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経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-02-04 08:07:51 | SF
第2章  ロ ボ ッ ト の 反 乱 

≪18≫ ジェラシー? = 「宇宙空間バリアは暴風雨の制御だけではありません。これによって、この星の気象全般をコントロールできるようになりました。この島にも四季はありますが、夏は暑くても25度ぐらいまで、冬は寒くても10度以下にはなりません。いくつかのバリアを操作して、ベートンから来る光線を調節しているからです。

それどころか毎日、毎時間ごとの気象も、われわれが決めています。だから昔あった“天気予報”は30年前からなくなり、いまはテレビで“天気計画”が流されていますよ。この国には海水の淡水化工場が何か所もあって、飲料水や農業用水、工業用水には全く困りません。けれども計画的にときどき雨を降らせた方が、気持ちよく過ごせますからね」

そう言えばぼくがこの星にきてから2か月ほどになるが、いい天気が続いている。雨はほとんど夜のうちに降っているようだ。全くすごいことをやるもんだ。メンデール教授は最後に、こう付け足した。

「いつも地球の方を向いているバリアも張りました。この天体が暗くて冷たい星に見えるようにするためです。あなたの宇宙船がそれに衝突して壊れたことは、もう知っていますね」

――でも、なんでそんなことをするのですか。
「それは地球が温暖化や冷却化で住みにくくなり、地球人がこの星を目指して移住してくると大変だからです。われわれの技術をもってすれば、地球の宇宙船を破壊することは簡単です。しかし、そんな非人道的なことはできません。でも地球人を受け入れると、この国の平和な生活が脅かされることは確実です。歴史的にみても、移民の受け入れは大きな問題を惹き起こしかねません。まして相手が地球人となるとね・・・」

帰りの車のなかで、マーヤにこう聞いた。
――ねえ、あの送り迎えしてくれたロボットとは、仲がよさそうだね。胸の番号が「71」で、君と同じだったし。
「はい、一番の親友です。物事を判断する力が優秀なので、この前も迷ったときに相談しました」
――何という名前なの。顔も体もふっくらとしていて、とても魅力的だった。
「名前はロージ」

マーヤはこう言ったきり、急に黙り込んでしまった。なんだか怒った様子でもある。ぼくがロージを魅力的だと言ったので、すねているのだろうか。ロボットでも、女性の扱いは難しい。まさか、ジェラシー?

                             (続きは来週日曜日)


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-01-28 08:17:12 | SF
第2章  ロ ボ ッ ト の 反 乱 

≪17≫ バリアの技術 = きょうは郊外にある科学大学院のメンデール学長を再び訪ねた。市中の建物はだいたい20-30階建てだが、このビルは40階建て。群を抜いて高い。屋上に通信用のアンテナ類が林立している。車が正面玄関に着くと、女性ロボットが出迎えていた。マーヤをみると、とても嬉しそうにしている。ぼくには聞こえないが、何やら通信を交わしているように思われた。

40階の広大な機械室の一隅で、メンデール教授が待ち受けていた。挨拶もそこそこ、教授は満面の笑みをたたえて「いいニュースですよ」と言う。

「地球は完全に元の状態に戻りつつあります。データの解析をしたところ、赤道付近の気温は30度を超え始めました。東京やニューヨークの雪もほとんど融けています。もう1年もすれば、地球は完全に元通りになりますよ。地球ではいま、いろんな国のマスコミが連日この様子を大きく報道しています。もっとも原因については、首をひねっているようですが。はっはっは」

――でも、なんで冷却化が止まったのでしょう。全く不思議だ。
「わが国のUFOが6機、3年前から地球に派遣され、大気圏の上層部に溜ったメタンガスを強力な風力で吹き飛ばしたからです。その効果が、やっと現われました。もっとも同時にCO2なども吹き飛ばされたため、このままだと地球の温度は上がり過ぎてしまうでしょう」

――えっ、それでは一難去ってまた一難だ。こんどは温暖化で苦しむことになりますね。
「もちろん、その対策も考えてあります。UFOが数個の人工衛星を静止軌道に放出し、これらの衛星が特殊な金属粒子で作られたバリアを張ります。このバリアが太陽光線を、適当な強さにまで弱めてくれるはず。その程度を外部からコントロールすることで、地球上の気温を最適に保つことができるというわけです。どうぞ、ご安心ください」

――本当に、そんなことができるんですか?
「ええ、われわれは200年前の建国以来、ずっと宇宙空間にバリアを張る技術を研究してきました。当初の目的は、地球で言う台風やハリケーンのような暴風雨の発生を抑制することにありました。暴風雨に襲われると、この国は平坦な地形なために海岸線に近い土地が大きな被害を受けます。そこで南の海で暴風雨の卵が発生すると、その周辺の海水温を下げて発達しないようにする。つまり太陽光をバリアで調節してしまうわけです」

驚くべきダーストン国の科学技術力。開いた口が塞がらない思いだった。それにしても、このダーストン星の人々は、なんで地球にこんなに親切なのだろう。どうしても解らない。

                         (続きは来週日曜日)


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-01-21 07:45:03 | SF
第2章  ロ ボ ッ ト の 反 乱 

≪16≫ マーヤの決断 = 数日後、マーヤが急に元気を取り戻した。以前のように話しかけてくるようになったし、動作も活発になった。こんなことを聞いたら怒るかなと思ったが、やっぱり聞いてしまった。

――ねえ、マーヤ。君はメンデール教授の話を聞いてから、何か考え込んだようだね。もしかして、人間の男性に結婚したい人でもいるのかい。

マーヤは珍しく大笑いをして、こう答えた。
「どこの星の男性も考えることは同じだわ。そんなことではありませんから、ご心配なく。ちょっと悩んだことがあったんだけど、もう決断したから、いいんです。えっ、その内容は言えません。それより、きょうは町の様子を見に行きませんか」

例の運転席のない完全自動車に乗って、町に出た。高速道路では300キロで走るこの車も、街中では30キロぐらいでゆっくりと走る。でも交差点に信号はない。
――これで、よく事故が起こらないものだね。
「この車もロボットの一種ですから、完璧な通信機能を備えています。およそ100メートル以内の車や人間を常に感知していて、スピードを調整しています。何かに衝突したなんていう話は、聞いたことがありません」

町といってもビルが密集しているわけではない。大通りの両側に、20-30階建てのビルが適当な間隔を置いて並んでいる。歩道には人やロボットが歩いているが、ゆったりと歩いているのは人間で、忙しそうに行き来しているのはロボットに多いようだ。その数はそんなに多くない。せいぜい1ブロックに数人といった程度だ。

何回か町に出て、とても奇妙に思ったことがある。というのも、建物の1階にはレストランや集会所みたいな場所はあるが、モノを売っている店が見当たらないからだ。

――この街には、食料や衣類を売っている店がないね。どうしてだろう?
「食べ物でも服でも家電でも、注文すればすぐ届けてくれるじゃないですか。だから、そんなお店は必要ない。あるのはみんなが一緒に食事できるレストラン、体操ができるジム、近所の人が集まって議論したりする集会所ぐらいなものですわ」

なるほど、この国には小売業というものがないんだ。ロボットやドローンが発達すると、そうなるのかもしれないな。でも買い物をする喜びも、なくなってしまうわけだ。きょうの新しい発見は、ちゃんとノートに書いておかなければ。

それにしてもマーヤは何を悩み、なにを決断したのだろう。気になって仕方がない。

                       (続きは来週日曜日)

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-01-14 07:52:42 | SF
第2章  ロ ボ ッ ト の 反 乱 

≪15≫ 人間との結婚 = このところ、マーヤの様子がおかしい。なんだか緊張しており、ときどき考え込んでいるようだ。メンデール教授が別れしなにつぶやいた一言が、どうやら影響しているように思われる。メンデール教授は、こう言ったのだ。

「いま賢人会では、ロボットと人間の結婚について議論しているらしい。人間の同性婚はずっと昔に認められたのだから、いいんじゃないかという声が強いそうだ」

正直言って、ぼくはあまりピンとこなかったが、マーヤにとっては衝撃的な情報だったようだ。しかし、よく考えてみると、こんなに献身的で便利なヨメさんを持ったら、何も言うことがない。よその星のことだからどうでもいいが、この国の男性は人間の女性と結婚しなくなってしまうのではないか。

もっとも、女性ロボットと結婚した男性は夜の営みをどうするのだろう。女性ロボットは自己学習で、あそこまで改造してしまうのだろうか。そんなことを考えながらマーヤの横顔を見ていたら、急に下腹に力が入ってしまった。いけない、いけない。

実は、それどころではないのだ。メンデール教授は帰りがけに、ぼくの質問に答えて地球の話もしてくれた。
「地球の話は、もうちょっと待ってください。冷却化が止まって温度が上昇していることは確かです。でもUFOが送ってきたデータの一部に乱れがあって、いま解析をやり直しています。1週間後にまた来てくれませんか」

とても気になったが、ここは1週間後にまた来るしかない。
――でも、どうやって冷却化を止めることができたんでしょうか。あの凍り付いた地球の温度が上がるなんて、とても信じられないのですが。
「そのことも、こんど説明します。簡単に言えば、地球を覆って太陽光線を遮ってしまったメタンガスを化学的に分解するのです。もう3年も前から、その作業を行ってきました。ダーストン国のそうした技術を、どうか信頼してください」

メンデール教授はきっぱりとこう言って、ぼくたちを送り出したのだった。ぼくが地球を飛び出してすぐに、メタンガス分解の作業は始められたことになる。もし本当に地球の温度が上昇していたら、いまごろ人々はどうしているのだろう。再び昔のような地球に戻るなら、ぼくも早く帰りたい。でも宇宙船がないんだ。それにしても、この国の連中がなぜ地球の温度回復に乗り出したのか。大きな疑問であり、少し気味が悪い。

ぼくはこんなことを考えて、半ば喜び半ば悲しんでいる。一方、マーヤの方は「人間との結婚」問題について、思いを巡らせている。だから、このところマーヤとの会話はめっきり少なくなってしまった。

                          (続きは来週日曜日)


新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-01-07 08:14:43 | SF
第2章  ロ ボ ッ ト の 反 乱 

≪14≫ 女性ロボット = 250年前に起こったロボットによるクーデター未遂事件。この計画がマスコミによってすっぱ抜かれると、世の中は大混乱に陥った。政府は緊急に議会を召集したが、「責任者は誰だ」とか「和解の道を探れ」とか、議論は一向にまとまらない。そうしているうちに、ロボット側は食料や飲料水の生産拠点を占領してしまった。もしワーグネル博士らが敏速に動いて蓄電所を掌握しなかったら・・・。

世論は議会の無能さにあきれ、憲法を改正して議会制民主主義を停止。賢人会による政治体制の確立を強く求めた。その結果、国民投票が実施され、少数の賢人による政治体制に切り替わったのだという。同時にこの国民投票で、男性ロボットを製作しない方針も正式に決まった。つまり、それ以後のロボットはすべて女性になったわけだ。

メンデール教授に聞いてみた。
――いったい、この国にロボットは何体ぐらいいるのですか。
「建国当時は1000万体の男性ロボットを作ることが目標でした。国造りのために、人間並みの労働力や技術力を持ったロボットが必要でしたからね。それがクーデター未遂事件で男性ロボットが排除され、いまは女性ロボットが1000万体います。その約半分がモノの生産工場や流通などの現場で働き、残りの半分は各家庭に配属されています」

――働く女性ロボットと家庭の女性ロボットとは、性能が違うのですか。
「大きくは違いません。ただ働くロボットは勤勉な性格の女性から遺伝子をもらっていますし、家庭用ロボットは世話好きの女性から遺伝子をもらいます。そこにいるマーヤ君は後者の方だから、よく面倒をみてくれると思いますよ」

マーヤは知らんふりをして、忠実に通訳をしてくれる。
――では、もうロボットについて心配なことはなくなったのですね。
「いやあ、それがそうでもない。女性ロボットも人間並みに、あるいはそれ以上に自己学習をしてしまう。長い年月が経つと、人間以上の能力を身に着ける可能性が大きいのです。ゲームや計算などはそれでもいいのですが、科学や技術の面で人間以上の能力を持つとどうなるか。その心配があるので、女性ロボットについても寿命を100年に制限したわけです。

また特に家庭用ロボットは、女性的な感情を高めがちです。つまり家族的な心情が増幅し、たとえば人間の男性に対する恋情を生み出す方向に進化する傾向さえ観察されるのです。一方、人間の若い男性はロボットがよく面倒をみてくれるため、結婚したがらなくなった。いま大きな社会問題になりつつあるのです。ある意味では、女性ロボットの反乱の方が男性ロボットの判りやすい反乱より怖いのかもしれない」

                         (続きは来週日曜日)


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