付き合わなければならない心の痛みだ。

旅に出て、周りが見えるようになり
自分を俯瞰して見れるようになった。
すると、いかに私が小さな存在かに気が付いた。
私には足りない部分がたくさんあって
そんなに偉くも素晴らしくもない人だと……。
そして、どこかずっと寂しさを抱えている人なのだと……。

ポケットに入れたはずの自信はもうない。

そんなことを考えていると
しだいに外は夕暮れになり、夏草を朱く染めていった。

トルコのボーダーチェックは迷いつつも済ませた。
ここからは夜の深夜バスの旅。
すでにバスの中は暗くなり、街灯のオレンジ色の光が車内を一定のリズムで照らす。
そんな中涙を溜めながら、遠くの黒海を見る。
また私は思考の中に墜ちていく。

私は夢を追いかけていた。
でも……
今は私をずっと支えていた夢も目標もない。
まるで蜃気楼のように消えてしまった。
見つかった夢も本当かどうかはまだ確証はもてない。
そして、旅で素晴らしい人や凄い人に出会った。

夢を持っている人
目標を持っている人
活き活きした人生を送っている人
やりがいを持っている人

それに比べて今の私はどうだろう？と自問自答する日々。

愛する人と出逢い
生き甲斐を見つけ
幸せな人生を送る

そんな夢はあっても、どうしていいか分からない。
その日まで待つしかないのか。
この世界でその日まで悲しさを背負うのか。

自分の弱さと頼りなさ、不甲斐なさ
それに腹が立つ
それ同時に
不安が……不安が大きくなる……。
こんな気持ちはずっとあっても気づかないふりをしていた。
でも――
一人になると
そんなことを考えてしまう。
生きていく自信さえ失くしてしまう。
楽しいはずの世界横断が、全く楽しいとは思えない。
どこかずっと
闇に囚われているようだ。

また胸がギュッと締め付けられた感じがした。
私は、まるで痛みを抑えるように胸に手を当てて握った。
その時俯いたからか、涙が零れて服を濡らした。

そんな私にでも、と
音楽が語りかける。

「ここから何処へ行っても世界は夜を乗り越えていく」

まるで、どこも逃げるとこはないと言っているようで、
でも、いつかは変えれると言っているようだった。

私は私なりに何かを見つけようともがいて
旅を続けていくしかない。
それは私が夜を乗り越え、光を目にするまで。

ただ、大切なものは気づいているんだ。
私が何を求めているか。
消えてしまった自信がどこかに残っていて、
消えかかってもまだ燃えようとする焚火のように――。
たまに未来を考えると、その炎が燃え上がる感じがする。

わかるんだ。

私の中に答えがあることも。

旅をすることに意味があるのかも分からない。
でも、立ち止まるわけにはいかない。
今はそれが私にとって前へ進むことだから。

「心に 心に 魔法があるの
嵐に翼ひろげ 飛ぶよ」

まだ私の心は前に進もうとしている。
その先に何が見つかるかわからないけど
私は私を信じるしかない。

そして、トルコに到着した。

  

ターミナルで乗り換えたバスは
次の目的地カッパドキアへと私を連れて行った。

 

この物語はフィクションです^^

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