まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

高雄港と貨物線(台湾)

2009-09-22 02:51:58 | 鉄道風景
高雄続き。

(今回特別に写真が多くなってしまった・・・ご容赦を)

廃線になった高雄港の貨物線がサイクリングロードとして整備されているとすでに書いた。
前回の記事で、旗津半島から中州渡しで前鎮に着いて、貨物線の東端を見つけた
ところまで話をしたが、いったん宿の近くに戻って紹介を始めることにする。


宿の近くには古い倉庫がたくさん建っている。台糖(台湾製糖)の倉庫である。
高雄港はもともと漁港であったが徐々に発展し、英国領事館が置かれると国際的な
貿易港としての地位を確立した。
砂糖貿易は清朝時代にも行われていたが、日本による統治が始まり三井財閥によって
台湾製糖株式会社が設立されると砂糖の生産高は10倍となり、利益率の高い製糖業は
重要産業として日本経済を支えた。

台南から高雄まで鉄道が開通したのは1900年、そして1923年には、台湾北部の港
基隆から高雄までつながった。鉄道で運ばれた砂糖はほぼ全てが高雄港から輸出され、
高雄港は「糖港」と言われたそうだ。今ここに残る台糖倉庫がその隆盛ぶりを物語っている。


倉庫群を見ながらサイクリングロードの西端まで行くと、広大なヤードが広がっていた!
うわぁ・・・・浪速貨物駅を思い出した。
ずっと向こうに高雄港駅が見える。ここからあそこまで、全部線路で埋め尽くされているのだ。
現在、ヤードを横断する道路の建設工事が進められていて、中央部にあったらしい転車台は
もう見あたらなかったが、まだまだ現役時代そのままの姿を保っているように見える。
貨物線が完全に廃線になったのは2008年の年末らしい。あぁ、ついこないだだ!


こんな説明板が設置されていた。驚いたことに、ここだけでなくサイクリングロード沿いの
あちこちにあり、現役時代の配線図などが書かれた説明板もある。


壽山をバックにした扇型のヤードは夢のように美しい・・・
しばらくその風景の中に身を浸す。


ぐるっと反対側へ回り、旧高雄港駅を見に行く。
台南~高雄の鉄道開通当初に作られた「打狗駅」はここより少し北にあったが、
日本が築港整備の中で海寄りへ移動したのである。「打狗」とは高雄の古い名で、
その読みに日本が「高雄」の字を充てた。


日本は製糖業を基盤に肥料、コンクリート、鉄鋼、造船、石油化学などさまざまな
産業を台湾へ持ち込み、港や街を改良し、鉄道を延伸した。それらの産業は日本が
敗戦で引き揚げてからも受け継がれ、高雄は台湾屈指の大工業都市となったのである。
上屋もそのままのホームを見ていると、人々が忙しく立ち働く姿が目に浮かんでくる。


駅舎の汚れた窓を指でこすって中を覗き込んでみると、執務室の中は年季の入った
木の机や棚が並び、映画のセットのような雰囲気だ。

今この駅舎の前には、新しく延伸したMRTオレンジ線の西子湾駅の出入口階段が
ぽっかりと口を開けている。
しかしこの駅舎は解体される様子もなく、活用に向けて準備を進めている感じなのだ。

鉄道と共に、港と共に歩んできた高雄のまちの歴史的遺産である貨物線の遺構を、
本気で活用しようとしている。
それは軟弱な鉄道ブームとは一線を画す、地に足のついた計画だ。


さて、旗津からの帰り道に場所を戻そう。
前鎮のT字路からサイクリングロードは始まっている。まっすぐ続くレール。
全面舗装してしまわずにちゃんとレールを残してあるところがいい。
そして、踏切にはこんなワイヤー式の遮断機が、そのまま残されているのだ!
沿線の工場への引き込み線も今はもうないが、分岐していたことが分かるように
ポイント部分のレールを見せて残してあったり、、、


橋の桁に刷られた台鉄のマークをちゃんと見せてあったりと、ツボを突いている。
あぁ、いいなぁ。あぁ、いいなぁ。自転車で走りながら一人つぶやきっぱなし。


沿線には緑がいっぱいだ。


腕木式信号機、標識類、小屋、、、、鉄道の記憶を語るオブジェは、通行のじゃまに
ならない限り、何でも残してある。


旧新光貨物駅。帰国報告の時に載せた写真もここだ。
埠頭がすぐ横で、船を真横に見ながら走ることができる。あぁいいなぁ!


見ての通り、貨物線の軌道敷には最低限の手しか加えられていない。
これこそエコではないだろうか。多額のお金をかけて立派な施設を新しく作るでもない。
それは整備のお金をケチっているわけではない。
高雄を訪れた旅行客や、ここに住む人たちも、貨物列車が走り抜けてきたそのままの風景を
サイクリングで楽しみながら、この街がたどってきた歴史に思いを馳せる。。。
これは最高の観光だ。


埠頭の際まで伸びる貨物線のレール。


真愛埠頭付近は公園として整備されている。
そしてここからまた、愛河沿いのサイクリングロードにつながる。


高雄港周辺の台糖倉庫は、今では芸術活動の拠点や飲食店などに使われているところも多い。
この倉庫は、中を覗いてみると、、、


自転車のショールーム、パーツ屋、無料休憩所など、サイクリングを楽しむ人々が
気軽に立ち寄れるスポットになっていた。


宿の周辺に戻ってきた。廃線跡サイクリングロードは約5km。次から次へと変わっていく
景色にドキドキワクワクしっぱなし!
また、MRTの駅前にはレンタサイクル(自動!)や駐輪場も整備されているなど、
自転車での散策がしやすい街だ。高雄ではぜひサイクリングをお勧めする。


港湾都市、工業都市として発展してきた高雄市は、今年開催されたワールドゲームに合わせ、
「国際観光都市」をうたって観光スポットや交通アクセスなどの整備に力を入れて
きたというが、にわか作りでないまちの実力を感じた。
次はどんな魅力的な空間を見せてくれるのか、今後がまだまだ楽しみなまちである。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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いいないいな。。 (yume)
2009-09-22 15:17:25
私もきっと「いいな。。いいな。。」と一人つぶやきながらサイクリングロードを走るでしょう。。

台湾って、古いものを大切に大切にするんですね。
日本もこんな風だったらなぁ。。

中学生の時、まだ枕木もレールも残る、江若鉄道の廃線跡を歩いて通学したこと。。
私が今、廃線跡が好きなのは、あの頃の思い出と重なる部分があるからという、、一面もあるのかもしれません。
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yumeさん、 (ぷにょ)
2009-09-23 01:32:43
貨物線がほんの去年の年末に、廃線になったというのは
とても残念で仕方ないですが、反面こうやって生かされているのを
見ると、ほんとにうれしいです。

街の歴史を知ってこそこの風景の魅力を分かってもらえると思ったので
説明が長くなってしまいました。
写真ももっと載せたかったのですが何とかここまで減らしました・・・(笑)

長い記事で読みづらいだろうなと思いつつ・・・お付き合いありがとうございます。


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