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経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-03-04 07:17:24 | SF
第3章  経 済 が な い 世 界 

≪22≫ キラキラの歴史博物館長 = 玄関前で出迎えてくれた館長は、陽の光に照らされて輝く銀色のローブを着た女性だった。すらりとした体形で、顔立ちはすこぶる整っている。全く同じ背格好の女性ロボットと腕を組んだまま、微笑みながらお辞儀をしてくれた。こちらも慌ててお辞儀をする。

「よくいらっしゃいました。私が館長のショッピーです。このロボットはラフマ。生まれたときから一緒で、一心同体の関係です。どうぞ、よろしく」

歴史博物館は郊外の森のなかに、忽然と聳え立つ大きな建物だった。ルーブル博物館のような近代的な建築物ではなく、むしろ大英博物館に近い感じ。建物の周りは広大な広場になっていて、大勢の人が散策したり、なかにはシーツを広げて弁当を食べている家族もいる。こんなに大勢の子どもを見たのも初めてだ。

やや薄暗い館内に入っても、ショッピー館長のローブは光ったまま。落ち着いた感じの応接室に通された。ぼくのマーヤはなにやら緊張しているようだ。

「ガーシュさんから伺いましたが、貴方はこの国でおカネが使われないことに興味をお持ちなんですね。もちろん、昔はおカネが流通していました。しかし、だんだん流通量が減って、全く使われなくなったのは、いまから100年ほど前のことです。
この博物館には政治や社会、科学や芸術など、いろいろな資料館があります。経済資料館もありますから、あとでご案内しましょう」

――すると、いまの人たちはおカネを使ったことがないわけですね。でも、それでうまく行くんでしょうか。ちょっと信じられないんですが。

「地球人の貴方からみれば、無理もないことかもしれませんね。でも人々の生活に必要な物資は食料でも機械でも医療品でも、みんなロボットが作っています。その原料もロボットたちが生産しています。ロボットに給料は要りません。ですから人々は、おカネを払わずに何でも手に入れることができるのです。ただロボットが働くためには、電力が必要ですね。けれど、この電力も太陽光発電ですべて賄えます。

したがって、おカネの要らない社会が実現した最大の要因は、ロボットの能力を人間並みにまで進化させたことだったと言えるでしょう。あとで科学資料館をご覧になれば判りますが、この国のロボットも最初のうちはコンピューターを人間の形に組み込んだだけのものでした。それが人間と同じ能力を持つようになったのは、人間の脳内構造をDNAごとロボットに移植する技術が開発されたからなのです。それが約100年前。そして、おカネが姿を消しました」

                           (続きは来週日曜日)    


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-02-25 08:35:04 | SF
第3章  経 済 が な い 世 界 

≪21≫ 97歳のおばあさん = この星に来てから半年も経ったが、ちかごろ心配なことがある。けさも美味しい朝食を食べたけれど、ぼくの部屋代や食事代は、いったい誰が払ってくれているんだろう。急に払ってくれと言われても、ぼくは無一文だ。
これだけ科学が発達している国だから、支払いはカードとか電子マネーで済ませているのだろう。最初のころは、そう思って深くは考えなかった。しかし6か月分も勘定が溜れば、相当の金額になるに違いない。マーヤに聞いてみなければ。

その夜、何度か行ったことのある近くのレストランへ出かけた。家族づれやカップルのお客が多い。そこでマーヤに「ここの支払いはどうしているの」と聞いてみたが、キョトンとして答えられない。するとマーヤはすっと立ち上がり奥の方のテーブルに歩いて行って、そこの女性客と何やら話している。そして、その女性客を連れて帰ってきた。

「ご近所に住んでいらっしゃるガーシュさんです。昔のことをよく知っておられるので、お連れしました」とマーヤ。
白髪交じりなのでお年寄りだとは思ったが、左胸のプレートをみてびっくり。なんと、その数字は≪03≫だ。御年97歳ということになる。聞けば3年前に、ご主人は100歳の寿命を全うされたのだそうだ。

「私のような者でも、お役に立てばと思ってやってきました。いま、この国におカネは存在しません。どんな物でもロボットたちが作ってくれますからね。ロボットはタダで働いてくれますから、人間は食べ物でもお着物でもタダで手に入れることができるのです。だから貴方も、支払いの心配をされる必要はありませんよ。

大昔は、この国でもおカネが使われていたんです。私のおじいちゃんが『オレの若いころには、おカネというものがあってね。おカネがないと、何も買えなかった。おカネを得るためには、働かなければならなかった。当時の人々はおカネを手に入れるために人を騙したり、人を殺したり。バカなことをやっていたんだよ』とよく言ってましたっけ」

そうか、この国にはおカネがないんだ。そうすると・・・。
考えていたら、ガーシュさんがこう続けた。

「そうそう、私の知り合いにショッピーさんという人がいてね、いまでも歴史博物館の館長をやっているんです。そこへ行かれたら、昔のおカネがあった時代のことがもっとよく解ると思いますよ。私から連絡しておきますから、ぜひ会いに行かれたらいい」

97歳とはとても思えないガーシュおばあちゃんの言葉に感激し、さっそくその勧めに乗ることにした。

                           (続きは来週日曜日)


プ レ ー ト

2018-02-24 08:00:43 | SF
◇ これまでの あらすじ ◇

1) 地球が寒冷化の危機
 = 21世紀の半ば、地球は厚いメタン・ガスに覆われ、冷え込んでしまった。食料不足に見舞われた人類は、移住できる星を探るために、宇宙船を飛ばした。ぼくはその宇宙飛行士の1人。4.2光年離れたダーストン星にたどり着く。

着陸時に事故が起こり、ぼくは重傷を負った。しかし、この国の医療技術は完璧で、1週間のうちに歩けるようになる。どんな病気でもケガでも治してしまうので、この国の人たちは死ななくなってしまった。

2) マーヤという名のロボット = ぼくの世話をするために日本語が判るように改造されたのが、マーヤという名前の女性ロボットだ。ロボットとは言っても、顔や体つき、それに皮膚の艶やかさは人間並み。この国のロボット技術は素晴らしい。この人間並みのロボットが、工場や家庭で働いている。

マーヤは左胸に「71」と書かれたプレートを付けている。ロボットだけではなく、人間の胸にもプレートが。病院のブルトン院長は「48」、賢人会議の議長を務めるウラノス博士は「12」だった。そして、ぼくの左胸にも「66」のプレートが。この数字は「100から年齢を引いた数字」だと聞いて驚いた。

3) 全国民の寿命が100歳 = ダーストン星はベートンという名の恒星の周りを回っている惑星だ。住民は300年ほど前に別の星から移住してきた人たちの子孫。移住は大型宇宙船で行われたが、それでも人口の1割ぐらいしか運べなかった。

残った9割の人々は、放射能汚染のために死滅したという。自分たちが犠牲になって、1割の人を新天地へ送り出した。このダーストン国では先祖の崇高な精神を受け継ぎ、人口を抑制するため驚くべき決断に踏み切った。それが死ななくなった国民の寿命を、すべて100歳にするという異常な制度の導入である。

4) 地球の冷却化が止まる = しばらくすると、地球の冷却化が止まったというニュースを聞く。これもダーストン国が、最新の宇宙バリア技術を使った結果だという。でも、この国の人がどうして地球の復活に手を貸したのか。全く見当もつかない。

                                 (明日から第3章)

      ≪23日の日経平均 = 上げ +156.34円≫

      【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】              

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-02-18 07:33:48 | SF
第2章  ロ ボ ッ ト の 反 乱 

≪20≫ 賢人会の裁定 = ある朝、マーヤが青い顔をして駆け込んできた。いや、マーヤの顔は赤くなったり、青くなったりはしない。ただ、とても慌ててやってきたことに違いはない。

「困ったことが起こりました。あのロージが『ロボットたちに、人間の女性と闘うように指令を出した』という噂が広がっているんです。本当だとすると、ロージはお仕置きされるかもしれません。どうしたら、いいでしょう」

――お仕置きって、どういうこと?
「よく判りませんが、たとえば捕まえられて電源を切られてしまうとか。メンデール教授の秘書を辞めさせられることは確実でしょうね」
――それは大変だ。でも、ぼくたちには、どうしようもない。しばらく様子をみよう。いろいろ情報を集めてくれないか。

数日後、科学院のウラノス院長から呼び出しがかかった。すぐに飛んで行くと・・・。
ウラノス博士は相変わらずの調子で、笑いながら話し始めた。

「ロージの件は、もうご存知だろう。賢人会にもいろいろ提訴があって、きちんと調べてみた。結論から言うと、全く問題なし。ロージは自分が流した情報をすべて記録していた。内容は『賢人会がロボットと人間の結婚について議論している』というだけのもの。それに尾ひれを付けて騒ぎ立てたのは、むしろ人間の方だった。したがって賢人会としては、この事実を公表しロージやその周辺のロボットたちに罪はないと裁定したんじゃ。

この件については、逆に君たちにお礼を言っておきたい。賢人会としても、いろいろ勉強になったからね。不確かな情報が伝わっていくうちに、確からしい情報に変わってしまう。昔からある人間社会の弱点だが、いまだに直っておらん。あるテレビ局などは『ロボットたちが気勢をあげるために、どこかに集結中』と報道し、『250年ぶりのロボット反乱か』という解説まで流したんだ。でも、これらはみんなフェイク・ニュースだった。

賢人会のなかでも、女性ロボットの母性本能を低下させたらどうかという意見も出たくらいだ。しかし、そうするとロボットの人間に対する献身的な働きが鈍る危険性がある。といってロボットが多くの若い男性と結婚すると、少子化が進んで人口不足になるだろう。ロボットは子どもを産めないからな。この問題については、賢人会もいろいろチエを出さなければならんのじゃよ」

その晩、ロージからも連絡があった。「余計なことは言わず、すべての通信を記録しておいたのは、地球人の貴方が忠告してくれたおかげ。助かりました。感謝しています」と、マーヤを通じて伝えてきたのだ。

ロージという女性ロボットは、なかなか頭もよさそうだ。こう感じたが、マーヤの前でその言葉はぐっと飲み込んだ。またマーヤが嫉妬するかもしれないと思ったからである。

                        (続きは来週日曜日) 


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-02-11 08:07:38 | SF
第2章  ロ ボ ッ ト の 反 乱 

≪19≫ とっさの忠告 = このところ、連日のように工場や農場の見学に出かけている。機械や日用品、それに食品を造る工場。みな完全に自動化されており、広い工場の要所要所にロボットが立って働いている。人間が1人か2人いる工場もあったが、全く人影のない工場の方が多い。マーヤに聞いてみると、何か難しい判断が必要になる工場には、人間が配置されているのだそうだ。

不思議なことに気が付いた。最初のころ、ロボットたちはぼくたちの訪問にほとんど関心を持たない様子だった。それが工場巡りを進めるうちに、だんだん多くのロボットがぼくらの方に視線を向けたり、なかには手を振るようなものまで現われたのだ。けさ訪れた家具の製造工場では、全員が仕事の手を休めてお辞儀をしたから驚いてしまった。

ぼくたちの工場見学が、ロボットたちに知らされるようになったのだろうか。それにしても奇妙だなあ。
――マーヤ、このごろロボットたちがヤケに歓迎してくれるね。いったい、どうしたんだろう。

家に帰ってからマーヤにこう聞いてみると、彼女は急に真面目な顔になって口を開いた。
「きょうは正直にお答えします。実はこの間、メンデール教授から『賢人会がロボットと人間の結婚について議論している』という話を聞きました。私たちロボットにとっては、ものすごく興味のあることです。そこでみんなに知らせようかどうかで、とても迷いました。悩んだあげく、あの親友のロージに相談したんです。

するとロージは『あなたは心配しなくていい。私に任して』と言いました。それで私は肩の荷を降ろしましたが、何事にも積極的なロージはこの話をみんなに伝えたようなのです。だからロボットたちは『いい話を教えてくれてありがとう」というつもりで、私たちにサインを送ってきたのだと思います。私はまだ少し罪悪感を拭い切れないのですが」

――たしかに通訳をして得た情報を漏らしたことには、問題があるかもしれない。でも悪い話ではないから、君がそんなに考え込む必要はないよ。人間の同性婚はもう完全に認知されているらしいから、ロボットが人間と結婚してもおかしくないんじゃないかな。

こう言ったとき、ぼくの頭にはメンデール教授の真剣な顔つきが蘇った。彼が「人間の若い男性はロボットがよく面倒をみてくれるため、結婚したがらなくなった。ある意味では、女性ロボットの反乱の方が男性ロボットの判りやすい反乱より怖いのかもしれない」と語ったときのことである。とっさにマーヤに、こう忠告した。

――話があまり大げさになると、人間たちは警戒するかもしれない。だからロージに「あまり騒がない方がいい」と伝えてほしい。

しばらくすると、この忠告が思わぬ結果を生むことになるが、この時点では何も予知してはいなかった。

                         (続きは来週日曜日)       

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