美しい姿勢・歩き方は腰痛・膝痛・肩こりを改善する

腰痛は体の使い方を少し間違えていただけ-昔のおじぎと現代人のおじぎの違いを解説します

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大殿筋マヒと脊髄損傷の悪循環

2016-10-05 20:57:40 | 鍛えるex(おじぎex)
「腰椎すべり症」とは「背骨が骨折し、癒合していない状態」なので、座位や立位だけでなく、日常生活動作(洗面・歯みがき、いすから立ち上がるなど)全てにおいて「鍛えたい筋肉を収縮させ、脊髄・神経を傷つけないよう細心の注意を払う」必要があります(「動作の注意点」を参照)。
が、「腰椎すべり症」にまでなってしまうと、鍛えたい筋肉(大殿筋+短背筋群)を鍛えるのはとても大変なことが多いです。
なぜなら、「腰椎すべり症」の人の「大殿筋が弱い理由」には、「単に収縮を怠ったり血流が悪かったりしたために起こった筋力低下」のみではなく「椎骨がずれたために起こった脊髄・神経の圧迫・損傷(マヒ)」が加わっていることが多いからです(注1)。

筋肉は、「脳→脊髄→神経を通ってくる電気信号」の指令を受けて収縮・弛緩します。
よって、それらが圧迫・損傷(マヒ)すると、電気信号が不完全になったり異常になったりします。
すると、「十分収縮しない(弛緩性マヒ)」もしくは逆に「収縮しすぎる、十分弛緩しない(痙性マヒ)」となってしまう場合があります。
前者の症状は「筋力低下」と似ており、後者の症状はA 「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」と似ていることが多いです。

しかし、「単なる筋力低下」の場合は、血行をよくしながらうまく鍛えれば回復しますが、「マヒ」の場合は
①「鍛える前に、ずれた脊椎を整復し、脊髄・神経が再生するまでずっとその状態を維持し続ける」ことが大切です(注2)。
そしてその上で
②「血行をよくする」
③「うまく鍛える」ことが必要です。

①を行うのは、「脊髄・神経の圧迫をとり、脊髄・神経をなるべく正常な状態にすることで、正常な電気信号を送れるようにする」ためです。
脊髄・神経の圧迫をとらずに③を行っても、つぶれた脊髄・神経は正常な電気信号を送れないので、筋肉が正常に収縮・弛緩するのは難しいです。
ところが、「整復せずに鍛える」人や、「整復しても、その後に姿勢・動作の注意点を守れないため、またすべった状態で鍛える」人が多いです。
すると、鍛えたい筋肉がうまく収縮しないため、緩めたい筋肉が手伝いすぎたりします。
しかも、その際、つぶれた脊髄・神経が筋肉を無理やり動かそうとすることになります。
よって、不完全もしくは異常な電気信号を発生させてしまうので、緩めたい筋肉が痙性マヒとなりやすいです。

②は「単なる筋力低下」でも必要ですが、「マヒ」の場合は、筋肉だけでなく脊髄・神経の再生にも血流が必要です。
よって、「単なる筋力強化」の場合よりも、さらに血行をよくする必要があります(注3)。

③は「単なる筋力低下」でも必要ですが、「マヒ」の場合は、負荷↑としないよう特に気をつける必要があります。
なぜなら、「脊髄・神経がまだ十分再生していないうちに、その人にとって負荷↑の運動を行うと代償(「用語の解説」を参照)が入ってしまいやすいので、脊髄・神経が代償の入った動きを覚えてしまいやすい」そして「脊髄・神経が十分再生し正常になっていたとしても、損傷していた脊髄・神経が支配している筋肉はかなり弱っていることが多いので、負荷↑だと代償が入ってしまいやすい」からです。

一見楽な運動に見えても、その人にとって負荷↑の運動であれば、すべて自分で行うと代償が入ってしまいやすいです。
「それでは、代償が入らないようにすれば、負荷↑の運動をしてもよいだろう」と思う人もいるかもしれませんが、そうするのは難しいです。
それに、それができたとしても、そうすると、まだ十分再生していない脊髄・神経が筋肉を無理やり動かそうとすることになります。
よって、不完全もしくは異常な電気信号を発生させてしまうので、脊髄・神経が疲労しマヒ↑となったりしやすいです(注4)。
また、脊髄・神経が十分再生し正常になっていたとしても、負荷↑だと筋肉が過労でA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」~B「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となりやすいです。

ですから、「マヒ」の場合は「鍛える」というよりも「介助によって筋肉を収縮・弛緩した形をつくり、その感覚を体に覚えさせる」方がよいです。
それには、「自動介助運動」を行うとよいです(注5)。

ところが、多くの人は「マヒと筋力低下の区別がつきにくい」ため、もしくは「筋力低下であろうがマヒであろうが、負荷↑の運動をたくさん行えば筋肉がつくと思っている」ため、鍛えすぎてしまいます。
よって、代償↑やマヒ↑となったり、A~B↑となったりしてしまいやすいです。
ところが、多くの人は、このとき「鍛えるのが足りないせい」とか「気合が足りないせい」などと考え、さらに鍛えてしまいます。
よって、さらに、代償↑やマヒ↑となったり、A~B↑となったりしてしまいやすいです(注6)。

①の話に戻りますが、「それでは、どうすれば整復できるのか?」と思った方もいると思います。
本書で紹介したエクササイズを行い、骨盤前傾↓・腰椎前弯↓にすれば、整復できる人もいます(注7)。
ただし、この場合、「腰椎が大きく動くエクササイズ」を行うと、椎骨がずれてしまいやすいのでNGです。
ですから、たとえば「鍛えたい筋肉を鍛えるエクササイズ」の場合は、腰椎が大きく動く「おじぎエクササイズ」よりも、腰椎があまり動かない「うつぶせでの筋力強化」や「仰臥位での筋力強化」を採用してください。
また、整復できたとしても、骨折部が癒合し脊髄・神経が再生するまで(もしくは鍛えたい筋肉が十分発達し、骨折部を固定できるようになるまで)は、「エクササイズ以外の時間はなるべく安静にし、骨盤前傾↓・腰椎前弯↓を保つ」必要があります。

癒合する前に「座位になる」だけでも、腰椎に体重がかかるので、「癒合しかけていた部分がはがれ再びすべってしまう」危険が増えます。
それに、「腰椎すべり症」にまでなると、短背筋群が「壊れてしまった椎間関節」の分まで頑張って椎骨同士をつなぎとめる必要があります。
が、実際はまだ短背筋群が弱いので、体が「短背筋群の分まで脊柱起立筋群が頑張らないと」などと思い、緩めたい筋肉↑としてしまいがちです。
しかし、体(脳)の指令は脊髄・神経を通ってくるので、つぶれた脊髄・神経が無理やり指令を伝達することになります。
よって、不完全もしくは異常な電気信号を発生させてしまうので、緩めたい筋肉が痙性マヒとなりやすいです。
緩めたい筋肉↑(もしくは痙性マヒ)となってしまうと、やはり、「癒合しかけていた部分がはがれ再びすべってしまう」危険が増えます。

ところが、多くの人は仕事などがあるため、1日中横になって休んでいるわけにはいきません。
そこで、座位・立位や動作の注意点を指導します(注8)。
が、疲れても休めない環境だったり、注意点を守る重要性を十分理解していなかったりすると、発症前と同じ姿勢・動作をとってしまいます。
腰椎すべり症の場合は、姿勢・動作の注意点をかなり厳格に守らないと、再びすべってしまいやすいです。

そのような事情により、多くの方は、せっかく骨折部が癒合しかけたとしても、はがれ再びすべってしまいます。
よって、またはじめからやりなおしになってしまいますが、それだけではありません。
再びすべる際に、再生しかけていた脊髄・神経がまた損傷してしまうことがあるのです。
そのため、大殿筋のマヒもさらにひどくなってしまう場合があります。
すると、さらに姿勢・動作の注意点を守りにくくなるため、さらに脊髄・神経が損傷し、大殿筋のマヒもひどくなる悪循環に陥りやすいのです。

ですから、できれば、腰椎すべり症にまでならないよう、本書で紹介するエクササイズや姿勢・動作の注意点を行った方がよいです。
それでも、すべり症になったら、骨折部が癒合し脊髄・神経が再生するまで「骨盤前傾↓・腰椎前弯↓を保つ」方が、脊髄にはよいです(注9)。
脊髄・神経は再生しにくいので、思ったより時間はかかりますが、結局はその方が近道であることが多いのです。
「腰椎すべり症と診断されたが、本書で推奨する通りにしたら回復した」というケースもあります(「症例Aさん」の項を参照)。

(注1)すべり症に限らず、椎間板ヘルニアなどでも脊髄・神経の圧迫・損傷(マヒ)が起こることがあります。
それにマヒが起こるのは大殿筋のみとは限りません。
たとえば、L3の位置の脊髄がつぶれると、L3以下(つまりL3~仙骨)を通る脊髄・神経が支配する筋肉はすべてマヒする可能性があります(※)。
このとき、完全につぶれた場合は「L3以下を通る脊髄・神経が支配する筋肉すべてが完全にマヒ」するのに対し、一部つぶれた場合は「L3以下を通る脊髄・神経が支配する筋肉の一部が不完全にマヒ」することになります。

ちなみに、大殿筋は「L5~仙骨を通る神経」が支配しているため、頚椎・胸椎・腰椎のいずれが損傷してもマヒする可能性があります。
なお、大殿筋を支配する神経(下殿神経)は、坐骨神経の近くを通るので、梨状筋症候群などで坐骨神経マヒになると、一緒にマヒしやすいです。

(※)L3以下の支配する筋肉は、L3~仙骨の短背筋群と大殿筋・腸腰筋、大腿四頭筋・大腿裏の筋、内転筋・中殿筋、下腿・足の筋肉などです。
「それなら、大殿筋だけでなく腸腰筋もマヒしたのだから、もう腰椎前弯↑になることもないのでは?」とも思えます。
が、一部つぶれた場合は両方マヒするとは限りませんし、大殿筋は弛緩性マヒ・腸腰筋は痙性マヒとなれば、腰椎前弯↑になってしまいがちです。
ちなみに、鍛えたい筋肉は弛緩性マヒやBとなりやすく、緩めたい筋肉は痙性マヒやAとなりやすい傾向があります。
特に、脳卒中による片マヒなどの場合は、その傾向が顕著に現れやすいです。

(注2)ただし、脊髄・神経は再生しにくい組織なので、脊髄・神経が強く圧迫され傷つきすぎていたり、圧迫されている時間が長すぎたりすると、圧迫をとっても再生しなかったり、再生にかなりの時間がかかったりすることがあります。

(注3)ただし、マヒしている部分はデリケートなので、温熱などで血行をよくする場合はヤケドなどに注意が必要です。
「呼吸エクササイズ」によって血行をよくすれば、酸素も供給できます(「運動せずに血流を良くする方法」の項を参照)。

ちなみに、血行↓だと、マヒ↑となります(ただし、正常でなおかつ血行↓が多量・長時間でなければ、一過性でなおることが多いです)。
「正座すると脚がしびれる(マヒする)」のは、「神経が圧迫されたせい」だけではなく「血行↓となったせい」もあることが多いです。
なお、しびれると「脚がうまく動かない」だけでなく「触られるとくすぐったい」ことがあります。
これは、「運動神経」だけでなく「感覚神経」がマヒし「過敏」になったからです。
神経には、「運動神経」だけでなく「感覚神経」があります。
「感覚神経」がマヒすると、「十分感覚を伝えない(鈍感)」もしくは逆に「感覚を伝えすぎる(過敏)」となってしまう場合があります。

(注4)あまり知られていませんが、神経も過労(たくさん伝達)すれば、疲労しマヒ↑となります(ただし、正常なら一過性でなおります)。
脊髄・神経が十分再生していなかったり、血行↓だったりすると、過労→マヒ↑となりやすいです。

なお、過労すると、弛緩性マヒが痙性マヒに変わる場合もあります。
「それでは、鍛えたい筋肉が痙性マヒになれば、うまくいくのでは?」と思う方もいるかもしれません。
が、大殿筋↑→股関節伸展のままとなれば、股関節が曲がらなくなる=座れなくなることになります。
しかし、多くの方はそれでも座ってしまいます。
すると、仕方なく動くのは股関節とは限らず、腰椎や仙腸関節であることも多いです(「筋肉は強く伸ばさない方がいいのか?」注3を参照)。
癒合していない腰椎が動いてしまうのはNGですし、仙腸関節も股関節の代わりに動いてしまうと痛みが出やすいのでNGです。

(注5)本書では、「ある運動を、自ら行っても負荷↑とならず代償が入らない部分は本人が行うが、自ら行うと負荷↑となり代償が入ってしまう部分は介助によって行う」ことを「自動介助運動」と呼んでいます。
「大殿筋エクササイズ2」も、「自動介助運動」となっています。
「手伝うと、本人の神経や筋肉が発達しないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
が、本人が「自力で行っている」とイメージしながら行えば、正しい動きを覚えることができます。

ただし、損傷している(いた)脊髄が支配している筋肉はかなり弱っていることが多いので、筋肉を鍛える際は(イ)「その筋肉をある程度収縮した姿勢にする」を採用した方が安全です(「大殿筋エクササイズ2」注10を参照)。
ですから、「負荷がほとんどない運動」(たとえば「机上に前腕をのせ、前腕を回内外する運動」)は、運動のはじまりから終わりまで「自力で行っている」とイメージするのでよいのですが、「負荷↑となりやすい運動」(たとえば「大殿筋エクササイズ2のように、重い脚を持ち上げる運動」)は、「脚を持ち上げる部分や下ろす部分」(大殿筋が(ア)や「収縮しながら伸ばされる」になる部分)は介助者が行い、「脚を持ち上げた状態を維持する部分」(大殿筋が(イ)になる部分)だけを「自力で行っている」とイメージするとよいです。

なお、「自力で正しく行っているとイメージしながら行えば、代償の入った動きでもよいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
が、そうすると、「神経や筋肉が、代償の入った動きを正しい動きと勘違いし、覚えてしまいやすい」のでNGです。
ですから、「脚を持ち上げた状態を維持する部分」を大殿筋の力だけで行うのが難しい場合は、「自力で行っているとイメージする」にしても、実際は「本当に全部自力で行い大殿筋を大腿裏の筋などが手伝う」ではなく「大殿筋のみ収縮し、不足分は介助者が持ち上げることで補う」とすることが大切です。

(注6)「それでは、負荷↓とし代償が入らないようにすれば、筋収縮・弛緩をたくさん行った方がよいだろう」と思う方もいると思います。
しかし、筋収縮・弛緩をたくさん行ってしまうと、筋肉が血流を多く必要とすることになりやすいです。
ところが、まだ脊髄・神経が十分再生していないうちは、脊髄・神経も血流を多く必要とするのです。

脊髄が損傷すると、脊髄やその支配する筋肉は「あまり使えなくなるために、血流↓・毛細血管↓となりやすい」ので、筋収縮・弛緩をたくさん行うことによって、筋肉も神経も血流を多く必要とすると、血流が不足となりやすいです。
このとき、体が「筋肉への血流」を優先すれば、その分、神経の血流↓となるため、マヒ↑となりやすいです。
体が「神経への血流」を優先すれば、その分、筋肉の血流↓となるため、A~Bとなりやすいです。
ですから、筋収縮・弛緩は、たくさん行いすぎない方がよいです。

が、「あまり使えないために血流↓・毛細血管↓となったのなら、たくさん使うことで血流↑・毛細血管↑とした方がよいのでは?」とも思えます。
しかし、毛細血管を増設するには時間が必要なので、「あまり使えないために血流↓・毛細血管↓となった」からといって、いきなりたくさん使えば血流↑・毛細血管↑となるわけではありません。
それは、「呼吸↓となったために胸からみぞおちの皮膚や腹斜筋が短縮した」からといって、いきなりたくさん呼吸すればすぐに本来の状態に戻るわけではないのと似ています(「呼吸エクササイズの実際」の項を参照)。
ですから、筋収縮・弛緩は、毛細血管の発達に合わせ、少しずつ増やしていくことが大切です。
(増やす際は、筋収縮の時間を長くするよりもまずは回数を多くした方がよいです。また、連続して行うよりも間隔をあけた方がよいです)

なお、「たくさん行いすぎて本人が疲れた結果、途中で自動介助運動がただの他動運動になってしまったとしても、動かすことで血行をよくできるのだから、別によいだろう」と思う方もいるかもしれません。
が、脊髄・神経や筋肉が過労や血流↓の状態で、限界まで「自動介助運動」を行うと、マヒ↑やA~B↑となりやすいです。
ですから、血行をよくする目的で動かすのであれば、本人には力を抜いて(リラックスして)もらい、完全に「他動運動」とすることが大切です。

ただし、神経が痙性マヒやAになりかけていると、「本人は力を抜いているつもり」でも「他動運動」に反応し筋肉がピクピク動くことがあります。
その場合は、「他動運動」では神経や筋肉が休まらないので、「温熱」などで血行をよくした方がよいです。

痙性マヒやAを改善するには、「自動介助運動」よりもまずは「力を抜く練習」を行った方がよい場合もあります。
「大殿筋エクササイズ2」は、最後に「力を抜けていることを確認する」ようになっています。
が、それでも抜けない場合は、「腕の力を抜く練習」のように、「脚の力を抜く練習」を行うとよいです。
「脚の力を抜く練習」では、「介助者は本人の股関節を内外旋させるが、本人は仰臥位でただ脱力しているように意識する」という具合にします。

「他動運動に反応してでも、動くのはよいこと」と思うかもしれませんが、痙性マヒやAだと、実生活では役立ちにくいです。
むしろ、「整復」を妨害しますし、大殿筋が痙性マヒとなれば、股関節が曲がらず座れなくなったりします。
それに、痙性マヒやAのままだと、ずっと(もしくは頻繁に)過労になるので、神経や筋肉は十分休息(弛緩)できません。
神経が再生したり筋肉が回復したりするには、休息(弛緩)も必要です。
また、「痙性マヒやAとなり、筋肉が硬く収縮し十分弛緩しなくなる」と「血液が入りにくくなり、血行↓となる」ので、回復しにくくなります。
ですから、筋肉が「収縮できても弛緩できない」場合は「弛緩」を優先し、「鍛えると血行↓となる」場合は「血行をよくする」を優先すべきです。

(注7)ただし、すべり方がひどい場合や複雑な場合は、単に骨盤前傾↓・腰椎前弯↓としただけでは整復できない可能性もあります。
なお、カイロプラクティックや整体などで整復できる場合もあります。
その場合、整復台やベッドに横になり、整復してもらうことが多いです。
ところが、せっかく整復してもらっても、「整復台から起き上がる際、動作の注意点を守れないため、起き上がる瞬間にまたすべってしまった」などという人も多いです。
それに、筋肉(特に緩めたい筋肉)が、痙性マヒやAになっていると、カイロや整体によって整復するのは難しいです。
しかも、整復しても、すぐにまたすべってしまいやすいです。
ですから、整復を受けるだけでなく、整復の前後に本書で紹介するエクササイズを行ったり、姿勢・動作の注意点を守ったりすることも大切です。

ちなみに、「手術で、腰椎骨折部を整復し、ボルトで固定する」方法もあります。
「この方法なら、手術すれば、もう安静にしたり姿勢・動作の注意点を守ったりする必要はない」ようにも思えます。
が、手術は脊髄のそばを切るため、「手術の際に脊髄を傷つけないよう、気をつけなくてはならない」ことが多いようです。
それに、手術が成功すれば、固定した部分は動かなくなりますが、今度は、固定した部分より上もしくは下(たとえば、L4/L5を固定したのであれば、L3/L4もしくはL5/仙骨など)が骨折しすべってしまう場合もあります。
また、手術では固定する部分の短背筋群を切ったり骨からはがしたりすることもあるので(切った後ぬい合わせたとしても)術前よりさらに短背筋群が弱ることもあります。

「それでは、いっそのこと、すべての脊椎をボルトで固定してしまえば、すべり症にならないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
実際、「長い金属棒を背骨に寄り添うように埋め込み、金属棒と多くの椎骨をボルトによってつなぐことで固定する」手術を受ける人もいます。
が、そうすると、背骨を曲げたり回旋したりできなくなるため、「寝返り」や「玄関でくつを履くための前かがみ」ができなくなる場合があります。

(注8)「まだ大殿筋が弱いが、どうしても座位・立位をとらなくてはならない」という人には、「骨盤後傾させるために、大腿裏の筋も収縮させる」よう指導する場合もあります。
ただし、この方法は、長時間使うと、大腿裏の筋が過労→短縮し、「膝が曲がる」「膝関節の裏面が痛む・腫れる」などの症状が出やすくなります。
それに、大腿裏の筋が短縮すると、その下を通る坐骨神経を圧迫するため、坐骨神経の支配領域(大腿裏~下腿)がしびれることもあります(「大殿筋エクササイズ2」を参照)。

「そんなに不利益が多いのなら、大腿裏の筋は使用しない方がよいのでは?」とも思えます。
が、大腿裏の筋を収縮させなかったために腰椎前弯↑となり腰椎がすべってしまうと、坐骨神経よりもっと中枢の脊髄神経を損傷してしまいます。
「大腿裏の筋の短縮」によって起こるマヒは「大腿裏より下」なのに対し、「腰椎すべり症」によって起こるマヒは「腰椎より下」です。
よって、後者だと、大殿筋もマヒしてしまう可能性があるため、「大殿筋マヒと脊髄損傷の悪循環」に陥ってしまう危険があるのです。
なので、この方法は、応急処置としての採用はやむをえないですが、将来は大殿筋の収縮によって骨盤後傾させられるようになることが大切です。

(注9)多くの方が、一番難しいと感じるのが、「整復した後も、脊髄・神経が再生するまでずっとその状態を維持し続ける」という点です。
このとき、「コルセットなどを使用すれば、安静にしなくても、骨盤前傾↓・腰椎前弯↓を保てるのでは?」と思う方もいると思います。
が、腰のそばには内臓があるため完全には固定できませんし、長時間使用すると血行不良になります(「補正下着・コルセットの話」の項を参照)。

立位で内転筋を収縮させる方法

2016-10-01 20:56:47 | 膝痛・足痛の原因

「脚を閉じた姿勢で、大殿筋とともに内転筋を収縮させる」と、さらに骨盤がしまります(注1)。
とはいっても、「内転筋を収縮させると、なぜ骨盤がしまるのか?」と疑問に思った方もいると思います。
内転筋は、「股関節を内転させることによって両脚を閉じる(もしくは交差させる)」働きがあることは有名です(注2)。
が、両膝がつくまで閉じたら、「内転筋の力を、骨盤をしめる方向に向かわせる」こともできるのです(注3)。

ただし、「内転筋の力を、骨盤をしめる方向に向かわせる」にはコツがあります。
まず、両膝がつくまでは、両脚を閉じる方向に力を入れます(「立位バランス訓練」注2、「股関節内転筋と片足立ち」1・2点目を参照)。
そして、骨盤をしめるには「内転筋を50%位収縮させることによって、大腿骨のつけ根を図40-4 ○赤矢印の方向にしめる」のです(注4)。
その際、「両膝は押し合いながら、骨盤から遠ざかる方向に動く」かんじになります。

そこのところをよく理解していないと、ただ「両脚を閉じる方向に強く力を入れる」だけで、骨盤をしめようとしてしまいます。
すると、「両膝が強く押し合うだけで、骨盤がなかなかしまらない」ことがあります。
そのため、「疲れるので収縮をやめてしまう」か「それでも頑張って収縮させた結果、内転筋が過労でA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」~B「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となる」になりやすいです。

内転筋↓→O脚となると、特に、骨盤の幅が広い女性や体重が重い人は、股関節や膝関節を傷めやすいです(図40-1を参照)。
そういうと、「それなら、男性や股関節・膝関節痛がない人であれば、内転筋↓→O脚でもよい」ようにも思えます。
ところが、内転筋↓→O脚になると、膝外側靭帯に大きな負担がかかるのです(注5)(注6)。

そのため、多くの方は、無意識のうちに外側に曲がった脚を伸ばそうとします。
ところが、このとき、内転筋が弱りすぎていたり、内転筋を収縮させる方法が分からなかったり、「外側に曲がった脚を内転するという感覚ではなく単に伸ばす感覚」だったりすると、「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」ことで脚を伸ばそうとしてしまいます(注7)。

でも、本来、大腿四頭筋やふくらはぎは「屈曲した膝や底屈した足関節を伸ばす筋肉」であり、「外側に曲がった脚を伸ばす筋肉」ではありません。
よって、「大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」ことで外側に曲がった脚を伸ばすと、過労でA~Bとなりやすくなります(注8)。
すると、筋ポンプ作用↓となったり、膝関節や足関節が硬くなりしゃがめなくなったりしがちです。
ですから、男性や股関節・膝関節痛がない人であっても、内転筋を収縮させることは重要なのです。

内転筋↓→O脚になると、特に長距離歩行の際に問題が起きやすいです。
片足立ちは立位よりも支持脚が不安定で転びやすいです。
よって、長距離歩行など、片足立ちの連続が長時間に及ぶ場合は、内転筋を収縮させ、図40-4 ○の姿勢にすることが重要です(注9)。
ところが、内転筋↓→O脚の人は、長距離歩行でも、「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」となりやすいです。
そのため、大腿四頭筋やふくらはぎが筋肉痛になりやすいのです(注10)(注11)。

すると、体は「筋肉痛を悪化させないよう、なるべく大腿四頭筋やふくらはぎを使わないようにしよう」と考えやすいです。
「そうなれば、仕方ないので、内転筋を収縮させ、図40-4 ○の姿勢になるだろう」とも思えます。

ところが、内転筋↓→O脚の人は、片足立ちの際「内転筋を収縮させ、図40-4 ○の姿勢にする」より「O脚(図40-4 ×の姿勢)のまま、膝外側靭帯によりかかる」方が、手っ取り早く膝関節を固定させられるように感じます。
そのためか、それほどひどいO脚ではない人でも、片足立ちになると、無意識のうちに後者を選択してしまいやすいです。
それに、「後脛骨筋↓や足関節のゆがみにより下腿が外側に倒れている」人だと、「内転筋を収縮させても、完全には図40-4 ○の姿勢にすることはできない」ため、やはり無意識のうちに後者を選択してしまいやすいです。

しかしながら、長距離歩行の際に後者を選択すると、ふだんは膝痛のない人であっても、さすがに膝関節内側の軟骨同士がぶつかり炎症を起こしたり、膝外側靭帯が急激に強く伸ばされ断裂(ねんざ)したりしやすくなります。
ところが、このとき「原因はO脚」と気づかないために、膝痛を悪化させてしまう人も多いです。

中には「原因はO脚」と気づきO脚をなおそうとする人もいます。
が、やはり「内転筋を収縮させ、図40-4 ○の姿勢にする」のは難しいことが多いです。
そのため、結局はまた「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」となりやすいです。
つまり、「膝関節外側靭帯によりかかると膝関節内側や外側が痛くなる」でも「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを使うと筋肉痛になる」というジレンマに陥りやすいということです。
しかも、前者を採用すれば支持脚が不安定になるため転びやすく、かといって後者を採用しても十分は安定せずすり足でつまずきやすいのです。
ですから、その場合、長距離歩行よりもまず「O脚や下腿が外側に倒れる状態を改善したり、片足立ちで○の姿勢を練習したりする」べきです。

ところで、「男性は座位や立位の際、脚を開くことが多いが、どうやって内転筋を収縮させるのか?」と疑問に思った方もいると思います。
「脚を開いた姿勢」では、「大腿骨のつけ根を図40-4 ○赤矢印の方向にしめる」のは難しいです。
よって、その場合は、「内転筋と中殿筋(股関節を外転する筋肉)を同時に収縮させる」と、「脚を開いた姿勢」でも内転筋を収縮させられます。
内転筋と中殿筋を同時に収縮させるには、「大腿を内側に閉じるように力を入れながら、同時に外側に開くようにも力を入れる」ようにします。
つまり、「膝を内側に押しても外側に押しても動かない」状態にするのです。

しかし、「内転筋が膝を内側に閉じようとすれば中殿筋は外側に開こうとする」力比べのような状態を長時間続けるのは大変です(注12)。
それに、人間の体は「内転筋と中殿筋を同時に収縮させるのは、お互いの働きを妨害するので非効率」と考えたり、「内転筋も中殿筋も収縮させなくてもその姿勢を保っていられるのに、収縮させるのは非効率」と考えたりする傾向があります。
そのため、この方法だと、どうしても収縮を怠ってしまいやすいです。

収縮を怠ればO脚になってしまいやすいですが、「脚を開いた姿勢」だと、O脚でも一見は分かりにくいです(注13)。
しかし、内転筋を収縮させなければ、膝外側靭帯に大きな負担がかかっていることに変わりはありません(注6を参照)。
そういうと、多くの人は「脚を開いた姿勢でも、内転筋を収縮させ膝を少しは内側に入れる」よう気をつけると思います。
ところが、「脚を開いた立位」だと、「膝を少しは内側に入れる」ことができたとしても、それは内転筋が収縮したからなのか、それとも大腿四頭筋やふくらはぎ、大腿裏の筋(図38-1 左下を参照)が収縮したからなのか を区別しにくいです。
よって、「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎ、大腿裏の筋を収縮させる」となりやすいです(注14)。

「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」のでも、少しは膝外側靭帯の負担を減らすことができます。
が、そのような体の使い方をしていると、大腿四頭筋やふくらはぎが過労→短縮しやすくなります。
それに、片足立ちの際も「内転筋の代わりに大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させる」くせがついてしまいやすいです。
また、「脚を開いた立位」だと、下腿をまっすぐ立てる筋肉(後脛骨筋や腓骨筋)も収縮しにくくなります。
なお、「股関節を外旋させつま先を外側に向けた立位」だと、足関節底屈位となるため、ふくらはぎが収縮・短縮してしまいやすくなります。
ですから、「脚を開いた姿勢」の際は、「股関節を内・外旋させず、つま先を正面に向ける」方がよいです(注15)。

なお、「脚を開いた姿勢」では、内転筋を収縮させても骨盤をしめる作用はありません。
よって、「脚を開いた姿勢」をとるのであれば、大殿筋のみで骨盤をしめなくてはなりません。
「でも、骨盤がしまりすぎるのも体に悪いのでは?」と思う方もいると思います。
確かにそうですが、睡眠時など筋肉が休んでいる際には骨盤が開くので、やはり日中活動時は骨盤をしめる努力が必要なことが多いです。

ただし、大殿筋や内転筋が過労でAとなった場合は、睡眠中でも「骨盤がしまったまま」となってしまうことがあります。
その場合は、「呼吸エクササイズ」などを行い、大殿筋や内転筋にたまった乳酸・カルシウムを分解・分離することで筋肉を緩めるとよいです。

ちなみに、女性は出産するためか、男性よりも骨盤が開きやすい傾向があります。
また、女性は妊娠するので胎児が大きくなるのに合わせて腹筋が伸びないと困るためか、筋肉が緩みやすい傾向があります。
つまり、男性の方が「大殿筋や内転筋がAとなりやすいため、骨盤がしまったままになりやすい」のです。

しかし、だからといって、男性は「大殿筋や内転筋を収縮させなくても骨盤が開かない」というわけではありませんし、「骨盤が開いたまましめなくてもよい」というわけでもありません(注16)。
「骨盤がしまったまま」とならないよう、「しめないようにする」のではなく、「呼吸エクササイズなどを十分行い開くようにする」べきです。
骨盤は、常に「しまると開くの中間」ならよいわけではなく、「日中活動時はしまり、睡眠時は開く」という、メリハリが大切なのです。


(注1)大殿筋を収縮させず、内転筋のみで骨盤をしめようとすると、骨盤がうまくしまらず、内転筋がA~Bとなってしまいやすいです。

(注2)両足を前後にずらし、両膝がすれ違うようにすれば、「股関節を内転させることによって両脚を交差させる」こともできます。
「それでは、座位で脚を組んだり、立位で脚を交差させたりすれば、内転筋を多く収縮させられるのでは?」とも思えます。
しかし、「座位で脚を組んだ状態は脚同士が密着しているため、立位で脚を交差させた状態は足裏と床とのまさつがあるため、内転筋を収縮させなくてもその状態を保っていられるし、O脚でも一見は分かりにくい」ので、内転筋収縮を怠ってしまいやすくなります。

が、「この方法を採用しなおかつ内転筋の収縮を怠らないようにする」のであれば、内転筋を(イ)にすることができます。
(「大殿筋エクササイズ2」注10では、筋肉が弱い場合、収縮時(イ)「その筋肉をある程度収縮した姿勢にする」とするよう推奨しました)
しかし、この方法では骨盤をしめる働きはなく、むしろ、脚を組むと骨盤が開いたりゆがんだりしやすくなります。
それに、この方法を採用せざるをえないほど内転筋が弱い人は、片足立ちで図40-4 ○の姿勢をとれないことが多いです。
ですから、「内転筋の筋力強化」などで内転筋を鍛えることにより、この方法を採用しなくても座位・立位を保てるようにした方がよいです。

(注3)中には「内転筋は十分あるが、立位だと後脛骨筋↓や足関節のゆがみによって下腿が外側に倒れてしまうために両膝がつかない」という人もいます(「股関節内転筋と片足立ち」5つ目の話を参照)。
このような人は、両膝をつけようとすると、内転筋が過労でA~Bとなりやすいです。
しかし、両膝がつかないと、「内転筋の力を骨盤をしめる方向に向かわせる」のは難しいです。

したがって、「下腿が外側に倒れてしまうために両膝がつかない」場合は、両足を少し(1~2㎝)だけ前後にずらし、「両脚を閉じた際、両内くるぶしはぶつからないが両膝はつく程度」にすると、両膝がつきます。
ただし、内転筋の収縮のみによって両膝をつけようとすると、やはり内転筋が過労でA~Bになりやすいので、「後脛骨筋や腓骨筋を収縮させ下腿をまっすぐ立てる」努力も怠らないでください(詳しくは後述します)。

「下腿が外側に倒れてしまうために両膝がつかない場合でも、膝立ちになれば両膝をつけられるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
が、すでに大腿四頭筋が短縮している人が膝立ちになると、短縮した大腿四頭筋が骨盤を前下方に引くため、骨盤前傾↑→腰椎前弯↑→腰痛↑となる場合があります。
大腿四頭筋は大腿前面にあり、骨盤~脛骨粗面(膝下)についている筋肉です。
よって、膝が屈曲すれば、その分大腿四頭筋は伸びなくてはなりません(図28-1を参照)。
ところが、大腿四頭筋が短縮していて伸びない場合は、膝屈曲に長さをとられた分、骨盤を前下方に引くことがあるのです。

(注4)ただし、「内転筋を収縮させることによって骨盤をしめる」のは、内転筋が「50%位収縮させると、脚を閉じるだけでなくさらに骨盤をしめることができる」程度に発達してから行ってください。
また、骨盤をしめる際は、「脚にクッションをはさまず、両膝をつけた状態」で行ってください。
ちなみに、題名は「立位で内転筋を収縮させる方法」としましたが、この方法は座位や仰臥位でも採用できます。
いきなり立位で行うのではなく、仰臥位→座位→立位と、段階的に負荷を増やしていくとよいです。

ただし、座位で行う場合は、「内転筋を収縮させることで骨盤や脚を閉じている」つもりでも、「ふくらはぎを収縮させつま先立ちのようになることで脚が動かなくなるようにしている」だけのこともあるので、そうはならないよう気をつけてくだざい。
座位では、おしりや大腿裏が座面につぶされ血行が悪くなっているので、ふくらはぎなど末梢の筋肉を収縮させると短縮しやすいです。

(注5)最近、「空中ヨガ」(シルクサスペンション)というものが流行っているようです。
これは、天井につるした輪状の帯に体をのせ、その上でポーズをつくる運動です。
その中に、「2本の帯に片足ずつのせ、帯の上にのったまま立つ」ポーズがあります。
帯は、足で踏みつけても床には接地しない長さになっているので、このポーズをとると、「床に足をつけず空中に立った状態」となります。
このポーズをとると、内転筋が強い人は脚を閉じられますが、内転筋が弱い人は頑張って脚を閉じようとしても大開脚してしまいます(※)。
通常、床に立つと「足裏と床とのまさつ」が発生しますが、このポーズをとるとそれがないので、内転筋が弱いと大開脚してしまうのです。

ちなみに、内転筋が弱い人は、「まさつが少なくつるつる」のくつを履き、つるつるの氷上に立った場合も、大開脚してしまいやすいです。
(アイススケートのくつは、くつ底に刃があり、横滑りしにくくなっています)
が、実は、膝関節も「まさつが少なくつるつる」なので、床に立っていても、膝関節の部分は「空中ヨガや氷上に近い状態」になっているのです。
「それでは、内転筋が弱い人でも、膝関節の部分が大開脚しないのはなぜか?」というと、膝外側靭帯がストッパーになっているからです。
内転筋が弱い人が立位になった際の膝外側靭帯には、それだけ大きな負担がかかっているのです。

(※)ただし、「2本の短い帯に片手ずつのせ、肘を伸ばしながら帯を下に押す」と、腕の力によって閉脚できる場合もあります。
しかし、「肘を伸ばしながら帯を下に押すと、なぜ閉脚できるのか?」と疑問に思った方もいると思います。
それは、「大開脚すると、その分背が低くなる(図40-4 下図を参照)ため体の位置は下がるが、肘を伸ばしながら帯を下に押すと、肘を伸ばした分体を押し上げる力が発生する」からです。
脚が外転し大開脚する際は、「脚が外に広がる」力だけでなく、「背が低くなる(体の位置が下がる)」力も発生します。
よって、肘を伸ばし体を押し上げることで後者の力を相殺してしまえば、閉脚しやすくなるわけです。

なお、氷上に立つ場合は、「帯ではなく手すりを下に押すことで体を押し上げる力を発生させる」人が多いです。
床に立つ場合は、「平行棒や松葉杖、ストックなどを下に押すことで体を押し上げる力を発生させる」こともできます。

しかし、そうしていると、腕や肘を伸ばす筋肉(広背筋や上腕三頭筋)が過労でA~Bとなりやすくなります。
また、「姿勢保持のために広背筋が収縮するくせ」がついてしまいやすくなります(「腕の力を抜く練習」の項を参照)。
が、「この方法を採用しなおかつ内転筋の収縮を怠らないようにする」のであれば、内転筋を(イ)にすることができます。
(「大殿筋エクササイズ2」注10では、筋肉が弱い場合、収縮時(イ)「その筋肉をある程度収縮した姿勢にする」とするよう推奨しました)
ですから、「筋肉がつくのに従い、段階的に負荷を増やす(手すりの使用をやめる)」のであれば、この方法を採用してもよいです(図40-2)。

(注6)内転筋が弱くても、「膝外側靭帯が伸びきっておらずストッパーになっている」うちは、ひどいO脚にはなっていない場合もあります。
しかし、「膝外側靭帯がストッパーになっている」状態が長期間続くと、靭帯が少しずつ「伸びてくる」場合があります。
その結果、膝外側靭帯が伸びきってしまうと、ひどいO脚になってしまいやすいです(図40-4 ×を参照)。
靭帯は「万一、スポーツなどで関節が本来動く方向以外に動いた際、動かないようにとめる」働きをするため、本来は伸びないです。
が、「ストッパーになっている」状態が長期間続くと疲弊するため、少しずつ「伸びてくる」場合もあるのです。
靭帯が急激に強く伸ばされ「断裂」(ねんざ)した場合は痛みや腫れが起こりやすいですが、「伸びてくる」場合は痛みがないことも多いです。

(注7)足が地面についている場合は、大腿裏の筋が収縮することで膝を伸ばしてしまう場合もあります(図38-1 左下を参照)。

(注8)血流がよければ、大腿四頭筋やふくらはぎが「A~Bとなる」のではなく、「内転筋の代わりに収縮することで発達する」場合もあります。
(大腿四頭筋の方がふくらはぎより中枢にあるため、発達しやすい人が多いです)
すると、「特別スポーツをしたわけでもないのに、大腿が太い」などということになりやすいです。
しかし、「大腿四頭筋やふくらはぎが内転筋の代わりをする」というのはやはり無理があります。
したがって、高齢になったり血流↓となったりすると、結局は大腿四頭筋やふくらはぎがA~Bとなり、O脚↑・膝痛↑となりやすいです。

ところが、このとき「O脚↑・膝痛↑となったのは、大腿四頭筋が弱ったからだ」と考え、大腿四頭筋を鍛える人も多いです。
しかし、この場合、収縮機能が落ちたのは「内転筋の代わりに収縮し過労になったせい」なので、ここで鍛えてもA~B↑となりやすいです。
(それでも、A~Bがわずかなうちは、血流をよくしうまく鍛えれば再び発達する場合もありますが、やはり最終的にはA~Bとなりやすいです)

また、大腿四頭筋やふくらはぎがAになった場合は、「膝痛↑となったのは、筋肉が短縮したからだ」と考え、筋肉をストレッチする人も多いです。
しかし、この場合、短縮したのは「内転筋の代わりに収縮し過労になったせい」なので、ここでストレッチしても炎症を起こしたり、瘢痕ができたり、防衛反応↑となったりしやすいです(「ふくらはぎのストレッチ」の項を参照)。
(それでも、短縮がわずかなうちは、血流をよくしうまく伸ばせば緩む場合もあります。が、「過労しながらストレッチ」を繰り返していると、最終的には「強く収縮しているのだけれど、強く伸ばされ断裂した足底腱膜」の状態と似たような状態になってきてしまう場合もあります)

(注9)立位と片足立ちでは、内転筋の使い方が異なります。
立位の際は「大腿骨のつけ根を図40-4 ○赤矢印の方向にしめる」としますが、片足立ちや歩行の際は「支持脚側の内転筋を収縮させることで、膝が内側に動くと同時に骨盤が外側に動く」とします(「立位バランス訓練」の項を参照)。
難しい場合は、まずは「片足立ちでの内転筋の使い方」から覚えてください。

(注10)ところが、「大腿四頭筋やふくらはぎが筋肉痛になったのは運動不足だからだ」と考え、もっと歩いたりする人も多いです。
しかし、この場合、筋肉痛になったのは「内転筋の代わりに収縮し過労になったせい」なので、ここで歩いてもA~B↑となりやすいです。

(注11)それに、本来、大腿四頭筋やふくらはぎは内転筋と同様に働くようにはできていません。
よって、いくら大腿四頭筋やふくらはぎを収縮させても、「片足立ちの際、完全に図40-4 ○の姿勢にする」のは難しいです。
すると、片足立ちの際、支持脚が不安定になるため、ほんの一瞬しかしていられません(「腸腰筋よりも大殿筋を先に鍛えよう」注8を参照)。
したがって、もう片方の足を高くまで上げている時間がないため、すり足のようになり、つまずいてしまいやすくなります。

また、ふくらはぎが過労→短縮すると足が底屈しつま先が下がるので、歩行時につま先を引きずりつまずいてしまう場合もあります。
そのため、すり足になったりつま先を引きずったりしないよう、前脛骨筋(足関節を背屈しつま先を上げる筋)↑→すねが筋肉痛となったり、「股関節を大きく屈曲し脚を大きく持ち上げれば引きずらない」と考え、腸腰筋↑となったりする場合もあります。

(注12)この方法を採用する場合は過労とならないよう「内転筋と中殿筋は50%位の強さで収縮させ、ときどきは力を抜き休む」とよいです。
ただし、「休んだ後に収縮を再開する」のを忘れないようにし、収縮を怠らないようにしてください。

(注13)本書では、「両膝伸展位・つま先を正面に向けた姿勢(股関節を内旋したり外旋したりしない)で、両足(親指つけ根と内くるぶし)をつけ、内転筋を収縮させることでなるべく両膝をつけるようにしても、両膝や両ふくらはぎがつかない」状態をO脚と呼んでいます。
「後脛骨筋↓や足関節のゆがみによって下腿が外側に倒れている」と、「両膝はついても両ふくらはぎはつかない」ことがあります。
しかし、あまり知られていませんが、「両膝はついても両ふくらはぎはつかない」のもO脚です。
なお、「大腿骨のつけ根を図40-4 ○赤矢印の方向にしめる」と、内転筋が収縮しふくらむため、内股(陰部のすぐ下)もつきます。
両足(親指つけ根と内くるぶし)、両ふくらはぎ、両膝、内股のすべてがつく状態であれば、完全に「O脚ではない」といえます。

(注14)内転筋が収縮したか区別できない場合は、「内転筋の筋力強化」などを行い、内転筋収縮の感覚を覚えてください。
なお、「脚を開いた姿勢」の際、内転筋や中殿筋ではなく、股関節内旋・外旋筋を収縮させることで股関節を動かないようにする人もいます。
特に、「股関節を外旋させつま先を外側に向けた姿勢」だと、そうしてしまいやすくなります。
また、「股関節を外旋させつま先を外側に向けた姿勢」だと、大殿筋の収縮を怠ってしまう場合もあります。
なぜなら、「大殿筋は股関節外旋の働きがあるが、この姿勢をとると、大殿筋を収縮させなくてもこの姿勢を保っていられる」からです。

が、「大殿筋エクササイズ2」注10では、筋肉が弱い場合は、収縮時(イ)「その筋肉をある程度収縮した姿勢にする」とするよう推奨しました。
しかし、座位で大殿筋を(イ)にするには、「骨盤をしめた形として座る」方がよいです。
なぜなら、「脚を開き股関節を外旋させて座ると、骨盤がしまるのではなく逆に開いてしまう」ことが多いからです。

立位の場合、「この方法を採用し、なおかつ大殿筋の収縮を怠らないようにする」のであれば、大殿筋を(イ)にすることができます。
しかし、座位のときほどは「上半身の重みによって骨盤が開きやすくなる」ことはないので、不利益が多いこの方法を採用してまで(イ)にこだわることはないです。
それに、この方法で(イ)にできるのは主に「股関節を外旋する方向の収縮」です。
が、腰痛↓とするために重要なのは「骨盤後傾する方向の収縮」です。
立位でこの方法を採用せざるをえないほど大殿筋が弱い人は、十分骨盤後傾できない=立位をとっているのは危険なことが多いです。
ですから、「大殿筋エクササイズ」などで大殿筋を鍛えることにより、この方法を採用しなくても立位を保てるようにした方がよいです。

(注15)ちなみに、「脚を開いた姿勢」でなおかつ「股関節を内旋させつま先を内側に向けた姿勢」にする人もいます。
その場合も、「膝を少しは内側に入れる」ことができたとしても、それは内転筋が収縮したからなのか、それとも大腿四頭筋やふくらはぎ、大腿裏の筋が収縮したからなのか を区別しにくいです。
それに、股関節内旋・外旋筋を収縮させることで股関節を動かないようにしてしまいやすくなります。
また、「股関節を内旋させつま先を内側に向けた姿勢」だと、骨盤が開いてしまいます。
それに、大殿筋が(ア)「その筋肉をある程度伸ばした姿勢にする」(「大殿筋エクササイズ2」注10を参照)となります。
大殿筋が弱いのに(ア)とすると、断裂しやすいのでNGです。

(注16)骨盤が開くと、腹横筋や骨盤底筋も引き伸ばされるため、過労でA~Bとなったりしやすいです。
それに、骨盤が開くと、骨盤がゆがんだり、仙骨やその上にのる脊椎が不安定になったりしやすいです。
ところが、骨盤が開くと、「座位の際、やや骨盤後傾位で安定する」場合もあります。
それだと、大殿筋や短背筋群をあまり収縮させなくても姿勢を保持していられるため、目先は楽ですが、大殿筋や短背筋群が弱りやすいです。
すると、油断しているうちに腸腰筋↑→腰椎前弯↑となったり、ぎっくり腰・むち打ち(頚椎ねんざ)・すべり症となったりしやすいです。

座位で大殿筋を収縮させる方法

2016-09-21 16:14:06 | 姿勢・動作

「モデル姿勢」(図20-1 ○2・○3)はC7が後ろに突出していますが、「ふつうの座位」(図20-1 ○1)は突出していないので、その分「体幹を前にもってくるために腸腰筋や腹斜筋・腹直筋を収縮させる」必要性は少なくなります(注1)。
よって、「ふつうの座位」の場合は、「図20-1 ○3の姿勢」のように「正常なシステムを作動させるために、体全体を前に傾けおしりを浮かせる」まではしなくてもよいです(注2)。

しかしながら、「ふつうの座位」であっても、「腸腰筋をなるべく収縮させない」「大殿筋を収縮させ骨盤後傾の力を発生させる」「正常なシステムを作動させる」ことが重要です。
現代人は座位の時間が長いので、座位の際に「正常なシステムが働く」か「その逆に腸腰筋↑となる」かは、将来に大きな影響を与えます。
ところが、これが(習慣にできてしまえばよいのですが)慣れない人には難しいのです。

「座位をとる」とは「股関節を屈曲する」ということなので、「ふつうの座位」は「股関節屈曲を維持するために腸腰筋が収縮しやすい」姿勢です。
だからといって、本書の推奨通り、腸腰筋を収縮させず骨盤後傾の力を発生させれば、すぐ図20-2 ○4・○5になってしまいます(注3)。
つまり、「ふつうの座位」(図20-1 ○1のように、骨盤中間位で背すじが伸びた座位)は、長時間続くものではないのです。
ところが、それを知らなかったりすると、①「腸腰筋>大殿筋」(図20-2 ×3) ②「腸腰筋<大殿筋→両方↓」(図20-2 ○4・○5)のどちらかになってしまいやすいです。

①「腸腰筋>大殿筋」は、「②からふつうの座位に戻る際に腸腰筋↑としてしまう」人や「②の姿勢を嫌う」人がなりやすいです。
骨盤後傾の力を発生させることで②の姿勢になった場合、それを続けすぎると「大殿筋+短背筋群」が弱りやすいです(「よい姿勢の誤解」を参照)。
そこで、多くの人は②からふつうの座位に戻ります。
が、そのとき単に股関節を屈曲するのみで大殿筋の収縮を意識しないと、ふつうの座位に戻ったつもりでも①になってしまっているのです(注4)。

「②の姿勢を嫌う」人とは、「骨盤後傾したり背もたれによりかかったりすると背すじを伸ばす筋肉が弱るためNGと思い込んでいる」人や「股関節を屈曲し身を乗り出して作業する(しかも、疲れても途中で休まず続けてしまう)くせがある」人(注5)です。
このような方は、「骨盤後傾したり背もたれによりかかったりしないために、股関節屈曲を維持する」ことになるので、①となりやすいです。
それに、「大殿筋+短背筋群」が疲れてもふつうの座位をとると、脊椎カーブ↑(腰椎前弯↑)ともなりやすいです(図9-3を参照)。

問題が大きいのは、「ふつうの座位をとり大殿筋を収縮させているつもりであったとしても、いつの間にか①となってしまっている」点です。
それと、たとえ知識があっても「ふつうの座位」と腰椎前弯↑(図20-2 ×3)は区別しにくいため、腰痛↑となるまで気づきにくい点です。

②「腸腰筋<大殿筋→両方↓」は、本書が推奨した通り「ふつうの座位をとり、大殿筋を収縮させ骨盤後傾の力を発生させる」となりやすいです(注6)。
「両方↓」とはどういう意味なのかというと、「腸腰筋<大殿筋となり骨盤後傾した結果、図20-2 ○4・○5の姿勢になると、大殿筋+短背筋群は収縮しなくても姿勢を保っていられるため、収縮をやめてしまいやすい」という意味です。
人間の体には、座位でも「大殿筋を収縮させすぎるほど骨盤後傾しすぎるため、かえって大殿筋が収縮しなくなる」という罠があるのです(注7)。

しかし、いくら「大殿筋+短背筋群」が強い人であっても筋肉は疲労するので、ときどきは②の姿勢をとることで休む必要もあります。
それに、①は「短時間でもNG」なのに対し、②は「長時間とりすぎなければとってもよい姿勢」です(「よい姿勢の誤解」の項を参照)。
したがって、「ふつうの座位をとり、骨盤後傾↑となってきたり疲れてきたりしたら、②をとる」「しかし②の姿勢も長時間とりすぎると大殿筋+短背筋群が弱りやすいので、またふつうの座位に戻る」(つまり、1~10分おきにふつうの座位と②を交互に繰り返す)とよいです(注8)。

ただし、まだ「大殿筋+短背筋群」が弱い場合は、時間を「ふつうの座位<②」としてください。
なお、「大殿筋+短背筋群」を休ませる目的で②を短時間とる場合は、「少しでも大殿筋や腰椎の短背筋群を収縮させる」よう工夫しなくてよいです(背もたれによりかかった方がより休息できます)(注9)。


しかしながら、「座位だと大殿筋が座面につぶされているため、あまり収縮させられない」という人もいます。
「股関節を伸展させ大腿裏でいす前方のヘリを押す」方法は、いすの形状や座り方によっては使えない場合もあります。
よって、その場合は「左右の大腿骨(大転子)で座面をはさむ」としながら「肛門をしめ引き上げるように力を入れる」とよいです(注10)。
すると、ちょうど吸盤で座面を吸い上げるような感じとなります(図20-3を参照)(注11)。

こうすると、骨盤もしまります。
骨盤がしまる(骨盤の周径↓となる)と、骨盤の上に位置するウエスト(腹横筋)や骨盤の中に位置する骨盤底筋も周径↓としやすくなります。
つまり、「ウエスト(腹横筋)や骨盤底筋を収縮させやすくなる」わけです(注12)。
すると、中枢が安定し、体の中心軸も分かりやすくなります(「書字の極意」の項を参照)。
なお、「脚を閉じた姿勢で大殿筋とともに内転筋を収縮させる」と、さらに骨盤がしまります(「立位で内転筋を収縮させる方法」を参照)(注13)。

骨盤が開く(骨盤の周径↑となる)と、腹横筋や骨盤底筋も引き伸ばされるため、過労でA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」~B「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となったりしやすいです。
しかも、骨盤が開くと骨盤がゆがみやすいので、骨盤内の関節(仙腸関節や恥骨結合など)が痛む場合があります(注14)。
それに、骨盤がしまると仙骨は左右の腸骨にはさまれ押し上げられることにより固定されるのに対し、骨盤が開くと、仙骨は不安定になり落ちやすくなるので、その上にのる脊椎も不安定になりやすいです。

ちなみに、図20-1 ○1や図20-2 ○5、図21-1 ○1の腰部に緑矢印(上級者)とありますが、これは何かというと、「正しいあごの引き方」ならぬ「正しい腰の力の入れ方」を示したものです。
仙骨を胸椎上部、L1を頭に見立てると、「L1下方を後上方に引き上げる」ようにすれば、正しく腰の力を入れることができます。

このとき、腰を触ると、脊柱筋(背骨にそって隆起している筋肉。短背筋群+脊柱起立筋群)が収縮するのが分かります。
しかし、「正しく腰の力を入れると、脊柱起立筋群よりも短背筋群が収縮する」ので、「正常な(ゆるやかな)腰椎カーブ」となります。
ですから、「モデル姿勢」の際も、こうすれば腰椎が胸椎の動きにつられないようにしやすいです(「よい姿勢の誤解」注5を参照)。

ただし、「正しくあごを引く際は、なるべく胸椎伸展する方向に力を入れる」ように、「正しく腰の力を入れる際も、なるべく(大殿筋を収縮させ)骨盤後傾する方向に力を入れる」ことは重要です(注15)。
しかしながら、「胸椎伸展しすぎると、図41-1 ×1のようになってしまう」ように「骨盤後傾しすぎると、正しく腰の力を入れるのが難しくなってしまう」というのはあります。

でも、骨盤後傾↑となった結果、背もたれによりかかってしまった場合であっても、背もたれの腰の部分にクッションを置き「クッションをL1下方で後上方に軽く押す」とすれば、「正しく腰の力を入れる」ことができます(図20-2 ○5 緑矢印)。
このとき、「正しくあごを引く際は、円背の程度に合わせる」ように「正しく腰の力を入れる際は、骨盤後傾の程度に合わせる」とよいです。

ちなみに、「骨盤後傾する力を発生させているにもかかわらず、(腸腰筋短縮などがあるために)骨盤前傾↑になっている」という人もいます。
その場合、「骨盤中間位になっているとき」と同じ方向に引き上げてしまうと、腰椎前弯↑となってしまいやすいのでNGです(注16)。

しかし、だからといって「正しく腰の力を入れる際は、骨盤前傾の程度に合わせる」とするのは、NGの人が多いです。
なぜなら、そうすると前かがみとなるため、脊柱起立筋群↑となってしまいやすいからです。
「正しくあごを引く」場合は「胸椎より上にのっている部分(頚椎~頭)」の長さは短いため「円背になっている(胸椎上部が前傾している)状態であごを引く」のでも問題ありませんが、「正しく腰の力を入れる」場合は「骨盤より上にのっている部分(腰椎~頭)」の長さが長いため「骨盤前傾↑になっている状態で腰の力を入れる」と脊柱起立筋群↑となってしまいやすいのです。
ですから、腸腰筋短縮などがあり骨盤前傾してしまう場合は、それらを改善してから「正しく腰の力を入れる」練習をしてください(注17)。

余談ですが、「モデル姿勢」の際「胸椎伸展↑とした上でC7のみ屈曲させる」ように、「骨盤後傾↑とした上でL5のみ屈曲させる」とした上で「腰椎(ここではL5より上にのっているL4~L1のことを指しています)をL5屈曲の程度に合わせてまっすぐ伸ばしたときの方向よりも約30度後上方に引き上げることで、正しく腰の力を入れる」(以下「L5屈曲」と省略)とすることもできなくはないです。

しかし、そうすると腰を曲げた姿勢になってしまうため、「L5屈曲」を行う現代人は少ないです(注18)。
しかしながら、シルバーカーを使用する人の場合は、「L5屈曲」を行うとうまくいくことがあります(「動作の注意点-⑧カートを押して歩く2」)。
シルバーカーを使用する人は、短縮した大腿裏の筋が骨盤を後下方に引き骨盤を起こすため、骨盤後傾↑となりやすいですし、シルバーカーによりかかることでちょうどL5あたりが屈曲しやすいです。
そこで、「L5屈曲」を行うと、「腰痛を悪化させずに少し体を起こす」ことができます。
すると、シルバーカーを使用しても、「手すりによりかかりすぎ、下を向きすぎることになり苦しい」状況になりにくいのです(注19)。


(注1)ただし、多くの方は体前面の皮膚や腹斜筋・腹直筋の短縮があるため、胸椎を大きく反らすことはできません。
よって、自分では「しっかりと胸を張り胸椎のみ前に押し出したので、モデル姿勢(もしくは図41-1 ×1)になった」と思っていても、実際は「そこまで胸椎は反っておらず、ふつうの座位(図20-1 ○1)にしかなっていない」という場合も多いです。

しかし、かなり少数ではありますが、胸椎を大きく反らせる人もいます(子供は、少し力を入れただけで大きく反らせることも多いです)。
ですから、「横から見た姿勢」を鏡に映し、「自分は胸椎をどの程度反らすと図41-1 ×1になってしまうのか」を把握しておくとよいです。
その際、「胸椎の代わりに腰椎が反ったりしていないか」も確認しておくとよいです。

(注2)「正常なシステムは前かがみになるほど作動しやすい」のですが、現代人の場合は「大殿筋+短背筋群が弱っていることが多いため、前かがみになりすぎれば過労となり脊柱起立筋群が手伝いすぎる」というジレンマを抱えています(「腸腰筋よりも大殿筋を先に鍛えよう」注1)。
ですから、「ふつうの座位」でも、「立位の注意点」で推奨した方法(「体をまっすぐにし、なおかつ地面と垂直にする」とし、なおかつ「大殿筋+短背筋群の収縮を意識する」という方法によって、正常なシステムを作動させる)を採用するとよいです。
(「ふつうの座位」は図21-1 ○1を座位にした姿勢なので、注意点は「立位の注意点」1~7を参照ください。)

「少しであれば前かがみになっても脊柱起立筋群↑とならない程度に大殿筋+短背筋群が鍛えられている」(「よい姿勢の誤解」a~dのようにはならない)という人であれば、「モデル姿勢」(図20-1 ○3)のように「体全体を前に傾けおしりを浮かせる」としてもよいです。
ただし、「おしりを座面につけたまま、股関節を屈曲させ体幹のみ前傾する」のは、股関節屈曲を維持するために①となったり、脊柱起立筋群↑→腰椎前弯↑となったりしやすいのでNGです。

(注3)「腸腰筋・大殿筋の両方とも収縮させなければ、骨盤中間位を保てるのでは?」とも思えます。
しかし、そうできたとしても、骨盤中間位は不安定なので、骨盤前傾もしくは後傾とぐらぐら動きやすいです。
それに、大殿筋↓だと短背筋群もスイッチが入らないので(「おじぎエクササイズの方法」の項を参照)、骨盤前傾ならバランスをとるため腰椎前弯↑(脊椎カーブ↑)、骨盤後傾ならバランスをとるため腰椎後弯という具合に、ぐらぐら動きやすいです。

ただし、大殿筋↓→骨盤が開くと、やや骨盤後傾位で安定する場合もあります。
しかし、だからといって油断していると、腸腰筋↑→骨盤前傾↑→腰椎前弯↑(脊椎カーブ↑)となってしまう場合もあります。

それでも、「腸腰筋が収縮することも腰椎前弯↑(脊椎カーブ↑)となることもあまりなく、ふつうの座位を保てる」という人もいます。
よって、そのような人の場合は、短時間であれば問題ありません。

ちなみに、腸腰筋と大殿筋の両方が弱ると、腸腰筋の筋力低下の方が目立つため、腸腰筋ばかりを鍛え短縮する(→①となる)人が多いです(「V字のポーズ」の項を参照)。
「大殿筋が弱っても、大腿裏の筋が手伝ったり、股関節屈曲した分脊柱起立筋群↑→腰椎前弯↑となったりすれば目立たない」ですが、「腸腰筋が弱ると、脚が上がらないため目立つ」のです。

「腸腰筋・大殿筋の両方とも収縮させておけば、骨盤中間位を保てるのでは?」と思う方もいると思います。
確かに、腸腰筋・大殿筋両方が収縮すれば股関節は安定します。
よって、「車いすで運動する場合」などは、そのようにしていることが多いです。
しかし、「腸腰筋が仙骨を前に傾けようとすれば大殿筋は後ろに傾けようとする」力比べのような状態を長時間続けるのは大変です。
そのため、長時間続けすぎれば、腸腰筋・大殿筋が過労でA~Bとなるため、やはりバランスをくずし、①・②のどちらかになりやすいです。

(注4)②の姿勢からふつうの座位に戻る際は、股関節を屈曲するだけではなく、大殿筋に力を入れるのを忘れないでください。
また、ふつうの座位の間は、ずっと「腸腰筋をなるべく収縮させない」「大殿筋を収縮させ骨盤後傾の力を発生させる」ようにしてください。

(注5)②の姿勢は、胸椎後弯↑となり背中が丸くなるため、肩甲骨が動きにくくなるので作業がしにくくなります(「書字の極意」の項を参照)。
一方で、①の姿勢は、「骨盤前傾↑となった分前かがみになる」のであれば、目先は肩甲骨が動きやすいです。
しかし、前かがみになれば脊柱起立筋群↑となるため、結局は腰椎前弯↑となってしまいやすいです。
腰椎前弯↑となればバランスをとるために胸椎後弯↑ともなるので、やはり肩甲骨は動きにくくなります。

(注6)中には「背すじの筋肉が弱いため、すぐに疲れ、骨盤後傾したり背もたれによりかかったりする」という人もいます。
しかし、「疲れても背もたれによりかからず、ふつうの座位をとり続ける」と、短背筋群↓→脊椎カーブ↑(腰椎前弯↑)となりやすいです。
疲れた短背筋群を脊柱起立筋群が手伝うため、脊柱起立筋群↑→腰椎前弯↑となってしまう場合もあります。
よって、背すじの筋肉が弱い場合は、「疲れたら背もたれによりかかる」「背すじの筋肉はおじぎエクササイズなどで鍛える」とした方が安全です。

ただ、「背すじの筋肉が弱いため背もたれによりかかる」場合は、「腸腰筋<大殿筋」とはならず、直に「両方↓」となってしまう場合があります。
しかし、背もたれによりかかる際は、ただ骨盤後傾するのではなく「大殿筋を収縮させることによって骨盤後傾する」と意識することが大切です。
筋肉が弱い人であっても、意識した方が収縮しやすいですし、発達もしやすいです。

(注7)「大殿筋を収縮させすぎなければ、骨盤中間位を保てるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
が、正常であれば大殿筋は強い筋肉なので、収縮しすぎるのではなく、50%位収縮させただけでも骨盤後傾してしまいやすいです。

(注8)「1~10分」としたのは「頻回に②をとれば頻回に休憩でき、頻回にふつうの座位に戻れば頻回に大殿筋を収縮させられる」からです(ただし、「②の際は大殿筋+短背筋群を休ませる」とし、「ふつうの座位に戻る際やふつうの座位の間は、大殿筋を収縮させる」とする人の場合)。
ふつうの座位の時間を長くしてしまうと、股関節屈曲を維持するために腸腰筋↑となったり、「大殿筋+短背筋群」↓→脊椎カーブ↑(腰椎前弯↑)となったり、疲れた短背筋群を脊柱起立筋群が手伝うため脊柱起立筋群↑となったりしやすいです(注9を参照)。

(注9)ふつうの座位の時間を長くした結果、すでに腸腰筋や脊柱起立筋群が過労→短縮している(注8を参照)と、「本人は②になった(いすに浅めに座り背もたれによりかかることで骨盤後傾し、図20-2 ○4・○5の姿勢になった)つもりでも、腰椎後弯せず腰椎前弯↑となってしまっている」場合があります(図14-1 ×1)。

その結果、腰痛↑となる場合は、座位や立位をとり続けると危険なので、すぐ横になり腰椎に体重がかからないようにした方がよいです。
そして、「呼吸エクササイズ」などを行い、脊柱起立筋群にたまった乳酸・カルシウムを分解・分離することで筋肉を緩め、腰椎前弯↓とします。
「筋肉をストレッチすればよいのでは?」と思うかもしれませんが、筋肉に乳酸・カルシウムがたまった状態でのストレッチは難しいです。
それに、ストレッチをしても、乳酸・カルシウムが分解・分離しなければ筋肉は緩みません(「セルフストレッチで筋肉を緩める」の項を参照)。
それよりも、筋肉がたるむ姿勢をとれば、その下の血管もふくらみやすくなりますから、血流がよくなり酸素が供給されやすくなります。

なお、横になった際、両脚を曲げれば、短縮した腸腰筋をたるませることができます。
しかし、短縮した脊柱起立筋群をたるませるには腰椎前弯↑とするしかありませんが、腰椎前弯↑は腰痛↑となりやすいのでNGです。
したがって、姿勢を工夫することで脊柱起立筋群をたるませるというのは、あきらめた方がよいです。

(注10)大殿筋は股関節を伸展するのみではなく、股関節を外旋させる働きや骨盤をしめる働きもあります。
ただし、「股関節を外旋させたのなら骨盤後傾しなくてよい」というわけではないので、必ず骨盤後傾の力も発生させてください。

(注11)ただし、座位だと上半身の重みによって骨盤が開きやすくなるので、大殿筋が弱っていると難しいです(図20-3 ×を参照)。
よって、座位で行うのが難しい場合は、「大殿筋エクササイズ」「立位でおしりの割れ目にスポンジをはさみ落とさない練習」から行ってください。

なお、吸盤で座面を吸い上げるようにすることで大殿筋を収縮させる方法は、ソファ座位・正座・あぐらでも行えます。
が、「すでに骨盤後傾位となっている座位」の場合は、「大殿筋を収縮させることによって股関節を外旋させることはできても、骨盤後傾の力を発生させるのは難しい」です。
しかし、それでも「腰にクッションを置き、それを軽く押す」などすることで、骨盤後傾の力も発生させてください。

(注12)筋肉を収縮させる(鍛える)ときには、(ア)「その筋肉をある程度伸ばした姿勢にする」方法と(イ)「その筋肉をある程度収縮した姿勢にする」方法があります(「大殿筋エクササイズ2」注10を参照)。
骨盤底筋の場合は、内臓がのしかかったり骨盤が開いたりすることによって(ア)になると、過労でA~Bとなったりしやすいです(「骨盤底筋を鍛えれば尿もれはなおるか?」の項を参照)。
それに、現代人は、腹横筋・大殿筋・内転筋なども弱っていることが多いので、それらを収縮させる場合も(イ)を採用した方が安全です。
「私の筋肉は強い」という人であっても、姿勢保持のため長時間収縮させる場合は(イ)を採用した方が無難です。

ただし、腹横筋がかなり緩んでいる場合は、骨盤をしめると腹横筋がもっと緩むことになるため、かえって収縮しにくいと感じることもあります。
しかし、骨盤が開き腹横筋が緩んだままだと、内臓下垂→機能↓・筋ポンプ作用(下半身にたまった血液を押し上げる作用)↓・脊柱を起立させる作用↓となるので、やはり大変でも「骨盤をしめ、腹横筋を本来の状態に戻す」よう努力した方がよいです。

(注13)大殿筋や内転筋を(イ)に近づけるには、「骨盤が広がったまま座ってから大殿筋や内転筋を収縮させ骨盤をしめる」のではなく、「骨盤をしめた形として座ってから、大殿筋や内転筋を収縮させることで骨盤をしめた状態を維持する」ようにします。
(ただし、骨盤をしめた形として座ったからといって、大殿筋や内転筋の収縮を怠らないよう気をつけてください)

骨盤をしめた形とするには、おしりを座面から浮かせた上で「股関節外旋し骨盤がしまる方向に大殿筋を収縮させる」か「左右の手で骨盤をはさみ、骨盤の横幅が狭くなる方向に押す」とよいです。

それでも、「座っている間にだんだん(上半身の重みによって骨盤が開き)脚が開いてきてしまう」という場合は、「脚が開いてきてしまうのに気づくたび、おしりを座面から浮かせ骨盤をしめた形とし、脚も閉じた形としてから座りなおす」とよいです。
座りなおさずに脚を閉じようとすると大変ですが、座りなおしてから脚を閉じた状態を維持するのであれば、そんなに大変ではないと思います。
それはなぜかというと、「前者を採用すると(ア)になるが、後者を採用すると(イ)に近くなる」からです。

ちなみに、骨盤矯正器具を使用したりゴムバンドを骨盤に巻いたりすることで骨盤をしめる方法もありますが、そうすると「大殿筋や内転筋を収縮させなくても骨盤をしめた状態を維持できるため、収縮を怠りやすくなる」ので気をつけてください(筋肉がついたら使用をやめてください)。
また、長時間使用すると、おしりが血行不良(阻血やうっ血)となり、筋肉がやせてしまったりすることもあるので気をつけてください。

(注14)ただし、骨盤が開いたままだった人が急にしめると、「骨盤を急にしめたことによる痛み」が出る場合もあるので、骨盤をしめる場合は少しずつしめるようにしてください。
また、「左半身の安定&右半身の自在」等だと、骨盤が左右にねじれたりしている場合があるので、そのまましめると痛む場合もあります。
その場合は、まずは「左右のゆがみ」を改善してください(「書字の極意2」を参照)。

(注15)腰痛↓とするには、「骨盤後傾する力」≧「L1下方を後上方に引き上げる力」とすることが重要となります。
これはどういう意味かというと、「骨盤後傾する力=L1下方を後上方に引き上げる力とするのが一番よいが、=とするのは難しいという場合は、骨盤後傾する力>L1下方を後上方に引き上げる力とする」という意味です。
「骨盤後傾する力」<「L1下方を後上方に引き上げる力」としてしまうと、腰椎前弯↑となってしまう場合があるのでNGです。

しかし、「それでは、すぐ骨盤後傾↑→すぐ背もたれによりかかる となってしまう」ようにも思えます。
が、大殿筋や短背筋群の力の入れ具合をうまく調節できれば、「すぐ骨盤後傾↑→すぐ背もたれによりかかる」とはなりません。
ただし、うまく調節できない場合は、「大殿筋や短背筋群の収縮をやめてしまう」よりは「大殿筋↑→すぐ骨盤後傾↑→すぐ背もたれによりかかる」とした方が安全です。

(注16)「腰椎前弯↑となってしまいやすい」のはなぜかというと、「円背になっている(胸椎上部が前傾している)にもかかわらず、頭部を胸椎中間位のときと同方向に引き上げると図41-1 ×2となる」ように「骨盤前傾↑になっているにもかかわらず、L1下方を骨盤中間位のときと同方向に引き上げると、腰部が図41-1 ×2のようになる」からです。

(注17)「大殿筋+短背筋群」が強い人であれば、前かがみの姿勢でも「骨盤前傾の程度に合わせ正しく腰の力を入れる」とすることもできます。
しかし、「大殿筋+短背筋群」が強い人は、「日常生活でも大殿筋を収縮させているので、腸腰筋の短縮はない」ことが多いです。

ちなみに、「大殿筋+短背筋群が強く、前かがみでも正しく腰の力を入れることができる」人であれば、四つ這い位やファンクショナルリーチ(立位でなるべく前方遠くに両手を伸ばす)など、「体幹が地面とほぼ平行になった姿勢」でも脊柱起立筋群↑とならず、姿勢を維持できます。

(注18)「くわを前方に振りおろし畑をたがやす」場合などは、体の使い方によっては「L5屈曲」となることがあります。
しかし、「大腿裏の筋短縮が強い人」や「大殿筋+短背筋群が強い人」でないと、くわを使用しても「L5屈曲」とはなりにくいです。
「L5屈曲」を行う人でも酷使すれば変形性脊椎症などにはなりますが、腰椎すべり症など深刻な腰痛となることは少ないです。

(注19)シルバーカーを使用する人は、「手すりによりかかりすぎると苦しい」でも「体を大きく起こすと脊柱起立筋群↑→腰椎前弯↑→腰痛↑となる」というジレンマを抱えていることが多いです。
すると、多くの方は、2つの間をとって「少し体を起こす」とするため、無意識に「L5屈曲」を行っているというわけです。
ただし、「L5屈曲」をうまく行えない人は、「体を大きく起こす」よりは「手すりによりかかる」を選択した方が腰痛↓とできます。

よい姿勢の誤解

2016-09-17 19:37:19 | 姿勢・動作

座位もしくは立位の際、「背すじを伸ばすと顔が正面を向く」と思っている人は多いです。
が、実は「背すじを伸ばす(脊椎カーブ↓とする)と顔はややうつむく」ことになります(図41-1 ○1を参照)。
時代劇を見ても、十二単を着たお姫様は「背すじを伸ばしややうつむいている」ことが多いですよね(注1)。

よって、「背すじを伸ばしても(視力がよければ)机上は見える」ことになります。
ところが、多くの方は「背すじを伸ばすと顔は正面を向くはずだから、机上を見るには頭を前に傾けたり背中を丸めたりする必要がある」と思っているため、デスクワークの際、頭を前に傾けたり背中を丸めたりしがちです(図20-1 ×1を参照)(注2)。
すると、正しくあごを引くことで短背筋群にスイッチを入れていたとしても、切ってしまうことになります(「正しいあごの引き方」の項を参照)。
ですから、デスクワークも「正しくあごを引き短背筋群を収縮させることによって背すじを伸ばした姿勢」で行うとよいです。

「ややうつむいた姿勢から正面を向く」には、
①「頚椎を反らす(頚椎前弯↑とする)」(図26-1 ×2)もしくは「頭のみ後屈する」(図26-2 ×4)
②「胸椎を反らす(胸椎伸展↑とする)」(図41-1 ×1)
③「腰椎を反らす(腰椎前弯↑とする)」(図26-1 ×3)方法があります(注3)。
しかし、①・③は、頚椎や腰椎が椎間板ヘルニアやすべり症になりやすいのでNGです(注4)。

それでは②はどうかというと、これも下記3点の理由により、本書では推奨しません。
1点目は、「体前面の皮膚や腹斜筋・腹直筋が短縮しており、胸椎を反らしにくい」人が多いことです。
胸椎を反らすことによって、脊椎カーブを「逆C字」に近い形とするには、体前面の皮膚や筋肉が十分伸びる必要があります。
しかし、多くの人は、体前面の皮膚や腹斜筋・腹直筋の短縮があるので、「逆C字」とするのは難しいです。

それでも、無理やり胸椎を反らすと「胸郭がふくらむ分の皮膚や筋長を胴体が伸びる分に回す(ため胸郭がふくらみにくくなる)」「椎間板をつぶすことで胴体が伸びる量を抑える」などになりやすいです(「胸を張った方が大きく息を吸えるか?」の項を参照)(注5)。
また、すでに胸椎が円背で固まっていると、「胸椎を反らしたつもりでも胸椎が反らないため代わりに腰椎が反ってしまう」ことになりやすいです。

2点目は、胸椎を反らすことで「頭全体を後方に移動させる」(図41-1 ×1)と、短背筋群のスイッチが切れてしまうことです。
3点目は、胸椎を反らすと「上半身が後ろにくる」ことになるため「体幹が後ろに倒れる力」が発生しやすくなるので、「体幹を前にもってくるために腸腰筋や腹斜筋・腹直筋を強く収縮させる」ことになりやすいことです。
すると、腸腰筋や腹斜筋・腹直筋が過労→短縮したり、腰椎前弯↑や脊椎カーブ↑になったりしやすいです(図20-2 ×3を参照)。

腸腰筋↑→腰椎前弯↑を防ぐには「腹横筋下部を収縮させる」方法や「大殿筋を収縮させることで骨盤後傾→腰椎後弯の力を発生させる」方法もありますが、やはり腸腰筋↑に対抗するには無理があります(注6)(注7)。

そこで、②を採用するのであれば、「頚椎下部(C7)のみやや屈曲させる」ことで「頚部~頭を前にもってくる」とよいです(図20-1 ○2)。
すると、顔はややうつむくことにはなりますが、「モデル姿勢」(モデルがよくとっている、胸を張り堂々とした姿勢)にはなれます。

ただし、「頚椎全体を屈曲させ、頚椎前弯↓(ストレートネック)もしくは頚椎後弯にする」のではなく、「C7のみを屈曲する」とよいです。
そして、そこから後頭部下方を「頚椎(ここではC7より上にのっているC6~C1のことを指しています)をC7屈曲の程度に合わせてまっすぐ伸ばしたときの方向」よりも30度位後上方に引き上げると、正しくあごを引く(短背筋群のスイッチを入れる)こともできます(注8)。

しかし、C7を屈曲させ正しくあごを引いたとしても、この姿勢は「C7が後方に突出している分は後ろにきている」ため、「体幹が後ろに倒れる力」が少しは発生してしまいます。
よって、このままではまだ、「体幹を前にもってくるために腸腰筋や腹斜筋・腹直筋を収縮させる」ことになりやすいのでNGです(注6)。

そこで、「図20-1 ○2の姿勢(股関節90度屈曲位)を保ったまま、体全体をやや前に傾けおしりを浮かせる」ことで、体幹を前にもってくるとよいです(図20-1 ○3を参照)(注9)。
体全体をやや前に傾けると、大腿裏で「いす座面の前方のヘリ」を押すことになるため、てこの原理でおしりが浮くのです(注10)。
体全体をやや前に傾けると、重心がやや前にくるため、「正常なシステム」(前に倒れそうな体を、体の後面にある筋肉が収縮することで後ろに引く)が作動しやすくなるので、「大殿筋+短背筋群」が収縮しやすくなります(「腸腰筋よりも大殿筋を先に鍛えよう」の項を参照)。

「正常なシステム」では立位の際、主に大殿筋が収縮するので、正常であれば大殿筋は長時間強く収縮することができます。
そのため、正常であれば、図20-1 ○3の姿勢は比較的長時間とり続けることができます。

しかし、いくら大殿筋が強い人であっても筋肉は疲労します。
それでも無理やりおしりを浮かせ続けると、
a「足先で床を押しながら膝を曲げる方向に力を入れふんばる(大腿裏の筋やふくらはぎを収縮させる)」
b「大殿筋が十分収縮しないため、おしりを浮かせた分骨盤前傾↑となる(図20-1 △2)」
c「おしりを大きく浮かせ、大きく前かがみになる」
d「股関節を伸展させすぎることで体幹が地面と垂直になる(図20-1 ×2)」などになってしまいやすいです(注11)。
それに、「いす座面の前方のヘリ」によって大腿裏がつぶれ痛くなる場合もあります。

したがって、「モデル姿勢」を長時間とらざるをえない場合は、「主に図20-1 ○3をとり、疲れてきたらときどきは○2(もしくは△1)をとる」とよいです(注12)。

話がそれましたが、「うつむいた姿勢から正面を向く」には、
④「いすに浅めに座り、背もたれによりかかることで骨盤後傾する」方法もあります(図20-2 ○5を参照)(注13)。
この姿勢なら、多少円背がある人や筋肉の弱い人でもとれますし、車の運転などで長時間正面を向く場合でもとりやすいです。
また、この姿勢なら、骨盤後傾→腰椎後弯を保ちやすいので、腰椎前弯↑になると腰痛↑となる人でもとりやすいです(注14)。

ところが、この姿勢だと、「大殿筋+短背筋群」は収縮しなくても姿勢を保っていられるため、長時間とりすぎると弱りやすいです(注15)。
よって、「この姿勢を続けたために腰痛になった」という人や「この姿勢から突然立ち上がったら、(いつのまにか大殿筋が弱ったせいで収縮できなかったために、腰椎前弯↑となってしまったので)ぎっくり腰になった」(図9-3を参照)という人もいます。
それに、この姿勢だと頚椎の短背筋群も弱るため、むち打ち(頚椎ねんざ)などにもなりやすいです。

ですから、この姿勢であっても、「正しくあごを引く」「少しでも大殿筋や腰椎の短背筋群を収縮させる」など、工夫してください(注16)。
そして、ときどきは「立ち上がり」や「おじぎエクササイズ」などを行い「大殿筋+短背筋群」を収縮させてください(注17)。

(注1)十二単は重いので、脊椎を傷めないためには「正しくあごを引き短背筋群を収縮させることによって背すじを伸ばす」必要があります。

(注2)頭を前に傾けたり背中を丸めたりすると、目が机上に近づくため、近視になりやすいです。
しかし、いったん近視になると「背すじを伸ばし目を机上から遠ざけると机上が見えない」ため、頭を前に傾けたり背中を丸めたりすることで、目を机上に近づけざるをえなくなってしまいます。

(注3)①~③のうち、2つもしくは3つを複合して行う方法もあります。
反らす箇所が1か所のみの場合に比べ、反らす箇所が多いと反らす量を分散させられるため、反らしていることが目立ちにくくなります。
が、NGであることに変わりはありません。

(注4)頚椎前弯↑や腰椎前弯↑となると、脊柱管が狭窄しやすくなります(図3-1を参照)。
それに、頚椎(腰椎)を反らすと頭(上半身)の重みが頚椎(腰椎)後方に集中するため、椎間板や椎間関節後方に亀裂が入ってしまいます。

(注5)座位もしくは立位で胸椎を反らすには、「胸を張り胸椎のみ前に押し出す」ようにします(「正しいあごの引き方」注1を参照)。
ただし、胸椎の中でも前方に胸郭がある部分はあまり反らないので、主に胸椎下部(T12)が反ることになりやすいです。
しかし、腰痛にならないためには、T12のすぐ下にある腰椎(L1~L5)は反らないようにしなくてはなりません。
ですから、大殿筋をしっかりと収縮させ骨盤後傾→腰椎前弯↓とすることで、腰椎が胸椎の動きにつられないようにすることが大切です。

肋骨と肋骨の間(肋間)が大きく広がるのであれば、T12以外の胸椎も反らすことができるので、より胸を張ることができます。
しかしながら、肋間には筋肉や靭帯があり、それらが固まっていることが多いので、大きく広がる人は少ないです。
ちなみに、ブリッジは腰椎だけでなく胸椎まで大きく反らせないととりにくい姿勢なので、ブリッジができる人は肋間も広がることが多いです。
(ただし、胸椎を大きく反らせない人がブリッジをすると、腰椎が胸椎の分まで反らざるをえないため、腰を傷めやすいのでNGです)

(注6)腸腰筋↑に対抗するには「腹横筋が強く収縮する」必要があります。
しかし、腹横筋が収縮しすぎると、過労でA「乳酸・カルシウムがたまり、短縮・収縮したまま」~B「短縮がある程度進行したら、その後は収縮しないことで短縮の進行を防ぐ」となりやすいです(「腹横筋下部はよい姿勢の要」の項を参照)。

また、腸腰筋↑に対抗するには「大殿筋が強く収縮する」必要もあります。
正常であれば大殿筋は強く収縮できますが、それでも腸腰筋↑に対抗するほど強く収縮すると、過労でA~Bになりやすいです。
それに、体が「大殿筋を収縮させることで腸腰筋の働きを妨害すると非効率」と考え無意識のうちに大殿筋の収縮を弱めてしまう場合もあります。

(注7)ただし、腸腰筋が収縮することで股関節が屈曲し体幹が前傾すれば、体は「腸腰筋がそれ以上収縮することで体幹が前に倒れる」のを防ぐために「腸腰筋の収縮を弱める」ことにはなります(図20-1 △1)。
しかし、そうしたからといって、「正常なシステム」が作動するわけではないので、やはり腸腰筋>大殿筋となりやすいです(注9を参照)。

(注8)正しくあごを引く際、円背の場合は「円背の程度」に合わせます(「正しいあごの引き方」を参照)が、C7を屈曲した場合は「C7の屈曲の程度」に合わせます。
こうすると、一見ストレートネックと似た状態になりますが、正しくあごを引いていれば、正しい(ゆるやかな)頚椎カーブになっています。

(注9)「わざわざ体全体を前に傾けおしりを浮かせなくても、おしりを座面につけたまま股関節を屈曲させ体幹のみ前傾すれば(つまり図20-1 △1の姿勢をとれば)正常なシステムが作動するのでは?」とも思えます。
が、それだと「大殿筋を少しでも収縮させすぎると、股関節が伸展し、図20-1 ○2の姿勢に戻ってしまう」ため、そうはならないよう「大殿筋をあまり収縮させない(正常なシステムが作動しない)」ので、股関節屈曲を維持するために腸腰筋>大殿筋となってしまいやすいです。
ですから、やはり「体幹をやや前に傾けおしりを浮かせる」必要があります。

「それでは、図20-1 △1の姿勢から、さらに股関節を大きく屈曲させ体幹のみ大きく前傾すれば、大殿筋を収縮させ体幹を起こさざるをえなくなるので、正常なシステムが作動するのでは?」とも思えます。
が、体幹を前傾しすぎると、負荷が強すぎるため、脊柱起立筋群↑となりやすいのでNGです。

(注10)このとき、「いす座面の前方のヘリ」が膝裏にあたると、ちょうど大腿裏の腱があたって痛いので、いすにはやや浅めに座るとよいです。
(ただし、浅く座りすぎると、大殿筋が強く収縮しなくてはならなくなるので、中程度の深さに座るとよいです)
そして、安定したいすを使用し、いすをひっくり返さないよう気をつけてください。

(注11)aは「大殿筋のみではなく、大腿裏の筋やふくらはぎを収縮させることでおしりを浮かせる」という意味です。
(足先で床を押さなくても、大腿裏の筋やふくらはぎに力を入れてしまうのであればNGです)
座位では、おしりや大腿裏が座面につぶされ血行が悪くなっているので、ふくらはぎなど末梢の筋肉を収縮させると短縮しやすいです。
それに、大腿裏の筋やふくらはぎは過労→短縮しやすく、大殿筋はそれらに甘えて怠けやすい傾向があるので、姿勢保持の際は主に大殿筋を収縮させることが望ましいです(「弾性ストッキングでむくみ予防」の項を参照)。

bは「大殿筋が十分収縮すれば股関節伸展&骨盤後傾が起こるが、大殿筋が弱い場合は、おしりを浮かせる=体幹を持ち上げるほど強く股関節伸展すると筋力を使い果たしてしまう→骨盤後傾まではできないことがある」という意味です。
しかし、骨盤前傾→腰椎前弯↑になってもNGですし、骨盤前傾に合わせ大きく前かがみになっても脊柱起立筋群↑となりやすいのでNGです。
ですから、大殿筋の筋力が弱く「おしりを浮かせる」と「骨盤後傾」のどちらかしかできない場合は、「骨盤後傾」の方を優先してください。

cは「おしりを少し浮かせた姿勢(図20-1 ○3)がつらいためにおしりを大きく浮かせてしまう人がいる」という意味です。
おしりを大きく浮かせた分大きく前かがみになると、脊柱起立筋群↑となりやすいのでNGです(ただし、これは股関節90度屈曲位を保った場合です。おしりを大きく浮かせても、股関節を伸展することで体幹を地面と垂直にする場合はdになります)。
それに、体全体を前に傾けすぎると、今度は前に倒れそうになるので、ふくらはぎや大腿四頭筋を収縮させ脚をつっぱることで倒れないようにせざるをえなくなるため、末梢の筋肉を収縮させることになってしまうのでNGです。

dは「おしりを浮かせ体全体を前に傾けても、その分股関節を伸展することで体幹を地面と垂直にしてしまう」という意味です。
大殿筋は疲れてくるとBになることが多いですが、中にはA(収縮しすぎ)になる=股関節を伸展しすぎてしまう人もいます。
また、疲れてくると前かがみも苦しいので、体が「体幹を起こすことで短背筋群や脊柱起立筋群を楽にしよう」と考える場合もあります。
しかし、そうすると、体幹は図20-1 ○2と同じ状態になるので、「体幹を前にもってくるために腸腰筋や腹斜筋・腹直筋を収縮させる」ことになりやすいのでNGです。

(注12)図20-1 △1であっても、正しくあごを引き大殿筋の収縮を意識するのであれば、短時間であればとってもよいです。
なぜなら、「体幹をやや前に傾けても正常なシステムが作動するわけではないので、やはり腸腰筋>大殿筋となりやすい(注9を参照)が、大殿筋の収縮を意識すれば、腸腰筋>大殿筋となるのを少しは防ぐことができる」からです。

余談ですが、茶道でお茶をたてる際に、「正座で図20-1 ○3の姿勢」をとる人もいます。
図20-1 ○3の姿勢をとると、重心が前にくるため「正常なシステム」が作動しやすくなり、「大殿筋+短背筋群」が収縮しやすくなります。
すると、背すじが伸び背面が平らになるため肩甲骨が動きやすくなりますし、「中枢(体幹中心部)の安定&末梢の自在」となるため、「お茶をたてる」という繊細な作業もうまくできるのです(「書字の極意」の項を参照)。

しかしながら、正座の場合であっても、無理やりおしりを浮かせるとa~dになってしまうのでNGです。
「正座では、a足先で床を押しながら膝を曲げる方向に力を入れふんばる(大腿裏の筋やふくらはぎを収縮させる)は無理では?」とも思えます。
確かに、正座は膝を深く曲げた姿勢なので、大腿裏の筋は最初から縮んだ状態となるため、その状態から収縮させるというのは難しいです。
しかし、「大殿筋が十分ついておらず、大殿筋の力だけではおしりを浮かせるのが難しい」人が、無理やり「正座で図20-1 ○3の姿勢」をとれば、いくら大腿裏の筋を収縮させにくい状態であっても大腿裏の筋を収縮させざるをえません。
よって、無理やり大腿裏の筋を収縮させた結果、傷めたり過労→短縮したりする人もいるのです。

なお、いす座位の際は、多少はaになっていても見分けがつきません。
そのため、「いす座位なら図20-1 ○3の姿勢をとれるが、正座だととれない(もしくはa~dになってしまう)」という方も多いです。
しかし、だからといっていきなり「正座で図20-1 ○3の姿勢」を練習しても、負荷が強すぎるため、できるようにならないことが多いです。
ですから、「正座で図20-1 ○3の姿勢」がとれない場合、まずは「大殿筋エクササイズ」や「図20-1 △2の姿勢や立ち上がりの際、なるべく大殿筋の収縮を意識する」などを行い、段階的に負荷を増やしていくとよいです(「腹横筋エクササイズ」の項を参照)。

(注13)いすに背もたれがない場合は、いすに浅めに座り骨盤後傾すると、体幹を前にもってくるために背中を大きく丸めることで上半身を前に傾けざるをえないため、「正面を向くには頚椎を反らす(もしくは頭部のみ後屈する)」ことになります(図26-1 ×2、図26-2 ×4)。
が、「頚部痛はなく、腰痛があっても腰椎後弯すれば腰痛↓となる」人なら、長時間とりすぎなければとってもよい姿勢です(図20-1 ○4)。

(注14)ただし、腰椎後方に亀裂が入っている場合は、腰を丸めすぎる(腰椎後弯しすぎる)と亀裂が広がってしまう場合があります。
また、脊柱起立筋群が短縮していて伸びないと、腰を丸めたつもりでも背中が丸まることになり、背中を丸めた分腰椎前弯↑になってしまう場合もあります(図14-1 ×1を参照)。
そのような場合は、「いすにもう少し深く座り背もたれによりかかる」ことで、腰や背中を丸めすぎないように調節してください。

(注15)ちなみに、車の座席や座いすなどは、「筋肉があまり収縮しなくても姿勢を保っていられる」ようになっているものが多いです。
それだと、長時間疲れずに座っていることができますが、筋肉は弱りやすいです。
なぜなら、人間の体は「収縮の必要がないのに収縮するのは非効率」と考えるため、収縮の必要がないと収縮させずに退化させてしまうからです。

(注16)正しくあごを引くと、むち打ち(頚椎ねんざ)を予防することができます。
④の姿勢であっても、「後頭部下方を後上方に引き上げる」と、正しくあごを引くことができます(「正しいあごの引き方」を参照)。
ただし、図20-2 ○4のように、正面を向くと頚椎前弯↑になる姿勢では、「正面を向いたまま正しくあごを引く」ことはできません。
そこで、「正面を向いたまま正しくあごを引く」には、頭をヘッドレストによりかからせ、なおかつ「頚椎を円背の程度に合わせてまっすぐ伸ばした際、頚椎が地面と垂直になる」ように「いすに座る深さ」を調節しておく必要があります(図20-2 ○5を参照)。
そして、「ヘッドレストを後頭部下方で後上方に軽く押す」とよいです。

また、④の姿勢であっても、吸盤で座面を吸い上げるようにすると、大殿筋を収縮させられます(「座位で大殿筋を収縮させる方法」の項を参照)。
④の姿勢であっても、背もたれの腰の部分にクッションを置き、それを軽く押すと、腰椎の短背筋群を収縮させられます(図20-2 ○5)。

ちなみに、最近は、「腰椎の短背筋群や大殿筋を収縮させやすいよう工夫した、車の補助シート・座いす・骨盤矯正器具」などもあるようです。
しかし、腰痛の方は、いくら腰にクッションを入れたり補助シートを使用したりして環境を整えても、本人が「大殿筋+短背筋群」の収縮を十分意識していなかったり、収縮させる方法を十分理解していなかったりすると、収縮しないことが多いです。

(注17)よい姿勢をとれるのであれば「ときどきは立ち上がりやおじぎエクササイズを行う」のところを「ときどきはよい姿勢(図20-1 ○1もしくは図20-1 ○3)をとる」としてもよいです。
しかし、「車高の低い車に乗っているため、よい姿勢をとり背すじを伸ばすと頭が天井にぶつかってしまう」などという人も多いです。
よって、その場合は車から降り「立ち上がり」や「おじぎエクササイズ」を行うことで、「大殿筋+短背筋群」を収縮させるとよいです。

ただし、「立ち上がり」を行う際は、特に「おしりを下げ下腹をへこませることで腰椎後弯を保ちながら、ゆっくり立ち上がる」ことが大切です(「動作の注意点-③いすから立ち上がる」の項を参照)。
「立ち上がり」は、筋肉がある程度ついている人であれば、数回連続して行ってもよいのですが、大殿筋をよく意識すれば1回でも有効です。

正しいあごの引き方

2016-08-20 20:33:40 | 姿勢・動作

正しくあごを引くと、短背筋群の収縮にスイッチが入り、頚椎前弯↑や胸椎後弯↑がまっすぐになります(注1)。
ですから、座位や立位の際、よい姿勢でいるには「正しくあごを引いた状態を保つ」ことが重要です。
ところが、正しくあごを引くことができる人は少ないです。
以下4例のうち、どれか1つでもあてはまると、正しくあごを引くのは難しくなります。

1例目は、「あごを引く=下顎を後方(頚椎の方)に引きつける」となってしまうケースです(注2)。
このとき、「下顎の先端のみ後方に引きつける」場合と「頭全体を後方に移動させる」場合(図41-1 ×1)があります。
「頭を少し前に傾ける」と前者になり、「胸椎(もしくは腰椎)を反らす」と後者になります(注3)。
しかし、多くの人は「首の筋を収縮させる」ことで、前者や後者になります(図14-2 ×3を参照)。
しかしながら、いずれの場合も、短背筋群にスイッチは入らないのでNGです。

首の筋は「下顎の先端を後方に引きつける」だけでなく、「下顎を下に引く」(開口する)働きや「のど仏を下に引く」働きもあります。
よって、あごを引くために首の筋を収縮(短縮)させると、開口してしまうため閉口するために咬筋↑となったり、のど仏が下に引かれ持ち上がりにくくなるため嚥下(飲み込み)がしにくくなったりします(「咀しゃくと腹筋の短縮」の項を参照)(注4)。
それに、腹斜筋・腹直筋が短縮し胸郭が下がったときと同様、あごのくびれが浅くなったり、口角が下がったり、ほうれい線(口角のしわ)ができたりもします(「ほうれい線と下がった胸郭」の項を参照)。
また、首の筋の表面を覆っている皮膚や皮下脂肪も「収縮(短縮)した首の筋の長さ」に合わせざるをえないため、たるんだりしわが寄ったりして二重あごになる場合もあります(注5)。

正しくあごを引くには、首の筋には力を入れず、「後頭部下方を後上方に引き上げる」ようにします(注6)。
すると、顔が「ややうつむく」のは、「下顎の先端のみ後方に引きつける」ようにした場合と同じです(注7)。
しかし、「下顎の先端のみ後方に引きつける」と頭頂は「わずかに前下方に動く」のに対し、正しくあごを引くと頭頂は「動かない」かもしくは「わずかに後上方へ動く」ので、両者を見分けることができます。

2例目は、「首の筋や脊柱起立筋群」(緩めたい筋肉)を収縮(短縮)させているケースです。
「下顎の先端のみ後方に引きつける」ことで「頭を前下方に引く力」が発生すると、体は「頭を後下方に引く力」も発生させることでバランスをとる傾向があります(ただし、必ずしも「前下方に引く力」が先に発生するとは限りません)。

「頭を前下方に引く力」は首の筋、「頭を後下方に引く力」は脊柱起立筋群が収縮すると多く発生します(注8)。
が、「頭を前下方や後下方に引く力」が多く発生すると、頚部が伸びにくくなるため、正しくあごを引くのが難しくなります(注9)。
それに、このような状態になると、椎間板と一緒に短背筋群もつぶれるため、正しくあごを引いたとしても短背筋群は収縮しにくいです。
ですから、このような状態になった場合は、まず「頚椎ストレッチ」などを行い、首の筋や脊柱起立筋群を緩めてから、正しくあごを引く(頚椎の短背筋群を鍛える)とよいです(注10)(注11)(注12)。

3例目は、「短背筋群」(鍛えたい筋肉)も「首の筋や脊柱起立筋群」(緩めたい筋肉)も収縮させない状態が続き、弱ったケースです。
中には「首の筋を収縮させず、頭を少し前に傾ける」とした結果、ストレートネック(もしくは頚椎後弯)になったら「脊柱起立筋群をあまり収縮させず、頭を少し後ろに傾ける」ことでバランスをとる人もいます(ただし、必ずしも「前に傾ける」方を先に行うとは限りません)(注4)。
確かに、このように、緩めたい筋肉を収縮させなければ、「頭を前下方や後下方に引く力」は少しとなります。
しかし、このようにしても、短背筋群にスイッチは入りません。
よって、このような状態が続くと、短背筋群が弱りすぎるため、正しくあごを引くのは難しくなります(注12)。
それに、このような状態だと、重力によって脊椎カーブ↑となりやすいです。
また、短背筋群が弱いと頚椎が不安定になるため、車や電車に揺られた際など、わずかの衝撃でもむち打ち(頚椎ねんざ)になりやすいです。

そうなると、体はあわて出し、頚椎を保護しようとします。
ところが、すでに短背筋群が弱りすぎていると、その代わりに緩めたい筋肉を収縮させることで頚椎を保護しようとしてしまいます。
「緩めたい筋肉も収縮させない状態が続いたために弱っているはずなのだから、収縮しにくいのでは?」とも思えます。
が、鍛えたい筋肉(短背筋群)と緩めたい筋肉のどちらも弱っている場合は、緩めたい筋肉の方が収縮しやすいのです。
よって、結局は、緩めたい筋肉が過労→短縮する(=2例目の状態になる)ことも多いです。

4例目は、円背(胸椎後弯↑で固まっている)のケースです(注13)。
正しくあごを引くと、頚椎前弯↑だけでなく胸椎後弯↑もまっすぐにできます。
しかし、円背(胸椎後弯↑で固まっている)の場合は、いくら正しくあごを引いても胸椎後弯↑をまっすぐにすることはできません。

すると、中には、「後頭部下方を後上方に引き上げている」つもりでも「後頭部上方を後上方に引き上げている」人がいます(図41-1 ×2)。
このとき、頭頂は「動かない」かもしくは「わずかに後下方に動く」ことが多いです。
これだと、胸椎後弯↓の代わりに頚椎前弯↑(図26-1 ×2)となるだけで、短背筋群の収縮にスイッチは入らないためNGです。
そこで、「正しくあごを引けていない」と指摘すると、今度は、「正しくあごを引いているつもりでも下顎の先端のみ後方に引きつけている」ことが多いです。

よって、このような場合は、円背の程度に合わせ、後頭部下方を「頚椎をまっすぐ伸ばしたときの方向」(図28-2 灰色の矢印の方向)よりも30度位後上方に引き上げることが大切です(注14)。
難しい場合は、まずは「仰臥位であごを引く練習」からはじめるとよいです。

なお、後頭部や頭頂の動きがよく分からない場合は、あごを引いた際、「頚部が(頚椎をまっすぐ伸ばしたときの方向に)伸びること」と「図41-1 赤矢印の方向に頭部が回転すること」の両者がそろえば、「正しくあごを引いている」と判断できます(注15)。
「下顎の先端のみ後方に引きつける」人の場合は、頭部が回転する方向は正しいのですが、頚部が伸びるのではなくむしろ縮むのでNGです。
「頭全体を後方に移動させる」人の場合は、頚部が(頚椎をまっすぐ伸ばしたときの方向に)伸びないのでNGです。
「後頭部上方を後上方に引き上げる」人の場合は、頭部が図41-1 赤矢印の方向ではなく図41-1 青矢印の方向に回転するのでNGです。


(注1)本書では「頭部を動かすことによって短背筋群の収縮にスイッチを入れる」ことを「正しくあごを引く」と表現しています。
また、ここでの「まっすぐ」とは、「正常な(ゆるやかな)脊椎カーブ」という意味です。
短背筋群が収縮すると、「ストレートネック」(異常なまっすぐ)になるわけではなく「正常な(ゆるやかな)脊椎カーブ」になります。
「下顎の先端のみ後方に引きつける」と「ストレートネック」(それがもっとひどくなると頚椎後弯)になります。
これは、「おじぎエクササイズ」の「あごを引く前の姿勢」(図14-2 ×3)と同じです。

ただし、「正しくあごを引く」力のみで「正常な(ゆるやかな)脊椎カーブ」にするのは難しいです。
胸椎後弯↓とするには、「正しくあごを引く」と同時に「胸椎だけは前に押し出す」ことも大切です(「胸椎を伸ばす方法」の項を参照)。
また、腰椎が不安定だと、正しくあごを引いても、胸椎後弯↓となる代わりに腰椎前弯↑となってしまう場合もあります(「図15-2 ×7)。
よって、胸椎後弯↓とするには、「正しくあごを引く」と同時に「腰椎前弯↓の状態で安定させる」ことも大切です。
つまり、「正しくあごを引く力」「胸椎だけは前に押し出す力」「腰椎前弯↓とする力」の3者がそろえば、よい姿勢(脊椎カーブ↓)となります。

しかし、それだと「胸椎は前に押し出しておきながら腰椎は後方に押し出す」ことになるので、混乱しやすいです。
その場合は、「胸椎を前に押し出す」際は「両肩を後ろに引く」(広背筋「横」の筋線維を軽く収縮させながら胸を張る)、「腰椎前弯↓とする」際は「大殿筋を収縮させ骨盤後傾する」と意識すれば、混乱しにくくなります。
なぜなら、両肩を後ろに引くと「胸椎だけは前に押し出す力」が、骨盤後傾すると「腰椎前弯↓とする力」が発生しやすいからです(図9-3)。

ただし、緩めたい筋肉の短縮によって胴体が縮んでいると、「胸椎の動き」と「腰椎の動き」の区別をつけにくいです。
したがって、その場合は、まず緩めたい筋肉を緩める必要があります。

(注2)「あごを引く=下顎の先端を後方に引きつける」だと思っている人が多いですが、正しいあごの引き方を知っていてもできない人もいます。
2・3・4例目の状態だと、「正しいあごの引き方を知っていて、そうしているつもりでも、下顎を後方に引きつけている」ことがあります。

(注3)「胸椎(もしくは腰椎)を反らす」と、「上半身は後ろにくる」ことになります。
そのため、上半身の重みが腰椎後方に集中したりする場合もあります(「立位の注意点NG例」を参照)。

(注4)「下顎の先端のみ後方に引きつける」と「のどがつぶれたり位置がずれたりするために嚥下しにくくなる」場合もあります。

(注5)本来、首の筋は長時間収縮する筋肉ではないので、あごを引くために長時間収縮し続けると過労→短縮しやすいです。
ただし、「首の筋の収縮(短縮)」だけでなく、「首の筋のたるみ」も二重あごの原因となります。
胸椎後弯↑になるとバランスをとるため腰椎前弯↑や頚椎前弯↑(もしくは頭部伸展)が起こりやすいですが、中には起こらない場合もあります。
すると、脊椎カーブはS字というよりC字に近い形となります(図26-1 ×1)。
そうなると、背面(後頭部・首後面・背中)の皮膚や筋肉は伸ばされる一方、腹面(顔・首前面・胸腹部)の皮膚や筋肉は余ってたるみます。
その場合、首の筋は首前面にあるため、余ってたるむことになります。

ただし、脊椎カーブがC字になったとしても、その分腹斜筋・腹直筋が強く収縮(短縮)し胸郭が大きく下に引かれた場合は、首の筋も下に引かれ伸ばされるため、余ってたるむとは限りません。

(注6)ただし、あごを引く際は、弱い力を入れるだけとしてください。
強い力を入れると、緩めたい筋肉(脊柱起立筋群など)が収縮してしまいやすくなります。

(注7)「よい姿勢をとったら、顔を正面を向くのでは?」と思うかもしれませんが、実はそうではないのです。
どうしても顔が正面を向くようにしたいのであれば、「胸椎を反らす」(胸椎伸展↑とする)方法があります。
が、その姿勢は、筋肉が十分ある人でないと問題が起きやすいので、本書ではよい姿勢とは呼びません(詳しくは「よい姿勢の誤解」の項を参照)。

(注8)「頭を前下方や後下方に引く力」は、頭を前や後ろに傾けることでも少しは発生します(3例目を参照)。

(注9)「頭を前下方や後下方に引く力」が多く発生すると、椎間板がつぶれやすいです。
「頭を前下方に引く力」>「頭を後下方に引く力」だと「ストレートネック(もしくは頚椎後弯)でなおかつ椎間板がつぶれる」となり、「頭を前下方に引く力」<「頭を後方に引く力」だと「頚椎前弯↑でなおかつ椎間板がつぶれる」となります。
ストレートネック(もしくは頚椎後弯)の状態(図26-1 ×1)から少し首を反らしたり、頭を前下方に引く力と後下方に引く力のバランスをとったりすれば、一見正常な(ゆるやかな)頚椎カーブになる場合もあります。
が、首の筋や脊柱起立筋群が収縮(短縮)していれば、椎間板はつぶれやすいです。
ただし、中には、頚椎がきれいに整列していられずガタガタになる場合もあります(図26-2 ×6)。

なお、腰椎後弯の状態(図26-1 ×1)から少し腰を反らしたり、前下方に引く力と後下方に引く力のバランスをとったりすれば、一見正常な(ゆるやかな)腰椎カーブになる場合もあります。
が、「前下方に引く力」(腹斜筋・腹直筋)や「後下方に引く力」(脊柱起立筋群)が多く発生すれば、やはり椎間板はつぶれやすいです。
それに、脊柱起立筋群は「短縮した腹斜筋・腹直筋に打ち勝つ強さ」で収縮しなくてはならないので、過労→短縮しやすいです。
よって、長期的には、バランスをくずし腰椎前弯↑になったりしやすいです(「インナーマッスルならすべて鍛えていいか?」後半を参照)。

(注10)首の筋に限らず、腹斜筋・腹直筋が収縮(短縮)している場合も、正しくあごを引くのは難しいです(図26-1 ×1・×2・×4)。
ですから、そのような場合は、「腹斜筋のストレッチ」などによって、腹斜筋・腹直筋を緩める必要もあります。
ただし、腹斜筋や腹直筋が緩むには時間がかかります。
よって、それまでは、「腹斜筋や腹直筋の短縮によって起こる胸椎後弯(円背)」の程度に合わせ、後頭部下方を「頚椎をまっすぐ伸ばしたときの方向」(図28-2 灰色の矢印の方向)よりも30度位後上方に引き上げると、正しくあごを引くことができます。

(注11)腰も、腹斜筋・腹直筋(前下方に引く力)や脊柱起立筋群(後下方に引く力)を緩めてから腰椎の短背筋群を鍛えるのが基本です。
ただし、腰の場合は上半身の体重が多くかかっているため、まだ短背筋群(鍛えたい筋肉)が弱いのに腹斜筋・腹直筋や脊柱起立筋群(緩めたい筋肉)を緩めすぎると、腰椎が不安定になってしまう場合があります。
特に、筋肉がとても弛緩しやすい体質の方は、短背筋群がとても弱いことが多いため、いきなり緩めたい筋肉を緩めすぎてしまうと腰椎が不安定になりやすいです(「インナーマッスルならすべて鍛えていいか?」後半を参照)。
しかし、腹斜筋・腹直筋や脊柱起立筋群(緩めたい筋肉)が短縮している状態では、短背筋群(鍛えたい筋肉)が収縮しにくいのも事実です。

ですから、腰椎が不安定になりやすい場合は、短背筋群のつき具合に応じ、腹斜筋・腹直筋や脊柱起立筋群を少しずつ緩めるとよいです。
(「短背筋群のつき具合」が分からない場合は、緩めたい筋肉を緩めてから鍛えたい筋肉を鍛えた後、エクササイズ前より腰椎が不安定になったり腰痛↑になったりする場合は、次回から緩める量を減らせばよいです)

(注12)すでに短背筋群が弱りすぎている場合は、正しくあごを引こうとしても引けないことがあります。
それでも頑張って引くと、「正しいあごの引き方を知っていて、そうしているつもりでも、下顎を後方に引きつけている」ことが多いです。
ですから、短背筋群が弱りすぎているために正しくあごを引けない場合は、「仰臥位であごを引く練習」からはじめるとよいです。

(注13)円背か否か分からない場合は、仰向けになりなるべく頚椎前弯↓とし(図13-1を参照)、首と床の隙間に指を入れてみるとよいです。
このとき、「縦にならべた指」が2本以上入る場合は、頚椎前弯↑となっているサインです(枕は使用しないでください)
「仰向けになりなるべく頚椎前弯↓とした」にもかかわらず頚椎前弯↑となるのは、円背→頚椎前弯↑となっているからである可能性が高いです。

(注14)ここでは、「体幹から頭頂に向かう方向」を「上方」と呼んでいます。
「仰臥位であごを引く練習」を行う場合は、円背の程度に応じて枕を高くし、頚椎をまっすぐにします。
そして、「後頭部後下方を30度位後上方に引き上げる」ように力を入れます。
(枕が低いと、「後頭部上方を後上方に引き上げる」ことになってしまいやすいのでNGです)
つまり、「枕に後頭部下方を押しつけ、頭頂方向に斜めに押す」ようにします(ただし、弱い力を入れるだけとしてください)。
すると、枕が頭頂方向にずれ、頭頂部より上方にはじき出されてしまう場合があります。
その場合は、枕の下に滑り止めをしくか、頭頂部より上方に壁などがくるようにすることで、枕がはじき出されないようにしてください。
なお、枕の位置に介助者が手を置き、「手のひらに後頭部下方を押しつけ、頭頂方向に斜めに押す」のでもよいです(図28-2を参照)。

(注15)頭部がほとんど動かない人であっても、「力を入れはじめるとき」だけはほんの少し動くことが多いです。
ですから、「力を入れはじめるとき」をよく見ると、正しくあごを引いているか推測できます。