フェライユール夫人は『もう一度、そして最後にさようなら』という文言に目を留めた。顔が蒼白になり、心穏やかならざる声で彼女は言った。
「よかったじゃないの。この娘はあなたを愛してはいなかったのよ……」
「ああ、お母さん、知っていたらそんなことは……」
彼女は最後まで言わせなかった。誇り高く頭をまっすぐに持ち上げて言った。
「愛するということがどういうことか、私は知っています……パスカル、それは信じるということです。もしも全世界があなたのお父様を非難したとしても、私の心は微動だにしなかったでしょう。この娘さんはあなたを疑ったのよ……あなたがゲームでいかさまをしたと言われ……彼女はそれを信じたのよ! ド・シャルース伯爵の死の床での約束なんて口実にすぎないってこと、あなたは分かっていないようね」
その通りであった。パスカルは分かっていなかった……。
「ああ、何たることだ!」と彼は悲痛な叫び声を上げた。「僕の無実を信じてくれるのはお母さんだけなのか……」
「証拠がなくても信じるのはね……ええ、そうよ。敵をやっつけるための証拠を見つけるのが、あなたの仕事よ」
「見つけますとも」と彼は断固たる決意を示す口調で答えた。「僕には強い力が湧いてきました。今やマルグリットの命を護らねばならないのですから。彼女は騙されているんです、お母さん。彼女が僕を見捨てるなんてあり得ないんですから……ああ、首を振らないで、お母さん……僕は彼女を愛しているんです……だから僕は彼女を信じます」12.8
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