経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

アジアに伝染した 通貨不安 (上)

2018-09-19 07:27:28 | アジア
◇ インドネシア、フィリピンなどが苦境に = アメリカの長期金利が3%を超えると、新興国からの資金流出が一気に激しさを増した。アメリカの株式や債券が、安全に利回りを稼げる投資対象になったからである。資金が流出すると、その国の通貨は下落する。通貨が下落すると、輸入物価が上昇してインフレになりやすい。また対外債務の実質的な負担が増大する。そこで政府は金利を上げて通貨の下落を防ごうとするが、国内の景気は悪くなってしまう。

各国通貨の対ドル相場を年初比でみると、アルゼンチン・ペソが50%の下落で最も大きい。政策金利は60%に引き上げられ、IMF(国際通貨基金)にも2度目の支援を申し込んだ。次いでトルコ・リラが40%の下落。先週になってやっと金利を24%に上げ、現在は小康状態。あとブラジルや南アフリカ、それにロシアの通貨も大きく売られている。ロシアも先週、金利を7.5%に引き上げた。

こうした新興国の“通貨不安病”は、9月に入るとアジア地域にも伝染し始めた。インドネシア・ルピアは1998年以来、またフィリピン・ペソも05年以来の安値に落ち込んでいる。インド・ルピーは年初来11%の下落となった。ただ今回の“通貨不安病”を診断してみると、2つの大きな特徴を発見できる。

アジア諸国は10年前にも“通貨不安病”に感染した。だが当時に比べると各国の経済は抵抗力を増しており、たとえばタイやマレーシア、シンガポールなどはほとんど動揺していない。これが特徴の1つ。もう1つはアメリカの金利高がきっかけとなったことは確かだが、それ以上に中国経済の成長鈍化が強く影響していること。その意味では米中貿易戦争の行くえが、アジア諸国の将来を左右すると言えるだろう。

                             (続きは明日)

      ≪18日の日経平均 = 上げ +325.87円≫

      ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫             

今週のポイント

2018-09-17 07:20:36 | 株価
◇ 警戒しながら買い進む = あまりいい表現とは言い難いが、ウォール街には「死んだ猫でも落とせば跳ねる」という諺があるそうだ。株式相場はもう死に体だが、何かの拍子に上げることもあるという意味だ。たしかに米中貿易戦争、FRBの金利引き上げ、悲鳴を上げる新興国経済。それにSNSの規制に動く議会など、市場にとって警戒すべきタネは尽きない。そんななかでダウ平均は先週238ドル値上がりした。

猫を跳ね上がらせたのは、いくつかの「かもしれない」だ。米中貿易問題で、閣僚級の折衝が再開されるかもしれない。FRBが利上げ打ち止めの方向を打つ出すかもしれない。トルコが利上げし、通貨不安が和らぐかもしれない。これらを材料に、ダウ平均は史上最高値にあと650ドルまで上昇した。だが市場で新高値の更新を確信する人は少ない。

日経平均は先週788円の大幅高となった。ニューヨーク市場から安心感も貰ったが、何よりも円安の進行が大きかった。週末は1ドル=112円まで下落している。だが東京市場も、貿易戦争や日米間の貿易協議、通貨不安がアジアへも広がってきたこと、微妙な中国経済の動向、それに半導体の需給悪化などの問題を抱えている。年末株高論も根強いが、ウォール街の諺は東京にも当てはまると考える人も少なくない。

今週は19日に、8月の貿易統計と訪日外国人客数。21日に、8月の消費者物価と7月の全産業活動指数。アメリカでは19日に、8月の住宅着工戸数。20日に、8月の中古住宅販売とカンファレンス・ボード景気先行指数が発表される。なお20日は自民党の総裁選挙。

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-09-16 06:43:59 | SF
第5章 ニッポン : 2060年代

≪50≫ マヤ工業 = マーヤが帰ってきたとたん、ぼくは急に忙しくなった。市役所に結婚届を出し、宝くじを買うため都内にもたびたび出かけた。そして会社の設立と工場の建設。会社名は前々から「マヤ工業」に決めていた。

リニア新幹線に近い山梨県の土地は、予想外に安い値段で手に入れることが出来た。不況と人口減少が、地価を下落させていたのだろう。この土地に、全長80メートルほどの細長い工場を2棟建てた。設計図は細部に至るまでマーヤの記憶から取り出されて印刷されている。だから、この点であれこれ気を遣うことはなかった。

工場が3か月ほどで完成すると、こんどは機械の搬入が始まる。小型の電気炉や金属加工用の特殊な機械など。富士山がよく見える秋空のもとで、いよいよ商品の生産が始まった。生産工程はすべて自動化されているから、従業員は1人もいない。

手前の工場で製造されたのは、長さ50メートルの鉄道用レール。向こう側の工場では、特殊ガラスの板が何枚も生産された。それを工場と工場の間に造ったコンクリートの床の上に運んで並べる。レールの両側に、ガラス板がきちんと敷き詰められた。長さ50メートル、幅3メートルの新しい路床である。

紅葉の山肌を眺めながら、ぼくとマーヤは近くにあるリニア新幹線の車両基地を訪ねていた。所長さんは、JRリニア新幹線会社の専務である。企画書を見せて説明すると、全く半信半疑の様子。それでも技術者を連れて、新製品を見にきてくれることになった。

所長さんが眉に唾をつけたのも、当然だったろう。企画書には「リニアの運転に関わる消費電力を20%減少。東京―福岡間を新しい路床に取り換えれば、JRリニアが使う電力の2倍以上を太陽光で発電できる。余った電力は売電が可能」などと書き連ねてあったのだ。

JRリニア会社は、不況による利用客の減少と、原油価格の上昇による電力料金の高騰で、苦しい経営状態に置かれていた。そのため藁をもつかむ思いで、わがマヤ社の新製品に飛びついたのだろう。さっそく、専務が技術者たちを引き連れて何度もやってきた。その結果、新しい路床の驚くべき性能が明らかになると、こんどは東京から副社長までがお出ましになった。

ひやひやしたのは、こうした人たちとの会合で、マーヤが瞬間的に回答してしまうこと。複雑な数字でも計算でも、間髪を入れずに答えてしまう。

夜になって「マーヤ、もう少し人間的になってくれないと危ないよ」と、頼み込んだものである。

                             (続きは来週日曜日)        

あの“リーマン”から 満10年

2018-09-15 07:32:38 | 世界経済
◇ ショックの再来はある? ない? = アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破たんしたのが、ちょうど10年前のきょう9月15日。あっという間に金融不安は全世界に広がり、各国は同時不況に苦しむことになった。いわゆる“リーマン・ショック”である。あれから10年たった現在、世界経済は完全にショックから立ち直ったように見受けられる。しかし専門家の間では「ショックはもうない」という見方がある半面、「ショックの再来には注意」という見解も強まってきているようだ。

10年前の金融不安は、アメリカの住宅バブルが崩壊したことで惹き起こされた。リスクの高い住宅証券が高値で売り出され、住宅価格が急落したために証券価格が暴落。銀行も個人も多額の負債を抱え込んで、身動きがとれなくなった。各国の政府・中央銀行が財政・金融面から思い切った景気刺激策をとり、やっとショックを克服したことは周知の通り。

当時と比べると、世界経済は格段に強さを増した。先進国の企業は史上最大の利益をあげ続け、株価も大幅に上昇している。金融機関の経営に対する規制も整備された。だから“リーマン”の二の舞はもうない、という見方が広まっている。しかし、その一方で「金融恐慌は忘れたころにやってくる」と、警鐘を鳴らす専門家も少なくない。

ショックの芽は、アメリカや中国の不動産バブル、あるいは資金流出に苦しむトルコなど。どこに潜んでいるのかは判然としない。だが世界の債務総額は250兆ドルと、リーマン当時より4割増加した。その債務の一部が焦げ付けば、第2の“リーマン”が起こる危険性はある。しかも各国の政府や中央銀行は、当時に比べるとショックを和らげるための手段を失った。「火事が起きる危険は小さくとも、もし起これば消せない」不安を指摘する声は、無視できないだろう。

       ≪14日の日経平均 = 上げ +273.35円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】  

パワハラに近い ふるさと納税の規制

2018-09-14 08:21:23 | ふるさと納税
◇ 法律改正まで持ち出すとは = 野田総務相は11日の記者会見で「過度な返礼品で多額の寄付を集めている自治体を、ふるさと納税制度の対象から外す」方針を明らかにした。返礼品については、これまで2度にわたって通達を出し、①価格を寄付額の3割以下にする②地元の産品を使う――ことを要請したが、まだ守らない自治体が少なくない。このため地方税法を改正し、守らない自治体は仕組みから排除するのだという。

総務省の調査によると、この通達を守らない自治体は9月1日時点で380、全体の21.3%にのぼった。自治体にはそれなりの理屈があるから、抵抗しているのだろう。しかし制度から外されては元も子もないから、自治体側は従わざるをえない。それにしても総務省のやり方は大人げない。何度言っても判らないなら、ぶん殴るよという感じだ。

自治体側だって、1万円の寄付に1万2000円の返礼品を出すはずはない。仮に5000円の商品を贈っても、知名度が上がって旅行者が増えるなど、それなりのメリットがあったに違いない。それよりも都市部の自治体では税収が減り、総務省はそれに配慮したのではないだろうか。

たとえば、こんな案はどうだろう。総務省の通達に従う自治体をAグループ、従わない自治体をBグループに分ける。このうちAグループに寄付をする場合は、現状通り寄付額から2000円を引いた額が所得税・住民税から控除される。ただBグループの場合は、差し引く金額を5000円にする。またBグループについては、返礼金の半分に当たる金額を地方交付税の交付から差し引く。これなら段ビラを振りかざすことなく、都市の自治体にも国にもメリットが生じる。

       ≪13日の日経平均 = 上げ +216.71円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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