貫之集 433
たなばたゆふづくよ ひさしからぬを あまのがは はやくたなばた こぎわたらなむ夕月夜 久しからぬを 天の川 はやくたなばた 漕ぎわたらなむ たなばた夕月が出ている時間は長
貫之集 432
山里に時鳥鳴きたりこのさとに いかなるひとか いへゐして やまほととぎす たえずきくらむこの里に いかなる人か 家ゐして 山時鳥 たえず聞くらむ...
貫之集 431
はるすぎて うづきになれば さかきばの ときはのみこそ いろまさりけれ春すぎて 四月になれば 榊葉の 常盤のみこそ 色まさりけれ...
貫之集 430
神祭るうのはなの いろみえまがふ ゆふしでて けふこそかみを いのるべらなれ卯の花の 色見えまがふ ゆふしでて 今日こそ神を 祈るべらなれ...
貫之集 429
はるのけふ くるるしるしは うぐひすの なかずなりぬる こころなりけり春の今日 暮るるしるしは 鶯の鳴かずなりぬる 心なりけり...
貫之集 428
三月つごもりゆくはるの たそかれどきに なりぬれば うぐひすのねも くれぬべらなり行く春の たそかれ時に なりぬれば 鶯の音も 暮れぬべらなり...
貫之集 427
みしごとく あらずもあるかな ふるさとは はなのいろのみ あれずはありける見しごとく あらずもあるかな 古里は 花の色のみ あれずはありける...
貫之集 426
古里の花を見るあだなれど さくらのみこそ ふるさとの むかしながらの ものにはありけれあだなれど 桜のみこそ ふるさとの 昔ながらの ものはありけれ...
貫之集 425
返し、女さくらばな かつちりながら としつきは わがみにのみぞ つもるべらなる桜花 かつ散りながら 年月は わが身にのみぞ 積もるべらなる...
貫之集 424
男、女の家にいたりてとぶらひわたるくさもきも ありとはみれど ふくかぜに きみがとしつき いかがとぞおもふ草も木も ありとは見れど 吹く風に 君が年月 いかがとぞ思ふ...
貫之集 423
かねてより わかれををしと しれりせば いでたたむとは おもはざらましかねてより 別れを惜しと 知れりせば 出立たむとは 思はざらまし...