経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-11-11 08:04:45 | SF
第6章 ニッポン : 2070年代

≪58≫ 自給率 = 「スーパーに行けば、肉でも野菜でも店頭にあふれかえっているじゃない。それなのに何で農水産用ロボットを造るのかしら」と、マーヤが真剣な顔をして聞いてきた。

――ぼくの若いころ、日本の食糧自給率は38%ぐらいだった。それが、いまでは30%前後まで落ちている。若い人が農業を敬遠し、多くの働き手が高齢化した結果だ。この傾向は今後もずっと続き、自給率はもっと下がって行く。

要するに日本は、いま必要な食糧の70%を外国から輸入している。それでスーパーの棚も、いっぱいになっているわけだ。ところが世界の人口は加速度的に増えている。すでに110億人を超え、22世紀になると150億人に達することは確実だよ。

「すると世界中で食糧が不足する。日本が輸入しようとしても、モノがなくなってしまう。それを貴方は心配しているわけなのね」
――その通りだよ。だから農水産用のロボットを量産して、ダーストン国のようにロボットが稲や小麦を育て、おにぎりやうどんまで作ってしまう。そして近い将来、自給率が75%まで上がることを目標にする。それが日本を素晴らしい国にするための3つ目の条件になると、ぼくは確信しているんだ。

「ロボットが農水産物を造れば、食品のコストは電気代ぐらいになってしまうでしょうね。スーパーに並ぶ商品も、すごく安くなるはずだわ」
――いや、このシステムが完成したら、コメ・うどん・パンなどは全部タダで国民に配るんだ。個人の家でも飲食店でも、注文すれば無料でドローンが届けてくれるようにしたい。

ダーストン国では食糧だけでなく、生活必需品はすべて無料で入手できた。そこまではムリとしても、主食やよく食べる魚や野菜は無料化したいものだ。そうすれば若い人たちも安心して子どもを産むようになり、少子化も改善されるに違いない。

またロボットが普及して行くと、それだけ人間の職が奪われる。でも食料費がタダ同然になれば、社会不安が起きることもない。食品の生産や配送に従事してきた人たちは、時間をかけてゆっくり老人介護など他の職業に移って行けばいい。

「なんだか貴方が偉い政治家に見えてきたわ。でも、いまの政治家たちは、食糧不足を心配していないのかしら」
――心配している人はいるけれども、どうやったらいいのか手段が見付からないんだ。優秀なロボットの量産なんかできないからね。僕らには、それが出来る。ロボットさまさまだよ。

                           (続きは来週日曜日)

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