美しい姿勢・歩き方は腰痛・膝痛・肩こりを改善する

腰痛は体の使い方を少し間違えていただけ-昔のおじぎと現代人のおじぎの違いを解説します

立位で内転筋を収縮させる方法

2016-10-01 20:56:47 | 膝痛・足痛の原因

「脚を閉じた姿勢で、大殿筋とともに内転筋を収縮させる」と、さらに骨盤がしまります(注1)。
とはいっても、「内転筋を収縮させると、なぜ骨盤がしまるのか?」と疑問に思った方もいると思います。
内転筋は、「股関節を内転させることによって両脚を閉じる(もしくは交差させる)」働きがあることは有名です(注2)。
が、両膝がつくまで閉じたら、「内転筋の力を、骨盤をしめる方向に向かわせる」こともできるのです(注3)。

ただし、「内転筋の力を、骨盤をしめる方向に向かわせる」にはコツがあります。
まず、両膝がつくまでは、両脚を閉じる方向に力を入れます(「立位バランス訓練」注2、「股関節内転筋と片足立ち」1・2点目を参照)。
そして、骨盤をしめるには「内転筋を50%位収縮させることによって、大腿骨のつけ根を図40-4 ○赤矢印の方向にしめる」のです(注4)。
その際、「両膝は押し合いながら、骨盤から遠ざかる方向に動く」かんじになります。

そこのところをよく理解していないと、ただ「両脚を閉じる方向に強く力を入れる」だけで、骨盤をしめようとしてしまいます。
すると、「両膝が強く押し合うだけで、骨盤がなかなかしまらない」ことがあります。
そのため、「疲れるので収縮をやめてしまう」か「それでも頑張って収縮させた結果、内転筋が過労でA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」~B「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となる」になりやすいです。

内転筋↓→O脚となると、特に、骨盤の幅が広い女性や体重が重い人は、股関節や膝関節を傷めやすいです(図40-1を参照)。
そういうと、「それなら、男性や股関節・膝関節痛がない人であれば、内転筋↓→O脚でもよい」ようにも思えます。
ところが、内転筋↓→O脚になると、膝外側靭帯に大きな負担がかかるのです(注5)(注6)。

そのため、多くの方は、無意識のうちに外側に曲がった脚を伸ばそうとします。
ところが、このとき、内転筋が弱りすぎていたり、内転筋を収縮させる方法が分からなかったり、「外側に曲がった脚を内転するという感覚ではなく単に伸ばす感覚」だったりすると、「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」ことで脚を伸ばそうとしてしまいます(注7)。

でも、本来、大腿四頭筋やふくらはぎは「屈曲した膝や底屈した足関節を伸ばす筋肉」であり、「外側に曲がった脚を伸ばす筋肉」ではありません。
よって、「大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」ことで外側に曲がった脚を伸ばすと、過労でA~Bとなりやすくなります(注8)。
すると、筋ポンプ作用↓となったり、膝関節や足関節が硬くなりしゃがめなくなったりしがちです。
ですから、男性や股関節・膝関節痛がない人であっても、内転筋を収縮させることは重要なのです。

内転筋↓→O脚になると、特に長距離歩行の際に問題が起きやすいです。
片足立ちは立位よりも支持脚が不安定で転びやすいです。
よって、長距離歩行など、片足立ちの連続が長時間に及ぶ場合は、内転筋を収縮させ、図40-4 ○の姿勢にすることが重要です(注9)。
ところが、内転筋↓→O脚の人は、長距離歩行でも、「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」となりやすいです。
そのため、大腿四頭筋やふくらはぎが筋肉痛になりやすいのです(注10)(注11)。

すると、体は「筋肉痛を悪化させないよう、なるべく大腿四頭筋やふくらはぎを使わないようにしよう」と考えやすいです。
「そうなれば、仕方ないので、内転筋を収縮させ、図40-4 ○の姿勢になるだろう」とも思えます。

ところが、内転筋↓→O脚の人は、片足立ちの際「内転筋を収縮させ、図40-4 ○の姿勢にする」より「O脚(図40-4 ×の姿勢)のまま、膝外側靭帯によりかかる」方が、手っ取り早く膝関節を固定させられるように感じます。
そのためか、それほどひどいO脚ではない人でも、片足立ちになると、無意識のうちに後者を選択してしまいやすいです。
それに、「後脛骨筋↓や足関節のゆがみにより下腿が外側に倒れている」人だと、「内転筋を収縮させても、完全には図40-4 ○の姿勢にすることはできない」ため、やはり無意識のうちに後者を選択してしまいやすいです。

しかしながら、長距離歩行の際に後者を選択すると、ふだんは膝痛のない人であっても、さすがに膝関節内側の軟骨同士がぶつかり炎症を起こしたり、膝外側靭帯が急激に強く伸ばされ断裂(ねんざ)したりしやすくなります。
ところが、このとき「原因はO脚」と気づかないために、膝痛を悪化させてしまう人も多いです。

中には「原因はO脚」と気づきO脚をなおそうとする人もいます。
が、やはり「内転筋を収縮させ、図40-4 ○の姿勢にする」のは難しいことが多いです。
そのため、結局はまた「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」となりやすいです。
つまり、「膝関節外側靭帯によりかかると膝関節内側や外側が痛くなる」でも「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを使うと筋肉痛になる」というジレンマに陥りやすいということです。
しかも、前者を採用すれば支持脚が不安定になるため転びやすく、かといって後者を採用しても十分は安定せずすり足でつまずきやすいのです。
ですから、その場合、長距離歩行よりもまず「O脚や下腿が外側に倒れる状態を改善したり、片足立ちで○の姿勢を練習したりする」べきです。

ところで、「男性は座位や立位の際、脚を開くことが多いが、どうやって内転筋を収縮させるのか?」と疑問に思った方もいると思います。
「脚を開いた姿勢」では、「大腿骨のつけ根を図40-4 ○赤矢印の方向にしめる」のは難しいです。
よって、その場合は、「内転筋と中殿筋(股関節を外転する筋肉)を同時に収縮させる」と、「脚を開いた姿勢」でも内転筋を収縮させられます。
内転筋と中殿筋を同時に収縮させるには、「大腿を内側に閉じるように力を入れながら、同時に外側に開くようにも力を入れる」ようにします。
つまり、「膝を内側に押しても外側に押しても動かない」状態にするのです。

しかし、「内転筋が膝を内側に閉じようとすれば中殿筋は外側に開こうとする」力比べのような状態を長時間続けるのは大変です(注12)。
それに、人間の体は「内転筋と中殿筋を同時に収縮させるのは、お互いの働きを妨害するので非効率」と考えたり、「内転筋も中殿筋も収縮させなくてもその姿勢を保っていられるのに、収縮させるのは非効率」と考えたりする傾向があります。
そのため、この方法だと、どうしても収縮を怠ってしまいやすいです。

収縮を怠ればO脚になってしまいやすいですが、「脚を開いた姿勢」だと、O脚でも一見は分かりにくいです(注13)。
しかし、内転筋を収縮させなければ、膝外側靭帯に大きな負担がかかっていることに変わりはありません(注6を参照)。
そういうと、多くの人は「脚を開いた姿勢でも、内転筋を収縮させ膝を少しは内側に入れる」よう気をつけると思います。
ところが、「脚を開いた立位」だと、「膝を少しは内側に入れる」ことができたとしても、それは内転筋が収縮したからなのか、それとも大腿四頭筋やふくらはぎ、大腿裏の筋(図38-1 左下を参照)が収縮したからなのか を区別しにくいです。
よって、「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎ、大腿裏の筋を収縮させる」となりやすいです(注14)。

「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」のでも、少しは膝外側靭帯の負担を減らすことができます。
が、そのような体の使い方をしていると、大腿四頭筋やふくらはぎが過労→短縮しやすくなります。
それに、片足立ちの際も「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」くせがついてしまいやすいです。
また、「脚を開いた立位」だと、下腿をまっすぐ立てる筋肉(後脛骨筋や腓骨筋)も収縮しにくくなります。
なお、「股関節を外旋させつま先を外側に向けた立位」だと、足関節底屈位となるため、ふくらはぎが収縮・短縮してしまいやすくなります。
ですから、「脚を開いた姿勢」の際は、「股関節を内・外旋させず、つま先を正面に向ける」方がよいです(注15)。

なお、「脚を開いた姿勢」では、内転筋を収縮させても骨盤をしめる作用はありません。
よって、「脚を開いた姿勢」をとるのであれば、大殿筋のみで骨盤をしめなくてはなりません。
「でも、骨盤がしまりすぎるのも体に悪いのでは?」と思う方もいると思います。
確かにそうですが、睡眠時など筋肉が休んでいる際には骨盤が開くので、やはり日中活動時は骨盤をしめる努力が必要なことが多いです。

ただし、大殿筋や内転筋が過労でAとなった場合は、睡眠中でも「骨盤がしまったまま」となってしまうことがあります。
その場合は、「呼吸エクササイズ」などを行い、大殿筋や内転筋にたまった乳酸・カルシウムを分解・分離することで筋肉を緩めるとよいです。

ちなみに、女性は出産するためか、男性よりも骨盤が開きやすい傾向があります。
また、女性は妊娠するので胎児が大きくなるのに合わせて腹筋が伸びないと困るためか、筋肉が緩みやすい傾向があります。
つまり、男性の方が「大殿筋や内転筋がAとなりやすいため、骨盤がしまったままになりやすい」のです。

しかし、だからといって、男性は「大殿筋や内転筋を収縮させなくても骨盤が開かない」というわけではありませんし、「骨盤が開いたまましめなくてもよい」というわけでもありません(注16)。
「骨盤がしまったまま」とならないよう、「しめないようにする」のではなく、「呼吸エクササイズなどを十分行い開くようにする」べきです。
骨盤は、常に「しまると開くの中間」ならよいわけではなく、「日中活動時はしまり、睡眠時は開く」という、メリハリが大切なのです。


(注1)大殿筋を収縮させず、内転筋のみで骨盤をしめようとすると、骨盤がうまくしまらず、内転筋がA~Bとなってしまいやすいです。

(注2)両足を前後にずらし、両膝がすれ違うようにすれば、「股関節を内転させることによって両脚を交差させる」こともできます。
「それでは、座位で脚を組んだり、立位で脚を交差させたりすれば、内転筋を多く収縮させられるのでは?」とも思えます。
しかし、「座位で脚を組んだ状態は脚同士が密着しているため、立位で脚を交差させた状態は足裏と床とのまさつがあるため、内転筋を収縮させなくてもその状態を保っていられるし、O脚でも一見は分かりにくい」ので、内転筋収縮を怠ってしまいやすくなります。

が、「この方法を採用しなおかつ内転筋の収縮を怠らないようにする」のであれば、内転筋を(イ)にすることができます。
(「大殿筋エクササイズ2」注10では、筋肉が弱い場合、収縮時(イ)「その筋肉をある程度収縮した姿勢にする」とするよう推奨しました)
しかし、この方法では骨盤をしめる働きはなく、むしろ、脚を組むと骨盤が開いたりゆがんだりしやすくなります。
それに、この方法を採用せざるをえないほど内転筋が弱い人は、片足立ちで図40-4 ○の姿勢をとれないことが多いです。
ですから、「内転筋の筋力強化」などで内転筋を鍛えることにより、この方法を採用しなくても座位・立位を保てるようにした方がよいです。

(注3)中には「内転筋は十分あるが、立位だと後脛骨筋↓や足関節のゆがみによって下腿が外側に倒れてしまうために両膝がつかない」という人もいます(「股関節内転筋と片足立ち」5つ目の話を参照)。
このような人は、両膝をつけようとすると、内転筋が過労でA~Bとなりやすいです。
しかし、両膝がつかないと、「内転筋の力を骨盤をしめる方向に向かわせる」のは難しいです。

したがって、「下腿が外側に倒れてしまうために両膝がつかない」場合は、両足を少し(1~2㎝)だけ前後にずらし、「両脚を閉じた際、両内くるぶしはぶつからないが両膝はつく程度」にすると、両膝がつきます。
ただし、内転筋の収縮のみによって両膝をつけようとすると、やはり内転筋が過労でA~Bになりやすいので、「後脛骨筋や腓骨筋を収縮させ下腿をまっすぐ立てる」努力も怠らないでください(詳しくは後述します)。

「下腿が外側に倒れてしまうために両膝がつかない場合でも、膝立ちになれば両膝をつけられるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
が、すでに大腿四頭筋が短縮している人が膝立ちになると、短縮した大腿四頭筋が骨盤を前下方に引くため、骨盤前傾↑→腰椎前弯↑→腰痛↑となる場合があります。
大腿四頭筋は大腿前面にあり、骨盤~脛骨粗面(膝下)についている筋肉です。
よって、膝が屈曲すれば、その分大腿四頭筋は伸びなくてはなりません(図28-1を参照)。
ところが、大腿四頭筋が短縮していて伸びない場合は、膝屈曲に長さをとられた分、骨盤を前下方に引くことがあるのです。

(注4)ただし、「内転筋を収縮させることによって骨盤をしめる」のは、内転筋が「50%位収縮させると、脚を閉じるだけでなくさらに骨盤をしめることができる」程度に発達してから行ってください。
また、骨盤をしめる際は、「脚にクッションをはさまず、両膝をつけた状態」で行ってください。
ちなみに、題名は「立位で内転筋を収縮させる方法」としましたが、この方法は座位や仰臥位でも採用できます。
いきなり立位で行うのではなく、仰臥位→座位→立位と、段階的に負荷を増やしていくとよいです。

ただし、座位で行う場合は、「内転筋を収縮させることで骨盤や脚を閉じている」つもりでも、「ふくらはぎを収縮させつま先立ちのようになることで脚が動かなくなるようにしている」だけのこともあるので、そうはならないよう気をつけてくだざい。
座位では、おしりや大腿裏が座面につぶされ血行が悪くなっているので、ふくらはぎなど末梢の筋肉を収縮させると短縮しやすいです。

(注5)最近、「空中ヨガ」(シルクサスペンション)というものが流行っているようです。
これは、天井につるした輪状の帯に体をのせ、その上でポーズをつくる運動です。
その中に、「2本の帯に片足ずつのせ、帯の上にのったまま立つ」ポーズがあります。
帯は、足で踏みつけても床には接地しない長さになっているので、このポーズをとると、「床に足をつけず空中に立った状態」となります。
このポーズをとると、内転筋が強い人は脚を閉じられますが、内転筋が弱い人は頑張って脚を閉じようとしても大開脚してしまいます(※)。
通常、床に立つと「足裏と床とのまさつ」が発生しますが、このポーズをとるとそれがないので、内転筋が弱いと大開脚してしまうのです。

ちなみに、内転筋が弱い人は、「まさつが少なくつるつる」のくつを履き、つるつるの氷上に立った場合も、大開脚してしまいやすいです。
(アイススケートのくつは、くつ底に刃があり、横滑りしにくくなっています)
が、実は、膝関節も「まさつが少なくつるつる」なので、床に立っていても、膝関節の部分は「空中ヨガや氷上に近い状態」になっているのです。
「それでは、内転筋が弱い人でも、膝関節の部分が大開脚しないのはなぜか?」というと、膝外側靭帯がストッパーになっているからです。
内転筋が弱い人が立位になった際の膝外側靭帯には、それだけ大きな負担がかかっているのです。

(※)ただし、「2本の短い帯に片手ずつのせ、肘を伸ばしながら帯を下に押す」と、腕の力によって閉脚できる場合もあります。
しかし、「肘を伸ばしながら帯を下に押すと、なぜ閉脚できるのか?」と疑問に思った方もいると思います。
それは、「大開脚すると、その分背が低くなる(図40-4 下図を参照)ため体の位置は下がるが、肘を伸ばしながら帯を下に押すと、肘を伸ばした分体を押し上げる力が発生する」からです。
脚が外転し大開脚する際は、「脚が外に広がる」力だけでなく、「背が低くなる(体の位置が下がる)」力も発生します。
よって、肘を伸ばし体を押し上げることで後者の力を相殺してしまえば、閉脚しやすくなるわけです。

なお、氷上に立つ場合は、「帯ではなく手すりを下に押すことで体を押し上げる力を発生させる」人が多いです。
床に立つ場合は、「平行棒や松葉杖、ストックなどを下に押すことで体を押し上げる力を発生させる」こともできます。

しかし、そうしていると、腕や肘を伸ばす筋肉(広背筋や上腕三頭筋)が過労でA~Bとなりやすくなります。
また、「姿勢保持のために広背筋が収縮するくせ」がついてしまいやすくなります(「腕の力を抜く練習」の項を参照)。
が、「この方法を採用しなおかつ内転筋の収縮を怠らないようにする」のであれば、内転筋を(イ)にすることができます。
(「大殿筋エクササイズ2」注10では、筋肉が弱い場合、収縮時(イ)「その筋肉をある程度収縮した姿勢にする」とするよう推奨しました)
ですから、「筋肉がつくのに従い、段階的に負荷を増やす(手すりの使用をやめる)」のであれば、この方法を採用してもよいです(図40-2)。

(注6)内転筋が弱くても、「膝外側靭帯が伸びきっておらずストッパーになっている」うちは、ひどいO脚にはなっていない場合もあります。
しかし、「膝外側靭帯がストッパーになっている」状態が長期間続くと、靭帯が少しずつ「伸びてくる」場合があります。
その結果、膝外側靭帯が伸びきってしまうと、ひどいO脚になってしまいやすいです(図40-4 ×を参照)。
靭帯は「万一、スポーツなどで関節が本来動く方向以外に動いた際、動かないようにとめる」働きをするため、本来は伸びないです。
が、「ストッパーになっている」状態が長期間続くと疲弊するため、少しずつ「伸びてくる」場合もあるのです。
靭帯が急激に強く伸ばされ「断裂」(ねんざ)した場合は痛みや腫れが起こりやすいですが、「伸びてくる」場合は痛みがないことも多いです。

(注7)足が地面についている場合は、大腿裏の筋が収縮することで膝を伸ばしてしまう場合もあります(図38-1 左下を参照)。

(注8)血流がよければ、大腿四頭筋やふくらはぎが「A~Bとなる」のではなく、「内転筋の代わりに収縮することで発達する」場合もあります。
(大腿四頭筋の方がふくらはぎより中枢にあるため、発達しやすい人が多いです)
すると、「特別スポーツをしたわけでもないのに、大腿が太い」などということになりやすいです。
しかし、「大腿四頭筋やふくらはぎが内転筋の代わりをする」というのはやはり無理があります。
したがって、高齢になったり血流↓となったりすると、結局は大腿四頭筋やふくらはぎがA~Bとなり、O脚↑・膝痛↑となりやすいです。

ところが、このとき「O脚↑・膝痛↑となったのは、大腿四頭筋が弱ったからだ」と考え、大腿四頭筋を鍛える人も多いです。
しかし、この場合、収縮機能が落ちたのは「内転筋の代わりに収縮し過労になったせい」なので、ここで鍛えてもA~B↑となりやすいです。
(それでも、A~Bがわずかなうちは、血流をよくしうまく鍛えれば再び発達する場合もありますが、やはり最終的にはA~Bとなりやすいです)

また、大腿四頭筋やふくらはぎがAになった場合は、「膝痛↑となったのは、筋肉が短縮したからだ」と考え、筋肉をストレッチする人も多いです。
しかし、この場合、短縮したのは「内転筋の代わりに収縮し過労になったせい」なので、ここでストレッチしても炎症を起こしたり、瘢痕ができたり、防衛反応↑となったりしやすいです(「ふくらはぎのストレッチ」の項を参照)。
(それでも、短縮がわずかなうちは、血流をよくしうまく伸ばせば緩む場合もあります。が、「過労しながらストレッチ」を繰り返していると、最終的には「強く収縮しているのだけれど、強く伸ばされ断裂した足底腱膜」の状態と似たような状態になってきてしまう場合もあります)

(注9)立位と片足立ちでは、内転筋の使い方が異なります。
立位の際は「大腿骨のつけ根を図40-4 ○赤矢印の方向にしめる」としますが、片足立ちや歩行の際は「支持脚側の内転筋を収縮させることで、膝が内側に動くと同時に骨盤が外側に動く」とします(「立位バランス訓練」の項を参照)。
難しい場合は、まずは「片足立ちでの内転筋の使い方」から覚えてください。

(注10)ところが、「大腿四頭筋やふくらはぎが筋肉痛になったのは運動不足だからだ」と考え、もっと歩いたりする人も多いです。
しかし、この場合、筋肉痛になったのは「内転筋の代わりに収縮し過労になったせい」なので、ここで歩いてもA~B↑となりやすいです。

(注11)それに、本来、大腿四頭筋やふくらはぎは内転筋と同様に働くようにはできていません。
よって、いくら大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させても、「片足立ちの際、完全に図40-4 ○の姿勢にする」のは難しいです。
すると、片足立ちの際、支持脚が不安定になるため、ほんの一瞬しかしていられません(「腸腰筋よりも大殿筋を先に鍛えよう」注8を参照)。
したがって、もう片方の足を高くまで上げている時間がないため、すり足のようになり、つまずいてしまいやすくなります。

また、ふくらはぎが過労→短縮すると足が底屈しつま先が下がるので、歩行時につま先を引きずりつまずいてしまう場合もあります。
そのため、すり足になったりつま先を引きずったりしないよう、前脛骨筋(足関節を背屈しつま先を上げる筋)↑→すねが筋肉痛となったり、「股関節を大きく屈曲し脚を大きく持ち上げれば引きずらない」と考え、腸腰筋↑となったりする場合もあります。

(注12)この方法を採用する場合は過労とならないよう「内転筋と中殿筋は50%位の強さで収縮させ、ときどきは力を抜き休む」とよいです。
ただし、「休んだ後に収縮を再開する」のを忘れないようにし、収縮を怠らないようにしてください。

(注13)本書では、「両膝伸展位・つま先を正面に向けた姿勢(股関節を内旋したり外旋したりしない)で、両足(親指つけ根と内くるぶし)をつけ、内転筋を収縮させることでなるべく両膝をつけるようにしても、両膝や両ふくらはぎがつかない」状態をO脚と呼んでいます。
「後脛骨筋↓や足関節のゆがみによって下腿が外側に倒れている」と、「両膝はついても両ふくらはぎはつかない」ことがあります。
しかし、あまり知られていませんが、「両膝はついても両ふくらはぎはつかない」のもO脚です。
なお、「大腿骨のつけ根を図40-4 ○赤矢印の方向にしめる」と、内転筋が収縮しふくらむため、内股(陰部のすぐ下)もつきます。
両足(親指つけ根と内くるぶし)、両ふくらはぎ、両膝、内股のすべてがつく状態であれば、完全に「O脚ではない」といえます。

(注14)内転筋が収縮したか区別できない場合は、「内転筋の筋力強化」などを行い、内転筋収縮の感覚を覚えてください。
なお、「脚を開いた姿勢」の際、内転筋や中殿筋ではなく、股関節内旋・外旋筋を収縮させることで股関節を動かないようにする人もいます。
特に、「股関節を外旋させつま先を外側に向けた姿勢」だと、そうしてしまいやすくなります。
また、「股関節を外旋させつま先を外側に向けた姿勢」だと、大殿筋の収縮を怠ってしまう場合もあります。
なぜなら、「大殿筋は股関節外旋の働きがあるが、この姿勢をとると、大殿筋を収縮させなくてもこの姿勢を保っていられる」からです。

が、「大殿筋エクササイズ2」注10では、筋肉が弱い場合は、収縮時(イ)「その筋肉をある程度収縮した姿勢にする」とするよう推奨しました。
しかし、座位で大殿筋を(イ)にするには、「骨盤をしめた形として座る」方がよいです。
なぜなら、「脚を開き股関節を外旋させて座ると、骨盤がしまるのではなく逆に開いてしまう」ことが多いからです。

立位の場合、「この方法を採用し、なおかつ大殿筋の収縮を怠らないようにする」のであれば、大殿筋を(イ)にすることができます。
しかし、座位のときほどは「上半身の重みによって骨盤が開きやすくなる」ことはないので、不利益が多いこの方法を採用してまで(イ)にこだわることはないです。
それに、この方法で(イ)にできるのは主に「股関節を外旋する方向の収縮」です。
が、腰痛↓とするために重要なのは「骨盤後傾する方向の収縮」です。
立位でこの方法を採用せざるをえないほど大殿筋が弱い人は、十分骨盤後傾できない=立位をとっているのは危険なことが多いです。
ですから、「大殿筋エクササイズ」などで大殿筋を鍛えることにより、この方法を採用しなくても立位を保てるようにした方がよいです。

(注15)ちなみに、「脚を開いた姿勢」でなおかつ「股関節を内旋させつま先を内側に向けた姿勢」にする人もいます。
その場合も、「膝を少しは内側に入れる」ことができたとしても、それは内転筋が収縮したからなのか、それとも大腿四頭筋やふくらはぎ、大腿裏の筋が収縮したからなのか を区別しにくいです。
それに、股関節内旋・外旋筋を収縮させることで股関節を動かないようにしてしまいやすくなります。
また、「股関節を内旋させつま先を内側に向けた姿勢」だと、骨盤が開いてしまいます。
それに、大殿筋が(ア)「その筋肉をある程度伸ばした姿勢にする」(「大殿筋エクササイズ2」注10を参照)となります。
大殿筋が弱いのに(ア)とすると、断裂しやすいのでNGです。

(注16)骨盤が開くと、腹横筋や骨盤底筋も引き伸ばされるため、過労でA~Bとなったりしやすいです。
それに、骨盤が開くと、骨盤がゆがんだり、仙骨やその上にのる脊椎が不安定になったりしやすいです。
ところが、骨盤が開くと、「座位の際、やや骨盤後傾位で安定する」場合もあります。
それだと、大殿筋や短背筋群をあまり収縮させなくても姿勢を保持していられるため、目先は楽ですが、大殿筋や短背筋群が弱りやすいです。
すると、油断しているうちに腸腰筋↑→腰椎前弯↑となったり、ぎっくり腰・むち打ち(頚椎ねんざ)・すべり症となったりしやすいです。

股関節内転筋と片足立ち

2016-07-27 19:18:33 | 膝痛・足痛の原因


「中殿筋の収縮が弱いと、遊脚側(支持脚と反対側)の骨盤が下に落ちてしまうので、片足立ちになりにくい」ことは比較的有名です(注1)。
でも、実は「内転筋の収縮が弱い場合も、支持脚が不安定になるので、片足立ちになりにくい」のです(「立位バランス訓練」の項を参照)。
「内転筋の収縮が不足するとどうなるか」や「内転筋を収縮させにくい原因」を十分理解していないと、内転筋を収縮させるのは難しいです。
よって、ここではそれらについてもう少し詳しく説明します。

まずは、「内転筋の収縮が不足するとどうなるか」を説明します。
股関節の場合は、股関節外転位で体重がかかるため、股関節外側がつぶれたりすり減ったりします(=変形性股関節症)(注2)。
すると、臼蓋(大腿骨頭がはまる部分)が浅くなるので、股関節が脱臼しやすくなる場合もあります。

膝関節の場合は、O脚になり膝関節内側に体重がかかるため、膝関節内側がつぶれたりすり減ったりします(=変形性膝関節症)。
すると、膝関節内側が痛むため、膝関節外側に体重をかけようとする場合があります。
ところが、外側に体重をかけようとすると、図40-1 矢印ア・イの力が増えるためO脚がひどくなるので、内側がもっと痛むことになります。
つまり、狙いとは逆の結果になってしまうのです(注3)。

足関節の場合は、足関節外反位で体重がかかるため、足関節内側がつぶれたりすり減ったりします。
ただし、足は小さな骨が集まってできているため、様々にゆがむことができます。
よって、「足関節内側がすり減る」よりもまずは「土踏まずがつぶれる」だけのことが多いので、強く痛むことは少ないです(注4)。
しかし、土踏まずがつぶれると不快なため、「足関節外側に体重をかけることで足関節内側を持ち上げようとする」場合があります(注5)。
ところが、外側に体重をかけようとすると、図40-1 矢印ウの力が増えるため外反がひどくなるので、内側がもっとつぶれることになります。
つまり、狙いとは逆の結果になってしまうのです。

次に、「内転筋を収縮させにくい原因」(O脚になりやすい原因)を5つ説明します。
「内転筋を収縮させにくい原因」が分かれば、原因を解消することもできるので、収縮させやすくなります。

1つ目は、「O脚にならないように立つと大腿骨軸は斜めになる」と知らない(もしくは忘れている)ことです。
O脚でなければ「股関節は骨盤の外側についており、膝関節よりも外側にあるので、大腿骨軸は斜めになる」ことになります(注6)。
ところが、それを失念していると、「大腿骨軸が地面や骨盤と垂直」もしくは「大腿骨軸が下腿骨軸と一直線」(図39-3 ×)になっていれば、十分内転できているはずだと思ってしまうのです。
すると、「大腿骨が斜めになった場合は内転筋が収縮しすぎているサイン」と思ってしまうため、大腿骨が斜めになると無意識に「内転筋の収縮を緩める」ことにより「大腿骨軸が地面や骨盤と垂直」もしくは「大腿骨軸が下腿骨軸と一直線」(図39-3 ×)にしてしまうのです。

2つ目は、「内転筋を収縮させると中殿筋の働きを妨害するので、内転筋と中殿筋を同時に収縮させるのは非効率」と思うことです。
たとえば、右内転筋を収縮させると「右股関節を内転すると同時に骨盤左側を下に引く」働きがあります。
つまり、「中殿筋と反対の働き」です(注1を参照)。
ですから、確かに「内転筋を収縮させると中殿筋の働きを妨害する」(中殿筋に対する抵抗・負荷になる)ことにはなります(注7)。
しかし、実は、「正常なシステム」では立位の際、内転筋と中殿筋が収縮し続けるわけではありません。

「内転筋と中殿筋の関係」は「大殿筋と腸腰筋の関係」と似ています。
「腸腰筋よりも大殿筋を先に鍛えよう」の項では、「腸腰筋が股関節を曲げようとすれば大殿筋は伸ばそうとする力比べのような状態を長時間続けるのは大変なので、正常なシステムでは立位の際、主に大殿筋が収縮するようになっている」と述べました。
それが「内転筋と中殿筋」だと「内転筋が股関節を内転しようとすれば中殿筋は外転しようとする力比べのような状態を続けるのは大変なので、正常なシステムでは立位の際、主に内転筋が収縮するようになっている」となるのです(注8)。
なぜなら、立位の際は、片足立ちの際のように「中殿筋を収縮させないと遊脚側(支持脚と反対側)の骨盤が下がる」ということはないからです。しかし、立位であっても片足立ちであっても「内転筋を収縮させないと骨の配置がくずれO脚になってしまう」ので、内転筋の収縮を省略するわけはいかないのです(注9)。

ただし、片足立ちの際は「内転筋が内転しようとすれば中殿筋が外転しようとする力比べのような状態」となります(注10)。
「それでは、内転筋は立位でも片足立ちでも収縮しなくてはならないのだから、休みなしではないか」とも思えますが、心配は不要です(注11)。
あまり注目されていませんが、内転筋は長時間の収縮を想定しているためか、意外と多くの種類があるのです(注12)。

3つ目は、「内転筋を緩めると骨盤底筋も緩みやすい」ことです。
実は、内転筋を収縮させると骨盤底筋も収縮しやすくなります(詳しくは後述します)。
しかしながら、「腹筋が短縮し内臓をつぶしてしまっている」場合などは、「骨盤底筋をあえて緩めることで、内臓を骨盤の下に逃がそうとする」ことがあるのです(「逆流性食道炎と腹圧」「骨盤底筋を鍛えれば尿もれはなおるか?」の項を参照)。
そのような人は、無意識に「内転筋を緩めることで骨盤底筋も緩めようとする」ことがあります。
その場合は、「短縮した腹筋を緩め、内臓が入るスペースを確保する」のでないと、内転筋を鍛えても収縮するようにはならないことがあります。

4つ目は、「内転筋を緩めると痛みを避けられる(場合がある)」ことです(注13)。
「内転筋を収縮させすぎて筋肉痛になった場合」は内転筋を収縮させると痛みがひどくなるため、無意識に「内転筋を緩めることで痛みを避けようとする」ことがあります。
また、「骨盤臓器脱や痔(肛門の炎症)など、骨盤底部の病気になった場合」も、内転筋を収縮させることで骨盤底筋も収縮させると患部をつぶしてしまうため、無意識に「内転筋を緩めることで骨盤底筋も緩めようとする」ことがあります。
その場合は、「大元の原因である病気をなおす」のでないと、内転筋を鍛えても収縮するようにはならないことがあります。

5つ目は、「内転筋が弱りO脚になると後脛骨筋も弱る」ことです。
実は、O脚にならないためには、「内転筋の収縮」だけでなく「後脛骨筋(下腿骨をまっすぐ立てる筋肉)の収縮」が必要です。
図40-1からは「立位の際、内転筋を収縮させれば、大腿骨の内転も下腿骨をまっすぐ立てることもできる」ように見えますが、実は「内転筋と後脛骨筋の両方を収縮させなければ、大腿骨の内転も下腿骨をまっすぐ立てることも十分できない」のです(図40-2を参照)。
しかし、一度内転筋が弱りO脚になると、後脛骨筋だけで下腿骨をまっすぐ立てるのは難しいため、後脛骨筋も怠け弱ることが多いです(注14)。
すると、O脚を矯正する際、後脛骨筋が弱いため、内転筋の収縮のみによって矯正しようとする人が多いです。
ところが、内転筋だけで大腿骨を十分内転するのは難しいため、あきらめて怠けるか、内転筋が過労でA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」~B「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となりやすいのです(注15)。

ただし、「内転筋を収縮させにくい原因」を解消しても、すでに内転筋がとても弱っている場合は、「立位バランス訓練」よりもまずは「仰向けでの筋力強化(両膝でクッションをはさむ)」からはじめる必要があります(「立位バランス訓練」注2を参照)。
しかし、それにも注意点が2点ほどあります。

1点目は、「内転しているつもりなのに内旋になっている」人が多いことです(注16)。
「内転しているつもりなのに内旋になっている」と、仰向けの場合は「脚を閉じる代わりに膝蓋骨が内側を向く」ので見分けることができます(「用語の解説」の項を参照)。
座位の場合(足が固定されていない場合)は「脚を閉じる代わりに膝蓋骨が内側を向き下腿が外側に開く」(つまり、内転したときは「左右の膝だけでなく左右の足もつく」のに対し、内旋したときは「左右の膝は開かないが左右の足が開いてしまう」)ので見分けることができます。

しかし、立位の場合は「内旋すると脚が閉じないというだけで一見は何も起こらない」ので、見分けにくいです。
立位だと足が接地し固定されているため、内旋しても特に動いたりしないのです(よく見れば膝蓋骨が少し内側を向く場合もありますが)。
ですから、その場合は「左右の膝の間に折りたたんだタオルを入れ、それが落ちないようにする」「軽く外旋する方向に力を入れながら内転する」などするとよいです(注17)。

2点目は、「左右の内転筋を同程度に収縮させているつもりなのに、片方の内転筋ばかりが収縮している」人が多いことです。
たとえば、ふだん「左半身の安定&右半身の自在」(「書字の極意2」を参照)となっている人は、脚の筋肉の発達も左>右となっています。
そのため、「内転し脚を閉じている」場合でも「左内転筋ばかりが収縮し、右内転筋はあまり収縮していない」ことがあるのです。
すると、仰向けや立位の場合は「骨盤が左側(内転筋の収縮が強い側)に偏る」ので見分けることができます。
座位の場合は「両膝が右側(内転筋の収縮が弱い側)に偏る」ので見分けることができます。
その場合は、「左側の内転筋を少し緩め、右側の内転筋の収縮を少し強める」ことで、骨盤や両膝が体の中心にくるようにします(注18)。

なお、内転筋などが弱っている場合、「立位バランス訓練」や「片足立ち訓練」も、いきなり行うと骨の配置がくずれO脚になってしまいがちです。
その場合は、手すりや平行棒を使用したり、介助者が支えたりしながら行うとよいです(図40-2を参照)(注19)。
介助者は、本人の右膝を内側へ押し込み「右内転筋の収縮」を介助しながら、右わき腹を引き上げ「右短背筋群の収縮」を介助します(注20)。
そして、「筋肉がつくのに従い、手すりや介助を少しずつ減らしていく」とよいです。

「片足立ち訓練」の際は、「立位バランス訓練」の姿勢をくずさないようにしながら、遊脚側(支持脚と反対側)の足を「全接地→踵を浮かせる(つま先立ち)→全離地」という具合に、「筋肉がつくのに従い、段階的に離地させる」とよいです(注21)。


(注1)たとえば、右中殿筋を収縮させると「右股関節を外転すると同時に骨盤左側を持ち上げる」働きがあります。
よって、右中殿筋が弱いと、「右足での片足立ち」のとき、骨盤左側が下がる→左足も下がる→左足が離地しにくくなる ことになります。
このとき、「体幹を右に側屈する」ことで骨盤左側に上半身の重さをあまりかけないようにすると、左足が上がりやすくなるため、右足での片足立ちになれる場合があります。
つまり、「右内転筋が弱い場合」(「立位バランス訓練」を参照)だけでなく「右中殿筋が弱い場合」も、「右足での片足立ちのとき体幹を右に側屈する」ことがあるということです。

(注2)股関節痛の原因が「股関節伸展位での荷重」の場合(「立位の注意点NG例」を参照)は股関節後側、「股関節外転位での荷重」の場合は股関節外側がつぶれたりすり減ったりしやすいです。

(注3)大腿骨の形状を理解していないと、「股関節内転する=膝内側に体重がかかる=膝内側が痛む」だと思い込み、内転をためらう方もいます。
そのような方には、大腿骨の形状などを図示し、よく説明することが大切となります。
ただし、O脚に合わせて膝関節が変形しすぎている場合は、いきなり矯正しすぎると痛みがひどくなる場合もあります。
しかし、だからといって、そのままではO脚が進行し膝関節内側の痛みはひどくなってしまうので、少しずつ矯正していく必要があります。

(注4)土踏まずがつぶれ偏平足になると、足底腱膜は伸ばされます。
そのため、「足底腱膜が短縮しているのに無理やり伸ばされた場合」などは痛むこともあります。
ちなみに、「偏平足だと下腿が外側に倒れO脚になる」ことが多いですが、「内側に倒れX脚になる」場合もあります。

(注5)立位の際、「足を内反し足の内側を地面から浮かせることで足関節外側に体重をかけようとする」場合もあります。
しかし、それだと「腓骨筋や後脛骨筋が弱る」場合や「足関節外側の靭帯が伸びたり断裂したりする」場合があります(詳しくは後述します)。

(注6)女性の方が骨盤が広いため、大腿骨軸はより斜めになります。
よって、「大腿骨軸は斜めになる」ことを失念していたり内転筋の収縮が不十分だったりすると、女性の方が股関節や膝関節を傷めやすいです。
股関節外側や膝関節内側の痛み・変形が女性に多いのはそのためです。

(注7)中殿筋が弱いと、片足立ちのとき「内転筋の収縮を弱めることで相対的に中殿筋の働きを強めようとする」場合もあります。
ですから、そのような場合は「内転筋だけでなく中殿筋も鍛える」のでないと、内転筋が十分収縮するようにはならないことがあります。
ちなみに、体が「骨の配置を正しくすること」よりも「エネルギー節約」を重視している場合は、「筋収縮(と弛緩)によるエネルギー消耗」を避けるため、内転筋や中殿筋を鍛えても十分収縮するようにはならないことがあります。

(注8)ここでは「骨の配置が正しい立位」(O脚にならない立位)をとる場合を「正常なシステム」と呼んでいます。

(注9)内転筋をあまり収縮させなくても立位でいることはできますし、短時間であれば問題ありません。
しかし、そうしていると、内転筋をあまり収縮させないくせがついてしまう場合があります。
すると、O脚や内転筋の退化は少しずつ進んでいくため、気づいたとき(痛みがひどくなったとき)には矯正が大変になっていることも多いです。
ですから、「長時間の場合」「体重が重い場合」「股関節痛や膝関節痛がある場合」などは、内転筋を収縮させた方がよいです。

(注10)ただし、「ふつうの速度(加速度がつく速度)での歩行」の場合、「内転筋と中殿筋が片足立ちの間中収縮し続ける」のではありません。
歩行は「片足立ちの繰り返し」ではあるのですが、筋肉の使い方は、ただの片足立ちとは違うのです。
「片足立ちでは左右に揺れてくつ下が履けない人でも、ふつうの速度での歩行は不安定にならない」のはそのためです。

しかしながら、「小さな歩幅での歩行」(「ノルディックウオーキング」の項を参照)での筋肉の使い方は、ただの片足立ちと同様「内転筋と中殿筋が片足の間中収縮し続ける」ので、「立位バランス訓練」の姿勢をくずさないようにすれば、内転筋と中殿筋のよい筋力強化となります。
ただし、内転筋や中殿筋がまだ弱い場合は、過労でA~Bとなりやすいので、その場合は「仰向けでの筋力強化」からはじめるとよいです。

(注11)立位のとき内転筋が疲れる場合は、「休めの姿勢」をとる(片脚のみに体重をかけることでもう片方の脚を休ませる)方法もあります。
しかしながら、股関節や膝関節を傷めないためには、「体重をかけた側の内転筋だけは十分収縮させる」ことが大切となります。

(注12)大殿筋は本来は大きい筋肉ですが、それは「正常なシステムでは大殿筋が長時間収縮することになっているため」と考えられます。
そして、内転筋も多くの種類があるのですが、それは「正常なシステムでは内転筋が長時間収縮することになっているため」と考えられます。

(注13)「痛みがあると、筋肉を強く収縮させることで体を固定しようとする」場合もあるので、内転筋を強く収縮させるケースもあります(「筋肉は強く伸ばさない方がいいのか?」注2を参照)。
内転筋を強く収縮させると、X脚(両脚をそろえたとき両膝はつくが両足はつかない)や「関節面外側がつぶれる」タイプの膝痛になります。
しかし、そうなる人の割合は「関節面内側がつぶれる」タイプよりは少ないです。
「筋肉を強く収縮させることで体を固定しようとする」場合は、内転筋のみではなく、内転筋・中殿筋などすべての筋肉を強く収縮させ体を固定しようとすることが多いです。
すると、関節の隙間全体がつぶれるため、関節面内側のみとか外側のみではなく「関節面全体がつぶれる」タイプの膝痛や股関節痛になります。

ちなみに、内転筋が過労→短縮すると脚が開きにくくなり目立つため、つい強くストレッチしてしまいがちですが、たとえ「ゆっくりと少しずつ緩めることで防衛反応を低下させられた」としても、筋肉が緩みすぎるとO脚になるので、生活に支障がなければ緩めすぎない方がよいです。

(注14)内転筋よりもまず後脛骨筋が弱ることによってO脚になりはじめる場合もあります。

(注15)「AになればO脚は矯正されるはず」とも思えますが、内転筋の収縮のみによってO脚を矯正しようとすると、内転筋は「強く収縮(短縮)しているのに強く伸ばされる」ため、「伸縮しない布を少しゆるめてはりつけた」のと似たような状態になってきてしまう場合もあります。
それは「強く収縮しているのだけれど、強く伸ばされ断裂した足底腱膜」の状態とも似ています(「足底腱膜炎の原因」の項を参照)。
ただし、後脛骨筋よりも内転筋の方が中枢にあるので、後脛骨筋よりは内転筋を先に鍛えた方がよいです(「弾性ストッキングでむくみ予防」注7)。
しかし、その後は「内転筋と後脛骨筋を並行して鍛える」とよいです(詳しくは後述します)。

(注16)中殿筋を鍛える際、「外転しているつもりなのに外旋になっている」ケースもあります。
「外転しているつもりなのに外旋になっている」と、仰向けの場合は「脚を開く代わりに膝蓋骨が外側を向く」ので見分けることができます。
座位の場合(膝が曲がっている場合)は「脚を開く代わりに膝蓋骨が外側を向き膝のみが外側に開く」(つまり、外転したときは「左右の膝だけでなく左右の足も開く」のに対し、外旋したときは「左右の膝は開くが左右の足はついたままとなる」)ので見分けることができます。
しかし、外旋しないように気をつけると、今度は「内旋しながら外転する」ケースもあります。
よって、中殿筋を鍛える際は「外旋も内旋もせず、まっすぐ外転すること」が大切となります。

(注17)O脚がひどい場合はタオルを厚くしてください。
そうしないと、いきなりO脚を矯正しすぎることになるため、かえって痛みが出たり内転筋が強く収縮するため過労でA~Bになりやすいです。
なお、大殿筋は股関節外旋筋でもあるため、大殿筋を収縮させると股関節を外旋させることができます。

(注18)ただし、右側(発達が悪い側)の内転筋を収縮させすぎると、過労でA~Bになってしまいやすいので気をつけてください。

(注19)ただし、手すりを使用する際は、わきをしめ広背筋(「横」の筋線維)を収縮させた上で、なるべく上腕三頭筋(肘を伸展する筋肉)のみを収縮させ肘を伸展します。前かがみになったり肘を完全に伸展することになったりする場合は、手すりを肘くらいの高さにまで上げます。
広背筋(「縦」の筋線維)を収縮させ手すりを強く下に押すと、「姿勢保持のために広背筋が収縮する」くせがついてしまいやすいのでNGです。

(注20)介助者がそばにつくことで転倒の恐怖がなくなると余計な緊張がなくなるため、「鍛えたい筋肉」が収縮しやすくなります。
余計な緊張があると、「緩めたい筋肉」が手伝うことで体を固めて守ろうとする場合があります(「筋肉は強く伸ばさない方がいいのか?」を参照)。
ただし、このとき本人も「右内転筋や右短背筋群を収縮させる」よう意識することは大切です。

(注21)「踵を浮かせる(つま先立ち)」の際、「ふくらはぎに力を入れつま先で地面を押す」と、ふくらはぎを多く収縮させるくせがついてしまいやすいのでNGです。
「踵を浮かせる」際は、「遊脚側(支持脚と反対側)の膝関節・足関節の力を抜く」ようにします。
そして、「遊脚側の腸腰筋を収縮させることによって、股関節を軽く曲げる」ようにします。このとき、強い力は必要ありません。

「全離地」の際は、「遊脚側の股関節をもう少し大きく曲げる」ようにしますが、やはり強い力は必要ありません。
腸腰筋が弱い場合は「強い力が必要」と感じるかもしれませんが、その場合はつま先を引きずってもよいので、強い力は入れないでください(歩くのでなければ、つま先を引きずってもつまずく心配はありません)。
「片足立ち訓練」の際、強い力が必要なのは遊脚側よりも「支持脚や体幹の筋肉」なので、遊脚側でなく「支持脚や体幹の筋肉」を意識します。

「強い力を入れる」と過労でA~Bとなってしまいやすいので、腸腰筋が弱くつま先を引きずってしまう場合は、「強い力を入れる」のではなく「仰向けや座位で、腸腰筋を50%位収縮させるトレーニング」を短時間からはじめてください(「腹横筋エクササイズ」の項を参照)。
そうしていると、しだいに筋肉がついてくるので、50%位の強さで収縮させても、いつのまにかつま先を引きずらないようになっています。
ちなみに、強い力を入れたり、腸腰筋が弱いのに無理やり足を上げたりすると、腰方形筋や腹斜筋などを収縮させ骨盤を引き上げることで足を上げてしまう場合もあります。すると、腰方形筋や腹斜筋などが過労→短縮しやすくなります。

立位バランス訓練

2016-07-13 19:48:47 | 膝痛・足痛の原因



「肩~手の血流をよくする方法」の注4では、a背すじを伸ばし右坐骨に体重をかけながら b顔を右に水平移動させ c右上を見ながら d右咬筋(右あご)で軽くカチカチと数回噛む と右大殿筋や右短背筋群にスイッチが入ります・・ちなみに、立位で行う場合は、右坐骨に体重をかける代わりに骨盤を右に水平移動させるとよいです と述べました。
そこで、今回は「立位で骨盤を左右に水平移動させる方法」(立位バランス訓練)を紹介します。

「立位で骨盤を右に水平移動させる」際は、右股関節内転筋を収縮させます。
股関節は骨盤の外側についているため、正常であれば、股関節は膝関節よりも外側にあります。
よって、右内転筋を収縮させると「右膝が内側(左)に動く」と同時に「骨盤が外側(右)に動く」ことになります(図39-1)(注1)。

ただし、ただ右内転筋を収縮させても、このような動きをイメージしたり意識したりしていないと、動きが出ない人も多いです。
ですから、「右内転筋を収縮させることで、右膝が内側(左)に動くと同時に、骨盤右側が外側(右)に動く」様子(図39-1)を、イメージしたり意識したりしながら行うとよいです。

うまくできると、右脚や骨盤右側(右坐骨)に「骨盤や体幹の重さ」が多くかかるので、右大殿筋や右短背筋群にスイッチが入ります(注2)。
つまり、上記aができるようになるのです。
ですから、「骨盤を右に水平移動させる」と同時にa~dも行うとよいです(図39-3 ○)(注3)。

「右内転筋を収縮させる」ことや「右膝が内側(左)に動く」ことを意識せず、ただ「骨盤を右に水平移動させる」のでもよいように思うかもしれませんが、それだと十分右に水平移動させることができません。
それに、それだと右脚がO脚になるため、右股関節や右膝関節を傷めやすくなります(詳しくは後述します)。
そして、右脚がO脚になると不安定なため、「右足での片足立ち」(右脚を支持脚として立つ片足立ち)もうまくできなくなります(注4)。

なお、右脚がO脚になると不安定なため、「体幹が左に逃げる」(左に側屈する)ことで「右脚に上半身の重さをかけない」ようにしがちです。
ところが、そうすると、さらに「右足での片足立ち」がうまくできなくなります。
なぜなら、「体幹が左に逃げる」と「支持脚である右脚ではなく左脚に上半身の重さをかけてしまう」ため、「片足立ちになるために左足を上げようとしても、重いので上げにくかったりすぐ下ろしたくなったりする」からです。

しかし、だからといって、「体幹を右に側屈する」と、左脚は軽くなりますが、O脚になった右脚に「上半身の重さ」がかかるため、右脚が不安定になったり右股関節や右膝を傷めたりします。(図39-3 ×)。
ですから、「片足立ち訓練」を行う前に「立位バランス訓練」を行うとよいです(注5)。

ただし、「立位バランス訓練」を行う前に「座位で右坐骨に体重をかけた際、正しい立ち直り反応が起こる」ことは重要です(注6)。
「座位で右坐骨に体重をかけた際、正しい立ち直り反応が起こる」ということは、「体幹の筋肉が十分ある」ということです。
「立位バランス訓練」では、内転筋など「脚の筋肉」を強く収縮させますが、脚よりも中枢にある「体幹の筋肉」が十分ついていないうちに「脚の筋肉」を強く収縮させてしまうと、「脚の筋肉」が過労でA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」~B「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となりやすいです(注7)。

それに、「立位バランス訓練」は「座位で右坐骨に体重をかけた際」よりも体幹が不安定になります。
よって、「座位で右坐骨に体重をかけた際、正しい立ち直り反応が起こらない人」(体幹の筋肉が弱い人)が「立位バランス訓練」を行えば、体幹を固めるために「緩めたい筋肉」が収縮したりしやすくなります。

「正しい立ち直り反応」が起こる場合、右坐骨に体重をかけると、背すじは伸びながら緩やかに右に側屈します。
なぜなら、右坐骨に体重をかけると、体幹右側の「鍛えたい筋肉+緩めたい筋肉」が適度に収縮するからです。
このとき、右僧帽筋も収縮するため、右肩の方が左肩よりやや上がります。頭は水平になります(図39-2 ○)。

ところが、右の「鍛えたい筋肉」が弱い場合や「緩めたい筋肉」が手伝いすぎるくせがある場合は、「正しい立ち直り反応」と似た形にはなるのですが、筋肉の収縮が「緩めたい筋肉>鍛えたい筋肉」となっているため、背すじがあまり伸びず体幹右側が縮んだり、右胸郭が下がったまま上がりにくくなったりします(図39-2 ×)(注8)。
このとき、右広背筋>右僧帽筋となれば右肩の方が左肩より下がりますが、右広背筋<右僧帽筋となれば右肩の方が上がることになります。

また、右の「鍛えたい筋肉」が弱い場合、体幹が右に側屈することによって上半身の重さ全てが右側にかかると、「鍛えたい筋肉」への負荷が強すぎるため、無意識に「頭が左側に逃げる」(背骨の上方が左に側屈する)ことで鍛えたい筋肉への負荷を減らす場合もあります(図39-2 △)。


(注1)右内転筋を収縮させると、収縮した内転筋によって骨盤左側が下に引かれるため、相対的に骨盤右側が上がることになります。
しかしながら、内転筋が収縮すると、内転筋に対抗する筋肉である中殿筋(股関節を外転する筋肉)も収縮しやすくなりますし、骨盤右側に「上半身の重さ」がかかりやすくなります。
よって、「中殿筋の収縮」や「上半身の重さ」によって骨盤が水平になる場合もあります。

ただし、脚の筋肉が弱いと不安定なため、「体幹が左に逃げる」(左に側屈する)ことで「右脚に上半身の重さをかけない」場合もあります。
そうなると、骨盤右側は上がりやすくなります。

(注2)内転筋が収縮すると、右大殿筋や右短背筋群だけでなく、中殿筋(内転筋に対抗する筋肉)にもスイッチが入ります。
正常なシステムでは、立位の際、主に内転筋が収縮するようになっていますが、片足立ちでは内転筋・中殿筋の両方が適度に収縮する必要があります(「股関節内転筋と片足立ち」の項を参照)
ただし、内転筋や中殿筋がまだ弱い場合は、いきなり「立位バランス訓練」を行うと内転筋や中殿筋が過労でA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」~B「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となりやすいです。

その場合は、「仰向けでの筋力強化」からはじめ、それができるようになったら座位→立位と、段階的に負荷を増やしていくとよいです(「腹横筋エクササイズ」の項を参照)。
「内転筋の筋力強化」の際は、仰向け(もしくは座位や立位)で両膝の間にクッションを置きます(O脚がひどい場合はクッションを厚くします)。
そして、「左右の内転筋を50%位収縮させながらクッションをはさむ」ようにします。
「中殿筋の筋力強化」の際は、仰向け(もしくは座位)で、「左右の中殿筋を50%位収縮させながら両脚を開くように力を入れる」ようにします(立位や側臥位で行う場合は、「片脚を開くように力を入れる」ようにします)。
抵抗をかけたい場合は、自らもしくは介助者が手で太もも外側を押し、脚を閉じる方向に抵抗をかけます。
それらができるようになったら、「立位バランス訓練」→「片足立ち訓練」と、さらに負荷を増やしていくことができます。

(注3)ただし、a~bを行うと上半身が右に水平移動するので、骨盤右側には「上半身の重さ」が多くかかることになります。
よって、それを支えるために、右脚の筋肉をより強く収縮させなくてはならなくなります。
しかし、そうすると、右脚の筋肉がまだ弱い場合は、過労でA~Bとなりやすくなります。
特に、ふだん「左半身の安定&右半身の自在」(「書字の極意2」を参照)となっていた人は、大殿筋+短背筋群だけでなく脚の筋肉の発達も左>右となっていることが多いので、いきなり右脚の筋肉を強く収縮させると過労→短縮しやすいです。
ですから、「立位バランス訓練」と同時にa~bを行う場合は、右脚の筋肉の発達に合わせて少しずつ行うようにしてください。

(注4)「腸腰筋よりも大殿筋を先に鍛えよう」の(注8)では、片足立ちの時間が短くなってしまうのは「足を上げる筋肉(腸腰筋)が弱いため」よりも「支持脚を支える筋肉(大殿筋・中殿筋)が弱いため支持脚が不安定になってしまうから」という場合の方が多いです と述べました。
が、「内転筋が弱いためにO脚になった場合」も、支持脚が不安定になってしまうので、片足立ちの時間が短くなってしまいます。
ですから、片足立ちになる際は、「支持脚側の内転筋を収縮させ、骨盤を十分支持脚側に水平移動させる」ことが重要となります。

(注5)「歩行訓練」の前にも「立位バランス訓練」を行うとよいです。
なぜなら、歩行は「片足立ちの連続」なので、片足立ちがうまくできないのに歩行すると、つまずいたり転倒したりしやすいからです(「腸腰筋よりも大殿筋を先に鍛えよう」の項を参照)。

たとえば、右大腿骨を骨折した人が歩くと、右脚をかばうため、無意識に「右脚に骨盤や体幹の重さをかけない」ようにしがちです。
そのためには、「右内転筋をあまり収縮させないことによって、骨盤を十分右に水平移動させない」という方法を採用することが多いのです。
このとき、後方から歩行姿を見ると、「右足での片足立ちのとき、骨盤右側が十分外側(右)に移動しない」ので分かります。
「左足での片足立ちのとき、骨盤左側がどれだけ外側に出るか」と「右足での片足立ちのとき、骨盤右側がどれだけ外側に出るか」を見比べると分かりやすいです(ただし両脚が悪い場合は、左右どちらの片足立ちでも、骨盤があまり外側に出ないことがあります)。

しかしながら、骨折初期には、医師から「右脚への荷重は体重の4分の1まで」などと指示が出る場合があります。
骨折初期に骨折部に体重をかけすぎると、骨折部がずれたりかえって癒合が遅れたりする場合があるからです。
その場合は、「立位バランス訓練」を行うときも、「右足の下に体重計を置くことで、右足に体重の4分の1以上かけない」よう気をつけます。
そして、「歩行訓練」を行うときは「杖などで体を支えることで、右足に体重の4分の1以上かけない」よう気をつけます。

しかし、そのままだと、「右内転筋をあまり収縮させないことによって、骨盤を十分右に水平移動させない」くせがつきやすいです。
それに、「杖などで体を支える」ことで、「姿勢保持のために広背筋が収縮する」くせがつくのも困ります(「ノルディックウオーキング」の項を参照)。
ですから、全荷重の許可が出たら「立位バランス訓練」を十分行うことで、「正しい片足立ち」ができるようにすることが大切です。
そして、歩行にも「立位バランス訓練」の動きを取り入れることで、「正しい片足立ちの連続」となるようにすることが大切です。

(注6)「座位で右坐骨に体重をかけた際、正しい立ち直り反応が起こらない」場合は、本書を読み「正しい立ち直り反応」を理解するとよいです。
また、「座位でa~dを練習する」と、「正しい立ち直り反応」が起こりやすくなります。
「座位でa~dを練習する」と、立ち直り反応の際「鍛えたい筋肉」が収縮しやすくなるので、図39-2 ×のようになりにくくなるのです。

ただし、「座位でa~dを練習する」際は、図39-2 ○のように「体幹が右に側屈する」のではなく「胸椎が右に水平移動する」(つまり背骨が右斜め上に伸びる)ようにしてください(図35-2を参照)。
「体幹が右に側屈してしまう」場合は、右坐骨に体重をかける量を減らしてみてください。
しかし、それでも、筋肉の収縮が「緩めたい筋肉>鍛えたい筋肉」となっていると、「右に側屈してしまう」ことになります。
なお、「鍛えたい筋肉」が弱いと、無意識に「鍛えたい筋肉」への負荷を減らそうとするため「頭が左側に逃げる」こともあります。
「座位でa~dを練習する」際、どうしても「体幹が右に側屈してしまう」場合や「頭が左側に逃げる」場合は、「おじぎエクササイズ」などで「鍛えたい筋肉」を鍛えながら練習するとよいです。

(注7)「脚(末梢)の筋肉」を発達させるには、「体幹(中枢)の筋肉」をある程度鍛え、中枢の血流をよくしておくことが重要です(「弾性ストッキングでむくみ予防」注7を参照)。

(注8)座位で右坐骨に体重をかけた際、「胸郭が上がりながらふくらむ状態」をイメージしながらゆっくりと息を吸ってみてください。
その際、右胸郭が上がりにくいようだと、右の「緩めたい筋肉」が収縮しすぎている可能性があります。

足底腱膜炎の原因

2016-05-11 11:15:49 | 膝痛・足痛の原因

足底腱膜とは「足裏の、踵~足指をつなぎ足の縦アーチを形成している腱膜」で、足底の筋(足指を曲げる筋肉など)につながっています。
ふくらはぎが短縮すると、足底腱膜(足底の筋)もその分強く収縮しなければ、偏平足になってしまいます(図37-1を参照)。
しかし、足底腱膜が「短縮したふくらはぎ」に打ち勝つ強さで収縮するのは難しいので、過労→短縮しやすいです。
足底腱膜がA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」になると甲高(凹足)となります。
足底腱膜がB「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となると偏平足になりやすいです。

しかし、ふくらはぎの短縮が強くなったり、立位になり足底に体重がかかったりすると、足底腱膜はAであったとしても強く伸ばされます。
すると、足底腱膜が断裂し偏平足になってしまう場合があります(注1)。
(ふくらはぎよりも足底腱膜の方が細いので、ふくらはぎと足底腱膜の両方が短縮している場合は、足底腱膜の方が断裂しやすいです)

足底腱膜が断裂しても、足底腱膜を緩めた姿勢で(足指を反らしたり足裏に体重をかけたりして足底腱膜を伸ばさないよう気をつけ)2週間~1か月位休めば修復されます(注2)。
しかしながら、足底腱膜は立位になっただけでも伸ばされてしまいます。2週間~1か月も立位にならずに生活するのは難しいです。
それに、修復されたとしても、ふくらはぎの短縮が改善されていなければ、また断裂してしまいやすいです。

足底腱膜が断裂し、修復しかけてもまた断裂し・・と、いつまでもなおらない状態を足底腱膜炎と呼ぶことが多いようです。
「朝起床し歩き出すと激痛が走る」という人が多いです。
それは、就寝中に修復しかけていた足底腱膜が、朝立ったり歩いたりすることでまた断裂するためです。
一旦断裂してしまえば激痛はおさまりますが、翌朝には修復しかけていた足底腱膜が再び断裂するため、また激痛が走ります。

足底腱膜炎になると、「足底腱膜炎のストレッチ」を行うよう指導される人も多いと思います。
足指や足裏を反らせば(伸ばせば)足底腱膜も伸ばされます。
「立位で足底に体重をかけるのでも、足底腱膜は伸ばされるのでは?」とも思えますが、それだといきなり強く伸ばしすぎてしまうのです。
足底腱膜をいきなり強く伸ばすと、断裂したり防衛反応↑となるので短縮がひどくなったり炎症が悪化したりすることが多いです。

脚の血行をよくした上で、ゆっくりと少しずつ緩めることで防衛反応を低下させられたのなら、大きく伸ばすことで足底腱膜を緩めることができる場合もあります。
しかし、そうなると今度は足のアーチが低下し偏平足になってしまうので、歩行時などに足底に負担がかかります。
足のアーチは足底の衝撃を吸収するためにありますが、低下するとその役目を果たせなくなってしまうのです。
それに、ふくらはぎの代わりに足底腱膜が緩んだからといっても「ふくらはぎの筋ポンプ作用」が回復したわけではありません。
ですから、やはり足底腱膜をストレッチする前に「大元の原因であるふくらはぎを緩める」方がよいです(注3)。

今回は「歩行の際ふくらはぎを使いすぎるくせ」をなくす方法を紹介します。
それは「大殿筋を意識しながら、小さい歩幅で後ろに蹴らないように歩くこと」です。

大きな歩幅で歩くと、後ろに残った方の足の足関節が大きく背屈せざるをえないため、ふくらはぎや足底腱膜が短縮している場合、断裂したり防衛反応↑となりやすくなります。
それに後ろに残った方の足は、大きく背屈した後に踵が地面から浮き「つま先だけが地面についた状態」(つま先立ち)になりますが、それも足指が大きく反る(=足底腱膜が大きく伸ばされる)ことになるので、足底腱膜が短縮している場合は断裂しやすいです(注4)。
(しゃがむのも足関節が大きく背屈するかつま先立ちせざるをえないので、ふくらはぎや足底腱膜が短縮したり断裂している場合はNGです)

「それでは、ふくらはぎや足底腱膜が短縮していない人なら大きな歩幅で歩いてもよいのか?」というと、それも違います。
なぜなら、大きな歩幅で歩くと、どうしても地面を後ろに蹴ることになるからです。
地面を後ろに蹴る筋肉は、大腿裏の筋~ふくらはぎ~足底腱膜(足底の筋)なので、これらが筋肉痛になったり短縮したりしやすくなります。
「筋肉を鍛えるためには蹴る運動も大切なのでは?」とも思えますが、歩行時は地面という「蹴っても動かないもの」を蹴るので、ボールなど「蹴れば動くもの」を蹴るときに比べかなり負荷が大きいのです(注5)。

大腿裏の筋~ふくらはぎ~足底腱膜の中でも、足底腱膜の負荷は大きくなります。
なぜなら、後ろに残った方の足はつま先立ちになる際足指が大きく反るので、足底腱膜は「強く収縮しながら強く伸ばされる」ことになるからです。「強く収縮しながら強く伸ばされる」と、筋肉は大きく断裂しやすくなります。

ちなみに、ふくらはぎが短縮すると、「すねの筋」(前脛骨筋など)が筋肉痛になったり短縮したりする場合もあります。
なぜなら、ふくらはぎが短縮すると足関節が底屈ぎみとなるため、歩行時つま先を地面に引きずらないためにはすねの筋が強く収縮しなくてはならないからです。
「それならば、すねの筋を鍛えればよいのでは?」とも思えますが、すねの筋はふくらはぎより細いので、すねの筋が「短縮したふくらはぎ」に打ち勝つ強さで収縮するのは難しいです。
それでも、ふくらはぎの短縮がわずかなうちはすねの筋を鍛えればつま先を引きずらないかもしれませんが、ふくらはぎの短縮が進めば結局はすねの筋がふくらはぎに負け、底屈ぎみのままになってしまうことが多いです(注6)。

すると、歩行時つま先をひきずらないためには、今度は太ももを高く上げざるをえなくなります。
太ももを高く上げる(=股関節を大きく屈曲する)と、腸腰筋が過労となるため短縮しやすくなります。
よって、結局は腸腰筋も機能不全となるため、小さな段差につまずいたりすることになります(「腸腰筋よりも先に大殿筋を鍛えよう」の項を参照)。
ですから、やはり「大元の原因であるふくらはぎを緩める」方がよいです。


(注1)ふくらはぎの短縮が強いほど、また体重が重いほど、立位になったとき足底腱膜は強く伸ばされます。
足底腱膜が短縮したふくらはぎに伸ばされるほどAになることで対抗する体質だと(それでも最終的には短縮したふくらはぎには勝てないことが多いので)足底腱膜が「強く収縮しながら伸ばされる」ため断裂が大きくなりやすいですし、かなり収縮するのでカルシウムもたまりやすいです。
このとき、「足底腱膜の踵骨付着部」にカルシウムがたまると、踵骨から棘が伸びたようになってしまう場合があります。
「踵骨の足底腱膜付着部」が「収縮した足底腱膜」にひっぱられはがれる場合もあります。すると、はがれた部分が棘になったりします。
立位になり足底に体重がかかると棘の部分にも体重がかかるため痛むことが多いです。

(注2)ただし、血流が悪いと2週間~1か月たってもなおらないこともあります。
足は末梢にあるので、阻血やうっ血になりがちです。阻血だとなおりが悪く、うっ血だとなおりが悪い上に炎症になります。
腱鞘炎と同じで、高血圧の人はうっ血→腱膜炎もひどくなりやすいです(「肩~手の血流をよくする方法」の項を参照)。

(注3)それに、ふくらはぎの短縮が進めば、足底腱膜を伸ばすことで「足の中の細かい関節を動かすことで足関節が90度背屈したように見える形をつくる」にも限界があるので、立位で踵が浮くか反張膝になりやすいです(詳しくは注4 ハイヒールの話を参照)。
立ち上がりや歩行の際「ふくらはぎを使いすぎるくせ」があれば、ふくらはぎの短縮はどんどん進んでいきます。

(注4)ちなみに、「靴底が硬く折れ曲がらない靴」をはいた場合は、つま先立ちの形になることはないですがその分大きく背屈せざるをえないので、足底腱膜・ふくらはぎのどちらか(もしくは両方)が伸ばされることに変わりはありません。
大きく背屈したとき、ふくらはぎが伸ばされれば「足関節が背屈する」ことになりますが、足底腱膜が伸ばされれば「足の中の細かい関節を動かすことで、足関節が大きく背屈したように見える形をつくる」ことになります。

「走ればつま先立ちの状態になる時間もわずかになるので、足底腱膜に負担がかからないのでは?」と思った方もいるかもしれません。
が、走ると筋肉が強く収縮するためやはり負荷は大きいですし、酸素供給が間に合わず乳酸やカルシウムがたまり短縮しやすいです(「有酸素運動なら乳酸を分解できるか?」の項を参照)。

「足関節が十分背屈できないなら、ハイヒールをはけばよいのでは?」とも思った方もいるかもしれません。
ふくらはぎ短縮が軽度であれば、少しヒールの高いくつをはくことでカバーできる場合もあります(ただし、ふくらはぎの筋ポンプ作用が回復するわけではありません)。
しかし、ハイヒールの中でもヒールの高いものはくつ底が「つま先立ち」の形になっているものがほとんどです(そうなっていないと、くつの中で足が前にすべってしまい痛いです)。
それだと、足底筋膜は大きく伸ばされたままの状態になってしまいます。

なお、ハイヒールを長時間はいていた人の足は、ハイヒールをはいていたときの形のままになってしまっていることがあります。
つまり、ふくらはぎはかなり短縮したまま(足関節が底屈ぎみ)・足底腱膜はかなり伸びたまま(偏平足を超えて、足指が反ったまま)になってしまっているのです。

すると、室内でハイヒールをはかずに立ったとき、膝痛になったりします。
立位の際、ふくらはぎが短縮した人は足底腱膜を伸ばし「足の中の細かい関節を動かすことで足関節が90度背屈したように見える形をつくる」ことが多いのですが、ハイヒールをはいていた人のふくらはぎは足の中の関節を動かすことでカバーできる限界以上に短縮しているからです。
そのような人がハイヒールをはかずに踵を浮かさないで立つと、足関節が底屈ぎみとなるためその分膝が後ろにいきます。
しかし、そのままでは後ろに倒れてしまうため、体幹を前にもってくることになります。
すると、膝を無理に反らす(まっすぐ以上に伸ばす)ことになります(=反張膝)。反張膝は膝痛の原因になります。

「ふくらはぎの短縮」や「伸びたまま固まってしまった足底腱膜」を改善するには、「血行をよくしながら、ふくらはぎを緩め足底腱膜の筋力強化を行う」とよいですが、改善には長期間を要することが多いです。
よって、そのような場合は、とりあえず「室内でもハイヒールをはく」などの対策が必要な場合もあります。

(注5)負荷が大きくても血行がよければ筋肥大することもありますが、地面は動かないので莫大な負荷になりますから、筋肥大するにはよほど血行がよい必要があります。

ちなみに、高齢になると大腿裏の筋の短縮がひどくなり膝が曲がってしまう人がいますが、原因の1つには「血行が悪くなっても、大きな歩幅で後ろに蹴る歩き方をしたこと」もあるのではないかと思います。

ところが、大腿裏の筋~ふくらはぎ~足底腱膜が血行不良や過労により短縮した結果、膝が曲がったり歩幅が小さくなってきたりすると、「膝を伸ばし大きな歩幅で歩く努力が足りなかったからだ」と考えもっと行ってしまう人がいます。
すると、短縮している筋肉を無理に伸ばすため断裂・防衛反応↑となったり、過労↑→短縮↑となったりすることになります。

(注6)すねの筋を鍛えてもB「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となれば底屈ぎみになりやすいです。
すねの筋がA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」になっても、「短縮したふくらはぎ」に負けて断裂すれば底屈ぎみになります。

ただし、すねの筋がAになると、ふくらはぎには勝てなくても足底腱膜には勝つ場合があります。
ふくらはぎ>すねの筋>足底腱膜であることが多いので、すべて短縮した場合は、足底腱膜が伸ばされ断裂しやすいです。