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八ヶ岳カラマツチェンバロ コンサート ~佐藤理州~

2020年08月24日 | pocknのコンサート感想録2020
8月20日(木)八ヶ岳カラマツチェンバロ コンサート
八ヶ岳高原音楽堂
 
♪バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻~第1番プレリュードハ長調BVW846
♪バッハ/ゴルトベルク変奏曲ト長調BWV988~アリア、第1,16,30変奏、アリア
♪デュフリ/三美神
♪クープラン/ミューズ・プランティーヌ
♪ラモー/めんどり
♪ペツォールト/メヌエットト長調BWV Anh.114 & メヌエットト短調BWV Anh.115
♪バッハ/平均律クラヴィーア曲集第2巻~第1番プレリュードハ長調BVW870
♪バッハ/イタリア協奏曲ヘ長調BVW941~第1楽章
【アンコール】
♪♪バッハ/イタリア協奏曲ヘ長調BVW941~第2楽章


Cem:佐藤理州

八ヶ岳高原音楽堂は武満徹にゆかりの音楽ホール。ずっと訪れたいと思っていたが、清里に滞在している機会に初めてこの音楽堂を訪れ、チェンバロコンサートを聴くことができた。音楽堂は広大な八ヶ岳高原ロッジの敷地内の標高1500メートルの涼しい森の中に建っていて、音楽堂に向かう遊歩道では野生の鹿が出迎えてくれた。大自然の風景に溶け込むような佇まいの音楽堂の内部は木の香りが漂い、大きな窓いっぱいに森の風景が広がる、まさに森と一体になったような空間で武満の音楽が聴こえてくるよう。


そんな素敵な場所で行われた小一時間のチェンバロコンサートは、お話を交えながら進められた。佐藤理州さんの話はチェンバロの歴史について、ストップや2段鍵盤など構造や機能について、作品の由来や聴きどころについてなど多岐にわたる興味深い内容。「バッハのメヌエット」として有名な曲が、実はペツォールトという作曲家の作品と知りビックリ。

バッハを中心にしたドイツバロックと、ラモーやクープランなどのフランスバロックの作品を集めたチェンバロの演奏は端正で瑞々しく、生き生きとした躍動感や宮廷にいるような格調の高さも伝わってきた。リピートの際に施される装飾は上品で自然。ラモーの「めんどり」での同音連打ではリズムの微妙な揺れから生命力と共にユーモラスな情景も感じられた。最後に演奏したイタリア協奏曲では、2段チェンバロの特性を生かしたダイナミックな立体感をうまく表現していた。アンコールではこの第3楽章も披露してくれたが、こうなると第2楽章も聴きたかったな。

使用された「カラマツチェンバロ」は久保田彰氏の製作によるもので、地元八ヶ岳産のカラマツが使われているとのこと。装飾はシンプルだが反響板の内側の金の描画が瀟洒なイメージを引き立て、この森のホールにふさわしい外観。そしてその響きが素晴らしく、透明でデリケートで美しい音色が、伸びやかに木の音楽堂の隅々まで届いて行った。


演奏中、大きな窓いっぱいに広がる八ヶ岳の森の木々が風に揺れたり、陽が射したり陰ったりすることで時間と共に表情を変えていく。鹿の親子が現れることもあるだろう。そんな生きた森の表情も演奏と一体となり、チェンバロの響きと森が共鳴しているようで、ホールに居ながら森のマイナスイオンを浴びている気分。バッハやラモーの音楽がこうした自然の恩恵から生まれたのかも知れないとも感じた。ずっと訪れたかった八ヶ岳音楽堂での初体験のコンサートは都会のホールでは味わうことのできない至福の体験となった。


音楽堂の手前で出会った鹿


この音楽堂の完成に携わった2人の芸術家

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ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ「森の詩」ほか

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