貫之集 444
わづらひて、人にえあはであるにいとどとふ ひともなきかな こよひもや とりさへなきて われはかへらむいとどとふ 人もなきかな 今宵もや 鳥さへ鳴きて われは帰らむ 人に逢うこ
貫之集 443
旅人の衣うつ声を聞きたるくさまくら ゆふかぜさむく なりぬるを ころもうつなる やどやからまし草枕 夕風寒く なりぬるを 衣うつなる 宿やからまし...
貫之集 442
やへむぐら しげくのみこそ なりまされ ひとめぞやどの くさきならまし八重葎 しげくのみこそ なりまされ 人めぞ宿の 草木ならまし...
貫之集 441
やもめなる人の家つれづれと としふるやどは うばたまの よもひもながく なりぬべらなりつれづれと 年ふる宿は うばたまの 夜も日も長く なりぬべらなり...
貫之集 440
神の社に詣でたるいがきにも まだいらぬほどは ひとしれず わがおもふことを かみやしらなむ斎垣にも まだ入らぬほどは 人しれず わが思ふことを 神や知らなむ...
貫之集 439
田のなかに小鷹狩りしたるひともみな われならねども あきのたの かりにぞものを おもふべらなる人もみな われならねども 秋の田の かりにぞものを 思ふべらなる...
貫之集 438
男ひくことの ねごとにおもふ こころあるを こころのごとく ききもなさなむ弾く琴の 音ごとに思ふ 心あるを 心のごとく 聞きもなさなむ...
貫之集 437
つきかげも ゆきかとみつつ ひくことの きえてつめども しらずやあるらむ月影の 雪かと見つつ 弾く琴の 消えてつめども 知らずやあるらむ...
貫之集 436
月に琴弾きたるを聞きて、女ひくことの ねのうちつけに つきかげを あきのゆきかと おどろかれつつ弾く琴の 音のうちつけに 月影を 秋の雪かと おどろかれつつ...
貫之集 435
とまりとまりてふ このところには くるひとの やがてすぐべき たびならなくにとまりてふ このところには 来る人の やがてすぐべき 旅ならなくに...
貫之集 434
つもりぬる としはおほかれど あまのがは きみがわたれる かずぞすくなきつもりぬる 年はおほかれど 天の川 君が渡れる 数ぞすくなき...