経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-12-16 08:17:49 | SF
第7章 終 局

≪63≫ 記録 = 近ごろは朝のうち、パソコンの前に座っていることが多くなった。ダーストン国では数多くの人に会い、いろいろな施設を見学した。その都度メモをしたが、そのノートは帰りの宇宙船に持ち込ませてくれなかった。地球人にダーストン星のことを知られたくなかったからだろう。

だが、あの5年間の経験は強烈だっただけに、ぼくはメモがなくても全部覚えている。ただ歳をとれば、記憶が薄れるかもしれない。そこでパソコンに記録しておこうと思い立った次第。もちろんウラノス博士との約束があるから、いまは公開できない。200年後の子孫が読んで参考にしてくれたらいいと考えてのことだ。

200年後の地球人が、ダーストン並みの医療技術を手に入れているかどうか。ぼくの最大の関心事は、この一点にある。ぼくはやや懐疑的だが、マーヤはとても楽観的だ。

「ダーストン人だって、200年前には完璧な技術を持っていませんでした。逆にいまから200年前の地球は、どうでしたか。200年という歳月は、世の中を想像できないほど変えるに違いありません」

いまは2094年だから、200年前は1894年。日本は明治27年、日清戦争が勃発した年だ。すでに鉄道や自動車は実用化されていたが、その当時の人で現在の宇宙船やリニア・モーターカー、それにロボットやiPSによる難病の治療、インターネット空間などを想像した人は、誰もいなかったに相違ない。

こう考えてくると、マーヤの言い分が当たっているような気もする。しかし真実は200年後の子孫にしか判らない。このパソコンを開いた子孫たちがどう感じるのか。

仮に200年後の地球人がダーストン級の医療技術を手に入れているとすれば、人間並みの能力を持ったロボットが人間の代わりに働いているだろう。その結果、地球からもおカネが姿を消し、経済のない世界が実現する可能性は大きい。

だが、ぼくが見てきた経済のないダーストン国は、なんとも活気のない世界だった。たしかに貧富の差はないし、働きたくない人は働かずに済む。犯罪もなく、病気の心配もない。しかし競争も刺激もない社会だ。うっかりしていると足を掬われる、金儲けにうつつを抜かす、事故や病気をいつも心配している。この現実社会とあのユートピアと、どちらが優れているのだろう。これも200年後の人類に、聞いてみたい点である。

                              (続きは来週日曜日)
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