†意識の記録† 理解のブログ

私の私の視点による私の経験の記録。私の視点で見る限り誤りのない認識で記事を書いている。一切の苦情は受け付けない。

オートフォーカス

2018-06-11 19:09:50 | Camera
一眼レフカメラのオートフォーカス(位相差方式AF)がなぜ合わない(精度が低い)のか。
また、ミラーレスカメラのオートフォーカス(コントラスト方式AF)がなぜ合う(精度が高い)のか。
※ 像面位相差方式については、後で。

基本的な原理(合焦の判定方法)は、位相差方式もコントラスト方式もほとんど同じ。
センサ上で、最もコントラスト、即ち、信号の強いところと弱いところの比が高い時を、ピントがあっている状態と見做している。
(より正確に言えば、位相差方式では、コントラストが最く、かつ、位相差が無くなった時をあっていると見做している。位相差が無いというだけを条件としてしまうと、偽合焦と言って、合っていない状態を合っていると誤解する。とは言え、現代の最新一眼レフでも偽合焦はある。)

ただし、ピントがずれている時、どちらにピントがずれているか(後ピンか、前ピンか)が、位相差方式では判別出来るのに対して、コントラスト方式では判別出来ない。
(コントラスト方式では、実際にレンズを微小に動かして、コントラストが上昇する方向を探す。位相差方式では、動かさなくても、位相差からどちらにずれているかが分かる。その為、ワンテンポ早く合わせに行くことが出来る。)

また、位相差方式では、位相差を検出する為に、専用の光学系(以下、AF光学系)とセンサ(以下、AFセンサ)が必要になる。このAFセンサに対して、AF光学系を通した像を当て、オートフォーカスを行う。
AF光学系は、プラスチックモールド製で、アナモルフィックレンズ(楕円)になっている。また、絞りが入っている。絞りは、特定のF値の光束(大抵、F5.6)を選択する為にある。
(F値が小さい、例えば F1.4 などの光束では、AFセンサの基線長を長くとる必要がある為、使い易い F5.6 になっている。C社など、一部 F2.8 対応の機種もある。F2.8では、微小なピンずれも位相差として検出出来る為であるが、大ボケ時には役に立たない。また、基線長が長い為、中央付近でしか利用出来ないなど、制約が多い。)

通常、撮影はフィルム、若しくはイメージセンサで行われる。
当然、ピントはそちらで合っていなければならないのだが、位相差方式では、ピントをAF光学系を通したうえで、AFセンサで読んでいる為、ここには当然、ズレが存在している。
即ち、AFセンサ上でのジャスピンと、フィルム上でのジャスピンは、一致していない。これは、単純なフォーカスシフト(F値によるジャスピン位置のズレ)のみに由来するものではなく、AF光学系を通したことによる収差の発生や、AF光学系の製造誤差、AFセンサの貼りズレ(カメラ個体差)が影響する。

例えば、焦点距離 50mm のレンズを用いる場合で、撮影距離が 2メートル(2000mm)だとする。この時、フィルム側で像面が 0.1ミリずれると、被写体側の像面は、160ミリもずれることになる。F1.4の大口径レンズで開放撮影だとすると、この時、被写体側の被写界深度は、50ミリ未満だから、明らかにピンボケしている事になる。
もし、この時、AFセンサ上ではジャスピン(ハイコントラスト)だったとするならば、カメラ側は、100ミクロン分、“AFセンサ上のじゃスピンからピントをずらして”、フォーカス駆動を完了させなければならない事になる。では、その、100ミクロンというデータを、どうやって計算するのであろうか。

先ず、カメラ側が持っている、自分が設計からどのくらいずれているのか、というデータである。個体差を埋める為に必ず持っている。また、温度によってセンサが膨張したりする(先の例だと1ミクロン熱膨張するだけで、被写体側で 1.6ミリずれるので、馬鹿に出来ない。)ので、その補正なども行わないといけない。
次に、レンズ側が持っている、設計ドンピシャのカメラだったら、どのくらいずらすべきか、というデータである。また、レンズ自身の製造誤差も、データとして持っている(はず)。これらは、撮影距離ごと、ズーム(焦点距離)ごとに変動するであろうから、データ量は膨大である。
この両者のデータから、実際にどのくらい、AFセンサとフィルムの像面がずれているのかを、カメラ側は計算し、それに従って、レンズを動かす。

当たり前だが、カメラというものは、暑いところ、寒いところを経験していくうちに、何度も膨張収縮を繰り返し、製造当初からずれた状態になっていく。また、振動や衝撃もあるだろう。その為、定期的にメーカー送りにして、再調整する(ずれを直すのではなくて、どのくらいずれているかのデータを入れ直す)必要がある。
それでも、まさか1ミクロンまで追い込むなんていうのは無理だから、設計値ドンピシャなんてことは不可能である。メーカ側の基準に従って、ずれていないと見做す範囲内にまで調整してお返しする。逆に言えば、その範囲内ではずれていても、メーカ側は対応してくれない。

そうだ、一つ忘れていた。
AFセンサだが、使う光線の波長もある。白い光というのは、様々な色(理論上は全部の色を)混ぜたものであって、必ずそのような理想的な光がセンサに届くことは期待出来ない。その為、概ね白い光の真ん中ぐらいの波長を選んで使う。大体、緑から黄色ぐらい。光学的な話で言えば、e線(546nm)とかd線(588nm)ぐらい。AF光学系も、この波長での収差が小さくなるように作る。つまり、赤とか青とかは、ずれている。(ようは、軸上色収差である。)
センサ自体は、色の判別が出来ないわけだから(色を判別出来るフォトトランジスタは存在しない)、先に述べたデータの作り方の問題。フィルム面とセンサ面のずれを、緑色で決めているなら、赤や青でずれるという理屈。

※ AFセンサの位置が設計からずれるというのは、オートフォーカスの特許を見ると書いてある。例えば、キヤノンのEOS 3用AFセンサの特許には、1ミクロンずれても大きくボケてしまうから大変だと書かれている。メーカの方は苦労してるんだなあと思うし、高精度部品を安く作れないアメリカなどで一眼レフが作られない理由も察する事が出来る。

ところで、先に挙げた例では、F5.6光束でフォーカスして、撮影は F1.4 だった。しかし、実際は、撮影時の絞り値が常に開放なわけはない。という事は、球面収差(フォーカスシフト)による補正をしないと、やはりピントは合わなくなる(はず)。ただ、絞り込むほど、被写界深度は深くなっていくから、球面収差をゼロにしなくても、実用外のピンボケになる事は少ない(はず)。
F値別というわけではないけれども、自前のPENTAXのカメラは、(開放のままAFしているのに)開放と絞った時で、オートフォーカスによる合焦位置がずれてくる。これは、フォーカスシフト対策と思われる。検証している人がいるので、気になる方はググってください。
借りてやってみると、C/N社はやってなさそう。恐らく、光学設計段階で、フォーカスシフトの設計要件を定めて対応しているのだと思う。PENTAXは、光学系が古いものばかりなので、苦渋の策なのかもしれない。(オートフォーカス誕生前の光学系だったりするから。)

さて、コントラスト方式AFの場合、どうしてピント精度が高いのか。
先に書いたように、位相差方式では、AF光学系とAFセンサがあるため、そのズレをカメラが計算して、わざとずらした位置にフォーカスしないと、フィルム面でピントが合ってこない。コントラスト方式では、基本的にフィルム面でコントラストを読んでいるから、コントラストピークさえ見付けてしまえば、それは当然、ジャスピンになる。

ただ、コントラスト方式でも、いくつかずれてくる要因はある。
一つは、先に書いたような、球面収差(フォーカスシフト)の問題。絞り開放でAFするカメラの場合(C/N社の一眼レフのライブビューモードとか)は、AF時のコントラストピークと、撮影時(絞り込み時)のコントラストピークにズレがある。だったら絞り込んでAFすりゃ良いじゃないと思うかもしれないけれど、センサに届く光量が減ってしまうから、その分、ゲインを掛けなければならなくて、ノイズによるコントラストの低下や、LCDのリフレッシュレートの低下などが発生する。つまり、暗いところでのAFは不利ということ。その代わり、LCDに表示される画像は、絞り込まれているお陰で、撮影時の画像に近くなる。絞り開放でAFするカメラの場合、LCDでは(絞り値の設定に関わらず)開放状態が表示される事になる。その方が、ピントの山は追い易いけれども、今時、そんなものを求めるユーザは殆どいない。(マクロ撮影の時ぐらい。)

つまり、基本的に、コントラスト方式が持っている問題は、位相差方式でも持っているわけで、ピント精度という面でいえば、圧倒的にコントラスト方式が有利である。
では、コントラスト方式が、位相差方式をなぜ、駆逐しないのかというと、フォーカスがずれた状態に於いて、それが後ピンなのか、前ピンなのか判断出来ないという点が大きい。これは、高速で移動する物体にフォーカスし続ける(コンティニアスAF)時に問題となる。一般のユーザはそんなもの撮らないように思われるかも知れないが、例えば走っている子供を撮るシーンは運動会などスポーツ的なイベントで普通に存在している。必ずしも飛行機や鳥を撮る人だけが必要というわけではないのである。

そうなってくると、ミラーレスカメラはやはり、万能性に欠けるというか、一眼レフに劣る部分が明確に思える。
ただ、メーカの開発陣はバカではないどころか、天才ばかりなので、これを解決する方法を開発しているのである。

考え方は二つあって、
一つは、コントラスト方式でも、ずれている方向が分かるような制御方法を生み出すことである。
もう一つは、フィルム面(イメージセンサ面)で位相差方式を利用できるようにすることである。

前者は、ウォブリングと呼ばれる方式。
C社だと、kissX6iとか、EOS M から一部のレンズ(STMレンズと、ナノUSMレンズ)で使われていた。ソニー、オリンパス、パナソニックでは今でも使われている。(富士フィルムは良く知らない。)
これは、LCDのリフレッシュレートを例えば、60Hzとした時、そのフレーム間でレンズを微小に前後運動させて、コントラストの高まる方向を探す方式。コントラストが高くなる方向に被写体があるはずだから、事実上、コントラスト方式の弱点が克服されている。欠点は、レンズ設計の自由度が失われてしまうこと。短い時間で前後運動させる為には、フォーカス群を極端に軽く作らないといけないわけで、画質劣化が避けられないし、既存の光学系が利用出来ない。(フォーカス群を軽くするだけではなくて、像倍率変動にも制限が掛かる。)
ただ、ミラーレスカメラの場合、レンズを通して世界を直接見る事はない為、カメラ側でのデジタル補正を前提としたレンズにしてしまってもよいわけで、実はそれほどネックになるわけではない。(解像性能さえ気を付ければ、倍率色収差や歪曲収差はデジタル補正で何とかなる。)

後者は、像面位相差と呼ばれる方式。
C社だと、やはりkissX6iから使われていて、最近(70Dから)は、DualPixelCMOSAF方式というものになっている。現状、この分野で最高の技術を持っていると言ってもよいが、使いこなせているかは微妙だ。ソニー、オリンパスは、上位機で積極的に採用している。パナソニックは何故か使っていない。
この方法は、イメージセンサ上の一部の画素を殺して、位相差センサを埋め込む事によって、フィルム面でも位相差AFを出来るようにしている。ウォブリング方式と違って、光学系に対する自由度が高まるし、従来の位相差方式が持っていた精度が低い問題をもクリアしている。
しかし、画素を殺してしまっているので、位相差センサの埋め込まれた部分は、周辺から補完して復元しなければならない。つまり、画質劣化が避けられない。光学系の自由度を縛るよりはマシという判断があるのだと思う。C社の DualPixelCMOSAF方式が凄いのは、画素を殺す必要がないという点で、画質を劣化させずに、位相差センサを配置する事が出来る。その代わり、一つの画素を縦に割って二つにする必要があるので、高感度に弱くなるのと、ダイナミックレンジが低下する。C社のセンサは元々ダイナミックレンジが狭いので、印象は良くない。

全体的にみると、像面位相差が最強に見えるわけだけれども、望遠レンズに弱いという致命的な弱点を持っている。
ソニーのEマウントで、望遠レンズがいつまでも出てこなかったのは、この問題がクリア出来なかったからではないかと、個人的には思っている。
オリンピック写真で、C/N社の牙城を崩したいなら、ここをどうにかしないといけない。もちろん、一般ユーザには関係ないので、多くのユーザはソニーのミラーレスカメラに全く不満がない。(電池の持ちが悪いとか、価格が高すぎるとか、そういうのはあるかも知れないが、ピント精度はあまり聞かない。)
(α9ですら、200mmぐらいになってくると、像面精度は怪しくなってくる。400mmでどこまでヒット率を稼げるのか、試してみたいところだ。)

像面位相差は、位相差センサをフィルム面に配置するわけだけれども、通常の位相差方式では、ラインセンサと呼ばれる直線的なセンサを用いる。だから、像面位相差では、位相差センサ用画素を直線的に配置したいのだが、直線的に画素を殺してしまうと、直線的に画素欠陥が生じて、補完しても影響が強く残る。なので、画素を飛び飛びに配置する必要があり、どうしても通常の位相差方式と比較して、位相差の検出精度が低下してしまう。特に望遠側で。
これは方式そのものの問題だから、C社のように、どちらでも使える画素を用意するか、或いは、画素欠陥の補完を上手くやるかしかない。ソニーは、補完を上手くやる方向で頑張っている。尚、C社は、これを利用して、撮影後に(僅かだが)ピントを動かす事まで出来る。(DP-RAW)


こんな感じ。
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