まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

ギャラリー安政からの、泰泉閣

2023-11-19 22:30:38 | 建物・まちなみ
2023年3月の九州北部の旅、続き

日田でタイルアパート(旧朝日湯)の健在をいちおう確認したあと、うきは方面へ車を走らせ鏝絵の家を見に行く。


新聞に載っていたのを友人が見つけてくれたもので、高い左官技術を持つ古後紀昌さんという方が30年かけて
オリジナリティあふれる鏝絵で装飾したという建物である。建物は公開されているわけではないが、外観だけで
十分見応えがある。建物の壁や窓回りやいたるところに左官の技を使いまくっているのだ!


うさぎと猿と河童が描かれた妻壁の鏝絵。


洋風とも和風ともつかないオリジナルの装飾。黄色っぽい土が使われている。


蔵の基壇部は、例の泥だんご積みじゃないの!日田のまちなかのお店でこれと同じ壁を見かけたほか、
別の場所でも見たことがある。古後さんかその仲間の方が関わったのだろうな。


友人のためにくどづくりの平川家住宅と旧平川医院へ向かう途中、ランチを探してたまたま入った古民家カフェ、
ギャラリー安政。ここがなかなかよかった!
これはもと江戸時代に有馬藩の山守りをしていた野上家の邸宅で、母屋は1856年に建てられた。


他にあまり店がない山あいの道で偶然見つけて飛び込みで入ったにもかかわらず、オーナー東野ふささんの手による
充実のフレンチコースランチを頂くことができて感激!
重厚な古民家の空間は美しく手入れされ、作家さんの作品も展示販売されているほか、グランドピアノが
おいてあり演奏もされるそう。


そして土間のこのドアは・・・何と洋室だった!外観からはまさか洋室があるなんて想像もしていなかった。


中を見せてもらうと、おぉ~~っ、素敵な天井!!
もちろんこれは近代に入ってからの改築だろうが、なんと意外でおしゃれな空間なのだろう。
事務所っぽく使っておられるようだったが、ショップか客席にすればよさそうだなぁ。


ゆったりしたひとときを過ごしたあと、旧平川医院くどづくりの平川家を再訪。




そして一路山を下り、今宵の宿原鶴温泉の泰泉閣へ。泰泉閣はそれまで数か月間、改修工事のため休業されていて、
リニューアルオープンが何とうまい具合に今回の旅の最終泊の日だったので即予約。
『日本全国タイル遊覧』の本でお世話になったのでご挨拶に再訪したいと思っていたのだが、はからずも再開初日に
駆け付ける形となった。


施設管理部長がことのほか喜んで下さって、メンテナンス時間帯にジャングル風呂を案内して下さった。


子供の頃ボイラー室の中で兄弟で遊んでいたなどの昔話をお聞きしたり、一緒に記念写真まで(笑)


ジャングル風呂のタイルが表紙を飾っているということで売店にも本を置いてくださっていて感謝!


こちらの壁面レリーフも高田一夫氏の作品なのか、又は他のアーティストによるものなのか?



泰泉閣はこの後7月の豪雨により、1Fの調理場や事務所、浴室、離れ客室なども全部浸水し、再び休業を
余儀なくされた。川沿いの広々したロケーションにある泰泉閣はたびたび水害に遭い、今回夏休み目前の被災は
本当にお気の毒であったが、なんとも逞しく1ヶ月で復旧、再オープンされた。あぁ、また泊まりに行こう。

続く。
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日本丸館を見学。

2023-11-11 23:00:21 | 建物・まちなみ
2023年3月の九州北部の旅、続き

豆田町のシンボル的な建物のひとつ、日本丸館は、建ちの高い2階の上に展望楼が載った独特のフォルム。


日本丸とは、安政2年創業の老舗岩尾薬舗がかつて製造していた薬の名前。「にほんまる」でなく「にほんがん」と読む。
この建物の1階では今も薬屋を営業されているが、建物の大部分は資料館として一般公開されている。
日田に着いた日は時間がなかったので翌日の朝にゆっくり見学させてもらった。


店舗に併設する蔵の奥には昔の作業場が残されており、石畳の床や流し台なども見られる。道具類もたくさん
置かれていて、ここで生薬を煮たり砕いたりして薬を作っていた光景を彷彿とさせる。


この流し台が変わっているな!表面に墨流しのような模様が入っているのだ。「人造石仕上げ」と説明が書かれて
いたが、いったいどうやって作られたのだろう?色を付けたモルタルを交互に流し込んだとしてもこんな細かい
縞はできないだろう。


一部欠けた部分を見ると、表面だけでなく内部まで縞になっていた。
陶芸の練り込みのように粘土で作ったのだろうか?・・・ということは焼き物??不思議・・・




蔵の2階と3階には資料が満載!そこここに古いホーロー看板やらパッケージやら、ノベルティやらが所狭しと
飾られていて楽しい楽しい!


日本丸は、岩尾家に300年来伝わる家伝薬を明治20年に岩尾昭太郎が商品化したもので、昭和40年代まで
製造されていた。日の丸をイメージしたという赤い丸薬は、梅仁丹のようだ(笑)。


蔵から母屋3階の展望楼へ上ることができる。もとの展望楼は昭和初期に造られ、四方が杢枠付きの窓だったが、
1991(平成3)年の台風19号により損壊したため修復された。




現在はシンプルな部屋だが、そこからの眺めは素晴らしい。ほぼ同じ高さに、私たちの泊まっている若の屋の部屋が見えた。


母屋の2階の2間続きの座敷にはこの時おひな様が飾られていた。1階は明治初期、一部は江戸末期の築だが
2階は明治後期に増築されており、床の間や欄間、火灯窓など凝った意匠が見られる。


そして、なんと座敷の前には庭があるのだ。えっここは2階では・・・!?
なんと空中庭園である!かつては噴水もあったとか・・・すごいな!


空中庭園の横の通路から、離れの「隠宅」につながっている。


そしてこの通路の途中にタイル貼りのトイレがあるなんて、なんと面白い!無釉モザイクタイルの市松貼り。
モダンなこと!


階段の柵もこのような、洋風なのか中国風なのかわからないが面白いデザイン。


離れは江戸後期~明治時代の建物ということだが、2階の座敷は明るく洗練された近代和風らしい空間だ。


増改築が繰り返された日本丸館はいろんな時代の要素が入り混じり迷路のようで楽しかった!



前後するが前日の夕方、教えてもらった喫茶店で閉店ギリギリ駆け込みでマイセンのタイルを見せてもらった。
ドレスデンにある世界一美しい牛乳屋「プフント兄弟のドレスデンの牛乳屋」の壁にあるのと同じものとか。


青いタイルは「ブルーオニオン」シリーズ。50年以上前に製造終了となっており大変貴重で入手困難だそうで
ご主人の自慢の品だ。


続く。
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伯亭若の屋に泊まる

2023-10-31 23:59:24 | 建物・まちなみ
2023年3月の九州北部の旅、続き

日田の宿は、友人が予約してくれた、150年の歴史を誇る老舗の木造旅館、伯亭若の屋。
伝建地区である豆田町のまちなかというこの上ない便利な立地で、車も無料で停められるなんてありがたすぎる!


玄関を入ると赤いじゅうたんが敷き詰められていて、紫の家紋入りの幕がいかにも老舗らしい。わくわく!


表は割と新しく見えるが奥に続く建物は昭和初期らしい意匠がそのまま残っている。




階段を上って3階へ・・・エレベーターはないが、階段の上り下りのしんどさも含めて木造旅館の楽しさである。


私たちが泊まった部屋は3階の角部屋。一歩入ると、廊下のガラス窓ごしにぱっと視界が広がった!
うぉ~~!これは特等の部屋じゃない!?


2方にガラス張りの廊下が回っており、豆田町の屋並みが一望できる。付近には高層ビルやマンションもなく
3階建てすらあまりないのだ。


「屋久杉のお部屋」と言われるだけに室内には上質な木材がふんだんに使われている。
しかしこの床柱は杉ではないだろう。ケヤキかな?




廊下の突き当りにあるトイレと、別の客室。3段ぐらいの変な階段があったりして、古い旅館のつくりは面白い。


2階の大広間の廊下。


食事は「蔵春閣」という名の1階奥の座敷にて。大倉喜八郎が建てた蔵春閣とは全く関係がないと思われる(笑)。
田舎に行くと外食できる店がなかったり、予約のみとか、早く閉まったり、たまに食いっぱぐれることがあるので
旅館で食べれば安心。旅館ではもっぱら2食付き。


この部屋も近代和風らしい細かい凝った意匠ががそこここに。




大きなきんちゃくに乗った布袋さん!?


このとき3月だったので食事もかわいいおひな様の設えで。人形の中に料理が入っていて驚いた!


実際は夕食の前に町へ繰り出し建物見学に。私は何度も来ているが友人は日田は初めてというので、ひと通り回る。
料理屋みたいな石張りの表構えの1階に、グレーのモルタル塗りの2階が、そして増築っぽい3階が載った、
ヘンテコだけどカッコイイ外観の船津歯科。


この船津歯科の玄関に敷き詰められたタイル、、、前回も見たけどかなり面白い。
腰に貼られたこの蛇紋岩風のマーブルタイルは中央がふくらんでいて、私が「ふっくらタイル」と呼んでいるもの。
お店のショーケースなどでちょくちょく見かけるが、壁だけでなく上がり框にまで貼られているのが変わっている。


・・・というか、このタイプのタイルが水平に貼られているなんて見たことがない!
だってさ、床にぽこぽこ凹凸ができるわけで、歩きにくいし滑りそうじゃない!?ものを置いても不安定になるし。
足つぼ刺激コースじゃあるまいに(笑)。どういう意図でここにこのタイルを貼ったのだろう。


こちらのイチョウ形無釉モザイクタイルもいいね!


こちらは広瀬資料館、咸宜園を開いた儒学者廣瀬淡窓の生家である。改修工事のため2018年から休館しており
再オープンをずっと待っていたのだが、オープンは何と4/1からなので2週間後。あぁなんと惜しいことか・・・
建物の前まで行ったら、おや?門が開いている。一部先行でオープンしているのか?


のぞきこんだら係の方がいて、尋ねるとやはりオープンは4/1ということだったが、事務所外壁のなまこ壁を
見せてもらうことができた。


なまこ壁の一部に8寸角の本業タイルがはめ込まれているのだ。こういうのはありそうでなかった!
他の貼り瓦と同じサイズなら全部を本業タイルに置き換えることも可能だが、釉薬がかかっているタイルには
目地の漆喰の付きが悪いからだろう、ポイント的に使われているのみ。本業タイルは4枚見られたが、
他のところにもあるのだろうか?


もうオープンしてるから、また今度日田に行ったら入場して探検してみよう~


草野本家もここ8年間もずっとやっていた大規模修復工事がやっと終わって、こちらはオープンしていたので入場。
・・・あれ?写真撮影禁止なんだっけ?写真が一枚もない。。。写真がないとどんなんだったか思い出せないな(汗)

続く
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中島家住宅と小石原焼の里

2023-10-28 23:20:57 | 建物・まちなみ
2023年3月の旅。

嘉麻の常盤館からの続き。



2泊目の日田へ向けて南下する途中、添田の中島家住宅へ立ち寄る。


中島家は、はぜろう、醤油、酒などの製造販売を営んだ家で屋号を「綿屋」といった。
旧日田街道に面した屋敷には江戸時代安政6年に建てられた主屋のほか、門や塀、蔵などの附属屋も残り、
重要文化財に指定されている。


近代の増改築、昭和中期の改築を経ているが、基本近世の建物なので結構地味だし調度品もないなかで
目を惹くのは仏間の大きな襖絵と座敷の地袋の襖絵である。


これらの襖は座敷の改修後1886(明治19)年に新調されたもの。
仏間の花卉図は、大宰府生まれの吉嗣梅仙の作。


こちらは息子の吉嗣拝山の作。


かわいい松の引き手。


以前日田から乗ったJR日田彦山線代替バスの車窓から見て気になっていた庄宮城医院も見に行く。
2020年の記事
当時は添田~日田間が豪雨被災後運休になっていたのだが、その後廃止されてしまった(涙)。


レンガ塀に囲まれた庄宮城医院は現役のようだがこの日は門が閉まっていて、広い前庭ごしに奥の建物はよく見えなかった。
美しいレンガ蔵がひとつ見えた。


そのあと『日本全国タイル遊覧』の本でお世話になった小石原のやままる窯を再訪して、外のデッキでお茶を頂きながら
成美さんとおしゃべりをして、お皿を購入。


タイルみたいな陶板も少しあって、試作品と言われていたが、ラスター釉や独特の色合いがとても素敵だった!


やままる窯で教えてもらったレストラン「ふぇありお」へランチに。
そこは旧小石原小学校をリノベーションした「アクアクレタ小石原」という複合施設の一角にあり、野菜を使った
ビュッフェが人気と聞いていた通りすでに満席で、結局名前を書いてから1時間近く待ってようやく入れたほど。
待つ間にうろうろしてみると、広い校庭は芝生の公園になっていて子供が走り回り、一隅にはテントが並んでいて
キャンプができるらしい。校舎内では陶芸ができたり、ワークショップやイベントも行われるようだ。
結構大きな校舎なのだが持て余すこともなく洗練された雰囲気で、かなりうまく使われているよう。へぇ~~!


過去の卒業記念につくられた、小石原焼の登り窯をモチーフにしたタイル壁画、
やきもののかけらで作ったモザイク壁画が残されていた。




このかけら、もちろん小石原焼であり、色合いや風合いがとても美しいなぁ!


飛びかんなの模様もさまざま。


ランチはメインの料理が来る前にビュッフェのお惣菜を山盛り食べてしまったうえにメインがすごいボリュームで
しかしどれもとてもおいしく、最後はかなり頑張って食べ切った(苦笑)。そりゃ大人気のはずだわ!


さらに下る。だいぶ時間が押してしまったので、日田彦山線の橋梁群は端折ることにして、
大行司付近でちょっと寄り道。これも元学校だろう。


旧小石原小学校がうまく活用されて大勢の人で賑わっていたのを見たあとだけに、こちらは放置された感じで寂しいなぁ。。。


古民家に住む知り合いのご夫婦を訪ね、手作りのシナモンロールをごちそうになり、建物を見せてもらったり
おしゃべりしたりして楽しい時間を過ごした。


続く。
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常盤館 鯉の間の意匠

2023-10-10 23:50:41 | ディテール
嘉麻市、常盤館の続き。

この常盤館、素晴らしいのはお料理とお庭だけではない。二階にある部屋がすごいのだ!!
実はこの部屋の意匠を見ることが目的だった。友人がこの部屋をリクエストしてくれたのだが、
老朽化しているためここにはお客を泊めることはできないとのことで、見学させて頂いた。


魚の形をしたプレートに「ひこ」、いやいやこれは右から左に読むのだ。「こひ」=鯉の間である。
この形はあまり鯉っぽくないが・・・笑


中は一見何の変哲もない6畳間なのだが・・・


よく見ると、床柱に「鯉之間」という文字が浮き彫りされている。


そしてその下には、木目を水の流れに見立てた鯉の滝登り!木目も自然の」ものではなく完全に彫刻である。


床柱の足元は松かさのような意匠。


床脇っぽい部分の棚や床板もすべて彫刻されている。


床框は四方竹・・・と思いきや、これも木材を彫ったもの。竹の節も再現してあって、ぱっと見はだまされそう。


壁に直接固定された棚は花型というか雲形というか変わった形で、和歌のような文字が彫られている。


落とし掛けにも松の幹と松葉が彫ってあり、一部は着色されている。天井は網代模様の彫刻。


2段になった中央の床の間の床框は、これも皮つきの松を模しているのか?




天井は中央部がわずかに山型に傾斜がついた船底天井。そして窓際の半間分を区切る意匠的な垂れ壁がついており、
そこから天井の勾配が変化しているのは、茶室の掛け込み天井風のアレンジなのか??


その半間分の天井には、なんと将棋の駒が!?


窓のまぐさにも「ヒコ ヒコ ヒコ・・・」。




窓台にも鯉の姿が・・・どんだけ鯉が好きやねん!?笑
お客来い来いとか、滝登りで出世につながる縁起物として、また水とあわせて火事除けのまじないなど、
鯉は古い家によく見かけるモチーフだが、「コヒ」という文字まで装飾に使うとは、ここを建てたご当主が
相当変わり者だったのか、それとも任された職人が変わり者だったのか・・・笑


窓の外側についた欄干は波模様と網代。もちろんこれも木を彫ったもの。


2階には大広間もあって宴会もできる。こちらは特段風変りな意匠はなくまぁ普通の部屋だ。


あっ、ここにも鯉が!

常盤館の公式サイト→こちら

常盤館を出て少し走り、「みつあんきょ」を見に行く。平成筑豊鉄道の築堤に空いた3連アーチのトンネル。
正式名は「内田三連橋梁」、1895(明治28)年建造。そこをくぐるのは水路と道路だ。


上流側は石積みになっていてちょっといかつい雰囲気。水切りがついているのでもともとは全幅水路だったのだろう。


くぐって反対側へ出よう。




キツイ逆光!!こちら側はレンガ積みで、将来の拡幅を見据えてゲタ歯になっている。このレンガの外観は
未完成の断面なわけだ。
平成筑豊鉄道はもともと石炭運送のために敷かれた豊州鉄道であった。当時は筑豊地方の各炭鉱から石炭を
運び出すための鉄道が網目のように走っていたのだ。しかし石炭の時代は去り多くは廃止された。
3セクの旅客鉄道として残ったこの路線も複線化されることはなく、石積みの仕上げをされないまま今に至っている。




築堤にはいちめんカラシナの花盛り!!
若いつぼみを探して少し摘む。花もきれいだが、茹でて食べるとめちゃおいしいのだ(笑)


続く。
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