唐突な話で恐縮ですが・・・
今日はシクラメンの話です。
ぼくは、植物全般が好きなのですが、中でもシクラメンが大好きなのです。
なんで、シクラメンが好きなのかと考えてみたら、すんなりと腑に落ちました。
なんとなく、金魚と似ているのです。
正確に言えば、金魚に似ているから好きなのではなく、ぼくが好む特性を金魚もシクラメンも同じように備えているから、ということになります。
金魚好きな皆さんならば、シクラメンのことも好きになれるかもわかりません。
そんなわけで、皆さんにシクラメンの魅力をお伝えしようというのが今日の試みです。
シクラメンは“冬の鉢花の女王”などと呼ばれています。
秋の終わり頃から、店頭に並び始めます。
その鮮やかな花色、整った草姿が、冬の花屋の主役を張るのです。
しかし、新しい年を迎える頃になると徐々にその勢いも衰えてきます。
今頃の季節になれば、もはや主役を張ることはありません。
店頭の一等席を春の草花に譲り渡し、徐々に目立たなくなります。
そしていつの間にか店頭から姿を消していくのです。
こんなところは、“夏の風物詩”などと言われる金魚に相通じるものがあります。
ちょっとした切なさが軽く心を揺さぶります。
夏に涼しさを演出するために金魚を飼うなんていうベタな人がほんとにいるのかどうかはわかりませんが、シクラメンを冬だけの鉢花と思っている人は多そうです。
春になる頃にはすっかり元気をなくしたシクラメン(実はもっと早い段階で枯らすことの方が多いのですが)は、気の毒なことに捨てられてしまうことが多いようです(ぼくもよく捨てています・・・)。
でも、金魚が「ひと夏しか生きられない魚」ではないのと同様に、シクラメンも「ひと冬しか生きられない植物」ではないのです。
一般的なシクラメンは、野生のシクラメンの一種を選択交配して作られた園芸種です。
夏は暑いが雨が少なく、冬はそれほど寒くない、そんな地域の原産です。
花屋で売られているシクラメンは、ちょっと無理をさせて晩秋から咲くように調節されて出荷されていますが、もともとは春に咲く花です。
園芸種になってもその性質は残っています。
本来は春に咲く花です。
原産地よりも寒さが厳しい日本の冬は相当に苦手です。
けれど、日本の夏はもっともっと苦手なのです。
苦手な夏にまっとうな生命活動をしていたのでは、シクラメンはマイッテしまいます。
なので、夏の間は休眠します。
春のうちに精一杯の栄養を球根に蓄えて、眠りに付くのです。
(もちろん休眠しないこともありますけどね)
こんなところは、金魚の冬眠に似ていますよね。
季節の移り変わりの寂しさを、逆に愛おしいと感じられるのが、日本人の心の機微なのかもしれません。
そして、暑さがひと段落すると、シクラメンはまた活動を始めます。
球根の中に蓄えたエネルギーを使って、葉っぱを出します。
葉っぱの光合成で、エネルギーを生産し、立派な蕾を付けるのです。
そして、春にはまたきれいな花を咲かせます。
ぼくがシクラメンに惹かれる大きな理由はここからです。
健康なシクラメンの球根は毎年少しずつ成長していくのです。
成長といっても、なにか別の形になるわけではありません。
サイズが大きくなっていくのです。
サイズが大きくなってどうなるかというと、花のサイズが大きくなるわけではないんです。
葉っぱの数と花の数が増えるのです。
(シクラメンは葉っぱ1枚と蕾1ケがセットになっているんです)
たくさんの花が咲いたシクラメンの株はどんなにかきれいなことでしょう。
ぼくは見たことはないのですが、想像するとワクワクします。
“大きく立派に育てる楽しみ”はまさに金魚飼育の醍醐味と通じるでしょう。
そして、もっと嬉しいことは・・・
シクラメンの球根はすごく長命なんです。
原種のシクラメンは数十年単位で成長を続けるんです。
育ちまくった球根は、バスケットボールのような大きさになることもあるそうです。
(もちろん稀有な例ですよ。普通はそんなに長持ちしませんよ)
樹木を除いた植物で、ひとつの個体が数十年も生き続けるというのは、相当に珍しいことです。
もちろん、園芸種のシクラメンは原種のシクラメンほど頑丈なわけではありません。
それでも、10年以上も成長を続けるシクラメンは結構あるんだそうです。
ひとつの個体と長く付き合えるのは、それだけで嬉しいことです。
その間の成長を見守る楽しさとあいまって、愛着が増すのは当然です。
こんなところも金魚に似ている気がします。
ぼくは、どうやらこういう性質が好みのようです。
たまたまそういう性質を備えていることに気付いたのが、植物ではシクラメンであり、動物では金魚であったということのようです。
金魚とシクラメンとの共通点はまだまだいっぱいあるんですよ。
その最たるものが、『どちらも健康に育てるのがすごく難しい・・・』といいうことです。
原種のシクラメンはもともと丈夫な植物です。
原産地では、野外で群生していたりするんだそうです。
日本では野外で育てることはできません。(一部の品種を除きますけど)
原産地との環境が違い過ぎるのです。
なので、鉢植えで鑑賞し育てることになります。
しかし、これを健康に長く育てるのはとにかく大変なのです。
もともと奇跡的に丈夫な株であればいいのですが、普通のシクラメンはなかなか一筋縄ではいきません。
水をやりすぎれば根腐れを起こします。
日当たりが悪ければすぐ枯れます。
風通しが悪ければ病気になります。
昼夜の温度差が大きければぐったりしてしまいます。
成長してもそのままにしていたら根詰まりを起こします。
そのくせ下手に植え替えをすると、一気に崩壊したりもします。
なんとか花を咲かせ終えても、夏越しは相当に難しいようです。
秋になって出てきた葉っぱは昨年よりも貧弱で観賞価値に欠けることが多いのです。
そんな“ひ弱さ”や“世話の焼ける感じ”は、金魚を水槽で飼うことに似ているような気がします。
でも、こんなところも“はまる”ポイントなのかもしれません。
洋ランの栽培は素人目にも難しそうです。
特別な設備、特別なお世話が欠かせなさそうな気がします。
なんだか海水魚飼育的な特殊性を感じます。
その点、シクラメンは簡単そうです。
値段もそれほど高くなく、たくさん売られています。
だれでも気軽に楽しめそうな気がします。
なのに、実際育ててみようとすると、思いの他難しいのです。
こんなところも金魚っぽいと感じます。
そして、もともとは同じ種類の植物ですが、園芸種としてたくさんの品種が存在します。
花にはいろんな色があります。
色だけではなくて柄も様々です。
丸っこかったり、とがっていたり、ちぢれていたり、形までもいろいろです。
葉っぱにも特徴的な紋様が入ります。
その紋様も葉っぱの形自体も実に様々なのです。
いろんな株を集めてみたくなったりするものです。
これも金魚の楽しみ方に似ているように思います。
そして、シクラメンは球根植物ですが、種子でも増やせるのです。
でも、親が立派な株だったからといって、子供がみんな見栄えのする株になるとは限りません。
逆に、違う株同士を交配させれば、今まで見たこともないような美しい新品種を作出することもできるかもしれません。
夢は無限に広がります。
種子から花を咲かせる株に育つまでは結構時間がかかるらしいので、気の長い話になりますが・・・
金魚の仔引き的な楽しみ方だってあるわけです。
おまけに、金魚の品種に知的所有権はないみたいですが、植物の新品種は種苗法で作出者の権利が守られるんですよ。
どうでしょう?
シクラメンを育ててみよういう気になりませんか?
今ならまだ間に合いますよ!
金魚好きのあなたなら、きっと夢中になるはずですよ。
・・・普通のシクラメンは毎年失敗してるので、今年はいわゆるガーデンシクラメン(少し頑丈っぽい品種)でチャレンジしています(金魚で言えば“子赤”っぽい品種ですね)
■メイン水槽のお世話・・・水量130Lのプランターで16匹が生活中■
なにもせず・・・